この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『アイダよ、何処へ』-ボスニアの東端の町・スレブレニツァで起こった大虐殺事件の記憶

2021-09-30 13:23:15 | 最近見た映画
         【 2021年9月22日 】   京都シネマ

 旧ユーゴースラビアの国々の間では紛争が絶えない。チトーが存命の頃までは何とか連邦国家の体をなしていたが、元々多民族・多宗教・多言語の人々の寄り集まりの国家では、過去のいきさつや二度の世界大戦などで周囲の国々の領土取り合いの影響もあって、そもそも1つの連邦国家どころか、別々に独立していった後の国内でもパッチワークのようにまだら模様に分布する民族がいがみ合い、周囲の国が自国の同胞民族に呼応して干渉するものだから、国同士でも課題が多く、紛争の種が多かった。

 そのややこしさの最も顕著なのがボスニアである。同地域には約430万人が住んでいたが、そのうち44%がボシュニャク人(ムスリム人)、33%がセルビア人、17%がクロアチア人と異なる民族が混在していた(ウィキペディアによる)。中心都市サラエボのあるボスニア・ヘルツェゴビナの独立に関してもセルビア共和国がボスニア内のセルビア人勢力と呼応してより複雑な状況を作り出していく。そんな中で「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争」(ボスニア内戦 1991年~1995年)が始まる。

      
             【 現在のボスニア・ヘルツェゴビナの地図 】
           【上の地図の薄いクリーム色の部分が『ボスニア・ヘルツェゴビナ』で、
           ムスリム(ボシュニャック人)の多い《ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦
           とセルビア人が主体の《スルプスカ共和国(セルビア共和国)》の2つ
           の国家からなる連邦国家である。ーー周囲は《セルビア共和国》《モンテ
           ネグロ》(セルビアから独立)、《クロアチア》に囲まれているーー実に、
           ややこしい!



 スレブレニツァの町はボシュニャク人が多く、周囲をセルビア人勢力に囲まれた地域で国連軍が保安部隊として駐留していたが、紛争の末期、西隣のセルビア共和国(セルビア人が多数の国)からの圧力もあって、セルビア人部隊が町を包囲する。危険を感じた住民が《保護区》である国連部隊の敷地に避難に押しかけるのだが全員を収容することはできない。

 映画は、そんな背景の元で1995年のスレプレニツァの町の様子を再現する。

 アイダは国連の職員として、英語とセルビア語(その他の言語?)の通訳として、対峙する勢力の調停のために奔走するが、その家族は国連の敷地内に入れず、身の危険が迫る。

   
          【 国連保護施設に集まる群衆 】

 『ルワンダの大虐殺』が起きたのは1994年で、この年の前年のことだ。ルワンダで国連軍は、虐殺を目の前にして何もできなかった。
 この映画でも、現地の国連保護軍の司令官が国連本部に対し支援(空爆)を要請するが、無視されてしまう。PKO、PKFのあり方の難しさを感じてしまう。

 ヤスミラ・ジェバニッチ監督の映画では『サラエボの花』と『サラエボ、希望の街角』を見たが、サラエボ生まれの監督自身がこの映画と同じ運命を背負わされたかもしれないという体験から、ボスニアやセルビアで起こった内戦の傷跡を一貫して追いつづけている。それでも、その将来を見据える視線は暖かい。

 《ルワンダ》もそうであったが、それまでは宗教や民族の違いを乗り越え平和に暮らしていた人々が、何かのきっかけでどうして《お互いいがみ合って闘い合うのか》を問いかけているようである。


        
             【 ヤスミラ・ジェバニッチ監督 】


 《ユーゴースラビア》は不思議な国だ。ずっと昔に見た『パパは、出張中!』がユーゴを舞台にした映画で、その監督が
エミール・クストリッツァであることを最近知って「ああ、そうだったのか!」感慨深いものがあった。エミール・クストリッツァといえば、『フェアウェル、哀しみのスパイ』での印象的な顔が忘れられない。

                      
                       【 エミール・クリストリツァ 】




   『アイダよ、何処へ?』-公式サイト


 

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