ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

インサイダー

2007年07月05日 | 映画/映像

インサイダー
(1999 マイケル・マン監督)



タバコ会社の不正を暴いた内部告発者、という実話に基づく映画である。

CBSとかB&Wといった実際の社名がバンバン出てきて、最初観た時は「うわー、大丈夫かなー!?」と驚いた記憶がある。ほら日本の映画やドラマだと、「毎朝新聞」みたいな架空の名前を使うじゃないですか。

ともあれ「冷酷な大企業に一匹狼が挑む」という筋書きの映画は、アメリカ人の心のツボにぴったりくるのか、これまでもたくさん作られてきた。パッと思い出すところでは、自動車会社の不正をジーン・ハックマン演じる弱小弁護士が告発する『訴訟』ってのがありましたね。最近は『エンロン』とか『ザ・コーポレーション』とか、企業の社会責任を問う映画も多い。

日本の現状をみても、食品、薬品、福祉、建築、そして役所…と、最近は毎日のようにあらゆる分野で「会社の悪事」が暴かれている印象がある。

これはしかし、当たり前だけど日本中の会社がいきなり悪事を始めたわけではなくて、昭和の昔から「会社」ってのは利益追求のために何でもする組織だったんでしょう。わかりやすい例が公害。

それでも従業員が「会社=親方」「会社=家族」みたいな幻想にしがみついていられた時代は、「内部告発なんかしたら他の社員のみんなに迷惑がかかる…」っていう「思いやり」で口をつぐんでいたんだろうけど。終身雇用も帰属意識も崩れた現代では、もはやそうした「縛り」が効かなくなったから、隠されていた諸々が噴き出してきてるんだと思う。

映画の話に戻ろう。

本作が上手いのは、そうかそうかタバコ会社の違法行為を内部告発するこの男が「インサイダー」なのだな?と思って観ていると、彼をサポートしていたTVプロデューサーが自分のTV局から圧力を受けるハメになり、彼もまたインサイダーとしての孤独な戦いを開始する…という後半の展開。

うさん臭さと正義感を合わせ持つ心情左翼系の業界人…という役所が、いささか老けて生活の疲れを漂わせたアル・パチーノの存在感にうまくハマッている。

そして、この映画の教訓は「組織に属する人間にとってのリスクヘッジは、組織の外に友人知人ネットワークを広げておくこと」だ。主人公のピンチを最後に救うのは、警察や新聞社など他の組織の「インサイダー」な友人たちなのだから。


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