WILDnaLIFE :「ワイルドなライフ!!」

米国アイダホ州より英語トレーニングルームがお届けします。 http://www.eigotraining-usa.com

試験監督

2015-04-12 | 日記
12週目終了。今学期も残すところあと1ヶ月だ。

私は2回目(最後)の教育実習も無事に終わり、やれやれ一安心といったところ。ローサー教授も今回は本物の日本人(ここでは貴重な存在)による日本語についての講義を75分間も聞けてご満悦のご様子。自慢のヒゲをヒクヒク痙攣させて(ウソ)喜んでいました。

さて、今週は「古代ローマ」の2回目の試験があった。前回例の「某国の人たち」によるカンニング疑惑があったクラスである。

「試験が始まったらトイレはダメ、ケータイに触っているところを見つかったら即試験中止、監視カメラつきの個室で受けてもらうからそのつもりで。」
ローサー教授も前回の私の報告を受けて事前に厳重注意してくれた。今回は、念のため私は奥さんにも応援で試験監督を頼んだ。
「この女性も日本人で、しかも空手の黒帯だからね。悪いことをしている時、不意に首の後ろに痛みを感じたらユーコだと思ってね。」

この紹介に対するリアクションは「爆笑」かと思いきや、意外と「シーン」。みんな真に受けてビビったのだろうか(代わりに私が爆笑してました)。

試験開始。10分も経たないうちに一人目が提出。いくら選択とマルバツのみとはいえ驚異的な早さ。30分もするとほとんどの生徒が提出していく。

開始45分。70人中残り5人。やっぱり残るのは全員キレイに某国の人たち。ローサー教授が黒板に日本語で何やら書いている。「⚪︎⚪︎人おそい」。これには私も奥さんも爆笑。今度は口頭で「このひとたちは、5時15分(試験終了時刻)までいますか?」。「そう思います。このひとたちは、教授が出て行くのをまっています。」と私。⚪︎⚪︎人たちは唖然。試験管に分からないと思って母国語で堂々と情報交換しようとする彼らのお株を見事に奪った格好だ。

残り5分。試験管が3人もいてはさすがの彼らもどうすることも出来ず、一人、また一人と提出していく。最後に残った一人が面白かった。一時間以上かけているのに答案がほとんど真っ白だったので、「何か書かなくちゃ。選ぶだけんなんだから簡単だろう?特にマルバツなんか、あてずっぽでも半分正解になるんだよ。」といったら。「もう一度このテストを受けたいからあえて今回は書かない。書いてしまうと再受験できなくなる。」と彼。「それは君の勝手だけどもう一度受けられる保証はどこにもないよ。目の前のものに全力を尽くしてみたら?」という私の言葉も虚しく、彼は提出し試験は終わった。

結局その学生の点数は100点中の6点。ちなみにアメリカでは60点未満は評価Fで落第、単位になりません。学生ビザで規定単位を取得できないと即刻ビザ取り上げの上母国に強制送還になります。時にその彼の場合、試験開始時から一番後ろの席に座るなどカンニングする気満々。怪しいと思った奥さんが終始張り付いて監視したほどです(ご愁傷さまでした)。

仲間ネットワークを使って楽に単位が取れそうな授業に集まってくる⚪︎⚪︎人たち。今回は日本人TA(私)とその「空手黒帯の」奥さんの活躍で、彼らの計画は見事にくじかれた事をここに報告します。めでたしめでたし。

2回目の授業

2015-04-05 | 日記
11週目終了。

今週はローサー教授の「言語学入門」でTAとして2回目の授業をする予定。トピックはズバリ「日本語」。

私は日本人なので日本語を客観視するのは難しい。自分の脳みそを顕微鏡で覗くようなものだからである。前回ちょっと触れた「あげる/くれる」の違いも、日本にいると当たり前のことなのでアメリカ人に教える機会がなかったら一生うまく説明できなかったことだろう。言葉を正しく使えることとそれを説明できることは全く別だと痛感した。

ちなみに、1人称「私(たち)」を中心に、その外に2人称「あなた(たち)」さらにその向こうに3人称「その他の人(たち)」を置き、外側に物が移動する場合は「あげる」で、内側に物が移動する場合は「くれる」。3人称同士の場合は「あげる」になる。この説明スゴくないですか?私は感動しながら納得しました(笑)。

