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尾道市向島町の里海を眺めて

瀬戸内海(尾道・向島)で見られる海の生物等をご紹介

広島大学大学祭企画「珍魚すくい」のための採集

2012-11-01 20:56:45 | 日記
来る11月4日に広島大学内ビオトープにて珍魚すくいなるイベントを行います。
要は金魚すくいの魚を里海の小魚にしたものです。参加費は無料で先着200名様限り。
その名の通り、少し珍しい魚を入れる予定にしています。

この企画は竹原ステーションのIさんと合同で行うことにしており、
小魚の採集のために竹原に行ってきました。

この時に先方の学生さん5人が快くお手伝いしていただくことになり、大変助かりました。
手際よく出向の準備を行ったり、後輩にロープの結び方を教えていたりと実に自主的によく動く学生さんたちでした。
こういう学生さんたちが向島にも沢山来てくれればと思いながらIキャプテンの操船で出航。



採集地は生野島。こぶし大の礫が多く、泥地のフィールドです。
向島近辺のように潮が強く当たらないせいか、潮間帯にも泥が堆積し、カキ殻の付着がほとんどありません。
そこまでは竹原ステーションの船、カラヌスで連れて行ってもらいました。
この船、結構速くて驚きました。大体25~28ノットの巡航速度です。
向島のあびIIは18~22ノットなので、ちょっと爽快な感じです。



採集は地引網で行いました。と言っても、私は勝手がわからないためほぼ足手まとい状態でしたが。
水深2mのところに30mの網を設置し、岸から引いていきます。





ここでも優秀な学生さんたちが大活躍。寒い中ありがとうございました。
ただ残念なことに、今年は夏にアマモがだいぶ減ったようで、アマモを隠れ家とする小魚があまり網に入りませんでした。
桟橋からメバルを狙ってみたものの、手網にはなかなか入ってくれません。投網を持っていかなかったことを後悔しました。
そこで竹原の学生さんが飼育しているカサゴとメバルを提供していただくことになりました。何から何までお世話になりました。

向島からも幾種類か小魚を持っていく予定ですが、明日早朝5時頃からもう一度採集して種類と数を増やしたいと思います。
こちらもアマモの生育が良くないため、今年の材料集めはかなりてこずりそうです。

中国新聞企画「海のゆりかご」 新聞協会賞受賞記念式典

2012-10-30 20:10:20 | 日記
以前に協力した中国新聞の企画「海のゆりかご」(全41回)が新聞協会賞を受賞されました。
この企画にはゴンズイ撮影の協力とウミサボテンの紹介をした縁があり、
多少なりと貢献できたのであれば大変うれしく思います。

関係者約140名を集めた式の招待状を頂いたので、ホイホイと参列してきました。


会場は中国新聞社。


受賞者のTカメラマンとK記者。念のため顔はぼかさせてもらいます。

会場の両脇には大きく引き伸ばされた、Tカメラマン渾身の写真パネルが並んでいました。
同じ写真は中国新聞社発行の写真集「命のゆりかご~瀬戸内の多様な生態系」で説明文とともに見ることができます。
大変美しく、芸術的な写真ばかりです。些かチートな手法を使った写真もあるという裏話も聞くことができました。
写真集の詳細については以下を参照してください。
この写真集はお土産に各自1冊ずつ頂きました。一冊は事前に購入済みだったため、頂いた分は保存版にしておきます。




会そのものは1時間程度で終了したので、散歩ついでに駅まで歩くことにして、
道中に夜景を撮影したり、ウィスキーを3杯ほど飲んだりしておりました。
その時おつまみに頼んだフィッシュアンドチップスにタチウオのフライが入っていて、
向島の防波堤で数年ぶりにタチウオ釣りでもしようかと考えながら帰途につきました。
首尾よくタチウオが釣れたら、一つやってみたい加工品があるのです。
(釣れなかったらスーパーで・・・)

Mesodinium rubrum(ダルマハネムシ)による赤潮

2012-10-27 17:46:29 | 日記
金曜日の昼前に海辺を見てみると赤潮が出ていました。



ヤコウチュウとは色が違うなと思い、ちょっとすくって見ました。
ヤコウチュウはオレンジ色に近い赤で、これはワインレッドに近い赤です。



マクロ撮影するとこんな感じ。大きさは50μm程度。
濃いところで大体1000匹/1mlくらいの密度でしょうか。 コップ半分の約100ml中には10万匹いる計算になります。




顕微鏡で覗いて分類してみました。 おそらくMesodinium rubrum(ダルマハネムシ)だと思います。
発生するのが秋口で、赤潮の色合いも瀬戸内海プランクトン図鑑(岩国市立ミクロ生物館発行)の記載と似ています。



ダルマハネムシの和名は最近つけられたようで、ちょっと語源を推測。
顕微鏡でのぞくときに絞りを甘めにするとケイ酸質や鞭毛の部分がはっきり見えず、ダルマのようにみえます。
また、動き方は本当に跳ねるような動きをします。動画はこちら http://youtu.be/kXp58pZH89c
ホールスライドグラスに入れて撮影してみましたが、動き回っているのでピントが合わないのはご容赦を。



