先日書いたブログが拡散して,某新聞記者から取材を受けました.意見を持っている人にとって,それがちゃんと伝えられるいい時代になりましたね.そんなわけで,自分の中ではとっくに解決している問題ですがあらためてブログに書いておくことにします.
プログラミング教育が小学校でという話で,誰が教えるんだ.どの教科を削るんだなど,よく言われている課題がありますが,僕は実現はそんなに難しいとは思っていませんので,それを書きます.
1)誰が教えるの?
前に書いたとおり,小学校の各学年で2時間程度ですから,専任講師が教えます.2時間の授業6学年分のやり方を覚えた人が講師になります.担任の先生は,同じ子供に毎回違うことを教えるのに対して,この講師は同じことを毎回違う子供たちに教えますので,その内容に関してすぐに上手に教えられるようになります.売れない芸人が毎回同じタイミングでお客さんを笑わせているのと同じ感じです.どの説明がわかりにくいか,どこはもっと短くてもよいか,2-3回授業をやるとすぐに改善されます.
これらの講師はそれほど専門的な質問には答える必要はありません.まずは「今度ハカセに聞いておくね」で十分です.講師がわからない質問をしたということで,子供も鼻が高いでしょうし.中途半端な知識で知った風に答えてしまう方がやっかいです.中途半端な専門家よりも,子供の目線に立てる人の方が重要です.
2)機材はどうするの?
専任講師がタブレットを人数分持っていきます.無線やサーバなどの機材も持ち込みます.いまだとタブレットは1台2.5万円くらいで,児童の人数にもよりますが30人として全部で150万円くらいで揃えられるでしょう.
3)全国に展開するには,講師は何人くらい必要で,お金はどれくらいかかるの?
日本には小学生は各学年で120万人くらいいます.クラス数にすると,小さいクラス大きいクラスいろいろとあるでしょうが,平均20人として(人数の少ないクラスだったら,2学年同時にやってもいいですし),6万クラスです.6学年で36万クラスですか.各クラス2時間ずつできっちりとつめると,1日3クラスの授業ができます.12万人日必要です.1年に200日くらい授業ができるとすると,600人の講師がいればすべての学校に行き渡ることになります.各県で10人くらいと考えると,一人でどれくらいのエリアを担当するか想像できると思います.つまり,600人の年間の人件費と,各人150万円くらいの機材費ですね.人件費はどういう人材を講師にするかという考え方にもよりますが,わかりやすく,350万くらいとすると,合わせて500万円です.最初の年は30億円,翌年からは機材日がかかりませんから20億くらいずつです.そんなにバカみたいな金額ではないとおもいます.
実際には,人件費は各自治体がどういう人を雇うのかで,決まって行くとおもいます.たとえば,ICT支援員さんを雇っている自治体もあるので,その人数を増やして講師として派遣するというのもいいですね.
4)何を教えるの?
前のブログの記事では全部ビスケットを教える風に書きましたが,高学年は違うことをやってもよいとおもいます.ただし,これが成立するのは,各クラスで2時間に収めるというのが前提です.ITに力を入れている自治体はもっと予算をかけてやればよいと思います.前のブログではあえて「ものづくり」の視点は外してあります.その視点は大事ですが,そこまで広げると話が散漫になってしまいます.図工などを中心としたカリキュラムの再編成で解決すべきで,もちろんプログラミングは最重要にですけど,設計とかコンピュータとは無関係に重要な話もいろいろとあるので.
5)なんの時間で教えるの?
2時間だけの時間をもらえればよいので,学校がどの授業の枠でやるかを決めればよいと思います.僕は総合の時間でよいと思います.総合の時間はそもそもそういう使われ方をするために生まれたと思っています.
6)対象は子供だけ?
本当は大人も受けるべきです.PTAや,もちろん学校の先生にも.大人を相手ですから,子供よりは短い時間で6学年分をやってしまうことができるように思います.そもそも,いまの大人は成長の過程で習ってこなかったことですから,どこかのタイミングで習う必要があると思います.
