うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

白川静の『字訓』と、映画『実録・連合赤軍』

2008年04月19日 04時48分31秒 | 俳句・短歌、またはエッセイ
4月16日。快晴、日中は最高気温が20℃を越えた模様だ。
有楽町駅前に着いて、9時を待ってから用事をすませて3,40分、新宿に向かう、東南口の改札を出てルミネ新宿を探した。相変わらず入口がわかりにくい。JR発行の商品券が手元に昨年の夏ごろからあり何かを買わなければいけない。というのは利用先が千葉の地元になくそのままになっていたのだ。5階の書店に行く。ブックファースト、だそうだ、開店直後の店をぐるぐる回ってて気づいた。なあんだ、あの青山ブックセンターだったところじゃないか。書棚、本の配列ではなく店舗のレイアウトでわかるのだ。数年前に倒産したが、とうとう再建はならなかったのだろう。あるいは縮小しているのか。本好きに言わせれば、業界では好評だった店のはずだ。
 最近の書店は、チェインストア展開ばかりで味気ない。本に詳しく、いかにも読書好きの店員のいる店にぶつかったことがない。
 わたしは読書も購入意欲もこのごろは落ちているのだが、よしっ、これにする。お亡くなりになられたが、敬愛する立命館大学の白川静先生の本だ。正真正銘、学問の王道を進んだ人だ。漢字の起源を長年にかけて解き明かした独創的な労作だ。大部だからほどほど重いのだが、まあいい。
   新訂 字訓(普及版) 白川静 平凡社 6,300.

 それから新宿駅東口を遠巻きにするように、わたしはおもむろに伊勢丹側に歩いていく。今日は「テアトル新宿」で映画を見る予定だ。若松孝二監督の〈実録・連合赤軍--あさま山荘への道程〉である。映画製作には難しいと思われたが、まとめかたにメリハリがあり作品としては成功したと思う。カメラワークもいいし、若松監督の意図に質の良い良心的なものを感じた。わたしは同世代だ。
 しかし、わたしには重苦しく感じて考えさせられた作品だ。映画の内容である内ゲバ、同志のなかで14人も残忍な粛清にした‘総括’の事態にでは、必ずしもない。純粋さと野蛮さが自然に同居する若さという心理と生理。人生、時代性と自我とか世界観とか、いずれにしても若者特有の問題意識、目的設定になるのか。ちょっとうまく言えない。

 映画の前半部分で、当時の報道フィルムのラッシュがこれでもかこれでもか、というように使われている。ベトナム戦争、日米安保条約、三里塚闘争、大学紛争、全共闘、三派系全学連。
 かれこれ、40年の歳月がたったことになる。わたしが上京してきたばかり、まだ18歳の秋のころだ。
 昭和43年の、10.21国際反戦デーのとき、あの新宿騒乱事件のときにわたしは飯田橋の大学を抜け出して新宿駅に行ったのである。電車は止まり線路は角材や投石で散乱し、西口広場はあたかも市街戦の様相であった。
 当時、わたしは勤労学生であり、しかも心情三派でありノンポリのラジカルを気取っていた。
 社会が、何かおかしい、こんなことはしていられない。
 それから、都内錦糸町にあった選挙事務所の、日本社会党の衆議院選挙に手弁当で参加した。そこで今でも交際のつづく、当時の青年反戦委員会I氏とも知り合う。
 しかし、高校卒業後、親の支援も得ず、兄弟の援助をことわり、大学に二度入り、二度とも中退した。もちろん、学費負担が大変だったせいもあるが、当時は大学は卒業するものではない中退するものだ、という妙な同世代特有の衒気(パラダイム)もあったのである。
 だが、わたしはこのことで、世間に迷惑もかけず誰にも世話にもなっていない。
 それからやっと、造園設計という好きなことで生きていく道を見つけたのは結婚して一年後のこと、29歳の夏のころである。遅い出発ではあったが、独学と、結婚式、新居購入、会社設立と自立の生涯は続いた。


 帰りには紀伊国屋書店の奥まった1階のDVDショップに立ち寄る。もはや病的とも言えるほど、反射的に大手の店ではいつも、ヒッチコック監督の見洩らしている映画のものを探している。かなりコレクションを持っているが、まだまだ足りないものがあるのだ。
 それから、JR中央線で移動する。窓外の外堀周辺、千鳥ケ淵はすっぽりといまだ淡いみどりいろにおおわれている。そういえば、このあいだの桜花爛漫のころは寄れなかった。小さな谷の斜面にある桜、雑木などの新芽は清々しい。萌黄色に満ちている。そうか、こういう薫風香る静寂もあるのだ。

 今日は、なんだか頭が痺れたようで、落ち着かない気持ちとおぼつかない足取りだ。
 東京駅ではめずらしく右往左往したが、家族の大好きな舟和の芋羊羹を買い、わたしは総武本線快速の乗り場の地下4階まで降りて帰途に着いた。
               
コメント (2)
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