松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

オズの魔法使いとニセ科学の伝道師はいかに聴衆を震え上がらせた か?~Dr. Oz Showウォッチ3

2011-01-20 15:38:40 | Weblog

U.C.DavisのProfessor of Plant Pathology、Pamela Ronald Ph.D.のブログより転載(宗谷敏さん訳、日本語に翻訳してウェブに掲載することについて、Ronald氏の了解を得ている)

 


遺伝子組み換え農作物の話に関しては誰を信頼すべきかとDr. Ozが尋ねます

SOURCE: Tomorrow's Table

DATE: 2010127

私は、聴衆に科学ベースの視点を提供しようとしました。しかし、それは難航しました、なぜなら他のパネリストの1人(Jeffrey Smith、科学的もしくは農業の職業的訓練を欠く、以前の上院議員選挙へのNatural Law Partyからのアイオワ州立候補者)が遺伝子組み換え農産物を食べることが不妊、臓器障害と内分泌撹乱を引き起こすと確信するからです。もちろん、これらの発言の科学的証拠は、ニンジンを見た人には脳腫瘍が出来ますということと同じぐらい薄弱です。

聴衆はショーで提示された情報からそれを探り出せますか? 残念ながらそうは思えません。

私たちが知っているのは、14年間消費されてきてヒトの健康あるいは環境にたった一つの実害の例すらなかった(そして多くの議論の余地がない利益)ということです。

最悪の「擬似科学の伝道師」に反論するために私は最善を尽くしましたが、それは困難でした。私はプロデューサー(蛇足ながらなかなかイケメンでした)に、ゾッとする画像と箇条書きを取り除くように頼みましたが、成功しませんでした。それらを示すことはOz博士の評判を損ねて、彼の視聴者(今やおそらくは震え上がっている-私の義母がすべての「箇条書き部分」をメモするのを想像することができます)に悪影響を与えるであろうと私は論じました。

私はいくつかの科学ベースの、学研的な、非営利の素晴らしいサイト(bioforitifed,org, ucbiotech.org and academicsreview.org)を紹介するチャンスを持っていました。しかし私のすべての具体例(遺伝子組み換えワタ畑での減少した殺虫剤使用、生物多様性の向上、耐病性パパイヤ、ゴールデンライス)は、テレビの放映ではカットされました。プロデューサーがあまりに多くの科学的証拠を、空想的な要素に混ぜることを望まなかったと私は推測します。ショーは、科学者としてまたもや私たちが遺伝子工学についての全般的な不安と、科学と科学者への一般的な不信を退けることができなかったことを実証します。

それでは、私たちはどのようにして一般人が科学的なプロセスを理解して、時間をかけて証明され大いに頼りになる質の高い科学的研究を、単純な断定あるいは確証がないうわさから区別することを学ぶことを手伝うことができますか? これはRaoul(訳者注:Pamelaのご主人)と私が本(訳者注:Ronald, Pamela and Raoul Adamchak, 2008. Tomorrow's table; Organic farming, genetics and the future of food. Oxford University Press. )を書いた理由の1つです。

私たちは非科学者がどのようにして事実と作り話を区別することができるかという記述に1章(訳者注:第6章 Who Can We Trust?)を割きました。利害関係と誤解だらけの疑似科学の実例として、Smithをひと目見てください。遺伝子工学が危険であることを「立証する」ために、Smithは遺伝子組み換えジャガイモをマウスに食べさせた17歳の学生の実験を引用します。参照されたウェブサイトによれば、「・・・最初から平均より少し体重が重かったから、給餌された遺伝子組み換えジャガイモを多く食べた[マウスたち]が、より少ない体重増加を示しました。」

加えるに、「・・・個体間の行動に著しい相違」が観察されましたが、「これらは『主観的』であり、そして定量的ではありませんでした」と少年が認めました。Smithは、この実験は遺伝子組み換え食品が「ヒトの精神」に悪影響を与えるかもしれないことを立証すると論じて、少年は「科学者を恥じ入らせるほど凌駕した」と結論します。

どうやら一般人は、ピアレビューされた研究ではなく、科学的な研修に束縛されない学生によって実施されたこの実験を信用することができるということのようです。Smithは、ティーンエージャーによって行なわれたこの実験が、科学的なプロセスに付き物の厳密な方法に従っていなかったという事実を無視します。

私が調べたところ、少年のマウスを用いた研究に言及し紹介していたのは、あるウェブサイト(訳者注:http://www.i-sis.org.uk/MicePreferNonGM.phpであり、さらにそのウェブサイトはもう一つの別のウェブサイト(もう、なくなっています)を参照して書いていました。それに、少年の研究に関して証拠となるものは、偶然に会った少年の母だけということも判明しました。つまり、少年の母だけが、少年が行ったという実験に関する科学的情報のソース、「源」なのです。Guusjeママは、息子を非常に誇りに思っています…という具合です。

少年の母親との会話のことを科学であると言う人がいるでしょうか? Smithは、科学的なプロセスの基本的理解に欠けるか、あるいは彼がただ気にしていないだけか、あるいはその両方です(あるいはもっと悪意に満ちた何か...)。しかし、彼は気を遣うべきです;なぜならこの手のいつわりは人々を混乱させて、そして恐ろしがらせるだけですから。ほとんどの人々が、自分の息子について、通常母親が最良だと信じるものだということに同意するでしょう。ですから、母親の推薦は、このような場合には明白な利害関係の得失を表します。このような明らかにされない利害関係の得失によって汚された研究は、遺伝子工学についての討論において重大な懸念です。

もし遺伝子組み換え農作物の利点に関するピアレビューされたデータだけが、その主要な関心が公益ではなく私益にある当事者によって供給されたなら、一般人は研究の整合性に疑問を抱く理由を持っているでしょう(これが、非営利のピアレビューされた研究だけを、私が引用しようとする理由でもあります)。同様に、もし農業への遺伝子組み換え技術の使用に対する強いスタンスを持っている人が営利目的のバイオテクノロジー企業もしくはオーガニック産業の従業員であるなら、利害関係の得失が存在するかもしれませんから、このような雇用関係は明らかにされるべきです。

(全面開示:私の研究室におけるすべての研究は、非営利の関係筋によって資金提供されています。Raoulと私の給与はカリフォルニア大学デイビス校と政府補助金から支払われます。私たちは二人とも、バイオテクノロジー企業あるいはオーガニック産業からの支払いを受けていません)


「食の安全・市民ホットライン」とさいたま市保健所に拍手!!

2011-01-14 08:24:21 | Weblog
食の安全にかんする市民の指摘をウェブでどんどん公表して行くという「食の安全・市民ホットライン」について昨年11月11日、「小若順一氏らの薬事法違反(? )を日本消費者連盟が明らかに?」で伝えた。市民団体で不安を煽り、「こんなによい商品がある」と会社で「無添加白だし」を買わせる商法についての指摘だ。

同ホットラインはその後、しっかりと、企業とさいたま市に連絡し、企業はインターネットのウェブサイトを既に作り替えた。そして、さいたま市保健所も昨年12月27日、文書で回答し、その文書が同ホットライン上で公開された(「これまでの安全情報データベース」の中にある「不具合情報」から読める)。

回答文書には、こう書かれている。「一般に食品に対して効能効果を謳う広告は薬事法に違反する行為にあたるため、当該業者には、薬事法の見地から食品に対する広告行為については十分注意するよう指導しました」。また、健康増進法の見地からも、「いわゆる健康食品の誇大広告に該当するため関東信越厚生局の指導の下、指導を行いました」だそうだ。行動に移し、わずか10日間で行政から回答を引き出す。企業の問題のある広告を変えさせる。素晴らしい。見事である。

私は、同ホットラインに協力している団体や専門家等の日頃の活動には賛同できないことが多いし、同ホットラインが「これまでの安全情報データベース」の中で「ご注意下さい」(専門家や協力団体、事務局からのアドバイス)として挙げている項目は、非常に問題が多いと考えている。科学的でない記述や事実誤認が散見される。
しかし、それはそれとして、実際にウェブサイトを変えさせ被害を食い止め、行政の回答文書を引き出したその努力は尊敬したい。滋賀県の業者が販売していた「アレルギー対応大判焼き」についても、業者や滋賀県、地元保健所等に連絡して改善させた。この行動力、見習わなければ。

日和佐信子さんに、毎日新聞のこと、TPPのことを聞いた

2010-12-07 17:04:22 | Weblog

毎日新聞が、日和佐信子さんのTPPにかんするイン

タビュー記事について、訂正を出した。日和佐さんに直接会い経緯を聞いた。
本当はその詳細を、このブログに書くべきなのかもしれないが、それは私にとってあまりにも切ない。悲しい。なぜならば、私も一時期、毎日新聞記者として働いたからだ。それくらい、毎日新聞社のやったことはひどかった。
日和佐さんが言っていないことを掲載し、訂正記事でその部分を削除し、別の文章に差し替えた。言ってもいないことを、その人が言ったと書く。それを、一般社会は“捏造”と呼ぶ。さらに、組織としての対応も非礼きわまりない。単なる訂正記事でお茶を濁し、「お詫び」記事にしていないのだ。日和佐さんは、報道機関内で「訂正」と「お詫び」の重みがどれくらい違うか、御存知なかった。それを悪用して、毎日新聞社は「訂正」にとどめたのではないか。私にはそう思えた。(TPPと「食の安全」問題をリンクさせてはいけない参照)。

だが、日和佐さんから聞いた詳細を書くと、組織のとんでもなさをさらに露呈してしまう。お世話になった古巣にそこまでのことを、私はできない。

重要なのは、日和佐さんが今、TPPについてどのように考えているのかを、大勢の人たちに知ってもらうことだろう。日和佐さんは、訂正された部分だけでなく、ほかの記述についても「真意が伝わらなかった」と嘆く。「結局は、記事の書かれ損だった」と怒る。
だから、私の個人ブログなどあまりにも微力だけれど、日和佐さんの真意を伝える役割を果たしたい。


日和佐信子・雪印メグミルク社外取締役インタビュー

松永:毎日新聞の問題の記事は「TPP是か非か TPP識者に聞く」というシリーズでした。まず、単刀直入におうかがいします。是ですか非ですか?

