ビスケットのあれこれ

ビジュアル言語ビスケット(Viscuit)に関するあれこれを書いてゆきます.

跳び箱とビスケット

2012-01-22 01:43:09 | 1

僕は跳び箱やリコーダと同じくらい全員にプログラミングを教えるべきだと考えている.

なぜ跳び箱を義務教育で教えるのか.本当のところはわからないが,僕の勝手な推測で言ってみると.あれは,オリンピック選手を育てるためにやるわけではない.そもそもオリンピックに行くような人は子どもの頃も運動神経がずば抜けていたに違いなく,小学校の跳び箱なんかは何の苦労もしないで簡単に跳べたはずである.いや普通にクラスに何人も簡単に跳べる子どもがいるから,オリンピックなんてすごいレベルじゃなくても,まあ将来スポーツに関わる仕事をするくらいなレベルの人は子どものころに苦労せずに跳べて,でそういう人のために跳び箱があるわけではない.

跳び箱の授業で素晴らしいのは,最初は跳べなかった子がいろいろとがんばって,勇気をもって体を動かして,跳べるようになる.努力すれば報われるその成功体験の,そういう子のために授業がある.だから,体育の中に組み込まれつつ,違う効果があったりする.それでもやっぱり全員は跳べるわけではないのだとすると,次の課題は,どうやったら落ちこぼれを防ぐことができるか,ということになるだろう.いろんな教具や指導法が発明されて,で,僕が子どもの頃より指導法が格段に進歩して成功率が上がっているんだろうな,と想像している.

プログラミングを跳び箱と同じくらいという本心は,将来プログラミングの職に就く人のために教えるのでは無いという意味である.むしろ,運動らしい運動は小学校の時からずっとやっていないよ,という大人の跳び箱経験,プログラミングなんて小学校以来だ,なんて大人のために教えるのである.

いろんなところが,子どもにプログラミングを教える活動をしている.子どもにiPhoneアプリを作らせるとか,本物の言語を直接教えちゃうとか.様々なレベルのものがあっていいし,そういう広がりがなければダメ.たとえば,Jリーグの選手が小学生にサッカーを教えて,その中の何人かがプロに育ってゆく.プログラミングそんな感じで教える.どんどんやって欲しい.子ども用簡易ルールのサッカーじゃなくて,プロと同じルールでやる,みたいな厳しさがあるのかもしれない(本当かどうかは知らない).プロが使う本当のプログラミング言語を教えるのも全然悪くない.耐えられる子もいるはず.

ビスケットの設計には,跳び箱指導の工夫に相当する,落ちこぼれを絶対に出さない工夫が随所に込められている.本当に誰でも,ほんの数秒でコンピュータの一番面白いところ,自分の思い通りに動かす,という経験ができる.しかし,なんでも自動でやってくれない.むしろ面倒な手順をなんども繰り返しやらなきゃならない(つまり,コピーと貼り付けという便利な編集機能はあえて導入していない).面倒な手順を省略できない,そうして「自分が作っている感」を積み重ねてゆく.で,全員に成功体験を持ってもらいたいのである.