「無人島に流されるとしたら一冊だけ持って行く本は何ですか」、「無人島に流されるとして、一人だけパートナーを選ぶなら」と「究極の選択」として活用されるのが無人島漂着。思考実験としては楽しいけれど、ホントに流されるのはイヤだ。そもそも生きてはいけない。
「トンガの漁民2人、無人島で2カ月生き延びる」というニュース(共同)が。「約2カ月前から行方不明となっていた南太平洋のトンガの漁民2人が小さな無人島で生存していることが分か」ったのだという。「2人は無人島でヤシの実や、キャッサバ(サツマイモに似た植物)を食べ生き延びていた」というが、まあ世の中には半年間も「飲まず食わず」で瞑想に耽っている少年もいるのだから、本人達は死ぬ思いだっただろうけど、世間はそんなにビックリもしない。
それよりも気にかかるのは、「1人の漁民の家族は既に本人の葬儀を済ませていたが、もう1人の漁民の妻は生存を信じて祈り続けていたという。」記述。後者はいいでしょう。「愛の絆」を確かめることが出来て今後の夫婦生活は安泰だ。しかし前者は家へ帰ってみると・・「あら?あんた生きてたの。お葬式代無駄になっちゃったじゃない。もう”本番”のお葬式はやらないからね」と言われては、立つ瀬がない。スネて無人島に戻ってしまうのでないかと心配だ。
『ロビンソンクルーソー』は”実話”だ
無人島漂着と言えば何と言っても『ロビンソンクルーソー漂流記』(原題は”寿限無”のように長いので最後で紹介)。ロビンソンは「無人島」(実際は原住民がいた)で28年間生活したのだから二ヶ月なんて一眠りだ。どうせ作り話じゃないかって?ちゃんとモデルがいたのです。スコットランドの航海長アレキサンダー・セルカーク(Alexander Selkirk) の4年4ヶ月のマサティエラ島(チリの沖合)での体験記をダニエル・デフォーDaniel De Foe(1660-1731)が読んだことが創作のきっかけだった。
そして昨年日本人探検家がマサティエラ島を調査し、セルカーク自身の生活の痕跡を発掘したというから、事実は小説よりも奇なり。
『15少年漂流記』批判
「ロビンソン」よりも日本ではたぶんよく読まれているのがジュール・ヴェルヌ(Jules Verne, 1828 - 1905)の『15少年漂流記』(原題は"Deux Ans de Vacances"「二年間のバカンス」とずいぶんお気楽だが)だろう。
ニュージーランド諸島めぐりに出かけたフランス・イギリス・アメリカの多国籍の15人の少年(少女はいない)たちが無人島に漂着してしまうが、力を合わせて「二年間のバカンス」を生き延びる。彼らが直面した困難は自然だけではない。不思議なことだがこの「無人」島には「悪人」たちが上陸し、少年たちと戦火を交える。ショッキングなことに少年「軍」はこれら「悪人」達を非情にも殺害してしまう(おそらく日本で出回っているのは子供向けにリライトされた翻訳でこの点は削除されていると思う)。「少年法では・・」と考えてしまうのは、「悪人」は無条件で殺せというあの分かりやすい時代を経験していないからだ。
多国籍の「15人」をまとめるのは大変だ。今イラクでの多国籍軍の指揮を取っているのはアメリカ人で、日本を含めて各国軍は「ご無理ごもっとも」と服従しているが、この小説では「指導者」はフランスの少年だ。ヴェルヌがフランス人だから当然だが。
ただ「多国籍軍」と違うのは、大事な問題は「15人」で票決を取った。しかし驚いたことに黒人の少年「モコ」だけは「参政権」を最初から奪われているのだ。冒頭の絵は原書初版に載せられていた「15少年」(でもなぜか「メンバーが足りません!」)の挿絵。一番下の段に善良そうな「モコ」が描かれている。
「モコ」に「参政権」が与えられないのはただ黒人であるからという理由だけ。他の少年たちもそれは自明のことだと思っているし、「モコ」自身も「普通選挙」実施の運動をするわけでもなかった。人種差別は当然の時代だったと言えばそれまでだが、「モコ」は献身的に働いて、物語の最後の最後で悪人たちを撃退する砲弾を炸裂させる、言わば決勝ゴールをあげただけに、恐らくは帰還しても何ら権利を与えられずに(そしてそれを当然のことと受け入れて)生涯を終えたと思うと胸が痛む。フィクションじゃないかと言われるかもしれないが、それならなおさらヴェルヌが無人島に「大人社会の論理」を持ち込むのでなく、子供たちの論理で運営される楽園を描かなかったのかと、モコモコと疑念が沸き上がってくるのだ。
しかしあまりに歴史上の事件を超越的な視点で(というか自分たちの価値観だけで)批判することは慎まなくては。思えば古代の哲人たちはみなこぞって奴隷制の支持者だった。戦争という大量殺戮を熱狂的に全国民が喜んだ時代もあった。
それに、実は今の日本にも「モコ」はいるのだ。「外国人」には参政権が与えられていないのだから。ご存じのように、国会では「永住外国人」に参政権を与えるべきだという議論も出ている。しかし今ネットを見ると、これには反対派が多いようだ。と言うか、公然と”「モコ」にも参政権を”と言うと島流しにあいそうな雰囲気だ。幕末の水戸藩士を思わせる「攘夷」の雰囲気だ。「島流し」やむなし。「無人島」にはサバイバルマニュアルとしてやはり『ロビンソンクルーソー』1冊だけを携行するか。
