はぐくみ幸房@山いこら♪

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常緑樹と広葉樹

2020年11月17日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 樹木には、一年中葉がついている「常緑樹 」と秋から冬にかけて葉を落とす「落葉樹」があります。

 もう少し丁寧に言うと、

 落葉樹は・・・

 1年のうち冬季や乾燥期(無降水量が続いた時期)など、生育不適期の前に、全て葉を落葉して休眠状態になる樹木です。

 また、全ての成葉(緑葉)を失って休眠状態に入る期間が少なくとも1ヶ月か、1シーズン以上続く樹木です。

 

 常緑樹は・・・

 1年中、生きた成葉をもつ樹木で、年中切れ目なく成葉を保持している樹木です。

 しかし、常緑樹も落葉します。

 光合成の効率が悪くなった旧葉から落葉しますが、ほとんどが新葉と入れ替わるように旧葉が落葉するため、新葉と旧葉が混在し、常に、緑色の葉があるように見えます。

 落葉の際には、落葉樹同様、紅(黄)葉してから落葉するものもあります。

 この写真はカゴノキで、よ~く見ると、黄色い葉があります。

 この黄色い葉が旧葉で、この黄色い葉が落葉します。

 あと、クスノキは紅葉した葉が落葉します。

  基本的に、常緑樹は年中成葉があります。

 だけど、時々、クスノキやカシ類は、春に一斉に落葉し、年によっては新葉が展開するまで、1週間前後、全葉が落葉した状態になることもあるそうです。(僕は、まだ、その状態を見たことがありません!)

 

 一般的に、高標高地や積雪の多い寒冷な地域では落葉樹が、低標高や温暖な地域では常緑樹と、ある程度、住み分けされています。

 これは、緯度や標高に依存しており、低緯度から高緯度になるにつれ、クスノキ・タブノキ・カシ類などの常緑樹からブナやミズナラなどの落葉樹に変わっていきます。

 しかし、低緯度・低標高でもアカメガシワ・カラスザンショウなどの落葉広葉樹が、高緯度・高標高でもモミ・トウヒ・エゾマツ・トドマツなどの常緑針葉樹が生育しており、実際には、常緑樹と落葉樹は混在しています。

 

 例えば、和歌山県の大塔山では、ブナとアカガシが混在しています。

 アカガシは、常緑樹の中でも耐凍性が高く、マイナス15℃までの環境下であれば、葉や芽の細胞が凍らず、生育することが出来ます。(マイナス15℃以下の環境では生育できないということになります。)

←アカガシ

 

 しかし、年中葉がついている常緑樹は、雪が葉の上に降り積もると、雪の重みで枝や幹が折れるリスクを抱えることになるので、積雪が多い地域では、やはり落葉樹の方が、生育に有利ですね。

 一方、寒冷地に生育するモミ・トウヒ・トドマツ・エゾマツなどの常緑針葉樹は、積雪による枝や幹の折損リスクはないのか?

 針葉樹は、広葉樹と異なり、幹は真っ直ぐに成長し、枝も広範囲には広げないため、常緑広葉樹よりも積雪による枝や幹の折損するリスクが低くなります。

 多雪な地域に適しているという表現が正しいとは言い難いので、落葉樹や常緑針葉樹は多雪な地域でも生育できる能力・性能が備わっている、という言い方がいいのかな?

 

 あと、積雪の影響以外にも、葉の維持コストと光合成の生産量の影響もあると考えられます。

 葉の生産・維持コストが光合成の生産量を上回ると葉を落葉します(維持コスト>光合成生産量で落葉。)。

 葉の光合成速度は、若齢時は高く、加齢に伴い低下していくため、適当な時期に葉を落とし、新しい葉と入れ替える必要があります。

 また、光合成に不適切な季節(冬季)になると、その期間、葉は光合成ができないのに、葉を維持するために呼吸や蒸散による損失が続くことになります。

 その損失をなくすため、葉を落葉します。

 常緑樹と落葉樹の差は、ここにあるのではないかと思います。

 冬季に落葉することで支出を抑えるか、冬季でも光合成することで収支がプラスになるか。

 落葉樹は、秋まで光合成で稼ぎ、それ以降は落葉する方が効率的という戦略で、低緯度の常緑樹はそのまま着葉した方が効率的という戦略だと考えたのかもしれません。

 高緯度の常緑樹は、光合成に不適切な季節・時期が長くなると、春に生産した葉が、秋口までに光合成で稼ぐ量が、葉の維持コストを下回るようになると、元が取れるようになるまでの長期間、葉を着けて稼がせるという戦略だと考えられます。

 

 簡単にまとめると・・・・

・落葉樹は、春~秋までに光合成で稼ぎ、それ以降は落葉した方が効率的という戦略。

・高緯度の常緑樹は、春~秋までに光合成で稼いだ分では元が取れず、それ以降も着葉し、元を取るという戦略。

・低緯度の常緑樹は、光合成が不適切な冬季であっても、年中着葉した方が効率的という戦略。

 では、ないかと思います。

 

 常緑樹は、冬季でも光合成できる能力を備えています。

 冬季だから常緑樹も光合成しない・・・というわけではありません。

 冬季の光合成による生産量は高くないかもしれませんが、落葉するより着葉する方が効率的・効果的だという戦略だと思います。(そうでなければ、光合成が出来ないまま着葉していると、収入0なのに支出が続くという無駄な状態になってしまうので。)

 そもそも、樹種によって光合成に適した温度が異なります。

 夏季だから光合成に最適というわけではなく、夏季でも高温過ぎると光合成を行わない場合もあります。

 

 常緑樹と落葉樹。

 分け方は単純ですが、樹種ごとの戦略は異なるので、追いかけるととても複雑です。

 温暖な地域なのに、なぜ、落葉するのか?

 寒冷な地域なのに、なぜ、常緑なのか?

 積雪による折損リスクが大きいor小さいとか、落葉した方が効率的/着葉した方が効率的、というのも答えの1つなんでしょうが、樹種ごとの特徴もこれに加わってくるのだと思います。

 

 樹種を特定するのもいいけど、常緑樹と広葉樹の違いに想像を広げる観察も楽しいと思います(^o^)。


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