しかし、この語はここでは前後の文脈からいって、実質的な意味を担い、一種の擬態語であろう。また、トッピンチャンやドッピンシャンの語もあることから、西沢爽の説の通り、トッピはドッピの転訛であろう。ドッピ(ト)は「どっぴとわめいて」(日葡辞書)「嫁を見にどっぴと路次へかけて出る」(柳多留)のように勢いよく立ち騒ぐさまを表す。また、ドッピドッピは「さまざまの者を内へ取込で、どっぴどっぴと騒ぐやら、茶屋だの女部屋など、すべったはころんだはと」(浮世風呂)と、勢いがさらに盛んになるさまを表す。また、ドッピサッピは「表ざしきが乱妨な、どっぴさっぴの大一座」(与話情浮名横櫛)と 使われた。また、トッピキシャという形もあった(半沢敏郎『童遊文化史』)。このことから、ドッピキシャ→ドッピンシャ→ドッピンシャン→ドッピンチャンという変化が考えられる。いずれにしろ、ここはドッピを語基とした複合語を考えればよい。ドッピが清音化してトッピ、さらにトッピンのように撥音をつけて四拍子にした方が語として安定し、シャンがチャンに転訛して、より強い滑稽な様子を印象づける。以上によって、歌意は、遊女と攻め合って、戯れいちゃつき、大騒ぎをしていることになる。
『七「ずいずいずっころばし」』より
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