いつのまにか、多臓器不全

普通より元気なオッサンがいきなり多臓器不全!?生死の境をさまよった約2か月間の闘病と、その後。

7月23日(木):とにかく退院したい

2009-10-18 21:15:23 | 一般病棟入院8週目
[Tからの定期メール]

どうやら今週の日曜日に退院することにほぼ決まりみたいです。
約2ヶ月、長かったようでみじかかったです。



[Kばあちゃんからの返信メール]

良かったね。お母さんを中心にMちゃん、T君の懸命の努力がパパを取り戻したと思っています。ばあちゃんあなた達を誇りにおもっています。有難う。Kばあ



[すいかの記録]

 リハビリのときに「もうリハビリも必要ないかもしれませんね。自分ひとりで歩いてますか。」と聞かれ、
「ええ、歩いてます。昨日も外で皆既日食を見ました。」と答える。

「皆既日食!」「皆既日食か!!」リハビリの先生は見逃したようで、残念そうな声を上げる。
ま、仕事をしている人々はこんなものであろう。

 退院してもリハビリと定期検査は続けなければならない。これをどこで診てもらうかであるが、K大病院はやめておく方が良いという。患者数が多く、待ち時間が半端でないのである。これは以前、父がここでお世話になったときに経験済みであり納得がいく。
私は自宅から一番近い病院を希望していたが、先方から受け入れの返事がなかなかなく、しびれを切らせていた。そこで妻と相談し、この際受け入れ先はどこでも構わないからとにかく退院したいと、先生の回診時に伝える。もはや入院を要する病人ではないのである。これは私や家族のみならず先生も同様に考えていたので、それならばと言う事で、とんとんと話が進みだす。

 妻、M来る。先生がやってこられ、土日に退院が決まる。受け入れ先は我々が希望していた病院とのことで言うことなし。紹介状を書いてもらう。また、退院証明書とか、自宅療養診断書などの書類もお願いする。いよいよ入院生活のフィナーレである。



[妻の記録]

やっと退院だ。

7月22日(水):皆既日食

2009-10-17 21:41:36 | 一般病棟入院8週目
[Tからの定期メール]

久しぶりの定期メールです。

腎臓は尿素窒素の値はもう正常で、クレアチニンの値が1.37(正常値0.7~1.3)です。ヘモグロビンの値も8.5と戻りつつあります。

あと食事の事ですがほぼ今までのように食事をしていいらしいです。
ですがタンパク質は少し気にしてくださいと言われました。
あと減塩も少しだけ気にしてくださいとのことです。

体はほぼ回復したのに、退院はまだめどがついていません。というのもあれだけの大病だったので、リハビリをするための病院がなかなかびびって受け入れてくれません。なのでリハビリのための通院する病院が受け入れてくれたと同時に退院というかたちになります。



[すいかの記録]

 ここに来て新聞も読めばテレビも見る。

テレビは今日が皆既日食だと大騒ぎしていた。
曇っていたので良く見えるかどうか分からない。
とりあえず、院内でよく見えるスポットを探しに行く。
方角的に2階の玄関を出たところが良さそうであるが、ボーっと上を見ているおばさんが居る。おばさんの周りを行ったり来たりすると
「見えてますよ、ほら。」と声をかけてくれた。
指差す方を見ても曇って見えない。
目が悪いからかもしれないと思ったそのとき、5分の1くらい欠けている太陽を見つけることができた。
「ああ、見えました。もう欠けていますね。」と答え、
20分ほどその場に居たと思うが、見る見る欠ける訳でもなく疲れて飽きたので病室に引き上げる。
なお、このとき曇っていたのが実は良かったわけで、もし晴天なら、遮光ガラスのようなものを持たずに直接見ることなどできなかったのである。

 病室からも見えると思い、ブラインドを上げるが、ストッパーが悪くて上で止らない。仕方なくブラインドのヒモをずっと持ったまま外を見ているところに、掃除のおばさんがやって来た。
この人ブラインドのヒモで首でもつるのか、と一瞬思ったかどうか分からないが、「どうされました。」と尋ねてきたので、
カクカク然々でブラインドを上げようとしたがうまく行かないと答えると、
やってみましょうと言って、手荒くヒモを引くと見事に止まった。
さすが、掃除のおばさん、コツを知ってはる。
但し、この時は天気が良くなり、まぶしくてあまり見えなかった。
 午後、妻来る。