(註)
別段小生は主義として「開国派」でも「コスモポリタン」でもない。外国人が選挙権を持てば日本が良くなるからというよりも、今の「民意の選択」がそれほど賢いと思えないから、新しい「風」が必要だと思うだけだ。
だから小生はその他の点では「攘夷派」となることもある。例えば駅伝だ。
高校・大學駅伝で”快走”するケニア人「留学生」は何とかならんのか。普通「留学生」というのは日本に何かを学びに来ているはずなのに、ケニア人「留学生」と来たら、「お前ら日本人は”歩いてる”だけだ。本当の”走り”を教えてやる」とばかりに別次元の走りを見せる。これではつまらないし、日本人がコンプレクスを感じて成長の芽を摘まれてしまう。
駅伝をテレビで見る度に、「”留学生”引っ込め!参加を禁止しろ。グローバル化反対!」と叫んでしまう。この時ばかりは水戸藩士も真っ青な「攘夷主義者」なのである。
【付録-ロビンソン物語の正式な書名】
以下のとおりですが、図書館司書やデーターベース設計者を悩ますなが~い書名。10分で覚えられたら知能指数140以上。
『The Life and strange surprising Adventures of Robinson Crusoe, of York, mariner, who Lived Eight-and-twenty years all alone in an uninhabited Isiand on the Coast of America, near the mouth of the great River Oroonque, having been cast on shore by shipwreck, where-in all the men perished but himself. With an Account how he was at last strangely delivered by Pirates, Written by Himself.』
『遭難して他の船員が全滅した中で唯一助かってアメリカ海岸オリノコ河の河口近くの無人島で28年間たったひとりで生き抜いたヨーク生まれの船員ロビンソンクルーソーの生涯とその驚くべき冒険。海賊に発見されるまでの一部始終を彼自身が書き記した』
「トンガの漁民2人、無人島で2カ月生き延びる」というニュース(共同)が。「約2カ月前から行方不明となっていた南太平洋のトンガの漁民2人が小さな無人島で生存していることが分か」ったのだという。「2人は無人島でヤシの実や、キャッサバ(サツマイモに似た植物)を食べ生き延びていた」というが、まあ世の中には半年間も「飲まず食わず」で瞑想に耽っている少年もいるのだから、本人達は死ぬ思いだっただろうけど、世間はそんなにビックリもしない。
それよりも気にかかるのは、「1人の漁民の家族は既に本人の葬儀を済ませていたが、もう1人の漁民の妻は生存を信じて祈り続けていたという。」記述。後者はいいでしょう。「愛の絆」を確かめることが出来て今後の夫婦生活は安泰だ。しかし前者は家へ帰ってみると・・「あら?あんた生きてたの。お葬式代無駄になっちゃったじゃない。もう”本番”のお葬式はやらないからね」と言われては、立つ瀬がない。スネて無人島に戻ってしまうのでないかと心配だ。
『ロビンソンクルーソー』は”実話”だ
無人島漂着と言えば何と言っても『ロビンソンクルーソー漂流記』(原題は”寿限無”のように長いので最後で紹介)。ロビンソンは「無人島」(実際は原住民がいた)で28年間生活したのだから二ヶ月なんて一眠りだ。どうせ作り話じゃないかって?ちゃんとモデルがいたのです。スコットランドの航海長アレキサンダー・セルカーク(Alexander Selkirk) の4年4ヶ月のマサティエラ島(チリの沖合)での体験記をダニエル・デフォーDaniel De Foe(1660-1731)が読んだことが創作のきっかけだった。
そして昨年日本人探検家がマサティエラ島を調査し、セルカーク自身の生活の痕跡を発掘したというから、事実は小説よりも奇なり。
『15少年漂流記』批判
「ロビンソン」よりも日本ではたぶんよく読まれているのがジュール・ヴェルヌ(Jules Verne, 1828 - 1905)の『15少年漂流記』(原題は"Deux Ans de Vacances"「二年間のバカンス」とずいぶんお気楽だが)だろう。
ニュージーランド諸島めぐりに出かけたフランス・イギリス・アメリカの多国籍の15人の少年(少女はいない)たちが無人島に漂着してしまうが、力を合わせて「二年間のバカンス」を生き延びる。彼らが直面した困難は自然だけではない。不思議なことだがこの「無人」島には「悪人」たちが上陸し、少年たちと戦火を交える。ショッキングなことに少年「軍」はこれら「悪人」達を非情にも殺害してしまう(おそらく日本で出回っているのは子供向けにリライトされた翻訳でこの点は削除されていると思う)。「少年法では・・」と考えてしまうのは、「悪人」は無条件で殺せというあの分かりやすい時代を経験していないからだ。
