松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

枝豆が堆肥になる

2008-11-10 22:55:13 | Weblog
 先週、中国・厦門を視察した。味の素冷凍食品の自社管理農場や冷凍野菜加工工場を見せていただいた。これから、何回かにわたって紹介する。

 まずは枝豆、いや、ごみの山の写真をご覧いただきたい。
 これは、味の素冷凍食品が中国の自社管理農場で栽培収穫し冷凍してあったもの。本来であれば日本に輸出され、家庭やレストラン、居酒屋さんなどでおいしく食べられたはずだった。だが、今年1月の冷凍ギョーザ事件を契機に、中国産というだけで売れ行き激減という事態に陥ってしまった。冷凍され長く倉庫に保管されていたが、時間が経って商品として出せなくなり、これから堆肥になる運命だ。


 枝豆だけでなく、青々としたいんげんも山と積まれていた。これらの野菜は、同社が種子の生産からかかわり自社管理農場で農薬などもしっかりと管理して栽培し、収穫やブランチングなどの加工、冷凍、包装まで完全に把握して、トレーサビリティが確保されている。はっきり言って、国産より品質はよい、と思う。しかし、「中国産は危ない」という報道に踊らされた消費者や流通、外食産業などが拒絶した。在庫はまだあり、さらに堆肥にしなければならない。見せてくれた同社の社員がつぶやいた。「身を切られるような思いだ」。


 中国産にも、当然のことながらピンからキリまで食品がある。日本に入ってくる中国産の食品のかなりの部分は、日本の食品メーカーや商社などが指導して、作ってもらったピンの食品だ。その中に不幸にも、犯罪が仕掛けられた食品が混じってしまった。それが、ギョーザ事件である。また、犯罪品の微量混入を防げなかったのが、(日本国内の)メラミン混入事件である。
 
 思い起こせば、日本でも食品犯罪はあった。70年代の青酸コーラ事件、80年代のグリコ森永事件、90年代の和歌山カレー事件…。そんな時に、外国人から「犯罪が起きたから、日本の食品は怖い。絶対に拒否する」と言われたら、日本人はどう反応しただろう?
 そんなことを考えながら、堆肥になる枝豆を眺めた。

 堆肥にするよりも、生ごみとして処分を中国側に任せた方が、はるかに安上がりだそうだ。だが、まとめて堆肥にして畑に戻したいと同社は言う。
 新聞や週刊誌などでは、未だに中国に詳しいと自称する「識者」が「危ない中国産」を語っている。そのエピソードは概して古い。そして、日本向けの食品の話なのかどうか、不明のままだ。そんないい加減な識者に騙されるな、まじめな日本企業や中国人の取り組みを見ろ、と記者たちに言いたくなる。

 だが、中にはあやしい識者を利用して自分の署名記事をインパクトのある読み物に仕立てている確信犯の全国紙記者もいる。そんなもくろみは行間ににじみ出るから、私はひどく苦い思いを味わうのだ。

<注>私が、メラミン混入事件と書いたのは、あくまでも日本国内で消費される食品において起きたメラミン混入事件です。ご指摘を受けて、(日本国内の)を追加しました。2008年11月13日

「栄養と料理」12月号

2008-11-10 22:09:16 | Weblog
 先々週末からめちゃくちゃに忙しくなって、更新がなかなかできません。すみません。

 今回は、ちょっとお知らせ。変なダイエット話や報道に遭遇しても、忙しかったり、億劫だったりして、「わざわざ自分で調べるなんてこと、しないわよ」という人が多いはず。そんな人にも気軽に読んでもらえて、すんなり理解してもらえる記事、というのを目指して、今年1月から連載をしている。「栄養と料理」という月刊誌の『飽食ニッポン 「食」の安全を読みとく』というコーナー。
 
 12月号が11月8日に出たばかり。書店やスーパーの雑誌棚、時にはコンビニにもあるので、覗いてみてください。
 今回は、事故米穀について取り上げている。12月に出る来年1月号は、朝バナナダイエットについてまとめるべく、現在制作中。

 「栄養と料理」は、女子栄養大学出版部というところが出しており、昭和10年創刊という由緒正しい雑誌。昔は栄養士向けだったが、今は読者には主婦も多いそうだ。
 この雑誌、私が幼い頃の“バイブル”だった。私の母は独身時代、栄養士をしていたので、家に古い「栄養と料理」が何十冊も積まれていたのだ。小学生の頃は、この古い雑誌を引っ張り出してきて、おいしそうな料理を眺めたり、銘菓の写真に付けられた中村 汀女さんの俳句を読んだりして楽しんだ。なんとも渋い小学生ですね。大学生になって自炊を始めた時にも、購読して参考にしながらいろいろな料理を作って自分で勉強した。
 だから、連載依頼をいただいた時には、本当に嬉しかった。私の記事を、私がそうしたように、小学生くらいのちっちゃな女の子が読んで記憶にとどめてくれると嬉しいのだけれど…。