[妻の記録]

本日、夫の職場に病休の届けを出しに行く。
そのあと病院に行く。
午前中は仕事をしていたが、あまりに忙しくて日食のことをすっかり忘れていた。

「なんか今日は天気が悪いな」と言うと、
ある方を訪問するのに同行していたPTさんが
「日食とちがいますか?」という。

少し恥ずかしかった。

7月21日(火):栄養指導

2009-10-16 21:42:54 | 一般病棟入院8週目
[すいかの記録]

 採血あり。
 栄養指導あり。
栄養指導の先生は、私が意識を取り戻しまだ朦朧としていた頃に、会った人かと期待したが、全然違った。あれはやはり夢だったのだろうと思う。
(意識が戻った直後くらいに、管理栄養士が食事についての意見を聞きにまわって来た、という夢を見たらしい。救命センターの意識がない患者がほとんどのところで、それはありえないが)

それはさておき、栄養指導の要点は塩分とタンパクを制限することであった。
毎朝コーヒーを飲んでも良いという。ビールなどアルコールも飲み過ぎなければよい。梅干も日に1個ぐらいは良いそうだ。これらは、今までの食生活における特記事項と思い念入りに質問した項目である。それらがOKということは今までの食生活で問題ないということだと思う。
 首が痒いというか、ざらざらしているので、夕方、腎臓内科のT先生に首の発疹を見てもらい、かゆみ止め(レスタミン)を処方してもらう。ちょっとはマシみたいである。



[妻の記録]

栄養指導はこちらからお願いしたところ、すでに日程も決まっていた。
できたらもうちょっと早く教えてほしかった。
仕事の休みを動かさないといけなかった。
すでに午後から休むということでハンコを上司にもらったあとだった。

夫は、毎朝薄いコーヒーを何倍も飲むのがいけなかったのか、
など、今までの習慣のなかで、良くないことを見つけようとした。
しかし、そんなものは特にみあたらなかった。
まあ、そりゃそうだと思う。
アレルギーもないのに食習慣で多臓器不全になったら、たまらない。

首の湿疹は、私の実家の母が先生か看護師さんに言ったらしい。
おかしいと思うところは全部きっちり言う。
さすが元保健師。
熱が出たり引いたりというのをとても心配している。
熱はどうか、と頻繁に聞いてくる。


本格的に貧血が改善されてきた。
HBGが8.5になっていた。
クレアチニン値は1.38でもう一息だ。
BUNは15日の検査より既に正常値。


先週はひさびさに人前でしゃべった。
私が学位をいただいた大学でイベントがあって、ちょい出だったが、私自身の社会的なリハビリにちょうどよかった。

しゃべりかけは完ぺきに頭の中が夫のことでいっぱいだったが、しゃべるうちに全く忘れて人に伝えることに熱中した。

私にはどこか、そういうところがある。

7月20日(月):いつ退院?

2009-10-15 20:49:18 | 一般病棟入院8週目
[Tからの定期メール]

久しぶりの定期メールです。
夜遅くにすいません。

今日は初めは少ししんどそうでした。けど歩いたり動いているうちに元気になりました。今日はリハビリのやり方を僕に教えてくれました。明日栄養指導があるらしいです。



[すいかの記録]

 妻、T来る。時間があるのにメモがない。
これはパズルと小説に熱中していたからであろう。
掃除のおばさんが、
「なんか難しい本が置いてあるのにいつもパズルしてますねえ。」
という意味のことをさらりと言う。

「ハハハハ、まあね。」とかわす。
このおばさんは私と同年代で気が置けない。

 そろそろ退院かと思うが、アフターケアの見通しがまだのようである。ここで診てくれたらよいが、通院は待ち時間が長い。予約を入れていても2時間以上待つことがある。急患が多いという事情である。そこで別の病院ということになるが、内科とリハビリが最低条件である。2ヶ所の病院に照会中であるが、
「多臓器不全」にビビっているかも知れない(まさか、そんなことはありえない、冗談、冗談)。