7)何年間続けるの?
これを3年くらい続けたときに,学校でも自前のタブレットを揃えるというところが増えてくるのと,自分でも教えられるという先生が増えてくることが予想されます.自分のクラスで自由に使えるタブレットがあったときに,先生は他の教科の中でもプログラミングを導入してみたくなるでしょう.それらは,いま盛んに実証実験されている,国語,図工,音楽などの教科の中で実施していることとも繋げられます.
まずは,子供の教育に携わっている大人全員が,この授業の重要性を知ってもらうことが大事です.理解された後は,自動的に話が進むはずです.いま進まない理由は,単なる無知や誤解からですから,それを解くということが最も重要な課題です.
8)これをやるとどんな人に育つのか
教育の評価は非常に難しいと思います.それを教えるか教えないかで,その人の将来がどう違ってくるのか,というのを何年も待たなければないわけですから.しかもあることを教えなかったといっても,その人は授業とは別に本で読んで知っちゃったかもしれないと考えると,正確な実験なんてできっこありません.
教育の別の見方として,子供に新しい視点を与えるというのがあります.コンピュータの中身を少し知るということです.これはほぼ無条件でプラスです.知らない方が幸せな人生を送れたということは考えにくい.年間30億の予算と,各自2時間の時間と引き換えに,新しい視点を与えるという選択になります.
それも早ければ早いほど良いでしょう.たとえば,子供はタブレットでゲームをやったとき,自分でゲームを作れて,それは意外と簡単だけど意外と難しいというのがわかるかわからないか.ゲームをやり始める頃には,中身についてもやりたいですね.
9)この先どうするのか
本当のプログラミング言語はもっと色々とあるし,それを学ぶ方法も沢山あります.僕自身,プログラミングを覚えたのは30年以上前で独学でしたから,インターネットの時代に,環境さえ用意してあげれば大人がとやかくいうことはないと思います.それを支える見守る大人が増えればよいだけです.
そして,上に述べたことは,知らない大人にどう知ってもらうのか,ということを遠回しに言っているのことなのでした.
プログラミング教育が小学校でという話で,誰が教えるんだ.どの教科を削るんだなど,よく言われている課題がありますが,僕は実現はそんなに難しいとは思っていませんので,それを書きます.
1)誰が教えるの?
前に書いたとおり,小学校の各学年で2時間程度ですから,専任講師が教えます.2時間の授業6学年分のやり方を覚えた人が講師になります.担任の先生は,同じ子供に毎回違うことを教えるのに対して,この講師は同じことを毎回違う子供たちに教えますので,その内容に関してすぐに上手に教えられるようになります.売れない芸人が毎回同じタイミングでお客さんを笑わせているのと同じ感じです.どの説明がわかりにくいか,どこはもっと短くてもよいか,2-3回授業をやるとすぐに改善されます.
これらの講師はそれほど専門的な質問には答える必要はありません.まずは「今度ハカセに聞いておくね」で十分です.講師がわからない質問をしたということで,子供も鼻が高いでしょうし.中途半端な知識で知った風に答えてしまう方がやっかいです.中途半端な専門家よりも,子供の目線に立てる人の方が重要です.
2)機材はどうするの?
専任講師がタブレットを人数分持っていきます.無線やサーバなどの機材も持ち込みます.いまだとタブレットは1台2.5万円くらいで,児童の人数にもよりますが30人として全部で150万円くらいで揃えられるでしょう.
3)全国に展開するには,講師は何人くらい必要で,お金はどれくらいかかるの?
