『テレビで会えない芸人』－松元ヒロの芸人人生とその素顔を追ったドキュメンタリー映画を見る

　　　　　　　【　２０２２年１月３１日　】　　　　　　京都シネマ

　映画を観てから１週間がたってしまった。まあ、それにしても楽しい映画だった。

　松元ヒロに最初に出会ったのは、いつだったか。2~３年前の「憲法集会」だったろうか？写真で名前と顔だけは知っていたが、こんな楽しく芸達者な人だとは思っていなかった。「次は、いつどこで会えるのかな？」と思っていたところ、この映画の上映予定を知って、コロナの第６波で《蔓延防止》のでた直後に映画館に出向いた。

　　　　　　

　これは、松元ヒロの生まれ故郷である鹿児島のテレビ局が作成した番組を元にした映画だそうである。この映画によれば、以前はテレビに出て活躍していたようであるが、むかしからテレビで漫才やバラエティー番組を観ない私にはそんなことは知らない。それがいつからか、《仕事が減った》からなのか、制約の多い《いいたいことも言えない世界》に嫌気がさして《自分から去った》のかよく分らないが、テレビに出ないから、多くの人はその存在を知らない。

　でも、その芸に１度触れたら忘れることのできない存在だ。

　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　【　出演前に必ず寄るという散髪屋にて　】

　２０年以上も大切にしてきたという持ちネタである『憲法くん』の舞台は圧巻だった。しかし、それだけが松元ヒロの核心ではない。口からテンポよく繰り出される”ワサビノ効いた”風刺ギャグが傑作なのだ。よくぞ、つぎつぎ庶民の心に響くのネタが口から出てくるのかと感心する。立川談志に可愛がられ、永六輔から一目おかれるだけの才能があったのだ。そして才能だけではなく、松元ヒロには《これは譲れない》という信念があったに違いない。

　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　【　立川談志と　】

　ドキュメンタリーは、周りの人との交流や、舞台の表情からは想像できないウラを明かしてくれる。

　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【　これまた傑作な奥さんと　】

　高校時代は、スポーツで名高い鹿児島実業で陸上部に在籍していたそうである。高校駅伝の最終区で区間賞を取ったことがあるというから相当なものである。奥さんとはパントマイムで知り合ったという。ちょっと今の仕事からは想像つかないことばかりである。映画に出てくるこの奥さんと絡んだ話が傑作である。「私が支えてやらなかったら、今のこの人、居ないんだから」というのはまんざら嘘ではなさそうである。毎日、奥さんの握ったおにぎりを持ってひょうひょうと出かける姿を見ていると、どこか温かいものを感じる。

　　　　　
　　　　　　　　　　　　【　さあ、これからも舞台に立とうーいざ出番！　】

　今度はいつどこで会えるのか！　



　　　　『テレビで会えない芸人』－公式サイト