ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

博物館でシンセ考古学

2011年03月27日 | 音楽
連休を利用して「浜松市楽器博物館」に行ってまいりました。(今日の記事は相当ヲタク度の濃い世界にどっぷりと浸かりますので、電子楽器類に興味のない方はここで読むのを止めて下さい!)

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トロンボーンをはじめ金管楽器に異様な執着を示す息子に、『ぼくと楽器はくぶつかん』なんて絵本を見せてたら、とても食いつきが良かったので、それじゃあ本当の楽器博物館に行ってみようか、と思い立った次第。

そもそも、この1週間ほどTVも震災報道、また原発事故の余波を恐れて疎開し始める友人知人も多く、未曾有の事態に世の中全体がピリピリしている雰囲気。ここで自分まで「バッドなオーラ」を放ち出すようでは息子がかわいそうだ。とにかくちょっと気分転換しようじゃないか。平常心を取り戻そうじゃないか!

というわけで浜松まで新幹線に乗る。(鉄道に興味ない息子、このぐらいの乗車時間が限界だな…)

さっそく楽器博物館に着いてみたが。いやあ…あるわあるわ。欧米、南米、アジア、アフリカと世界中の楽器が、整然と分類され、陳列されている様子が、とにかく圧巻というほかない。




息子も目当ての金管楽器類を眺めて、ひとまず納得したようだが… 当方は別の一角に釘付けとなった。なんと「ビンテージ・シンセ別館」とでも呼ぶべきコーナーが!



MOOG MODULAR

俗に「タンス」と呼ばれる、箱形パッチ式シンセの代表がこれでしょう。モーグのモジュラー型も多数ありますが、この型番は何だろう?

ARP 2600

そしてもう一つの最高峰がこちらアープ。(後のROLAND SHシリーズのパネルの色調って、どことなくこのパネルデザインに似てるよね)

ROLAND SYSTEM700

でかい!

YMOライヴの松武さんに代表される、こういった巨大シンセのコンソールにパッチを抜いたり差したりするツマミを回したりするシンセ奏者の姿は、アーリー80'sのテクノ少年たちを狂喜させたものだ。それは、秘密の研究所で最先端の電子機器を操作する科学者のようにクールで、ジャンボジェット機の操縦席での計器類を座るパイロットのように凛々しく感じられた。いや電子音そのものよりも、ひょうっとしたらビジュアルへの憧れの方が強かったかもしれない。


京王技術研究所 "ドンカマチック"
(1963)


21世紀の今でも「ドンカマ」と言えば、スタジオでレコーディングの時テンポ合わせのため演奏者のヘッドフォンに流すクリック音の代名詞。その語源はここから来ているという、まさに電子音楽/録音史のエポックメイカー!実物を初めて見ました。現在の物価で300万延か…。出せるか?リズムマシンに300万円て…

説明にもあるように、筐体の木目調がレトロで、なんともミッドセンチュリーな雰囲気…


そのコントロールパネル。

「ルンバ」「フォックス・トロット」といった社交ダンスのリズムパターンがプリセットされ、ダンスミュージックの伴奏として使う事を想定していたのがわかる。「ドドンパ」ってのが、また…。

KORG "試作第1号機" (1970)

国産で最初のシンセ試作機だそうで。楽器としてはむしろ電子オルガンのような風貌に見えるね。

KORG "MINI KORG 700" (1973)

後ろにはKORG "8000DV" (1974) も見えますな

KORG "DELTA" (1979)

KORGのコンパクトシンセ。デルタ・シグマ・ラムダとイカした名前で3種類発売された。さらに、後ろの右手に見えるのは、今もファンの多い銘機MS10/20の音源部分だけを製品化したKORG "MS50" (1978)。そして後方左はアナログ・ステップ式シーケンサーのKORG "SQ10" (1978)。でかい図体なのに最大24音のループしか記憶できない! という、今のDTM世代には「ありえねえ!」と驚かれそうな容量。それでも当時は、正確なリズムでシーケンスできる事じたいに熱狂したのさ…

KORG "TRIDENT" (1980)


KORG "MONO/POLY (1981)
KORG "SIGMA" (1979)


ROLAND "JUPITER-4" (1978)

これは学生時代、使った事があるな。電子オルガンみたいな音のプリセット部分と、ある程度自由に音がいじれるシンセ部分が混在してて、バンドでライヴする時のコードワーク用に重宝したものです。

ROLAND "JUPITER-8" (1981)

