コマイ(木舞)とは壁の下地として、竹を細かく縦横に編み、細い縄で絡げたもので、その職人をコマイカキという。この職人は指の使い方が巧みで、複雑に交叉した竹を組んでいく。これが川柳の題材に好まれ、「こまいかき根津の入り訳け聞いて居る」(柳多留)は、職業柄、遊女との入り組んだ事情を聞き、「こまいかき茶人にいぢりころされる」(川柳評万句合)は建築にうるさい茶人に苦労する。このコマイカキの練達した指の動きが探宮、探春することを連想させ、コマイヲカクという熟語もできた。「女房を稽古所にするこまいかき」(柳多留)「くじる手の鶺鴒(せきれい)らしいこまいかき」(柳の葉末)と、妄想が膨んでいく。後の句は古事記にあるように、鶺鴒の尾の上下運動を指し、「こまかい指の動きが…くじる手つきを教える先生のようだ」といっている(矢野貫一「淫喩辞彙」『文学』平成十一年七月)。江戸語では他に「 (指)人形(を使う)、指遣う、指木偶(でく)、指てんごう」「二本指」なども用いられた。以上により、コマイショの元の形はコマイシヨウと想定され、コマイショウを経て、コマイショと短縮形になったのであろう。その意味は抉(くじ)り、弄( いじ)ろうと、いたずら遊びをしようといっているのである。これが明治期になって元の意味が分らなくなり、コマイショがコマミソ、さらにゴマミソ(胡麻味噌)という日常の食物に解釈し直されたものと思われる。
『七「ずいずいずっころばし」』より
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