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ずいずいずっころばし

2023-03-14 | 語源

ズイズイは次のズッコロバシを序詞のように導き、調子を整える語句である。「つんつんつばき」「なんなんなつめ」など現代の歌謡や童謡のように、同じ音の語句を引き出し、中心的な語句を強く引き立てることになる。ところが、この形に定着する前は、ズイズイスッコロバシヤ(『時代子供うた』) 、ツイツイズコバシ(伊勢、『遊戯法』)であり、語形は一定していない。従って、現在のズッコロバシは少なくとも訛って変形したものであると推定できる。そこで、この語をよく見ると、コロブ、コロバシという動詞を含んでいることに気付く。西沢爽は『江戸語大辞典』の用例にもある式亭三馬の『小野愚譃字尽(ばかむらうそじづくし)』(文化三年)に、最下層の私娼である夜鷹の別称として「惣嫁(そうか)、夜発(やはち)、辻君、ついころばし…」とあることに着目し、このツイコロバシをケ(蹴)コロバシの転訛だろうとした。これは卓説であり、この冒頭句がこの歌全体の意味を方向づけ、決定することになる。ツイコロバシは他動詞形であるが、その自動詞形のツイコロビ、訛ってツイコロボも『鳴絃之書』(元禄十五年)『正風集』(享保十五年)などにあり、夜鷹、惣嫁の別名として使われた。

七「ずいずいずっころばし」』より

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