赤潮が出ているあたりで来月頭の広島大学大学祭に供出するための小魚をストックしているのですが、
この影響で死んでいないことを祈るのみです。
生きていれば、11月4日の日に「ビオトープで遊ぼう」の海の生き物コーナーで行う
「金魚すくい」ならぬ「珍魚すくい」で使う予定です。


台風16号とアメフラシ幼体など

2012-09-19 20:17:28 | 日記
9月17日から総合科学部の実習が予定されていましたが、あいにくの天気。
台風16号の影響を受けてしまい、とても船を出せるような状況ではありませんでした。
高潮と大潮が重なり、満潮の3時間前ですら波が防波堤を超えてきます。
写真は満潮1.5時間前のもの。満潮時は撮影できない状態でした。



干潮時に船で無人島に渡る計画を諦め、近所の磯歩きに変更。
高潮で潮が引かず、波も荒いため採集には全く向かない天候でした。
そのような中で案内した小さなタイドプール(潮だまり)を含む磯でしたが、
実習としての体裁は何とか取り繕えたようです。

波が荒い中に目を凝らして見ると、ヒジキも岸壁に付き始めたのが分かるようになっていました。
最近飼育水槽が寂しかったので、岩ごと持ってきてヨロイイソギンチャクと共に水槽に入れました。


ヒジキ。岩についている橙色のものはダイダイイソカイメン。



実習生たちが採集してきた生物を眺めていると、小さな3cm程のアメフラシがいました。
大きさと外套膜の縁が黒いのでクロヘリアメフラシかと思いましたが、
体表の班模様が不明瞭で側足の縁が黒くないため普通のアメフラシの幼体と判断。
クロヘリアメフラシにしては、この時期に3cmは大きすぎる気もします。
7~8cmくらいの大きさであればアメフラシだと確信が持てるのですが・・・。



ひとまず小型飼育箱に入れて9月下旬まで維持し、近所の小学生に見せる予定。
一年を通じて海の生物の変化を知るということが一つのテーマになっていますので、
今年4月に見た30cmの大きさのアメフラシが卵を産み、それからどう育っているのかを知る
良い材料になると思います。
11月始めの学祭まで維持できれば、これを展示しようと思います。
写真に写っている緑色のものは乾燥ワカメを戻したもので、餌として入れています。



この飼育箱は、100円ショップ(ダ○ソー)のコレクションボックスを逆さまにし、
黒い部分を蓋にして空気穴を開け、細いチューブを差し込んで空気を送っています。
小さな生物を隔離して飼育するのには結構便利です。

ヨツアナカシパン

2012-08-24 21:01:45 | 日記
ヨツアナカシパン(Peronella japonica

理学部3回生の海洋生物学実習Bに使用するため、ヨツアナカシパンを採集して提供しました。
一部は筑波大学の研究のために向島から発送しました。
ヨツアナカシパンは棘皮動物門に属するウニの仲間です。
カシパンという名前は文字通り当時の菓子パンに形が似ているところから命名されました。



花のような模様はその名の通り花紋といいます。
画像では見えませんが、その中央部分に生殖口があります。



ウニ類は上面に肛門がありますが、カシパンは下面後方に肛門があります。
殻の頂点に肛門があるものを正形類、それ以外の部分にあるものを不正形類と分類します。
口と肛門が上下の対称の位置にあるかどうかの話で、悪いことをしているわけではありません。







肛門の位置の違いは、一説によると生活スタイルの違いによるものと考えられています。
ウニ類は海底の岩などの上で生活し、カシパン類は砂の中に潜って生活しており、
前者は岩の上に生える海草などを齧り、後者は砂中の沈殿物などを食べています。
さて、この状態で糞をすることを考えてみましょう。
ウニは上部の肛門から排泄し、糞は海水の流れに乗って速やかに流されます。
一方、砂の中にいるカシパン類は上部から糞をすると、そのまま砂の中で糞まみれになります。
そこで後方から糞をして本体は前方に移動すれば、自分が汚れることはありません。
生活スタイルの違いと肛門の位置の違いのどちらが先に確立したのかはわかりませんが、
自然とは実に合理的にできています。

さて、採集地の写真を撮ろうとしたのですが、あいにく波が荒くて砂が舞い上がり、写真が全く撮れません。
擬似的に水槽内で再現するとこんな感じです。



体に砂をかぶせてカモフラージュしていますが、体の形に合わせて輪郭が分かってしまいます。
そのため、分かっている人にはこの隠れ身は通用しません。
砂に潜る(隠れる)のは早く、5分もあればご覧の通り。潜ると同時に管足と棘を使って砂を自分に被せていきます。





育てるのは難しいですが、1月ほど維持するだけなら簡単です。
温度が上がりすぎないようにしてサンゴ砂を引いて空気を入れるだけ。餌は特に与えなくても大丈夫です。
ある程度長く飼いたいときは、生息地の砂を薄く敷き、大きめの水槽で飼育します。
餌は色々な魚やウニやナマコなどの排泄物が沈殿して餌となることを期待して、それらを同じ水槽で飼うようにしています。

実験の様子はまた後日。