歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

マスタングはエンヴィーを 2

2009年05月21日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
マスタングはエンヴィーを 2

2009年8月発売23巻収録予定雑誌ネタバレ含みます。

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2006年2月に私は「マスタングはエンヴィーを」という記事を書いた。

この時、私は「物語の構図」として、マスタングはエンヴィーを殺せない、と思っていた。
>例えばエンヴィーの協力を仰がねば国が救えないだとか、例えば別の者にすでに殺されたあとだとか。
フィルムノアールのような、肩透かしの、無情な、砂を噛む思い、が描かれることを期待していた。
マスタングは、男で大人で軍人で国家錬金術師という「強者」だから、その力=暴力 でもって、エンヴィーを倒すことは無い、と。

しかし、違った。
「溜めに溜めに溜めた怒りと復讐の拳を振り上げさせて、そして振り下ろさせない」のは。
荒川弘ではなく。
エドでありスカーであり、リザ・ホークアイだった。
神の視点の作者ではなく、同じ地べたに生きるキャラクター=人間、だった。

そしてマスタングは、大人の軍人という強者ではなく、愚かなただの男だった。
だから、握った拳を、悔しくても悔しくても、黙って引っ込めるしかなかったのだ。
彼は、私と同じだ。
どんなに相手が憎くとも、私の後ろにいる人々を思うとき、その手を闇雲に振り下ろすことはできない。

その拳をためらわせるのは、第一に、逆に討たれるかもしれない、という恐怖だ。
そして第二は、振り下ろした結果どうなるか、という、恐怖だ。

彼は大人だ。だから、その結果どうなるか、を、分かっていた。
彼は愚かだ。だから友は、言葉を尽くして、彼が本当は分かっていることを、思い出させたのだ。

マスタングはエンヴィーを殺せない。
私の考えは当たっていた。でも、まったく、足りなかった。
拳を振り下ろす相手が無いのではなく、振り下ろすことを先送りするのでもなく、己の意思で、拳を止める。そこにマスタングの逃げ道は無い。
ああ!彼は大人だ!
彼は、彼の意思と責任で、拳を止めたのだ!

だから砂を噛み締めるのは、討てなかった事実にではなく、ついに恐怖に負けて拳を止めた、己に。


いつか。
あの時は止めてくれてありがとう、と優しい彼は言うだろう。
けれど、あの時止めて良かったのだ、と心から思える日はきっと来ない。だって死んだ者はどうしたってよみがえらないのだから。ヒューズも。エンヴィーも。

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