日和佐:TPPについて良いか悪いかなんて、今はまだなにも言えません。毎日新聞の記者にも同じように問われて、「言えない」と答えたのですが、インタビュー後も2度ほど電話がかかってきて「あえて言うならどちら?」と問われた。その度に、言えませんと答えました。拙速な議論にするのではなく、じっくりと考えたいのです。今は多くの国民、消費者が、私と同じような感覚ではないでしょうか。TPPについて現在出されている情報は、経団連などの「参加を先送りすると世界の成長と繁栄から取り残される」という訴えと、農業団体などの「日本農業が壊滅する」という主張という両極端のものです。どちらも、その信憑性を確かめる術がなく、判断できません。 

松永:どんな情報が必要なのでしょうか?

日和佐:これまで、牛肉やオレンジ、さくらんぼなどが自由化されてきました。その結果、当時日本の農業団体などが主張した通り、日本のみかんや牛肉産業がつぶれてしまったのか? そうでもないように見えます。オレンジ自由化の後、生産者の努力によって多くの種類の柑橘類が出てきて、消費者は多様な種類を食べられるようになりました。牛肉やさくらんぼも、国産と輸入もので特徴が異なり、しっかりと棲み分けができているように見えます。でも、その陰で、輸入の打撃を受け廃業してしまった生産者もいるでしょう。実際にどうだったのか、国民にはわからないのです。したがって、これまでの事実、データをまず明らかにしてほしい。そのうえで、そのデータを基にして、関税撤廃によってなににどのような影響が出るかを詳しくシミュレーションして公表してほしい。それがあってやっと、国民的議論がはじめられるのではないでしょうか。

松永:試算はいろいろと出ていますが…

日和佐:私は、国内での食料生産は一定程度、きちんと確保された方がよい、と考えています。どの程度をどう確保するのか、日本の農業をどのようにして強くしてゆくのか? TPPと共に、こちらもシミュレーションを行い、みんなで考えて議論する必要があるのでは。どんな対策を打ったら、農業活性化につながるのかを考えるには、これまでの政策の検証も必要です。例えば、1994年のウルグアイ・ラウンド農業合意の後、対策としてさまざまな施設が作られましたが、今も活用されているのでしょうか? そのようなことも調べて、切り込んで将来を考えなければ。

松永:食の安全については、どうでしょうか。TPPによって、食の安全が揺らぐと考えている人もいるようですが

日和佐:輸入食品は危険で国内産は安全といった形にはまった言い方がされますし、顔の見える関係などと雰囲気的な言い方もされます。でも、国内で流通している食品は輸入、国産を問わず、同じルールで安全性は守られています。そして私たちの食は輸入食品に大きく依存していまるのです。TPPによって安全性が壊れるとは思っていません。『「住んでいる土地で生産されたものを食べる」というのが人間の自然の営み』だとか、「安易に安価な輸入作物ばかりを口にするのはいかがなものか」などとは、思ってもいませんし、言ってもいません。

松永: TPPの影響について私も、いろいろな人に取材しているのですが、「TPPへの参加は必要、でも国内農業も大事だし」というところで途方に暮れている人が、農業関係者に限らず多いような気がします。

日和佐:食料自給率を問題にする人が多いのですが、単なる数字にこだわっても無駄です。カロリーベースの自給率での議論には、野菜などの自給率の高さを反映させることができません。金額ベースの自給率の検討も必要です。自給率だけでなくさまざまなデータを集めて検証して、どのように農業を支援していったらよいか、落としどころを探らなければなりません。農地にかんする制度を改めて、農業で頑張りたい人が農地をもっと楽に入手できるようにしないと、農業活性化にはつながらないでしょう。一方で、日本はこんなに狭い国なのですから、大規模化による効率化にも限度があります。消費者の望む農産物を生産できているか、ということも考えた方がいいですね。例えば、果物の消費が落ちた、消費者が食べてくれない、と嘆くけれど、核家族化が進んだ今、「こんなに大きくて立派なリンゴを、日本の生産者は作れるんです」と差し出されても、「いやあ、家族が少ないので、食べきれません。結構です」ということになる。逆に、「そんなにおいしくて立派な食品なら、ぜひ欲しい」と海外の方たちが買ってくれる品目も出てくるでしょう。食の問題は複雑です。日本の食を、国内生産者や海外の生産者たちの手も借りながらどう良くして行くか、みんなで考えて行きたいのです。

TPPと「食の安全」問題をリンクさせてはいけない

2010-11-22 02:04:14 | Weblog
 私は、日和佐信子・雪印メグミルク社外取締役を尊敬している。生協で活動し全国消費者団体連絡会事務局長を経て雪印社外取締役へ。現在は、消費者委員会委員でもある。「食の安全」についても十分に科学的に理解されている。消費者委員会でもほかの多くの委員と違って、至極まっとうな発言をされている。そう思っていた。

 だから、実のところショックだ。毎日新聞に18日に掲載されたインタビュー記事「開国是か非か:TPP・識者に聞く 雪印メグミルク社外取締役・日和佐信子氏」。ここでの発言は、筋が通っていない。私は、「記者が都合の良い部分を抜き出してつなぎ合わせた記事で、日和佐さんの主旨を反映していないのではないか」と疑っている。実際のところ、どうなのだろうか?

 現在は記事を読めるけれども、いずれ記事は消えるだろうから、少し抜粋して紹介しておこう。

 大きな見出しは「食の安全、確保を 拙速避け議論尽くして」。
 TPP参加による消費者のメリットとして、「食品価格が全般的に下がる可能性は高い」と指摘しつつ、「だが、目先の価格低下が消費者に本当にメリットなのかは疑問だ」と言う。そして、こう続く。

--具体的には?
◆食の安全・安心の問題だ。農薬を過剰に使った穀物やBSE(牛海綿状脳症)のリスクが残る牛肉といった輸入農産物に過度に依存するのは問題だ。食料安全保障の観点からも食料自給率の向上は重要だ。拙速なTPPへの参加は、国民に良質な食料を安定供給するという国家の義務と矛盾する。

--「TPPに参加すれば、日本農業が壊滅する」と農業団体は反対しています。

◆高級和牛のような一部の農産品はなくならないと思う。一方、輸入品との差別化が難しい農業は低価格競争で衰退するだろう。庶民が安価な国産牛を安心して食べられる機会を減らしかねない。



 そして、「参加の是非は半年や1年程度で結論が出るような軽い話ではない。政府は信頼できる詳細なシミュレーションを国民に提示し、食の安全・安心がきちんと確保できるような対策も含めて、議論を尽くし、慎重に判断すべきだ」と答えている。その後は、消費者が食への意識を変え国内農業への理解を深めることの重要性を述べている。

 最後の方の「消費者の農業に対する意識の変革」への指摘は、私も大賛成。だけど、「食の安全」の話とTPPは無関係だろう。
 
 まず、「農薬を過剰に使った穀物やBSE(牛海綿状脳症)のリスクが残る牛肉といった輸入農産物」が現実にどこにあるのか。農薬はポジティブリスト制で輸入穀物も規制されている。ポストバーベスト農薬を心配する人もいるが、「リスク」という点では言うまでもなく、ADIとの比較が重要であり、ポストハーベスト農薬が使われていても、その穀物(食品)の農薬濃度が残留基準を下回っていれば、まったく問題がない。BSEも食品安全委員会がリスク評価を行ったうえで、輸入が認められている。例えば、米国やカナダの牛については「リスク管理機関から提示された輸出プログラムが遵守されるものと仮定すれば、国産とのリスクの差は非常に小さい」となっている。
 日和佐さんの話は、「輸入食品は安全でない、国産よりも劣る」ということが前提で発言しているように読めるが、それを示す科学的事実はどこにもない。

 それに、もし仮にあるとしても、その対策は食品衛生法に基づく検疫など、別の枠組みできちんと行われるべきものだろう。実際に既に、日本のポジティブリスト制対策を各国の生産者団体などが行っており、基準をクリアするものを日本向けに輸出している。牛肉だって日本向けのリスク管理措置を行ったうえで、日本の要求する「安全性」に見合うものが日本に入れられている。ほかの輸入農畜産物にしても水産物にしても、安全確保措置は講じられている。

 食の安全確保は、関税問題とは関係がない。TPPに参加するしないにかかわらず、別の枠組みできちんと要求すべき事を要求し、達成すべき話だし、既に実際に行われている。経済的な視点での協定の議論に、まったく違う次元の話をリンクさせて語るのは問題だし、そんな論法は国際的には通用しない、と私は思う。

 やっぱり、日和佐さんがこんな稚拙な論法をストレートに展開したとは信じ難い。新聞記者の解釈が入っているのかな? 今度日和佐さんに会った時に聞いてみたい。こういう時は、直接本人に尋ねてみるのが一番なのだ。
 これから、農協などが同じ論法でTPPに反対して、消費者の理解を得ようとするだろう。でも、効果は薄いと思う。少なくとも、日和佐さんのインタビュー記事に対しては、消費者運動をしている人たちからも「どうしちゃったの?」という声が出ている。

<2010年12月2日追記>
毎日新聞12月2日朝刊に、次のような訂正が掲載された。

11月18日朝刊「開国是か非か TPP識者に聞く」で、日和佐信子さんの発言中、「農薬を過剰に使った穀物やBSE(牛海綿状脳症)のリスクが残る牛肉といった輸入農産物に過度に依存するのは問題だ」とあるのは「食品の安全は日本ではルールで守られているので、TPPでそれが壊されるとは考えられない」の誤りでした。

既に、ウェブでは記事が読めないのだが、読んだ人はお分かりだろう。このくだりが訂正されたら、記事全体が瓦解する。非常に奇妙で、読者に対して不誠実な訂正記事だ。やはり推測した通り、取材執筆にかなりの問題があったことがうかがえる。詳細は、日和佐さんに尋ねて後日また書きたい。

小若順一氏らの薬事法違反(? )を日本消費者連盟が明らかに?

