森の産物ともいえるメープルシロップ
カナダの国旗でも有名な「サトウカエデ」の樹液から採取されています。
日本には、サトウカエデはありませんが、代わりに「イタヤカエデ」という樹からシロップを採取しています。
あと、シラカンバ(シラカバ)からもシロップが採取されています。
しかし、全国各地でシロップが採取されているかというと、そうではありません。
主に、北海道や東北地方、長野県、山梨県など寒い地方で採取されています。
なぜ、主な採取地が寒い地方なのか?
それが、今回のお話です(若干、前回と前々回の記事と共通している部分もありますが、ご容赦下さい。)。
寒い地方の冬は、雪が積り、凍り付くような寒さなので、樹体内の水分が凍らないように細胞中の糖度を上げます。
これが、シロップとなる甘さの秘訣(?)です
そして、冬には、病原菌や害虫などが少ないので、抗菌物質を作る量も少なくしています。
樹液には、病原菌や害虫から身を守るために作られた抗菌物質であるポリフェノール(主な成分はタンニン)が含まれているため、なめると渋いのはそのためです。
しかし、冬になると、その必要性もなくなり、抗菌物質の生産量が少なくなる一方で、樹液の凍結を防ぐため、糖度を上げた結果、甘い樹液となります。
こうして、シロップが採取できるというわけです。
ポイントは、「凍結を防ぐために糖度を上げる」です・・・かね。
和歌山県のような温暖な地域でシロップの採取が盛んでないのは、人里の近くにシラカンバやイタヤカエデのような樹がないというのが一番の理由だと思います。身近にないと用途に気付かないですからね
仮に生えていたとして、冬になっても、シロップになる程、糖度を高める必要がないことや、凍結するほど寒いような場所は、標高の高い山などになるため、採取することが困難だから・・・だと思います。きっと。たぶん。
ちなみに、和歌山県の工芸品に「紀州漆器(根来漆器、黒江漆器)」があります(京都や奈良にもありますが)。
ウルシの樹液から採取した「ウルシオール」を主成分とする天然塗料を塗っているわけですが、採取時期がシロップと異なり、6~9月頃に採取されます。
「ウルシオール」も抗菌物質の1つなので、冬になると抗菌物質の生産量が少なくなるため、この時期に採取しないと意味がないんでしょうね。
あっ、あとゴム。
これもゴムノキの樹液から採取されて作られています。
し・か・し、
シロップを採取する樹液は、木部にある導管を上昇している「導管液」なので、ドリルで穴を空けて採取します。(ただし、早春の一時期しか採取できません)。
一方、ウルシやゴムノキは、師部と皮層の間にある乳管細胞から出る「乳液」なので、樹皮を傷つけて採取します。
一言で樹液といっても、同じ器官に蓄えられた樹液ではないので、採取方法も違うというわけです。