時 代 を 視 る
WINWIN代表 赤松良子
ニュースレター No.172
新緑の5月はおだやかに過ぎ、暑くなったと思ったら、月が変わり、すぐに梅雨入りである。
この間議論が絶えなかったのは、「集団的自衛権」と「原子力発電」の問題であった。
STAPもおさまったかと思いきや、また吹き出す様子である。
と思っていたら、突如、安倍首相が集団的自衛権の行使をできるよう閣議決定を
今国会中に行うため、与党(自民と公明)間の協議をまとめるよう支持したとの情報が
流れた(6月7日)。これには公明党が唖然として抵抗を示しているが、
どう立ち向かえばよいか確信が持てず困惑の状態のようである。
もともと公明党の主たる支持母体である創価学会は熱心に平和を希求する団体であるのだから
平和憲法の解釈をねじ曲げて空洞化し、集団的自衛権の行使も辞せずというような話しを
持ち出されては、びっくりしてしまうのは当然であろう。
自民党と公明党の協力関係は長い歴史を持っている。自民党は長く政権を維持してきたが、
単一で内閣を組織していた時期ばかりではなかった。1993年夏、55年体制とよばれた
自民党支配が崩壊し、8党プラス1会派連立による非自民細川内閣が成立した時、
公明党は与党の一角を荷っていた。続いて社会党と結んで村山内閣の重要メンバー
となっていたこともある。その後、自民党が政権党に復活したが単独では成り立たず、
公明党との連立を組むことによって、政権を維持するようになって時間が過ぎた。
この間、政権が変わっても軽武装経済第一主義が一貫して政権の柱になっていたことは、
国民が共通して認識しているところだろう。それには、憲法9条が数々の批判や議論に
絶えて揺るがず、厳然と存在してきたことが大きいことは疑問の余地がない。
それゆえ、これを変えようと、現内閣が考え、先ず改正のための条件を容易にしよ
うと、憲法96条の改正を目論んだのだったが、そんなわけにはいかないことはわかり、
改正がどうしても難しいなら、解釈を変えようと画策しているのが現状であろう。
そして、一方で政府の方針としての集団的自衛権の行使容認までなら、閣議決定で、
できると強弁するのだが、そのためには内閣からの反対がゼロでなければならない。
つまり、与党公明党からの反対があったのでは閣議決定が成立しないから、
この際公明党が集団的自衛権行使に反対しないということが必要になってくる。
そのように重大な決定―方向転換には充分な時間をかけての議論が必要な筈であるのに、
首相は今国会中(6月22日まで)に結論を出すよう迫ったというわけである。
さらに、公明党があくまで引き延ばそうとするなら自公連立さえ解消するも辞さない
覚悟だと伝えられている。自民党単独でも衆院の三分の二を占めていること、
野党からもすり寄る勢力が存在していることなどを視野に入れてのことだと言うが、
もしそういうことなら、これを「強者のおごり」と言わずして何と評すればよいのだろうか??
まことに心して「時代を視なければならない」と思う。