2010-11-11 17:15:22 | Weblog
 日本消費者連盟や食品安全・監視委員会(神山美智子・代表、日本消費者連盟内に事務局を置く)などがコア団体となって先月発足した「食の安全・市民ホットライン」。これが、面白いことになっている。

 「食の安全・市民ホットライン」は、消費者に食の安全に関する指摘をウェブ上でどんどん公表して行こうという試みのようだ。「呼びかけ」ではこう説明している。

私たちは、事故情報に限らず、表示偽装、誇大広告なども含めた民間の情報収集機関(食の安全・市民ホットライン)が必要だと考えました。
食の安全・市民ホットラインでは、一般の方からメールやFAXなどで情報を寄せていただき、その情報をデータベース化するとともに、事業者名や商品名を記号化した上で、ホームページに掲載します。また必要があると判断した場合は、事業者への警告、行政への法的措置要求などの行動をとることも予定しています。重大・緊急と判断した場合は、個別企業名、商品名の公表もします。


 一見よさそうに見えるが、それは食品の難しさを知らない人の言い分だろう。食品業界の人ならよく御存知のように、企業に消費者から寄せられるクレームのほとんどは、消費者の勘違いか知識不足によるものだ。そんなものがいちいち公表されるようになったら、企業活動は滞ってしまう。企業に責任のないものまで消費者からの情報としてデータベース化され、企業名まで出されたら、企業だって法廷で争わざるを得ないだろう。

 実際に、「スーパーマーケットで、いつも国産の玉ねぎを山積みしている場所から何も考えずに商品をとりかごに入れて購入し、レシートを見たらアメリカ産だった。不誠実だ」というような情報が載っている。もし、アメリカ産を国産と表示して売っていたら問題だが、そこは分からない。これでは、いちゃもんをつけているにすぎない。

 私の知人の中には「これは、新手の総会屋の手口だね」と言う人までいた。興味深いことに、先月23日に「食の安全・市民ホットライン」運営委員会が開いたシンポジウムで、日本消費者連盟の一人が、次のように発言している。「私たちのやっている活動が、企業ゴロのような、単なる何か追及するだけの団体ではない、そういうことをしらせていくことが重要だと思いました。そのための宣伝の仕方、実際の活動を通してしっかりと証明していくことが大事だと思います」。


 さて、「食の安全・市民ホットライン」はこれから、どのように情報の質を判断し、なにをデータベース化しウェブに掲載して行くのか? 興味津々で見ていたら、驚くべきことが起きた。皆さんからの不具合情報 の11月8日付の情報を見てほしい。

不具合の種類・表示不適/食品(料理)名・無添加白だし/ブランド名・MKテイスト/企業(店)名・MKテイスト(SとKのA)/不具合の内容・「無添加」「ミネラル」の表示と、病気の改善などの表示。このだしを摂取すると躁鬱病が改善するかのような薬事法に抵触しかねない売り場づくりがされている。また、ミネラルが豊富かのような表現も好ましくない。これにより、さらなる健康危害が出る恐れがある。


 この商品は、間違いなくこれだろう。
 このサイトは、「安全すたいるオンラインショップ」で、月刊誌『食品と暮らしの安全』の付録誌『安全すたいる』で扱っている商品の一部を販売している。このオンラインショップのページから、「月刊誌「食品と暮らしの安全」年間購読について、にリンクし、そのページで「食品と暮らしの安全」最新号(2010年11月号)の特集として「蕎麦で躁うつ病が改善
」を紹介し、さらに記事詳細にリンクしてゆく、という仕組み。記事詳細では、次のように紹介している。

蕎麦に海苔をかけ、『無添加白だし』つゆで食べ、蕎麦湯を飲む、
こんな蕎麦食事療法モニターを募集して2ヵ月。
モニターの3人の躁うつ症状がかなりよくなりました。
カルシウムが不足すれば神経過敏に、
マグネシウムが不足すれば神経・精神障害に、
鉄が不足すれば疲れやすくなり、頭痛も起こります。
何も考えずに現代食を食べていると、
主要3ミネラル不足で心身の調子が悪くなる確率は、88%以上。
現代食のミネラル不足によって生じる心身の異常を
「新型栄養失調」と名づけました。


 市民団体で不安を煽り、会社で買わせる。この“つくり”の問題点は、「食の安全・市民ホットライン」が掲載した情報が指摘する通り。
 「安全すたいるオンラインショップ」店主は、「(株)食品と暮らしの安全 代表取締役 小若順一」氏で、小若氏は、月刊誌「食品と暮らしの安全」を発行する「食品と暮らしの安全基金」の代表でもある。実に巧妙な足掛けだ。そして、ここからが興味深いのだが、小若氏の出身は日本消費者連盟である。 

 市民団体「食品と暮らしの安全基金」は、これまでにも「アスペルガー症候群が「『無添加白だし(三合わせ)』(天然ダシ)で劇的に回復する」というような情報を流し、一方で「(株)食品と暮らしの安全」が『無添加白だし(三合わせ)』(天然ダシ)を販売するという悪質な商法を繰り広げてきた。

 小若氏は、昨年、ある地方の消費者団体に招かれ講演した時に、ちまたにある食品の悪口をさんざん言った後に、この商品を出して「こんなにいい」と宣伝したそうだ。消費者団体もさすがに「これは、まずい」と気付き、参加者からも後で文句が出た。その消費者団体は今年、憑き物が落ちたように唐木英明・東大名誉教授や畝山智香子・国立医薬品食品衛生研究所研究員などを招き講演会を開催している。

 でも、官庁はこの商法に手を出せなかった。ところが、消費者が「食の安全・市民ホットライン」に情報を掲載させた。もし、ホットラインが本当に本気なら、消費者がどしどし情報を寄せれば「必要があると判断した場合は、事業者への警告、行政への法的措置要求などの行動をとることも予定しています。重大・緊急と判断した場合は、個別企業名、商品名の公表もします」になるかも。神山美智子さん、本気になって小若商法を追及してください! 十分に重大、緊急です!
 それにしても、日本消費者連盟と小若氏の関連を逆手にとって情報を投稿し掲載させた消費者さん、すごいです。これが、本物の消費者力、かも。

エコナ問題を伝えるのは難しい2~もし私が現役の新聞記者だったら

2010-09-04 01:46:11 | Weblog
 前回、8月26日の食品安全委員会におけるエコナ審議を報道した共同通信に対する疑問を書いた。(エコナ問題を伝えるのは難しい1
 この件については、共同通信のほか、朝日新聞も報道している。「ラットにエコナ成分大量投与、発がん性物質に 花王実験」である。

 こちらの記事は、共同通信とは違い、実験が高用量投与であることに字数を割き、「今回は血中濃度だけを測っており、実際に体内で吸収されるのかどうかは分かっていない」と慎重な書きぶりだ。ラットでのグリシドール検出がハザードであることは十分分かっているが、初知見だから書いておくべきだ、という判断だろうか。見出しはあまり変わらないのだが、読後感は共同通信とは大きく違う。

 ただし、朝日新聞も、カニクイザルの試験については触れていない。予備試験であることに慎重に配慮したのかもしれない。前回触れなかったが、グリシドールの定量法として、花王がまだ研究中の感度の少し高い方法を用いて、花王自身が行っている。責任を問われている企業の自主研究なんて当てにならないから取り上げない、というのも、一見識ではある。

 では、私が新聞記者だったらどうしただろう? 普通は、記事を書く記者と見出しを付ける記者は異なるのだが、大胆に両方考えてみたい。
 まず、記事にしない、という選択はなし。読者が関心を持っていることが大きく動いた時には、審議の途中であろうとリスク評価の前であろうと、早く情報として届けるべきだと判断する。
 そのうえで、見出しは「エコナ成分大量投与 体内で発がん物質に ラット試験で」。
 オリジナリティのある「先読み」を売り物にする科学ライターなら、カニクイザルの予備試験を見出しに持ってくることを検討するが、新聞記者としてはできない。記事の内容は朝日新聞とほぼ同じだが、サルを用いた予備試験でグリシドールが検出されず、種によって違いがある可能性が浮上したことを書き添えたい。まだ分からないことが山ほどあり、リスク評価はこれからであることも明確にしたい。
 でも、デスクがその記事を載せる価値ありと判断し、実際に紙面化されるかどうかは別問題。「どっちつかずなら、そんな原稿載せなくていい」という判断をするデスクもいるだろう。書いた原稿は日の目を見ないかもしれない。
 科学ライターだから報道の批判ができるけれど、実際に自分がその立場であれば、こんなものである。