日本には小学生は各学年で120万人くらいいます.クラス数にすると,小さいクラス大きいクラスいろいろとあるでしょうが,平均20人として(人数の少ないクラスだったら,2学年同時にやってもいいですし),6万クラスです.6学年で36万クラスですか.各クラス2時間ずつできっちりとつめると,1日3クラスの授業ができます.12万人日必要です.1年に200日くらい授業ができるとすると,600人の講師がいればすべての学校に行き渡ることになります.各県で10人くらいと考えると,一人でどれくらいのエリアを担当するか想像できると思います.つまり,600人の年間の人件費と,各人150万円くらいの機材費ですね.人件費はどういう人材を講師にするかという考え方にもよりますが,わかりやすく,350万くらいとすると,合わせて500万円です.最初の年は30億円,翌年からは機材日がかかりませんから20億くらいずつです.そんなにバカみたいな金額ではないとおもいます.
実際には,人件費は各自治体がどういう人を雇うのかで,決まって行くとおもいます.たとえば,ICT支援員さんを雇っている自治体もあるので,その人数を増やして講師として派遣するというのもいいですね.
4)何を教えるの?
前のブログの記事では全部ビスケットを教える風に書きましたが,高学年は違うことをやってもよいとおもいます.ただし,これが成立するのは,各クラスで2時間に収めるというのが前提です.ITに力を入れている自治体はもっと予算をかけてやればよいと思います.前のブログではあえて「ものづくり」の視点は外してあります.その視点は大事ですが,そこまで広げると話が散漫になってしまいます.図工などを中心としたカリキュラムの再編成で解決すべきで,もちろんプログラミングは最重要にですけど,設計とかコンピュータとは無関係に重要な話もいろいろとあるので.
5)なんの時間で教えるの?
2時間だけの時間をもらえればよいので,学校がどの授業の枠でやるかを決めればよいと思います.僕は総合の時間でよいと思います.総合の時間はそもそもそういう使われ方をするために生まれたと思っています.
6)対象は子供だけ?
本当は大人も受けるべきです.PTAや,もちろん学校の先生にも.大人を相手ですから,子供よりは短い時間で6学年分をやってしまうことができるように思います.そもそも,いまの大人は成長の過程で習ってこなかったことですから,どこかのタイミングで習う必要があると思います.
7)何年間続けるの?
これを3年くらい続けたときに,学校でも自前のタブレットを揃えるというところが増えてくるのと,自分でも教えられるという先生が増えてくることが予想されます.自分のクラスで自由に使えるタブレットがあったときに,先生は他の教科の中でもプログラミングを導入してみたくなるでしょう.それらは,いま盛んに実証実験されている,国語,図工,音楽などの教科の中で実施していることとも繋げられます.
まずは,子供の教育に携わっている大人全員が,この授業の重要性を知ってもらうことが大事です.理解された後は,自動的に話が進むはずです.いま進まない理由は,単なる無知や誤解からですから,それを解くということが最も重要な課題です.
8)これをやるとどんな人に育つのか
教育の評価は非常に難しいと思います.それを教えるか教えないかで,その人の将来がどう違ってくるのか,というのを何年も待たなければないわけですから.しかもあることを教えなかったといっても,その人は授業とは別に本で読んで知っちゃったかもしれないと考えると,正確な実験なんてできっこありません.
教育の別の見方として,子供に新しい視点を与えるというのがあります.コンピュータの中身を少し知るということです.これはほぼ無条件でプラスです.知らない方が幸せな人生を送れたということは考えにくい.年間30億の予算と,各自2時間の時間と引き換えに,新しい視点を与えるという選択になります.
それも早ければ早いほど良いでしょう.たとえば,子供はタブレットでゲームをやったとき,自分でゲームを作れて,それは意外と簡単だけど意外と難しいというのがわかるかわからないか.ゲームをやり始める頃には,中身についてもやりたいですね.
9)この先どうするのか
本当のプログラミング言語はもっと色々とあるし,それを学ぶ方法も沢山あります.僕自身,プログラミングを覚えたのは30年以上前で独学でしたから,インターネットの時代に,環境さえ用意してあげれば大人がとやかくいうことはないと思います.それを支える見守る大人が増えればよいだけです.
そして,上に述べたことは,知らない大人にどう知ってもらうのか,ということを遠回しに言っているのことなのでした.