河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑――後ろ向き

2023年04月01日 | 菜園日誌

里芋を植える予定地に牛フン堆肥をまいた。
肥料としてではなく土壌の改良。土がふかふかになる。
本当なら軽トラック一杯くらいまきたいが、その余裕はない。
そこで、とりあえず15㌃に40㍑を3袋。本来の1/30。
畑を四等分して、毎年順繰りにまいていると、これだけでも結構効き目がある。
まき終わって畑を耕そうと耕運機を出す。エンジンをかける。ところが、しばらくするとプスンと止まる。
何度か繰り返したがやっぱり止まる。昨日は機嫌よく動いていたのに今日は機嫌が悪いようだ。
以前にも同じことがあって、何日か後には動いたので、とりあえず今日は中止。

さてこれからどうしようと思案していると、牛ふんのツーンと鼻につくアンモニア臭。こりゃやっぱり耕さんとアカンわ。
そこで、久々に備中鍬の登場。
備中松山藩(岡山県高梁市)の山田方谷(やまだほうこく)という学者が発明したので備中鍬。
大きく降り下ろして土に刺し、柄を前に倒してテコの原理で土を起こす。日本の農業を大きく発展させた優れ物である。
とはいえ、15mほどの畝が五本。耕運機に慣れた身には少々気がひける。そこへツーンとした臭い!
こりゃたまらんと、意を決して備中を降り下ろす。ああ、久々やなあ・・・と、昔を懐かしみつつ前に進む。
一畝の半分ほど行った所で一休み。後ろを振り返って、はっと気付いた。点々と我が足跡。
「ちゃうちゃう。アカンがな! なにやってんねん。後ろ向きに進まんとアカンやろ!」

普通の鍬(平鍬)にしろ備中鍬にしろ、農作業は後ろ向きに進む。
平鍬は後ろに重心をかけて鍬を引いた拍子に土を乗せ、重心を前に移して土を畝に上げ、また、後ろに重心をかけて進んで行く。
備中鍬は降り下ろして土に刺し、柄を前に倒してテコの原理で土を起こした後に、重心を後ろに移して土を引っ張り広げて後ろに進んで行く。
前に進む、押すより、後ろに引っ張る方が楽なのである。おまけに足跡が残らない。
長らく使っていなかったので、備中鍬の使い方を忘れていたのである。
「なあ、楽になったやろ」と独りごと言いながら後ろ向きに進む。

楽になったとはいえ、さすがに疲れる。二畝ほど耕し、足跡のない畑に感心しながら休憩。
一畝耕し、また休憩。もう一畝耕し、また休憩。
さすがに疲れて、「あとの一畝は明日にしようか」と弱気な独りごと。そこへツーンとあの臭い。
意を決して再び後ろ向きに進む。
半畝耕し、また休憩。「明日は耕運機が動くかも・・・」と、気持ちも後ろ向きになる。そこへツーンとあの臭い。
「よっとゃ、やったろやないかい!」と前向きな気持ちになって後ろ向きに進む。

耕し終えて、どっかりと椅子に座り、お茶を飲む。
「歳をとると前向きに後ろ向いた方が楽かもしれんな」とわけのわからんことを思う。
遠くに大きな桜の樹が見える。
「あの桜の下でビール飲んだら美味いやろな・・・」
そう思って、思い出した。
「去年の春も、ここに座って同じことを思ってたなあ」


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