多国籍の「15人」をまとめるのは大変だ。今イラクでの多国籍軍の指揮を取っているのはアメリカ人で、日本を含めて各国軍は「ご無理ごもっとも」と服従しているが、この小説では「指導者」はフランスの少年だ。ヴェルヌがフランス人だから当然だが。
ただ「多国籍軍」と違うのは、大事な問題は「15人」で票決を取った。しかし驚いたことに黒人の少年「モコ」だけは「参政権」を最初から奪われているのだ。冒頭の絵は原書初版に載せられていた「15少年」(でもなぜか「メンバーが足りません!」)の挿絵。一番下の段に善良そうな「モコ」が描かれている。
「モコ」に「参政権」が与えられないのはただ黒人であるからという理由だけ。他の少年たちもそれは自明のことだと思っているし、「モコ」自身も「普通選挙」実施の運動をするわけでもなかった。人種差別は当然の時代だったと言えばそれまでだが、「モコ」は献身的に働いて、物語の最後の最後で悪人たちを撃退する砲弾を炸裂させる、言わば決勝ゴールをあげただけに、恐らくは帰還しても何ら権利を与えられずに(そしてそれを当然のことと受け入れて)生涯を終えたと思うと胸が痛む。フィクションじゃないかと言われるかもしれないが、それならなおさらヴェルヌが無人島に「大人社会の論理」を持ち込むのでなく、子供たちの論理で運営される楽園を描かなかったのかと、モコモコと疑念が沸き上がってくるのだ。
しかしあまりに歴史上の事件を超越的な視点で(というか自分たちの価値観だけで)批判することは慎まなくては。思えば古代の哲人たちはみなこぞって奴隷制の支持者だった。戦争という大量殺戮を熱狂的に全国民が喜んだ時代もあった。
それに、実は今の日本にも「モコ」はいるのだ。「外国人」には参政権が与えられていないのだから。ご存じのように、国会では「永住外国人」に参政権を与えるべきだという議論も出ている。しかし今ネットを見ると、これには反対派が多いようだ。と言うか、公然と”「モコ」にも参政権を”と言うと島流しにあいそうな雰囲気だ。幕末の水戸藩士を思わせる「攘夷」の雰囲気だ。「島流し」やむなし。「無人島」にはサバイバルマニュアルとしてやはり『ロビンソンクルーソー』1冊だけを携行するか。
(註)
別段小生は主義として「開国派」でも「コスモポリタン」でもない。外国人が選挙権を持てば日本が良くなるからというよりも、今の「民意の選択」がそれほど賢いと思えないから、新しい「風」が必要だと思うだけだ。
だから小生はその他の点では「攘夷派」となることもある。例えば駅伝だ。
高校・大學駅伝で”快走”するケニア人「留学生」は何とかならんのか。普通「留学生」というのは日本に何かを学びに来ているはずなのに、ケニア人「留学生」と来たら、「お前ら日本人は”歩いてる”だけだ。本当の”走り”を教えてやる」とばかりに別次元の走りを見せる。これではつまらないし、日本人がコンプレクスを感じて成長の芽を摘まれてしまう。
駅伝をテレビで見る度に、「”留学生”引っ込め!参加を禁止しろ。グローバル化反対!」と叫んでしまう。この時ばかりは水戸藩士も真っ青な「攘夷主義者」なのである。
【付録-ロビンソン物語の正式な書名】
以下のとおりですが、図書館司書やデーターベース設計者を悩ますなが~い書名。10分で覚えられたら知能指数140以上。
『The Life and strange surprising Adventures of Robinson Crusoe, of York, mariner, who Lived Eight-and-twenty years all alone in an uninhabited Isiand on the Coast of America, near the mouth of the great River Oroonque, having been cast on shore by shipwreck, where-in all the men perished but himself. With an Account how he was at last strangely delivered by Pirates, Written by Himself.』
『遭難して他の船員が全滅した中で唯一助かってアメリカ海岸オリノコ河の河口近くの無人島で28年間たったひとりで生き抜いたヨーク生まれの船員ロビンソンクルーソーの生涯とその驚くべき冒険。海賊に発見されるまでの一部始終を彼自身が書き記した』
http://ameblo.jp/uio8iuu/
なんと沢尻エリカがクラブで、ベロンベロンに酔っ払って、ものすごい勢いで体をシェイクして、片乳を放り出しながら踊っていたという(笑)
●沢尻エリカ クラブでベロンベロン片乳出してシェイク!
http://ameblo.jp/uio8iuu/
ほんのさわりだけでなく毎回豊かな蘊蓄を傾けていただいて、勉強になります。
留学生の件、同感です。実力が違い過ぎる。
それに留学生を招ける金持ちの学校は、ズルイと思います。
地方の貧しい学校は勝てなくなるし。
国見が敗退したのも地方の公立校(サッカー推薦枠はないはず)だからかな?