[妻の記録]

単なる通院でいいのに、なかなか通院先が定まらない。
ややこしい。

救命救急センターからの転棟、という難しさを噛みしめる。
まあ、どこもなければ、病院でなくても近所の診療所でもいいと思った。
そのくらいの勢いで行かなくては、いつ退院できるかわからない。

最終の週に決まらなければ、私の方から近くの診療所でお願いし、そちらに紹介状を送ってもらうように手配をお願いしようと思った。
すでに循環器も初診を済ませているし、異変を感じたらK大病院で見てもらえる土台はできている。だから、はっきりいって、近ければどこでもよいのだ。
とにかく、今は早く退院することが重要だ。

家に帰ることが一番のリハビリだ。

7月19日(日):K一家見舞いに来る

2009-10-14 22:26:10 | 一般病棟入院8週目
[すいかの記録]

 K一家、見舞いに来る。お見舞いもらう。Kは東京のSクリニックに勤めており、私が点滴をいっぱいぶら下げて寝ていたときも、この点滴はこういう薬で、と皆に説明してくれていた弟である。もう一人の弟Jとともに、両親の精神的支えになってくれた。ありがとう。私は例によって、夢の話をしたが、ちょっと刺激が強すぎたかもしれない。
 M、Y、あとでT来る。

7月18日(土):心電図異常なし

2009-10-11 22:14:16 | 一般病棟入院8週目
[すいかの記録]

昼前、循環器初診受ける。心電図異常なし。通常、心不全などの疾患があると何らかの痕跡が心電図に残るそうである。先生は、この人本当に多臓器不全だったの?というような目で過去の記録を眺めていたが、けた違いの数値が並んでいるのを見て大いに驚いている。


[妻の記録]

循環器の診察では、心電図、心エコーをみてもらった。
どこも悪くない、と言われた後、救命センターにいた最初のころのカルテを見て、あまりのデータに先生は動揺していたとのこと。
これからも夫のカルテをみる先生はみんなそうやって動揺するのだろう。

救命では心臓か腎臓かどちらかから始まった、という。
腎臓内科では、腎臓が原因ではないから、という。
循環器ではもうこうなったらわからないでしょう、という。


いきなり
体の機能が「糸を切ったように」失われ、
また今度は何事もなかったように、
淡々とそれぞれの機能を取り戻し働いている。


学会で発表のネタにしてくれてもいいし、
写真を撮ってくれてもいい。
何でもいいから、

とにかく誰か
"今後病気が再発しないためにどうしたらいいか教えて"
欲しい。

7月17日(金):うどん

2009-10-10 20:30:08 | 一般病棟入院8週目
[Tの定期メール]

今日も元気でした。どうやら来週の終わりか再来週の頭に退院になりました。転院はしなくていいそうです。



[すいかの記録]

昼、はじめてのうどん、おいしかった。

本格的な回復期がやって来たのか、食べ物のことばかり頭をよぎる。食って寝てちょっと運動して、ぐうたらな生活であるがこの時期には必要不可欠である。トイレも歩いていけるようになってきたし、シャワーもひとりで入る。もちろん歩くときもふらつかないよう注意を払い続けているし、パンツをはくときも気合いを入れて足を上げないとバランスを崩す。これもリハビリですわ。



[妻の記録]

転院は避けられた。

退院することになった。
準備万端整えるのに忙しい。「海の日」があるので、かなり用事ができる。
もうこれ以上休みを取りたくない。
欠勤が増える。

病院にいる間に診断書や証明書などを書いてもらう必要がある。
詰所に持っていく。

来週は少しずついらんものを持って帰るようにしよう。
頭の中が少しずつ退院モードになってきた。



最初にK病院に入院した時、
自分の努力やがんばりでは
どうにもならない力に押し流されるような
深い深い穴に落ち込んでいくような
今まで経験したことのない無力感でいっぱいになっていた。

全てを見なければならない苦しみと
気を失ったり思考が鈍磨したりといった
自分の中の急場の「適応力」に身をゆだねつつも
あきらめるということは一度もせずに済んだのは
子どもたちがいてくれたからだ。

いよいよ退院だ。