泉門池
初夏と 秋に 中学生などが、
修学旅行で湯川の畔 (ほとり) を遠足する。
湯滝の駐車場でバスを降りて、全行程 4㎞ほどの散策の末に赤沼にたどり着く。その最初の見所が、「泉門池」 なのだろうか。
清冽な清流と書きたいところだが、湯川には文字通り温泉の湯が混じっている。なので何かの拍子に、硫黄の匂いが感じられたりする。流れは気に掛けてみれば、白濁している感じもある。それが、湯滝を出てコメツガだか、シラビソの黒い葉の大木の間をすぎる。やがて湯川の東岸から木の橋を渡って、西岸へとうつる。ほどなく疎林の向こうに、休憩用のベンチなどが見えてくる。
他からいらした引率の先生などは、泉門池 (せんもんいけ) と読んだりするが、地元の人は泉門池 (いずみがやど) と呼んでいる。地図とかその他の資料によれば、(いずみやどいけ)とか、その他様々な記載がある。しかし、わが里の関係者に聞けば、みなが泉門池(いずみがやど)と呼んでいた。
此処には、文字通りの鮮烈な清水が、滾々(こんこん)と湧いている。イメージからすると、もっと泉は深くても良さそうな気がする。しかし、湧水池の辺りにある岩などを見れば、苔がびっしりと張っていて、それほど水位は深くないことを証明している。池には倒木も、大きいのが倒れ込んでもいる。つまり、絵のような泉ではない。まあ自然の泉とは、このようなものなのだろう。
今回の撮影行では、此処で野鳥を見ることはなかった。
今のシーズンは、修学旅行の大集団が、いくつも交錯して通り過ぎる。元気な中学生の声が、辺りを席巻することとなる。なので、静寂を味わいたいのならば、明けまずめを狙えばよいのかも。遠景に男体山のシルエット。中景には岸辺の木々を配する。そして、手前には、戦場ヶ原では貴重な湖沼のひとつである、泉門池「いずみがやど」の水面を於きたい。撮影するならば、まずは此の構図は欠かせない。
この近くに小田代ヶ原という、白樺の貴婦人で有名な撮影スポットがある。そこの撮影前の明けまずめに熊と遭遇したことがある。時間帯によっては、月の輪熊と鉢合わせすることもあるので、それなりの対策をとっておかねば。
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「戦場ガ原自然探求路」の道筋の中では、「光徳沼」とならんで貴重な池沼のひとつである。赤沼という所には、昔は沼があったらしい。しかし、40年ほど昔に見た記憶では、もう小さな水たまりが、それらしいイメージをかろうじて示しているだけの事だった。今では国道 120号線の立派な偉容の脇に、ホザキシモツケなどが繁茂して、その水たまりさえも見えなくなった。戦場ヶ原のど真ん中を、1メートル以上も土盛りされて、それが踏み固められている。当然のことだが、湿原を どまんなか で東西に分断している。ならば乾燥化も進む。しかし、観光地の宿命だ。道路は必ず造らねばならない。
気のせいか、泉門池(いずみがやど)の水位も、どんどん浅くなってきているのか。あるいは季節によっては、水位の変位もあるのだろうか。今度は、6月半ばの若葉の頃に訪ねてみよう。
2018 09 06 撮影 辺りの岩などの様子から、前回 秋に訪ねたときより、20センチほど
水かさが増しているような。