河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

茶話139 / 涼しい

2024年07月11日 | よもやま話

「命にかかわる暑さ」などと言われると、外出をせずに部屋でじっとしているしかない。
戸を閉め切ってクーラーを利かし、外部と遮断された部屋の中で過ごす。
 炎天を来てクーラーに冷さるる /石塚友二
クーラーのなかった昔は、北と南の縁側の戸を開け放って風通しをして、自然と一体になっていた。
 大の字に寝て涼しさよ淋しさよ /小林一茶

今はクーラーによって受動的に冷やされるだが、昔は積極的に涼しさを求めた。
自然にあるものを利用した簾(すだれ)と葦簀(よしず)で日差しを防いだ。
水の蒸発で熱が奪われるのを利用して道に打ち水をした。
軒先の吊りしのぶや風鈴に、目と耳で涼しさを感じた。
そして、それらを風情として愛でた。
それどころか、花火や舟遊びのように、涼しさを求めることを夏の行事にして、暑さをみんなで楽しんだ。
日本人は、涼しさを皮膚だけではなく五感で感じとる感性をもっていたのだ。

古語の「涼し」は、冷んやりしているという意味よりも、清らかに澄んで、さわやかですがすがしいの意味によく使われる。
そんな感性が失われた現代。
なんとも情けない世になったものよと嘆きつつ、
ガンガンに利いたクーラーの部屋で涼しい顔をしている。

※五雲亭貞秀,貞秀『東都両国ばし夏景色』,藤慶. 国立国会図書館デジタルコレクション 


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