畑では、ずうっと独り。
そこで、寂しさをまぎらわすためにラジオを友達にしている。
50m圏内にいる百姓仲間も、同様にラジオを友達にしている。
南側の仲間なんぞは、ラジオ大阪を大きな音で流しているのでうるさい。
いきおい、毎日放送を聴いている私は音量を上げる。
すると、東側の朝日放送を聴いている仲間も音量を上げる。
風向きによって三つの放送局がガッチャンして、訳がわからなくなる。
静かな田園が、梅田や難波の雑踏のようになる。
あるとき、三人が会した時に、「ラジオの音量を、お互いに下げませんか?」と申し出た。
皆、同じことを思っていたのだろう。
「そやなあ、そないしよか!」
以後、三人とも、自分が聞こえる範囲の音量にするようになった。
すると、不思議なことに、ばらばらだった放送局が一致した。
今は、三つのラジオが一つに共鳴して、ハーモニーを奏でている。
畑には、友であるラジオの向こうに、真の友達がいる。