これも学生時代に借りた事があるけど、死ぬほど重かった記憶が。TR-808と同じLEDつきのカラフルなボタンが採用されてます。パチンと押し込む方式のそれまでのシンセのスイッチと違ってプッ!と触れるだけのこのボタンに、萌えたなー。
そして後ろに見えるのはSHシリーズの初号機、ROLAND "SH-1000" (1973)。ちなみにSHシリーズと言えば、高校生の頃に触ったSH09が当方のシンセ初体験。以後SH2、SH5、SH101と所有してきた、もっとも親しみ深いシリーズなので感慨もひとしお。

デジタル方式になってからの有名シンセも、ちょっとだけありました。
YAMAHA "DX7" (1983) KORG "M1" (1988)


名称不明のKORGシンセ

これは名前も制作年もクレジットされてませんでした。どなたかご存知でしたら、ぜひ御教示下さい。

※ と書いたら、10分ぐらいでツイッターアカウント@pppnatさんから「KORGのクレジット無しのデッカイヤツはシンセ教室用の壁掛けMS-20教師用です。実機がまだ残っているとはw 年代はMS-20と同じぐらいでシンセ通信教育とかあったらしいです。」との連絡が!訊いてみるもんです(笑)他にも記事に間違いや追加情報ありましたら、ぜひ@wonosatoruまで寄せ下さい!

いやー楽しすぎる!中古楽器屋さんで今も見かけるものもたくさんあるけれど、やはりこういうのが一堂に会しているとそれだけで心がワクワクするのです。他にもハモンド、エーストーン、カシオトーンといったオルガン類も展示されてたけど、きりがないので割愛しますが。

できれば全製品、通電していて音が出されると嬉しい。もっと言えば、各メーカーごとの全製品が発売年代順に陳列されていたら、もう悶死するね!どこかの大富豪に、そんな「シンセ博物館」作ってもらえないだろうか!!!

……などと完全に平常心を失って妄想に浸っている父親の手を、しかし「ホラ!行くよ!」と無情に引っ張るのが我が息子ながら冷酷なところだ。彼が目指す先は「体験ルーム」なるスタジオ。



ここでは様々な楽器(とりわけ民族楽器)が自由に体験できるのだ。息子はV-DRUMが気に入って、それだけを延々と何時間も叩き続けていた。このエネルギーを発電か何かに転用できないか?と思ってしまうほどの集中力で。結局、浜松滞在の3日間は毎日ここに通いつめるハメになった…。まあ入館料400円(未就学児無料)で無制限に遊ばせてもらえるんだから、実に安上がりだとは思いましたが。




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3 コメント

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Unknown (カメラ)
2011-03-29 17:03:27
いつも楽しく読ませていただいております。
記事にある、名称不明のKORGシンセは、シンセサイザー教室で先生がお手本に使う「MS-20」のパネル拡大版だったと記憶しております。
そろばん教室で先生がお手本に使う、巨大そろばんみたいなものでしょうか。
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コメントありがとうございます (ヲノサトル)
2011-05-16 15:02:18
情報ありがとうございます。
おっしゃる通りのようですね。
当時はけっこう有名な物だったのでしょうか…(微笑)
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MS-20 (長谷部)
2019-05-06 22:18:27
 はじめまして。
 私は平成も押し詰まる4月29日に念願の浜松市立楽器博物館の訪問を果たせました。たった半日でしたが嬉しくて仕方なかったです。
 娘は本物のリードオルガンの弾き心地が特に気に入ったようですが、私は復元楽器や純正調オルガンなどに瞠目しつつ、やはり電子楽器の数々には笑みがこぼれまくりました。
 で、こちらの記事を拝見したのは、KORG MS-20の謎解きをすべくウェブを検索した結果です。私が見たときは現物に「MS-20」とクレジットがあったのですが「MS-20がこんなに大きい訳ないよなぁ。パネルは確かにMS-20みたいだけど、何かのデモ機かなあ」とモヤモヤとしていましたので、スッキリ解決です。ありがとうございました。
 いやぁしかし、「メーカーごとの全製品が発売年代順に陳列されてい」る「シンセ博物館」。誰か作ってくれると嬉しいですね。さすがに一部は復元品とかモックアップとかになるでしょうけど、音が出ない場合は代表的演奏を著作隣接権などに配慮しつつ聴くことができれば、何日も通うことになりそうです。
 では。
 失礼しました。
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