 実は、科学的な厳密さを追求しようとすると、共同通信、朝日新聞だけでなく、私の見出し、原稿にも大きな問題がある。グリシドール脂肪酸エステルは、エコナ油だけでなく食用油などほかの油脂にも、量は少ないけれども含まれているから、「エコナ成分が発がん物質に変わった」という見出しは誤解を招く。「ラットに、食用油に含まれる成分を大量投与したところ、発がん物質に変化した」というのが、厳密な事実なのだ。
 だが、見出しにはどうしても「エコナ」という言葉を出しておきたい。そうでないと、ニュース価値はなくなる。
 なんとも悩ましいが、こうして、報道はどうしても科学的事実をゆがめて行ってしまう。前回、共同通信を批判した私自身も、事実をゆがめることに加担する一人だ。花王は怒るだろうが、それが報道する側の事情である。

 
 もし私が現役の新聞記者だったら、なんて妙な仮定をして、ぐだぐだと書いてきたのは、エコナに限らず発がん性、発がん物質について伝えるのは極めて難しい、と痛感しているからだ。リスクコミュニケーションの題材としては、極めて難易度が高い。報道する側も理解が深い人ほど悩んでいるはずだ。

 一般市民は、リスクとハザードの区別をしないし、毎日食べる食品に発がん物質が含まれていることも知らない。遺伝毒性のある発がん物質と非遺伝毒性発がん物質を区別した理解も難しい。がんに至るには、体内でさまざまな条件が成立しなければならないことも、まったく知らない。
 そして素朴に、「がんの原因となる食品を知りたい。なるべく食べないようにするから」「がんを予防できる食品を教えて。なるべくたくさん食べるようにするから」と願っている。こういう人たちが欲する情報を届けなければならない。

 私の例を書くと、編集者が望む原稿はやはり、「これを食べるのは避けましょう」とか「こうやってがんを予防しましょう」という内容。だから、とりあえずはこの線で書く。いくら正しくても、独りよがりの解説記事では、そもそも読んでもらえない。
 「こういう食生活をしましょう」となるべく具体的に書きつつ、農薬や食品添加物ではなく普通の食品に発がん物質が含まれていることを説明し、遺伝毒性のことを解説し、摂取量の管理が重要であることを述べたりする。それは容易ではなく、しばしば失敗して、「○○は避けるべきなのか」と誤解を招いたりする。いかに適切に情報を届けたらよいのか、とても悩みながら試行錯誤している。

 だから、なおさら思うのだ。やっぱり今回のエコナ問題での食品安全委員会の情報公開は、あまりにも無造作すぎた、と。
 食安委は、原則としてすべての会合、資料を公開することになっている。資料や議事録の非公開が認められるのは「公開することにより、個人の秘密、企業の知的財産等が開示され特定の者に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれがあるもの」だけだ。会合の非公開は、上記の理由かまたは、「委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」のみだ。

 今回も、「洗いざらい公開」で筋は通っている。だが、繊細な問題をぽんと出してしまった。せめて、審議の中で事務局が説明する時に、傍聴者や報道関係者にも理解できるようにリスク評価の一連のステップ(ハザードの特定、ハザードの特性付け、暴露量の評価、リスクの判定)を簡単に説明し、今回の報告の位置づけを説明するくらいのことはしてもよかったのではないか、と思う。一部分だけをセンセーショナルにとりあげる報道につながりかねないことは、事前に予想がついたはずだ。私は審議を傍聴してはいないのだが、傍聴した人によると、その手の説明はいっさいなかったという。

 ひどい報道は批判されなければならない。当事者の反省が必要。でも、情報の出し方によっては報道も変わるのではないか。報道関係者だって悩んでいる。エコナ問題、発がん物質問題は、難易度が高い。だからこそ、ていねいな解説を求めたい。食品安全委員会だけでなく企業、研究機関にも。そうやって、エコナや発がん物質に関する報道を変えて行ければ、と願う。

エコナ問題を伝えるのは難しい1~共同通信の報道への疑問

2010-09-02 07:49:23 | Weblog
 「エコナ成分、発がん性物質に変化 動物実験で」というタイトル(見出し)の記事を共同通信が8月26日、配信した(47Newsの記事)。エコナに高濃度で含まれるとされるグリシドール脂肪酸エステルが、ラットの体内で発がん物質、グリシドールに変化したという実験結果を、厚労省が食品安全委員会に報告したという。「食安委は今後、人体に影響があるかどうかを審議、最終的な結論を出す」と書かれているが、見出しのインパクトは強い。「やっぱり、エコナを食べたらがんになるんだ」と受け止めた人も多かったかもしれない。


 これは、26日に開かれた食品安全委員会での配布資料と委員による議論を基にした記事らしい。だが、配布資料を読むと、共同通信の記事とは印象がかなり異なる。ヒトでのリスク評価という視点から言えば、「エコナで懸念された発がん性が、ヒトでは問題ないかもしれない可能性が浮上した」というのが、今回のもっとも重要なポイントではないか。
 共同通信の記事は、どうしてもエコナを悪者に仕立て上げたくてごく一部だけを記事にしたように見える。少々解説してみたい。
(第345回食品安全委員会の資料1)

 共同通信の記事は、ラットを用いた実験結果を厚労省が食品安全委員会に報告したと書いており、厚労省が発がん性を認定したような印象を受けるが、正確には花王が厚労省に提出した報告を、厚労省が食品安全委員会に報告したものだ。
 しかも、報告内容はラットの実験だけでなく、カニクイザルも用いた実験と、これらの実験の背景説明としての情報収集という三部構成になっている。

(1) ラットを用いた実験
 ラットにグリシドール脂肪酸エステル(この実験では、グリシドールリノール酸エステル=GEL)、あるいはグリシドール(G)を経口投与し、血中への移行を24時間にわたって調べたもの。
 ただし、ヒトがエコナを食べるときの曝露量とはまったく異なり、約4600倍もの量を投与している。とりあえず、GELとGの挙動を高用量投与で大づかみしてみよう、という実験だ。
 結果は、GEL投与群で血漿中からGが検出された。投与5分後にはGが検出され30分後には最大となり、24時間後には定量下限未満となった。

 Gを血漿中で確認したという実験結果は、これまで「グリシドール脂肪酸エステルが、動物の体内で発がん物質グリシドールになる可能性がある」と言われていたことをラットで実際に確認した、という点で非常に大事だ。世界的に見ても、初知見のようだ。
 だが、エコナのリスク評価、という点では、予想していた代謝反応の一つがラットで実際に確認されたという“第一段階”が済んだだけ。GELの何%がGになっているかは分からず、血中にあるGがどの程度、細胞組織に移行し遺伝毒性を発揮するのかもまったく不明。それに、ラットで確認されても、ヒトではどうかわからない。


(2) カニクイザルとラットを用いた血中移行性と種による代謝の違いを調べる実験
 (1)のラットでの結果をすぐにヒトにもあてはめて検討してよいのか? これまでの脂質代謝研究から、それが無理であることははっきりしている。
 動物が食べた脂質は、舌や胃、膵臓などから出る酵素「リパーゼ」によって加水分解され、脂肪酸を切り離す。これらの脂肪酸は、胃や小腸などから吸収され、小腸上皮細胞でまたグリセロールと結合し、リンパ系から血液循環系へと移行する。GELは脂溶性なので、ラットに投与した場合に口腔や消化管内でリパーゼによってリノール酸がはずれる代謝が起こり、水溶性であるGとなってそのまま素早く吸収され血中へと移行したと推測される。
 だが、リパーゼの口腔や消化管内での活性は動物によってかなり異なり、脂質代謝に大きく影響する。そのため、花王は、カニクイザルで試験してみた。(1)のラットの試験は、専門家がバリデーションを行っている。だが、この(2)の試験はまだ、花王の自主検討による予備試験、という位置づけだ。

 今回は、(1)の実験に比べて投与量が下げられた。カニクイザルにGELあるいはGを、それぞれヒト曝露量の100倍と300倍経口投与して、投与後の血漿中のG濃度を調べた。また、ヒト曝露量の1~125倍のGELやGをラットに投与する実験も行った。すると、実に興味深い結果となった。
 カニクイザルにGELを、ヒトの曝露量の100倍与えても、300倍与えても、その後血漿中からGを検出できなかったのだ。同じことをラットに行った実験では、25倍投与、125倍投与で、血漿中からGを検出している。つまり、ラットの体内ではGELがGになるが、カニクイザルの体内ではGになっていない可能性が示された。
 ヒトがラットよりもカニクイザルに近いことは言うまでもない。GELの代謝、血中移行性が種によって違い、もしかすると、ヒトではラットのようにGELがGになっていない可能性が出てきた。
 では、(1)(2)のこの両方の実験をどう考えるか? 推論の材料となるのが(3)の文献収集である。

(3)舌リパーゼに関する情報収集
 文献によれば、ラット、マウスなどのげっ歯類は、舌からリパーゼを分泌しており、舌リパーゼ活性が高い。一方、ウサギやブタ、ヒヒなどでは酵素活性がほとんど認められない。

