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『プーチンが最も恐れる男・ナワリヌイ』-ドキュメンタリー映画を観る

2022-06-26 10:28:59 | 最近見た映画
  【 2022年6月23日 京都シネマ 】

                  
                  【 『もし殺されるとしたらロシアの人々にどんなメッセージを残すか?』
                                      のインタビューに応じるナワリヌイ 】

 冒頭写真のインタビューに応じるナワリヌイ氏の映像から始まる。

 この映画の構成は、このインタビュー画面と、このドキュメンタリー映画を作ろうと決めた以後のカメラの映像や、それ以前に家族や周囲の人たちによってスマホで撮影された映像を交互に交えて展開されている。

 事件の発端は、2020年8月に起きた、シベリアからモスクワに向かう飛行機内で起きた「ナワリヌイ暗殺未遂事件」だ。緊急着陸して運ばれたロシアの病院では毒物は確認できなかったというのに対し、家族の執拗な要請によって、メルケル首相の協力もあって、ドイツの病院に転送されたが、そこで検出られたのは《ノビチョク》という国家機密級の猛毒物質だった。

 この事件では奇跡的に命を取り留めたが、この事が当時の新聞で報道されたとき、直ぐに浮かんだことは『リトビネンコ暗殺事件』だ。イギリスに亡命していたリトビネンコに何者かが毒を盛ったものだったが、その毒の正体が「ポロニウム」と分った時は、誰もが「ロシアの国家中枢内部の犯行に違いない」と確信したものだし、今回もまたやってくれたかと思った。ポロニウムのような放射性物質は誰もが扱える物ではないし、過去にも後にも「アンナ・ポリトコフスカヤ」や「ベゾルフスキー」の半ば公然たる暗殺を指導してきたプーチンのやりそうなことだと思ったし、今回もそれに違いないと確信に近いものを感じていた。

 映像の後半で、その事件の経過と核心が暴かれて場面は、このドキュメンタリーの真骨頂だ。

 リトビネンコ事件の”教訓”もあって、今回は同じ轍を踏まないよう《形跡の残らない》猛毒物質《ノビチョク》を使用したはずだったが、ちょっとした手違いでボロが出てしまったと言うことだ。

 実行犯をあぶり出していくところの「パソコン」と「巷に氾濫しているデータ」を活用した追跡調査がすごい。「権力に利用されるだけだ」と思っていたモノを、ここまで逆手にとって利用する才能には思わず拍手。『個人でもここまでできるんだ』と感心させられる。

    
           【 電話作戦中のナワリヌイ 】

 ナワリヌイがどのような手段を使って民衆に訴えかけているかを観ると、今の”IT”の進化に追いついて行かないと、この先権力に対等に渡り合えないと感じた。”Youtube”、”twitter”はもちろん、”TikTok”、”Instagram” も ”Skipe”も、何でも有りである。家族もスマホを使ってそれらを活用しているし、周りの支持者もスマホを使いこなしている。
 

 プーチンが如何にナワリヌイを忌み嫌い、恐れていたかは、彼に言及するとき、《その男》とか《今ドイツにいる男》とか言う言葉で表現し、『ナワリヌイ』の名前を《絶対使わない》点で徹底していることが、映像のあちこちで示されていることでよく分る。

 健康を回復し、ロシアに戻るかどうか検討する場面で、ナワリヌイは迷わず「故国に帰る決断」をする。たとえ収監され、場合によっては《消される》事もふくめて。

                     
                            【 帰国の機内のナワリヌイ 】

 映像全体を通してナワリヌイ自身は常に明るく前向きなのである。妻のユリアも素晴らしいし、子供たちも利発で可愛くて、それだけ見たら幸せいっぱいの家族のようである。
 その”家族の幸せ”をおいて、どうしてそんな決断ができるのか、不思議にさえ思う。

 帰国の飛行機は予定の空港には着陸せず、政府が指示した別の空港に変えられる。そこで当然、待っていたのは《ナワリヌイを収監させるため》に差し向けた権力からの使いだった。
  (彼は現在、20年の刑で刑務所に収監されている

 
 『ナワリヌイ-プーチンが最も恐れた男』-公式サイト


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