今回の授業は日本語の音と字の仕組みについて。これも日本人にとっては当たり前のことなのだが、一応英語と比較しながら説明してみよう。まず音。日本語単語のの音節構造は子音+母音でワンセットになっている(open syllable)。ちなみに英単語は cat のように子音で終わるのが普通だ(closed syllable)。

日本人が英語が聞き取れない一つの理由がここにあって、例えば [t] という子音で単語が終わると、日本人の耳には雑音にしか聞こえない [t] のおかげで「cat」が「キャ(+雑音)」になる。でも字をみると cat とわかるので、『ああ、なんだ、「キャット」ね、』と最後に余計な母音 [o] を入れてしまう。その「キャット」をいくらネイティブ・スピーカーに向かって発音してもわかってもらえないのだ。

次に字。日本語はカタカナ・ひらがなの両方とも音節文字(syllabary)だ。当然だが、音節文字は音節の中にある子音と母音の区別は表せない。ローマ字(alphabet)書きを教わるまでは、例えば「か」の音が [k] と [a] (音素という)に分解できることは知りようがないのだ。

このようなことは逆に、closed syllable で alphabet 書きの英語ネイティブには新鮮に聴こえる。アクセントシステムの違い(英語は stress sccent, 日本語は pitch accent)も手伝って、音の高低 (pitch) を聴く習慣のないアメリカ人には箸(はし)と橋(はし)の区別が全くつかない(ホントです・笑)。彼らは単語のどこかに強く読むところ (stress) を置かないと単語として認識できないので普通に「カラテ」と言えないで「クラーディ」、「カラオケ」が「クリオーキー」になってしまいます。面白いですね。

英語と日本語の対照作業

2015-03-30 | 日記
9日間の春休みが終わった。

私はといえば、どこにも行かずに今学期2本目の論文を書いていた。テーマは「外国語としての日本語」。

英語と日本語は全く関係ない言語なので「比較(compare)」ではなくて「対照(contrast)」することになる。これを「比較言語学」に対して「対照言語学」と言うそうだ。

対照言語学は主に第二言語の教授・習得のため、一方の母国語話者が他方の言語を習得するには何が必要かを浮き彫りにするのに役立つ、双方向的な二言語研究である、と言えば分かってもらえるだろうか。実は始めは私にも通訳・翻訳との違いが分からなかった。

そこでローサー教授に質問してみたところ「通訳・翻訳は技術であって二つの言語が堪能であれば基本的には十分なんだけど、対照言語学は学問なので二言語間で何が同じで何が違うのかを総合的に研究する」んだそうだ。物の本によると、「英語と日本語はかなり違うので対照研究にはうってつけである」とのこと。

そこで私が考えたのは「英語の5文型システムを利用して日本語を分析する」こと。これで一番よくわかるのは主語以降の語順がきれいに正反対になることだ。この語順の違いは、日本人が英語が苦手なことの一つの大きな原因である。

語順以外でも違いがある。例えば日本語の「あげる」「くれる」は英語のネイティブスピーカーには使い分けが難しい。英語では両方「give」になってしまうからだ。皆さんは違いを説明できるだろうか?敬語表現や男女の言葉づかいの違いなども英語にはない特徴のいい例だろう。

きれいな日本語に訳せればそれでよかった戦後しばらくの英語教育とちがって、現代の実用英語においてはスピードが要求される。例えばTOEICでは書いてあることを文末から前に戻って訳していたのでは到底間に合わない。リスニングにおいてはそもそも戻ることが出来ないので即アウトだ。後戻りしない工夫が大切なのである。

アメリカ人に対する日本語教育もさることながら、日本人の英語を単なる受験科目から便利なコミュニケーション・ツールに脱皮させるにには「対照言語学」の果たす役割は大きそうである。






静かな教室

2015-03-15 | 日記
9週目終了。もう春学期も後半に入った。

金曜日は例の講演会でのワークショップ。いつも20人弱の参加者だというのに当日は60人弱の満員御礼。そんなに寺子屋の写真が学生の興味を引いたのだろうか、あるいは日本人そのものが珍しい? と私。