 食品安全委員会の配布資料には書かれていないことだが補足すると、霊長類は舌リパーゼ活性がほとんどないかわりに胃リパーゼ活性が高く、油脂は胃の中で加水分解が進む。ただし、胃内での消化の割合は10~30%程度とみられており、残りは十二指腸に進み膵臓から分泌された膵リパーゼによって分解され消化されることになる。=「DAGの機能と栄養」(幸書房)より。

 こうした予備知識を持って、食品安全委員会の配布資料に掲載されている(1)(2)のグラフを見てほしい。(1)では、Gを投与した群で、すぐに血中からGが高濃度で検出された後、一気に下がり投与後8時間で、もうほとんど検出されなくなっている。GELを投与した場合のGの検出の推移は、G投与に比べてピークが出る時間に15分の遅れがあるものの、ほぼ同じような経過をたどっている。このことから、GELの分解が投与直後に一気に進んで、あとはG投与と同じ挙動を示した可能性が高い。つまり、ラットでは、舌リパーゼによってGELからGへの分解が急速に進んだのではないか、と考えられるのだ。
 一方、カニクイザルでは、舌リパーゼ活性はほとんどない。そのため、GELはそのまま胃へと進んだのではないか。

 だが、これだけでは、カニクイザルの血中からGが検出されない理由が分からない。そこで、さらに検討されるのが胃中のpHだ。実は、GELやGはエポキシ環と呼ばれるC二つとOが結合した環があるのが特徴。このエポキシ環はpHが低いと壊れやすことが、ほかのさまざまな研究からわかっている。
 ラットの胃内はpH2.5~6.0。一方、霊長類は2前後が普通。カニクイザルの実験では、胃中でエポキシ環が壊れ、GEL、G共に分解されてしまった可能性がある。
 配布資料では、エポキシ環が壊れる可能性にまで言及されているわけではないのだが、深読みするとこのようなストーリー、“仮説”が見えてくる。

 ラットの試験は、専門家のバリデーションを受けたもの。一方、(2)のカニクイザルとの比較試験は花王による予備的なものであり、結果を評価する場合の信頼性、中立性は大きく異なる。だが、私には花王がいい加減な実験を行うとは思えず、バリデーションを受けた本試験で結論がひっくり返るとは考えにくい。今後、エコナのリスク評価は、この種間差の検討が重要項目となるのは間違いない、と思う。

 以上のことをまとめると、
i) ラットで、GELがGに変換し血中に移行していることが確認された
ii) カニクイザルを用いた予備試験では、GELを投与してもGは血中から検出されず、GELの吸収、代謝に大きな種間差があることが示唆された

ということは、言える。
 でも、まだ分からないことが多すぎる。GELの体内動態(吸収、代謝、排泄等)を調べるには、GELやGを放射性同位元素でラベルして調べるなど、さまざまな角度からの検討が必要だ。もし、胃でエポキシ環が壊れる可能性があるのなら、胃内pHは一緒に食べる食物によっても変動しpHが上昇する時間が長くなることも考慮に入れる必要があるだろう。
 それに、これらの研究において重要なのはグリシドールの定量なのだが、グリシドールの感度のよい定量法はまだ確立されていない。より優れた定量法の確立は急務だ。
 花王が求められている資料はこのページにあるように多岐にわたっている。これらを総合して検討するのがリスク評価である。

 改めて、共同通信の記事を読んでみると、やはりあまりにも不十分で、読者に不誠実な記事ではないか、と思えてならない。
 「ラットで、GELがGに変換されているのがわかった」というのは、リスク評価のための検討項目のごく一部であり、ハザードが確認されたに過ぎない。しかも、今後のリスク評価はこのハザードの単純な適用では済まないことが、予備試験で既に示されている。にもかかわらず、一般市民にハザードのみを伝えているのだ。
 エコナがまだ販売されているならまだしも、もう販売もされていない。そういう状況で、ハザードのみを伝える意図が、私にはよくわからない。
 
 エコナ報道は、最初からこの手の記事が多かったが、またしても、である。この記事で消費者が不安に陥ったり、消費者団体が騒ぎだしたりしないように、と願うしかない。
 一方で、今回の食品安全委員会での情報提供と議論は、どういう報道をしたらよいのか、悩ましいところがある。共同通信の記事はひどすぎるが、私が新聞記者だったとしても非常に迷ったはずだ。専門家のバリデーションを受けた試験結果と、自主的な予備試験の結果を、どう判断しどこまで書いたら良いとするのか? そのことを次回、考えてみたい(つづく)

消費者委員会の暗闘、新聞誤報~どうなる? 遺伝子組換えパパイヤ

2010-06-01 09:36:03 | Weblog
 昨年、食品安全委員会で安全性評価を終えた遺伝子組換えパパイヤが、次のステップとして消費者委員会食品表示部会での審議に移り先週24日、原案通り承認された。だが、部会の2回にわたる議論では、組換えに反対する日本消費者連盟から出ている委員らによってさまざまな疑義が提起され、スムーズな審議とは言えなかったようだ。

 今回の審議の影響は、パパイヤに留まらないのかもしれない。反対派は、組換えの表示制度見直しに向けて、2回の審議でさまざまな布石を打った。今後、表示制度を厳しくすることで組換え作物の流通を事実上、困難にしようと考えているように見える。
 残念ながら、一部の新聞は誤報したし、反対派の布石を読めていない。私も傍聴できず、傍聴した消費生活コンサルタントの森田満樹さんから審議の模様を聞き、理解できた。森田さんが内容をまとめてくれたので、このブログでご紹介したい。
 森田さんは、食品企業勤務、出版社勤務などを経て消費生活コンサルタントとして活躍し、不二家の信頼回復対策会議の委員も務めた人。日経BPのFood Scienceで連載もしていた。しかし、Food Scienceはなくなってしまったので、とりあえず私のブログで掲載させてもらう。
 遺伝子組換えの表示見直しは、組換え嫌いの多い民主党が政権をとり、社民党党首が消費者や食品安全などを担当する内閣府特命担当大臣となったことと密接に関係していた。だが、後者は内閣を去り、内閣自体もぐらぐらだ。そんな状況下で、森田さんは組換えパパイヤを巡る動きをどう読むか?

…………以下、森田さん執筆…………

 内閣府の消費者委員会食品表示部会第2回会合が24日開催され、懸案だった「遺伝子組み換えパパイヤ及びパパイヤ加工品の表示義務化」について原案通り承認された。これまでの食品表示部会の議論を聞いていると、表示から外れて安全性の話になったり、一体どうなるかと思っていたが、ひとまず部会は通った。

しかしすぐに流通されるわけではない。今後は、厚生労働省と農林水産省の大臣宛の協議を経た手続きの後、一般からの意見を求めるパブリックコメント及びWTO通報のステップに進む。その結果を盛り込んだ案を再び食品表示部会で確認、さらに消費者委員会の議論を経て消費者庁に返され、そこで表示基準が告示されることとなる。一部報道で「パパイヤ遺伝子組み換え輸入品、夏にも解禁」とあるが、WTO通報だけで60日、前後30日かかることを考えても、夏はとても無理。早くても秋、冬にずれ込むのではないか。

遺伝子組み換えパパイヤは、パパイヤに壊滅的被害をもたらすパパイヤリングスポットウィルスに抵抗性を持たせたもので、米国FDAによって1997年に認可され、ハワイでは広く商業栽培されている。農林水産省のホームページ(遺伝子組換えに関する技術サイトは現在休止中だが)によれば、ハワイのパパイヤは2009年の時点で77%が遺伝子組み換え体とされている。

ハワイで栽培されている遺伝子組み換えパパイヤは、かねてよりハワイパパイヤ産業協会が安全性評価の申請を行っており、2009年7月、食品安全委員会によってリスク評価がようやく終了し、安全性が確認された。しかし、未だに「審査継続中の遺伝子組換え食品と添加物」に入ったままである。日本で食品として許可されるためには、表示の問題を含めて消費者庁、厚生労働省、農林水産省で検討が行われ、表示基準が定められ、厚生労働省で告示され、そこで初めて流通が認められる。つまり、表示のルールを決めなくては始まらない。

これまでは、遺伝子組み換え食品の安全性評価が終了したら、表示の基本ルールに則って淡々と厚生労働省と農林水産省で検討され表示基準が定められ、流通が許可されていた。しかし、今回は様子が違う。表示を決める段階で、法律は全て消費者庁に移管されたのだ。
消費者委員会の食品表示部会が発足したのは2010年3月。消費者庁発足から半年たってようやく遺伝子組み換えパパイヤの表示について審議がスタートしたわけだが、食品表示部会第1回の議論では「ここで安全性の議論もすべき」「パパイヤだけ別のルールをつくる」といった意見が出て、まとまらなかった。その時点では、検討するためのデータが少なかったこともあり、議論は次回以降となってしまった。

 こうして迎えたのが、24日に開催された第2回食品表示部会である。大雑把にまとめると論点は5つ。
① 消費者委員会では、食品安全委員会で既に評価が終了した安全性について議論の範疇とするか
② 生の果物丸ごとが初めて流通する初めてのケースとなるため、販売形態を考慮すべきか
③ パパイヤ加工品の中でDNAが検出できなかったものがあるが、どう考えるか。検出できないものでもIPハンドリングで検証が可能ということで表示義務化を課すのであれば、そのルールをどうするか。
④ 不分別表示が増えれば表示の意味がないので、今回のパパイヤをきっかけに不分別表示をなくすべき(=不分別管理を認めない)ではないか
⑤ 遺伝子組み換えパパイヤの表示義務化について、既にある日本の表示制度を前提とせずに、別個のルールで表示基準を定めるべきか
このうち、②以外は、遺伝子組み換えパパイヤの表示の議論の範疇を超えて、これから始まる遺伝子組み換え食品の表示の見直しに関わる根本的な問題に関わってくる。パパイヤの範疇を超えて、あえてこの問題に踏み込んでくる委員がいる。

