おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

無銭ボーリング:11時間48ゲーム休みなしで

2005-12-28 16:52:45 | 変人
There are more things in heaven and earth, Horatio,
Than are dreamt of in your philosophy.
(Hamlet: Act I, Scene v)
 「この天と地には、ねえホレーシオ、我々の哲学では夢にも想像出来ないことが山ほどあるねぇ」
 不可解な事件に遭遇する度にこのハムレットの名台詞を思い出す。知識や推理や学問の無力さを感じる瞬間である。
 建築設計大量偽装や国際紛争のようなA級ニュースだけでない。まったくつまらないC級ニュースにさえ、「我々の哲学」は全く歯が立たないことが往々にしてある。
 無銭飲食ならぬ無銭ボーリング。ボウリング場で約十一時間にわたり四十八ゲームをひたすら一人で投げ続けた末に料金を支払わなかったとして、60歳の男が埼玉県警狭山署に二十七日、詐欺の現行犯として逮捕された。踏み倒した金額は約二万四千五百円というが、ボーリング場の経営者以外はそんなことはどうでもいい。
 普通の人が知りたいのは「なぜ」だ。別に隠すほどのこともなかろう。男の供述は・・・しかし各紙の報道を読み比べて行き詰まった。各紙まちまちな上にいずれも説得力に欠けるのだ。以下、名前をつけて比べてみた。

情熱系朝日新聞:「ボウリングがどうしてもやりたかった。もっと投げ続けたかった」
投げやり系毎日新聞:「やりたいからやっただけだ」
憂さ晴らし系読売新聞:「むしゃくしゃしていたので、思いきりボウリングをやりたかった」
沈黙系共同通信:(動機についての記述なし)

 とまあ動機についても大手の報道機関でこれだけ違いがある。「情熱系」と「投げやり系」では180度違う。警察の記者会見発表だけならこれだけ違わない。事実この男の当日のスコアーについては報道が一致している。記者たちも動機が知りたくて知り合いの刑事にそれぞれ尋ねたのだろう。それぞれが違う答えをしたのでこういう結果になった。
教訓:たった一本だけの記事で判断するなかれ。特に「動機」という人間的な要素が絡んでいる問題は、真相の把握は困難である。

 余計なことながら小生の推理はこうである。この無職のお父さん、何とか職に就きたいと焦っていたが、そこで自分の好きなボーリングが活かせないかと思いついた。昔長時間プレーしたことのあるあのボーリング場にはプロのスカウトが来ているはず。そこでオレの「才能」を見出してくれれば・・・
 この日のお父さんのスコアーは「48ゲームのアベレージは133点、最高点が187」。「年齢を考えると、ボウリングの腕前はうまい方に入る」(同ボウリング場)が、とてもプロで通用するチカラではない。「就職活動」が失敗したことが照れくさくて、刑事には色々な言い方で動機を供述したに違いない。・・・しかし論証は不可能である。こんなC級ニュース、まさかこのお父さんに改めてインタビューなんて報道機関は現れないだろう。かくしてこのC級ニュースも「帝銀事件・下山事件」などの戦後未解決大事件同様、永遠に謎に包まれたままに終わってしまうのだ。

 それにしても還暦で11時間連続48ゲームという体力はスゴい。機械的なストップ(自動的に48ゲームで止まってしまう)がかからなければギネスが狙えたかもしれない。このお父さん、まずテレビのバラエティーに自分を売り込んだらよかったのに。「我々の哲学」でもそれくらいは提案できるのだ。


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3 コメント

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Tバックありがとやんす (kenkun)
2005-12-29 16:40:27
大掃除おわりますた。
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TB有難うございます。。。。 (ファイヤーフラッシュ)
2005-12-30 11:28:33
何はともあれ「夢中になる」事はいい事です。

人は「十人十色」「千差万別」です。ニュース有るこの方の悪かった点は、料金を「踏み倒し」た事のみです。これは犯罪ですから。。。





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TBサンクスです (irumania)
2005-12-31 13:06:18
1/6(金)13時から「46Gにチャレンジ!貴方は何ゲームまで投げられるか?」とゆう催し物が新狭山グランドボールであるそうです(笑)達成したらゲーム代タダだって!!HPに書いてありました。
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