"I'm sorry for the photo. It's very misleading. I don't plan to give any historical accounts on English education in Japan. I will just demonstrate how English grammar is taught in Japan utilizing this opportunity." 「誤解を招くような写真でごめんなさい。今日私がするのは日本における英語教育の歴史の説明ではなくて、現在日本ではどうやって英文法を教えているのかの実演です。」というふうに講演会は始まった。

ステージ1「5つの文型」、ステージ2「文の要素と修飾部分」、ステージ3「形容詞の補語用法」と講演は進む。この間と違って、誰も質問する者がいない。あまりに静かなので50分かけるつもりのところが30分で終わってしまった。

"Oh, we still have good 20 minutes. Let's do stage 4 & 5 then." 「ありゃ~。まだ20分も時間あるね。それじゃ、予定になかったけどステージ4と5もやってしまおうか。」と急きょ予定変更で中級編「3つの準動詞」「助動詞と相当句」も終了。ワンステージ10分という驚異的なスピードだった。

終了後、ダッジョン教授と学部長のトラウィック博士が近寄ってきて大絶賛してくれた。「すごいすごい。アメリカでは小学校高学年で似たようなことはやるけど、ここまで簡潔で論理的な説明はされた覚えがないよ。大学でペーパーを採点してると文法がヘンで理解に苦しむことがよくあるんだけど、そういう連中は君の講義を是非聴いたほうがいいな。」と学部長がいうと、「私たちが普段何気なく使っている言葉がこれほど記号で綺麗に分析できると実演されて改めて驚いたよ。まるで物理学の公式のようだね。機械的分析から実用的アプローチに橋渡ししているところがさらにいい。」とダッジョン教授。教授たちの評判は上々で一安心。

「でも、今日静かだったですよね?50分でステージ5まで終わるなんて驚きですよ」と言うと、「学生たちはあまり関心が無かったみたいだね。英語の構造の分析よりも多少いい加減でもそれを使うことに忙しいんだよ。」だって。じゃあなんで満員御礼?? その時ローサー教授が3つの授業で生徒に「ジュンイチの講演会に出席したものは追加で5点あげるよ」と言っていたのを思い出した。なるほど、そういうことか。ローサー・マジック、恐るべし…。

講演の依頼

2015-03-09 | 日記
8週目終了。

先週の水曜日、ローサー教授(日本語勉強中)が「ジュンイチさーん」と叫びながら満面の笑みで私のオフィスにやってきた(笑)。

"I'm looking for someone who can give a talk for the next department colloquium, so couldn't you do that? I liked your workshop 'five sentence patterns in English' you did for my class the other day very much."「 今、次の人類学部の講演会でしゃべってくれる人を探しているんだけど、やってくれない?この間の英語の5文型の話、とっても面白かったし。」

"If you can, send me a photo and abstract of your talk so I can cook up a flyer out them." 「もしOKだったら、チラシに使うから大体の内容と写真を僕にメールしてね。」と一緒にいた講演会担当のダッジョン教授。

"I think I can." と二つ返事で返事した瞬間、"Thank you! You saved my life!!" とローサー教授。どうやらその日頼まれていたのはこの人で、急用でできなくなってしまったという事らしい。本当にこの人は…。

とうわけで、今週の金曜日、再び英語の5文型の話を今度は人類学を専攻する学生のためにすることになった。後日使う教室を確認にいったところ、ちょうどそこにいたダッジョン教授が "I read your abstract, and I decided to send the flyer to the psychology department, too." 「要約読んだよ。あの内容から判断して、心理学部にもチラシを送ることにした。」とのこと。

心理学部? 私の書いた、"The attendees will be encouraged to pretend not to have the intuition in understanding English but think like 7th graders in Japan whose native language is the most distantly related to English." 「参加者の皆さんには、英語を理解する本能の全くない日本の中学生になったフリをしてもらいます。」というところに反応したのだろうか?英語学部とか教育学部でないのが面白い。

講演のタイトルは "Five Sentence Patterns in English: How Its grammar has been taught in Japan" 「英語の5文型:日本ではどのように英文法が教えられてきたか」。で、一緒に送ったのが上の寺子屋の写真(笑)。奥さんには不評だったが、アメリカ人の友達にはバカウケで「これなら何か勘違いして参加する学生もいるはず」だって。

話をよく聞くと、生徒ばかりか教授たちもほぼ全員参加するとのこと(ヒエー!)しかも心理学部まで…。はたまたどうなることやら。待て次号‼︎