それぞれの論点に対して、結論は
① 消費者委員会では安全性は議論しない
② 遺伝子組み換えパパイヤだからといって個別包装を義務付けることはない。関連事業者の指導を行って、周知徹底を図る。
③ パパイヤ加工品については今後検出方法を精査していき、パパイヤ加工品全てを義務化対象としていく。検出できなくても、IPハンドリングで違反が分かれば指導対象となる
④ 不分別表示をなくす、ことはない
⑤ パパイヤだけ別に考える、ことはない
となった。結論から言えば、これまで適用されてきた遺伝子組み換え表示ルールに則って原案どおり意見がまとめられたことになる。つまり、生のパパイヤも加工品も、遺伝子組み換えのものは「遺伝子組み換え」、IPハンドリングされていなければ「遺伝子組み換え不分別」とする表示を義務付ける、ということだ。

まるごと生で食べても安全、人の健康を損なうおそれはないと判断された組換えパパイヤだ。今回、生の青果物が初めて流通するということは論点にはなるが、パパイヤの表示だけを特別扱いするということは、これまでのルールからは考えられない。それがこれだけ論点が出て、しかも1回目は差し戻し、第2回目の議論は1時間半ちかく延々と続き、結局は座長が「原案どおり」とまとめることになった。なんでこんなに揉めるのか。

理由は二つ。一つは、消費者委員会だから、である。今回の部会の委員には、日本消費者連盟の山浦事務局長が委員となっている。松永さんも触れておられるように、日消連は農林水産技術会議が作成して小中高に配布した遺伝子組み換え農作物に関するリーフレットの回収を求めて抗議文を出したところである。山浦事務局長は、第1回目の会議で「もうちょっと慎重に、消費者委員会ですから、食品安全委員会の安全性評価の結論ありきではなく、安全性についても考えるべき」と発言している。第2回目では、さすがに冒頭で部会長や他の委員から「ここでは食品安全を議論する専門的な立場にはないから、表示の話のみ」と釘を刺されていたが、それでも「消費者委員会では、食品安全行政を監視していくという役割を果たしていきたい」と述べている。

もう一つの理由は遺伝子組み換え食品の表示ルールにそもそも問題があって、今年度後半から表示全体の見直しが始まることになっていることにある。今の表示制度は、遺伝子組み換え農産物及び組み換えられたDNA等が検出できる加工食品について「遺伝子組み換え」または「遺伝子組み換え不分別」の表示を義務付けることが原則。しかし、私たちが目にするのは、任意表示である「遺伝子組み換えでない」の表示ばかり。分別生産流通管理をしている場合は、この表示をつけることが可能となっているため、現在、表示が義務付けられている32食品群についてはほとんどが「遺伝子組み換えでない」表示が付されているのだ。一方、32食品群以外の加工油や醤油には、不分別原料が用いられても、DNA等が検出できないため表示対象ではなく、何の表示もされていない。これでは選べない。実際に遺伝子組み換え原材料の食品を口にしているという現実を、消費者は知ることができない。遺伝子組み換え技術の受容が進まない理由もここにあるのではないか。

しかし、そもそもの表示ルールの問題と、今回のパパイヤ表示の議論とは別である。パパイヤの表示をこれまでの表示ルールを適用せずに独自のルールを定めることはできない。しかし、今回の表示部会の議論では、今年度後半から始まる表示制度の前哨戦として位置付けようと、あえて論点を拡大して議論しようとする委員がいる。当日の議事概要は長くなるので、興味がある方は、次回以降お読み頂きたい。
遺伝子組み換え食品の表示見直しの議論は、もう始まっているのである。

……ここまで、森田さん執筆………………

消費者庁がまだ議事録を公表していないので、森田さんが記録した議事録も、前編後編に分けて掲載する。
また、消費者委員会食品表示部会の会議資料等はこちら

遺伝子組換えパパイヤの表示審議・議事概要前編(5月24日開催)

2010-06-01 09:35:19 | Weblog
2010年5月24日消費者委員会食品表示部会(第2回)
議題「遺伝子組み換えパパイヤ及びパパイヤ加工品の表示義務化について」に関する議事概要

(最初に齋藤審議官より挨拶後、各委員挨拶、消費者委員会事務局より配布資料の確認)
○ 部会として安全性についての議論を行うかどうかについて確認

田島部会長)議事に入る前に、前回の第一回部会において委員から安全性の話が出たが、消費者委員会設置の経緯からすると、ここでは食品衛生法、JAS法に基づく表示を審議する場であって安全性評価の場ではない。食品安全委員会で、安全性の話はすることになっていて、ここでは表示の話となっているのでご承知頂きたい。また、山浦委員から第一回部会でご指摘のあった安全性評価についてだが、本日、山浦委員から意見書が出ていて、委員のみの机上配布で出している。2ページのもので、前半のGMの安全性については遺伝子組み換え食品の安全性評価に関わることである。食品安全委員会の専門調査会の委員でもある手島委員から、まずご発言頂きたい。

手島委員)部会長よりご指名があったので、一言申し上げたい。今日の山浦委員から配布された意見書を拝見していたが、そこで参考文献が二つ挙げられている。参考文献の1については、既に今年2月8日の食品安全委員会専門調査会において、この論文については議論をしていて、特に人の健康に悪影響を及ぼす新たな所見は無いということで、その後、食品安全委員会に報告した。これと同じような意見はEFSA、オーストラリア・ニュージーランドの食品安全庁でも同様の報告であった。参考文献2については去年の5月にアメリカの環境医学会(AAEM)のプレスリリースに関するものだが、こちらは遺伝子組み換え食品に対するゼネラルな意見で、個別の系統の意見ではない。個別の系統については検討内容を個別に食品安全委員会にで、議論するものである。

田島委員)また、意見書2のコメの表示については、これから食品安全委員会事務局と消費者庁と協議して、議論したい。急な話なので本日の議題には挙げない。

山浦委員)参考文献1については、食品安全委員会で安全性評価が行われていることはもちろん承知している。そのうえで、消費者委員会で慎重な議論をすべきということで意見を出させてもらった。2月の専門調査会の議論ももちろん知っているが、この話は食品安全委員会自らが対照実験を行って、検討したという結論ではなくそういう類のものではない。食品安全委員会で検討が終わったからパーフェクトというわけではない。
2番目の文献は1995年から2008年までの13の研究成果をもとに、患者に対して遺伝子組み換えを避けるべき、表示も必要だと医学界の専門家が指摘しているものである。
米国の医学界の専門家が言っているのだから、これについても自ら追試試験、対象試験をしなくてはならない。ここでも表示の義務化があげられているが、AAEMでは安全性と表示の話と一緒にしている。今、ここでは分業体制で、安全性は食品安全委員会でやったから、ここでは表示だけでいいんだということだが、食品安全委員会で見直しを行う視点があるべきだということで、よろしくお願いしたい。ぜひ消費者の選択権の確保を進めたい。現行の米の表示の方法、矛盾の問題も是非検討していきたい。

田島委員)あくまでもここは表示の審議をする場。安全委員会のご判断にのっとって、表示だけを議論する。

鬼武委員)ここで時間を取るつもりはないが、大事なことなので話す。ここの部会の責任義務が決まっていて、仮に食品安全委員会が間違っているということでも、我々は専門的な立場でもないし、それをいう必要はない。意見があるのなら、食品安全委員会でリスク評価が終わった段階で、食品安全委員会に対して個別の疑義を出すなり、解決するべき。国際的で重要なテーマとしてあがったら、しょうがないが、範囲義務については間違いが無いようにしたい。

森委員)全く同じ意見。安全性についてはやるべきではない。役割分断を明確にしたうえでやっていきたい。

山浦委員)リスク分析、リスク管理については、相対的に吟味するという勧告する役割が、消費者委員会にはある。座長は、分業体制であって食品安全は射程ではないと強調したが、こういう視点で食品安全行政を監視していくという役割を果たしていきたい。

田島委員)上に親委員会があって、消費者委員会があるので、消費者委員会でやってもらったらいい。

○ パパイヤの表示について、遺伝子検出ができない加工品の取り扱い及び表示方法について

消費者庁・食品表示課の相本課長より遺伝子組み換えパパイヤについて、手元資料を説明
資料1-1パパイヤの生産量
1-2パパイヤの流通実態
1-3ハワイにおける分別管理の状況
1-4パパイヤ加工品における遺伝子検出法の検討について
1-5パパイヤの遺伝子組み換え表示について
1-6遺伝子組み換えパパイヤのこれまでの経緯
1-7義務化表示の原案(食品衛生法とJAS法)
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/100524/shiryou.html

山根委員)質問は二つ。1-4の資料でパパイヤ加工品のDNAが検出されないものについて、これからどういう判断ができるのか、説明してほしい2点目、1-1資料でハワイとフィリピン産の価格はなぜこんなに違うのか。

相本食品表示課長)2番目は品質が価格に反映しているのだろう。1番目の質問について、加工品については一部でDNAが検出されていないものがある。これらの加工品はDNAが検出できないほどではなく、おそらく糖度との競合でDNAが検出されていないだけであり、DNAの確認方法を今後改善していく。これらの加工品全てにおいて、表示を義務付けると基本的には考えている。

