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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『エルネスト』-チェ・ゲバラと共にボリビア解放闘争に参加し、現地に散った日系ボリビア人の映画

2017-10-24 17:08:14 | 最近見た映画


     【 2017年10月24日 】(この映画を見たのは2週間前だったが、書き上げるのが今日になってしまった)

                                            

 チェ・ゲバラの正式名が「エルネスト・ラファエル・ゲバラ」であることを、この映画で改めて思い出した。それと、キューバ革命の直後、日本を訪れ、広島の原爆ドーム・原爆資料館にも行き、慰霊碑に花を捧げていたことを初めて知った。

                   


この映画に、もう一人の「エルネスト」が登場する。こちらがこの映画の主人公なのだが、彼の名前は「フレディ・前村・ウルタード」。日本人の父親と現地人の母親から生まれた日系2世である。そして二人とも割と裕福な家庭に生まれ、青年時代は貧しい人たちに寄り添う医者を目指した心優しい医学生だった。

 その二人が、どのように出会ってボリビアの解放闘争に参加していくことになったかを描いている。

                            
                    【 16歳の時のフレディ・前村 】            【 17歳の時のゲバラ 】


 ゲバラが医学生の時、友人のアルベルト・ベルナードとバイクで南米大陸縦断旅行に出かける『モーターサイクル・ダイアリーズ』という映画を以前見た。アルゼンチンのブエノス・アイレスから出発して途中ペルーのマチュピチュを訪れるシーンも登場するし、バイクが故障してヒッチハイクで回ったり、いかだで川を下ったりとしたりしてロードムービーとしての楽しさもあるが、そうした中で、原住民の貧しい生活に接したり、チリの銅山労働者の過酷な姿を見たり、、最後はハンセン病の療養所に行きつき、収容者に寄り添った日々を送る。その時の経験が、後のゲバラの解放闘争に駆り立てる原点になったのだと感じさせる映画だった。

                                  

 そのゲバラが、のちにカストロと出会い、キューバ革命を成功させるのだが、『エルネスト』-この映画は、革命後のキューバ使節団の特使として日本にも訪問し、その時非公式に広島を訪れ慰霊碑に花束をささげているが、その場面から始まっている。
 原爆資料館を訪れた時に『君たちは、アメリカにこんなひどい目に遭わされて、どうして怒らないんだ。』といったというのが印象的だった。

 フレディ・前村が登場するのはそのずっと後である。ボリビアから奨学生としてキューバの医学校に在籍して間もない時に【キューバ危機】に遭遇する。その危機も去り復学してしばらく後に、今度は祖国ボリビアで軍事クーデターが起こったことを知る。チュ・ゲバラと出会い、その人間的な振る舞いと情熱に引き付けられ、『エルネスト・メディコ』という名前ももらい、共にボリビアに向かう。


           
      【 キューバ革命成功直後のゲバラ 】                                【「ラ・クブル号」の犠牲者追悼行進に参加するカストロ(左端)とゲバラ 】



 わたしが大学入試を迎える頃は、ちょうど『学園紛争』が華やかりし時で、名高かかりし大学が軒並み「大学入試試験」を取りやめたため、1年待たされて(浪人をして)翌年に京都の私立大学に入学したが、そのキャンパスなどで「マルクス」や「レーニン」とは別に、「ゲバラ」や「マルクーゼ」などといった名前も飛び交い、その声の主は「暴力革命礼賛」の過激派がほとんどだったから、それは《おそろしい人物》くらいにしか感じていなかった。

 その後、様々な知見に触れる中で、彼らが《暴力革命》肯定の血も涙もない恐ろしい人間という単純な見方でとらえられない、もっと別の角度の人間像が見えてきた。

 レーニンや毛沢東やカストロが現役で活躍した時代とは、世界情勢も環境も違う現代において、「武装闘争」や「暴力革命」が有効だとは決して思わないし、肯定するものではないどころか、暴力で人を屈服させるなどということが許さるる訳がないし、暴力で世界が変えられるなどと考えるのは間違いだ。

 しかし、この映画をみて、当時の【その時代・その環境で生きた人間として《出来る限りの選択》ではなかったのだろうか】という感慨に浸るだけのインパクトがあり、共感できるものがあった。


 その一方で、ゲバラがどうしてキューバでの生活を捨てボリビアに向かったのか(ボリビアの前には「コンゴ」にも行ってそこの革命闘争に参加している)、自分ら凡人には理解しがたいものがあると感じる。



 ゲバラに関する映画には『チェ、28歳の革命』と『チェ、39歳の別れの手紙』の姉妹編の映画があったが、特に後編は《辛く過酷》な面だけが目立って見るのが辛かったが、この映画は人間に対する希望が持てる映画だった。

 それと、この映画で「フレディ・前村」を演じたオダギリジョーが特別素晴らしかった。それまでの、どこか《ヌーボーとしただらしない》イメージ(それはそれで味があったが)とは打って変わって、きりりとしまった演技は最高だった。
 こんなにも役作りに打ち込める俳優という仕事は大変であると共に、尊敬に値する素晴らしいものだと感じさせてくれた。


                             
                                   【 コロンビア国立大学のチェ広場 】


 現在のキューバは、暴力革命を海外に押し付けるのではなく、世界の貧しい国々のに対しも、自国にも積極的に先進的医療を提供している。アメリカに長い間【経済封鎖】をされ、今でも中古のクラッシックカーが街を走り回っている国で、どうしてそんなことができるのか?


 『チェ・ゲバラ』や『フェレディ・前村』の精神が脈々と引き継がれているような気がした。




         
       『エルネスト-もう一人のゲバラ』-公式サイト


         『医療先進国-キューバ』を紹介するサイト




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