ビスケットのあれこれ

ビジュアル言語ビスケット(Viscuit)に関するあれこれを書いてゆきます.

プログラミングを学ぶ理由

2015-02-14 00:38:44 | 1
プログラミングを教える理由

子どもにプログラミングを教えるのがブームになってきました.僕は12年前から自分を曲げずにやってきてますが,今のブームにちょっと違和感を覚えてます.それは「なぜプログラミングを教えるべきなのか」がちょっと違うからです.

某省からアンケートのようなものが来て,プログラミングを子どもに教えるとどんな力を育てると思いますか,という質問がありまして.よく言われるのは「論理的思考力」ということなんだろうけれど,「論理的思考力」って何?こんなのプログラミング教育ブーム以前から必要とされた能力だし,これを鍛えるツールとかいろいろありましたよね.将棋とかその手のゲームはみんなそうだし.ドラクエでもそれなりに考えなきゃならない部分もあります.僕は,プログラミングで論理的思考力が付くとは思うけれど,それは主の目的ではないと思っています.

他の科目で考えてみます.たとえば,なぜ「音楽を学ぶべきなのか」について.音楽って,科学的な要素と芸術的な要素がありますからいろんなことを音楽を通じて教えられるんですよ.まず,音楽を使って数学を教えることができます.国語も関係しますね.上手に演奏できるように練習することで精神力も鍛えられるだろうし,人前で演奏することでプレゼン力も付きそうです.でも,そういう何々力っての為に音楽を教えていると思っている人は誰もいないです.もっとはっきりと,音楽の素晴らしさ,音楽によって人生が豊かなる,そのために教えているんじゃないかと思います.少なくとも学校で音楽を教えているくらいの人だったら,自分の人生と音楽との関わり合いについて何か語れると思います.この曲を聴いて受験を頑張った,とか,失恋したときに力をもらったのはこの曲だ,とか.それが国民全体の共通理解だし,語れる人がちゃんと教える職に就いている.

僕はコンピュータは音楽と同じような立場になって行くと思っています.ルネッサンスとかそういう時代の社会に置ける音楽の扱われ方,王様に雇われた音楽家たちだけが音楽をやっていたような.今や幼稚園から音楽はやってます.僕らが若い頃って,みんなカラオケはヘタクソだったんだけど,今の若い子たちって特に練習している感じでもないのに,カラオケ上手いですよね.確実に音楽は浸透してきています.ルネッサンスの音楽に相当するのが,今のコンピュータで,お金持ちが手に職を持った人を雇ってプログラムを作らせている.でもこれから,みんながプログラムを作る時代がくるはずです.

で,話を戻すと,なぜプログラミングを教えるべきか,に対して,なになに力を付けるため,ってのは副次的であって,そのものずばり,コンピュータとは何かを知って,コンピュータ時代を豊かに生きるため,って言っちゃうべきだと思うのです.

近代文明ってのは,書物で進化したんですね.書物を読むことで,先人の経験と同じことを短時間で済ましてしまうというマジック.これがなければ毎回リセットなんで,80歳くらいでやっと世の中に追いついて,そこから長生きした分だけ世の中を進歩させられるってことになってしまう.書物はすばらしい時間短縮法だったわけです.しかし,何でもかんでも書物の知識でいいのか,っていうとそうも行かない.ちゃんと体験をしないと伝わらないことがある.それがたとえば音楽ですね.音楽を聴いたり歌ったりしないで,本だけ読んで,楽譜だけ見て,楽器の写真集を見て,理解できるわけがない.書物を読んだだけで得られない場合は,昔のやりかた,つまり先人と同じように経験を重ねるしかないわけです.

同じようにコンピュータについても中身に触れないかぎりコンピュータとは何かを理解できるわけが無い.

ところが,音楽くらい昔からあるものならともかく,新参者は大抵書物で済まそうって感じになっちゃいます.そんで,大人たちも本質は知らないんだけど,周りに知っている人が誰もいないから,みんなして書物で読んだ知識だけで知った気になっちゃっている.それがコンピュータの現状なんじゃないですかね.