山本委員)糖度の関係でうまく分析できないというが、実際には厚生労働省でOKといえば、もう流通できる段階で、できるだけ早くやるというが、分析はどのくらいでできるのか。遅れないように進めてもらいたい。それから流通実態調査で回答率30%台となっているが、これだけしか把握できていない段階で、実際に表示が義務化された時に追跡調査ができるかどうか。

相本課長)回答率はどうかというと任意なので、回答頂けなかったので38%。義務付けを行った際は、生のパパイヤについては全て表示義務がかかり、当然全ての加工者にも義務付けされる。適正でなければ指導の対象となる。

青柳委員)基本的な説明をお願いする。アメリカとフィリピン、分別管理はフィリピンの例はない。フィリピンは同様の分別管理ができていると捉えていいのか、フィリピンはまだ遺伝子組み換えパパイヤは生産されていないのかどちらか。

相本課長)現在フィリピンでは生産されていないと認識している。

森委員)資料1-5で流通段階の表示が必要になる。これが今までのGMとは違う。ひょっとしたら、スーパーなどPOP表示で売られている場所で、片方から片方に移す可能性がある。個々のものに表示の義務化があると考える。今の食品衛生法でそこまで要求がないが、この問題はどこまでの範囲とするのか、ある程度基準が必要ではないか。

相本課長)ポップの形では確かに混ざってしまう。ただ一方で、原産地表示はポップでできるとしてやってきている。売り場で仮に混ざるとすれば、誤認を招かないよう、売り場の指導を引き続きやっていきたい。

宗林委員)こういう生のものは初めてで、これはポップではなく個別で分かる形にするのが一点。それから1-5の資料についてはポップということを視野にいれているのであれば、あくまで個々のものとして扱う。もう一点の質問は、1―4の資料で、たとえば遺伝子組み換えでないという表示を認めた時は何%まで入ってきて、何ppm以下で決めているというのが原則か。加工食品ではどこまで検出されるのが、明確になっている。そこをしっかりしないと加工食品に入ってきたら曖昧なままになる。どこまで検出できてどこまで意図せぬ混入として認めるかをここでしっかりと決めなくてはならない。

相本課長)ポップ表示は誤認を前提として内容の表示をしていきたい。遺伝子組み換えの混入比率を決めているのは大豆とトウモロコシの5%以下だけ。他のものは認めていない。パパイヤはこういった形の混入ではないので、混入は認めないということでいい。

青柳委員)資料の2ページで、分別生産管理の対応について輸入業者は記録が困難だと答えている数は少ないが、小売業者は約30%、他は20%が困難と答えている。そうなると表示上どうなるのか。不分別という表示をせざるを得ない。知らなければ何も表示をしないことになり、遺伝子組み換えではないととらえられる。パーセントを低くしないと、正確な情報を消費者に伝えられない。行政にきちんと指導してもらいたい。業者は小さいところが多いので、指導を徹底してもらわないと消費者に迷惑がかかることになる。

相本課長)IPハンドリングをしないと遺伝子組み換え不分別と表示することを、事業者にきちんと徹底したい。一方でIPハンドリングをきちんとやることが望ましいと思っている。
鬼武委員)私も同じく資料1-5について、まずは正確に書いて頂きたい。法律で義務表示になっているものと、なっていないものは、わかるように明記することが一点。資料1-4について、生鮮は球が大きいので、混ざったり、というリスクはないが、加工食品の場合、非組換え遺伝子の検出結果とあるが、ここは逆でないか。遺伝子組み換えで検出かどうかが問題。混入率については、大豆とかは小さい粒だが、パパイヤはどのくらいの混入がいいとか、ここがきちんとできなければ、加工食品表示には全然具体性がない。資料1-4は、非組換えのものしか検出できていない。遺伝子組み換えのものが入ったものは、遺伝子組み換えのDNAを検出しているかどうか。ジュースとかこれだけの資料では全然わからない。

田島部会長)消費者庁の考え方としては、このデータが有る無しということは、問題ないということではないか。

鬼武委員)実効性のあるものでなくてはならない。

相本課長)サンプルの問題で、もし現在DNAが検出されたものがあれば、指導対象となる。

宗林委員)やはりこういう制度を設けた後、どう第三者が追っかけられるのか、検証ができるのかが大事。入っているかどうか、検証できるものがはっきりしてないと混乱してしまうと思う。

相本課長)確認だが、全て加工食品の検証ができるまで、表示義務付けを先送りしろということか。そうであれば今の時点で、加工食品の遺伝子組み換えが捕まえられないわけで、チェックできない。

宗林委員)義務付けしないということではなく、体制を整えて、義務付けですといってほしい。

相本課長)体制にはもう少し時間がかかる。安全性は厚生労働省から安全性審査ができれば輸入できるということだから、遺伝子組み換えパパイヤが輸入される前に加工食品の表示規制も義務付けたいということである。

田島部会長)そうなると、いつまでにという議論か。

消費者庁)義務付けは大事だが、加工食品のデータがでるまでは義務付けられない。買う側からいえば遺伝子組み換えかどうか、取り扱っている人が知らないくらいだから、きちんとわかるような表示にしなくてはならない。表示方法を議論する場ではないか。

田島部会長)只今のお答えでは無理ですね。

?委員)少し誤解がある。今回、検出されないのは技術的な問題、検出されにくいものがある、コーンでも大豆でもある。それがたまたま今回は検出できにくいものがあった。基本的にはIPハンドリグがあるわけでそういうものは他にもある。今の話は、議論として違う。

山浦委員)ハワイ産パパイヤだけの表示ではだめ。遺伝子組み換えであるか、そうでないか、になるべきでは。ハワイ産パパイヤという表示は紛らわしい。義務表示の対象だからきちんと新たに基準を決めるべき。穀物の表示については、検出ができないから表示がないというものがあるが、パパイヤはIPハンドリングをきちんとすることで、事業者からすればちゃんとわかるわけだから、これを穀物のルール作りにも応用してもらいたい。
田島部会長)穀物の表示についてはまた別のところで議論したい。

栗山委員)任意と義務表示なので、ハワイ産パパイヤだけで、表示が違うというのは困る。IPハンドリングだけで遺伝子検査なしで判断できるのならば、現状で表示は可能だろうか。表示には信頼性を高めるための方策として、遺伝子検査による一本だけのルートだけでなく、いくつかのルートが必要、それが安全安心につながる。一方で、全てものもで、検出は困難とおっしゃったが、本当にそうなのか?現在困難でも将来的に可能になる技術であるという努力が欲しい。

澁谷委員)アンケートによると、不分別がほとんどを占める表示になってしまうのではないかと思う。せっかく米国内で分別しても、日本に入ったとたんにほとんどが不分別となってしまう。将来的には方針、ビジョンがあって、現状をスタートするのか、日本の中での現状を先ほどのアンケートでどう考えるか。それからDNAの検出について、遺伝子組み換えのものを調べようとおもったとき、糖度が高いからできないのか、DNAの混入率によってできないのか、海外ではある話だと思うが、そこらへんの話があれば教えてほしい

相本課長)資料1-5で義務付け対象になるのは、遺伝子組み換えと不分別の場合、遺伝子組み換えでないと表示する場合は、それがわかっている場合だけで表示ができる任意表示制度となっている。加工食品の検出については、糖度が高くてもちゃんとやっていこうということ。ご意見にもあったが、技術的に難しい部分があっても、原料をたどっていけば可能であるので、その検証をやっていけると思っている。

澁谷委員)質問したのは、表示の方向性は、不分別が多くなるのではないか、ということ。方向性としては上に持っていくというビジョンがあるのか、海外ではどうしているのかということを聞きたかった。

相本課長)先ほど説明しましたが、不分別の表示のルールから難しい。IPハンドリングをすれば可能なので、それを進めてほしい。海外の検出の研究については情報をもっていない。

○ パパイヤの表示だけ、表示ルールを新たに設けるかどうか

山本委員)パパイヤの表示については、既にGM表示として運用しているものと同様に対応して、ものによってルールは異なるのはどうか。統一範囲で表示ルールを決めるべきである。

中下委員)1-5資料についてはいろんな議員から指摘がある。不分別のものが増えれば表示をする意味がない。表示が分別管理をしているものが前提ならば、パパイヤに限っては不分別管理を認めるべきではない。表示の義務付けない限り、実際には流入されているのかもしれないので、販売できない状況だが、今は表示のチェック体制も含めて義務付けるべきだ。チェック体制を確立している前提で、義務付けをする必要がある。それまでに間に合わせるとおっしゃるのだが、そのへんの確認を前提条件として、表示を義務付けてはどうか。

鬼武委員)1-3の資料で、ハワイ産は遺伝子組み換えではないという証明書を出すということで現在進んでいるが、その後もそうか。

相本課長)その後もそうである

鬼武委員)今回の場合は米国産で、フィリピン産は必要ないということですね。

相本課長)そうです。

青柳委員)生のパパイヤについて説明したいが、お店いで表示をしているのが圧倒的に多い。お店で知識がない人によって人為的なミスが起こる。これを導入するにあたってはきちんと周知徹底をするよう、それなりの期間をとることが必要。

立石委員)資料1-5で輸入業者の線が一本だが、卸業者仲卸業者、小さい規模の八百屋さんもたくさんある。情報がきちんと伝わるトレースの仕組みがちゃんとやることが大事。
IPハンドリングをについて正確に送り状なり請求書をセットにするなり、確保するのは青果物流通に携わるものからの率直な意見。

