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クラブ・ミュージックの文化誌

2007年04月03日 | [特集] ダンス音楽 ブックレビュー
野田努 (編)
クラブ・ミュージックの文化誌
―ハウス誕生からレイヴ・カルチャーまで
JICC出版局, 1993





僕は26歳だけど、僕だって自分はもうダンスしには行かないんじゃないかと考えていた。でも僕はいまクラブに行って踊っている。一度でも楽しいということを知れば誰だってそれを忘れないものさ…
-『NME』88年10月22日付


「ダンス・ミュージック」とは単にポピュラー音楽の1ジャンルなのではなく、ポピュラー音楽の枠組みを再定義する重要な存在である。

…という点については既に紹介した『ポピュラー音楽をつくる』でもふれられていたが、本書はそうした事実を人々が認識し始めた時期、言い換えればダンス・ミュージックが「音楽史」化され始めた時期である90年代初頭に書かれたリポート集。

あとがきで編者は次のように述べている。

「"セカンド・サマー・オブ・ラヴ"のような、近年稀にみるユース・カルトを、なぜ多くのメディア人たちは放っておくのであろうか、というのが本書企画の契機となった素朴な疑問である」

80年代末から90年代初頭にかけて、まさに「カルト」として燃え上がった世界的なダンスミュージック熱の真っ最中に、様々なジャンルの目効きがそれぞれの視点から、流行の背景を報告したのが本書だ。

そもそも、ロックやジャズといった他のポピュラー音楽と比べて、一個一個のダンスミュージックというものは賞味期限が短い。サブジャンルやカテゴリーじたい、一過性の流行として消費されていく事が多い。

それだけに、本書の中でもバレアリック・ハウス、アシッド・ジャズ、マンチェスター・ロックなど、今となってはオールド・スクールとなってしまったジャンルについての記述は、とりわけ貴重だ。もちろん単なる懐古ネタとしてではなく、現在のダンス・ミュージックを研究するための基本資料として。

たとえばレイヴ・カルチャーについて報告する三田格の文章は、その後大きく広がっていったトラヴェラーズ/トライヴァル・シーンにリンクする中間報告として重要だ。

グラウンド・ビートの流行を、英国社会の階級問題やUKブラックの対抗文化という視点から解読する水越の文章も、後のドラムンベース・シーンにも通低する音楽社会学的な指摘として参考になる。

文体もトピックも実に様々だが、総じてカジュアルな口調、なおかつ基本的なデータがおさえられており、たいへん読みやすいアンソロジーだ。

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