山根委員)店頭での表示において、任意表示のハワイ産パパイヤでは分かりにくいので義務表示となるが、それを法改正となると、時間もかかる。

相本課長)「遺伝子組み換えではない」「遺伝子組み換え」という表示は、今回初めて適用するわけではなく共通の問題であり、それを超えると他にも波及する問題で別途議論が必要となる。一部のアイテムについて遺伝子組み換えできていない部分は、検証を進める、補足的に流通で確認して、対応する。仮にそういうことができない限り先送りするのであれば、何もないまま流通してしまうことになるので、速やかに表示義務をつくってほしい。

田島委員)まあ、それは消費者庁の意見です。

宗林委員)加工食品でもう一回確認です。10年たって検出限界がうんと低くなって遺伝子組み換え義務表示のやり方も変わるのでは。最後は帳簿でIPハンドリングとしてみるのか、検出で違反とみるのか、これから先に矛盾がでてくる可能性もあるということになる。消費者サイドや第三者から見ても、IPハンドリングとDNA検査の関係をしっかりしておいてほしい。

事務局)違反等の場合は通常、検査によって入っているから違反、IPハンドリングで違反などいろんな場合がある。DNAが無くなってしまう場合は適用除外だが、入っていたら違反ですという基準を作りたい。検査で間違いもある中でIPハンドリングは確認で、違反かどうかを指導する。

相本課長)宗林委員から、検出限界が上がったらどうするかということがあるが、そもそも上位3位かつ5%以内。ちょっとでも使っていれば義務付けるのではなく、一定の割合以上になったら、義務付けるということだと補足させてもらいたい

宗林委員)大豆の場合は実際にテストで検出してみて、ものによってすごく差が出てきて問題がでてきているので、お話しているのが、一点。もう一つはフローチャートで、ちゃんとやっているのか。アレルギー表示の場合はできている。行政機関だけが専門的でわかるのではなく、それを広く示されることが大切だと思う。

相本課長)遺伝子組み換えに限らないと思うが、違反事例の発見については、関係省庁と話し合って明確化したいと思う

迫委員)安全性が既に確認されて、輸入がOKになっている段階で、表示制度が後手になるのがまずいので、表示制度は従来に則ってまずは制度をつくるべき。その他で、検査の追及、事業者の指導はやってもらうとして、表示は早急にやるべき。


遺伝子組換えパパイヤの表示審議・議事概要後編(5月24日開催)

2010-06-01 09:22:00 | Weblog
○ 不分別表示をなくす、ことはできるか

阿南委員)不分別表示がいらないと、中下さんが言ったが、この議論は必要ないと思う。そのためにパパイヤだけ法制度の改変までが必要なのか。不分別表示をできるだけなくしていくということは可能なのだろうか。

相本課長)IPハンドリングを義務付けることはできないので、結果として不分別表示しかない。そういうものが不十分だということであれば、対応できない、不分別の表示自体は必要である。

森委員)不分別か否かは重要ではない案件だと思う。農家が同じトラックでやろうよといった場合、こっちは分別、そっちは不分別とせず、初めから分けていないということがあってもおかしくない選択。だからこそ不分別があるべき。不分別表示をなくすべきではなく、そういうものは世の中にはいっぱいある。生産者側に、コストの面で選択する考え方がある。

山浦委員)今の森委員の意見は反対。消費者には選択権がある。そういう現場をなくしていくということ。選択できるものに変えていくものが表示制度で、その点は森委員に反対。

青柳委員)私も消費者の立場から立てば、不分別の表示は否と思う。ただ、現状からみれば、100%実行できるかどうか。流通業も難しいと言っている。全部きれいにして実行していくのであれば、不分別のものを低減してくという方向性は必要だが、今の時点でなくすのは難しい。

鬼武委員)私も遺伝子組み換えの表示で、前々から不分別という表示はわかりにくいということは理解できる。ただ、全体の表示制度の枠組みから考えると、不分別表示をなくす、というルールは、パパイヤだから変えるというのは、拙速ではないか。もう少し時間をかけてやればいい。パパイヤは実際にフィリピン産が多い。現在、ハワイ産のパパイヤがどのくらい流通しているのか、実際には遺伝子組み換えのパパイヤは出てこないかもしれない。3年後か5年後で適切でなければ、見直せばいい。実際に入ってきていないわけで、ここで不分別はダメという議論は、実態として出た段階で判断したらいい。

中下委員)遺伝子組み換え不分別はなくしていく。この際、ここで変えていくべきではないかと思っている。遺伝子組み換えというのを表示するのなら、敬遠すれば、不分別という表示になってしまう。遺伝子組み換えなのに不分別という表示ができてしまうのなら、罰則があるのか、考えられているのかどうか。不分別表示を今後も認めていくのかどうか。

田島部会長)遺伝子組み換えの表示では、不分別は既に認められているわけであるから難しい。

中下委員)これは生の状態でやるわけですから、今までとは違う、確かにパパイヤだけ違うというのは大変かもしれないが、方向転換をしていく必要があるのではないかと思う。

相本課長)IPハンドリンの説明が不十分だった。今後厚生労働省の認可がされれば、GM、不分別、nonGMの三つが入ってくる、補足させてもらう

立石委員)最終的には個別識別しかない。IPハンドリングされた時点で、個別識別をする。そういった義務付けすれば、最後までコンタミするかどうか、追っかけられる。個別識別を義務化できるかどうかが大きなポイント。

田島部会長)難しい。

栗山委員)個別ハンドリングができるのであれば、その方法を考えてみるのは、いいのではないか。それがすごく難しいのか。IPハンドリングの難しさについて、消費者に安心、安全のための食を届けるためにシーソーした結果でも、それほど難しいことなのか。

田島部会長)どなたか意見ありますか。私は難しいと思う

栗山委員)難しいこととは思っている。これが生のものであり、最初のものであり、次々いろんなことがあるが、パパイヤのような大きなものでは、できるのではないか、私の提案は簡単だからやれというのではなく、消費者の選択の権利を守るために、バランスの上でいかがでしょうかと申し上げている。

立石委員)青果物の場合、商品化、生産者団体が様々なことをしている、個別識別について有機農業では一個一個シールを付けている。どの段階でやるのか、コストさえかければできる。

消費者庁)国内で生産するものについては、IPハンドリングをしているが、外国の農家は、IPハンドリングをしてもらえるのかどうかということもある。今は輸入を認めないということで、IPハンドリングをしたものが出てきている。今後遺伝子組み換えの流通が出てくるとなると、実際は不分別ものがこれから出てくる。そういう不分別ものについて輸入は認める、認めないのは大きな問題。何らかの形で影響を消費者に与えるのであれば、パパイヤだけでなく、適正な表示ということを早急に検討していく必要がある。不分別という表示は残さざるを得ないと消費者庁では考えている。

鬼武委員)混乱してきました。ハワイ産は、量は少ないですよね、世界からみて。今入ってきているハワイ産パパイヤは5%以下として確認されているものですよね。それが今の価格とコストで入ってきている。それでも不分別で増えると思うのですか。

消費者庁)増えるのかどうかは、需要もあるし、わからない。

鬼武委員)さっきは増えるといった。今は入ってきているのは非組み換えだけど、消費者庁はGMが入ってくると言っている。でも増えるかどうか、わからない。

相本課長)2008年、889トンのNon―gmが入ってきて、今、ハワイは74%がGMなのだから、入ってくる可能性があるということです。

中下委員)どういうルール付けをして、輸入をするのかということ。ちゃんとIPハンドリングをして、遺伝子組み換え不分別という表示をなくしていこうという戦略でいくのなら、パパイヤは個別識別をしやすい事例。だからパパイヤはトレサビをちゃんとして、不分別をなくしていくという戦略が必要。そうしないと不分別のものが増えていく懸念がある。

迫委員)消費者庁に確認させてほしい。安全性の問題があったからこれまでは輸入できなかった。今は、表示制度ができないから輸入できないということか。

相本課長)これまでの議論をまとめると、まず昨年7月に食品安全委員会で、安全性評価を確認した。次にリスク管理を行う厚生労働省の輸入判断は、消費者とはリンクがないので、表示の義務付けがあってもなくても輸入はされることになる。

阿久澤委員)不分別という選択もあっていい。「組換え」「組み換えでない」でもなくて、「不分別」という選択があってもいい。

山浦委員)中下委員の意見に賛成。消費者庁でも今年度後半から遺伝子組み換え食品の表示の議論が始まる。現在、市場で遺伝子組み換えの豆腐や商品を見たことがない。不分別の表示がもたらしたものである。比較的IPハンドリングがしやすいものから、遺伝子組み換えのきっかけを見直すために、パパイヤを例にして始めるということが、今、私たちに問われているのではないか。

田島部会長)様々な意見が出てきました。整理すれば、食品安全委員会では安全性の議論がすんでいる、厚生労働省の輸入判断は、表示の義務はリンクしないという、そうなると表示について遅きに失することがないよう、本日、議論の内容で決めてパブリックコメントで進めさせて頂くということでよいでしょうか。(間あり)それでは、今後の手順について、よろしくお願いします。

相本課長)田島部会長からご発言あったように、このまま原案のままでパブコメ、WTO通報を経て、進めます。

宗林委員)加工食品の分析結果と経過についてはご報告してほしい。

田島部会長)消費者庁に今後の報告をお願いします。