歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

ダ・ヴィンチ読んだ!

2009年05月15日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
ダ・ヴィンチ読んだ!

ありがとう!ダ・ヴィンチ!!
6月号第二特集「あなたの知らない『鋼の錬金術師』の真実」

買え!絶対買え!500円、安い!!!

絵としてのハガレン以上に、物語としてのハガレンを愛してしまう私としては、ものすごく!嬉しい内容でした!
ダ・ヴィンチは、コンビニにも置いてたりするし、電車でも読める雑誌じゃないですか!
同じ情報誌でも、マンガ情報誌「ぱふ」は電車じゃ出し辛いし、アニメ誌は絶対家で読まないと…!ですよね。
この、私が恥ずかしいと感じる差、は、社会的認識度を反映してて、つまりオタ←→一般、の差であるわけで。
だから、ギリギリ一般誌(笑)のダ・ヴィンチに特集されるっていうのが、すごい、すごい嬉しいんですよ!!
内容も、さすが小説オタを相手に戦ってるだけあって、実に的確かつ細やか。
そして、私もまだまだ、知らないことがあった・・・!と。

てな訳で、以下、ネタバレです。
私も買おうかな…?なんて思っているあなた、どうぞ読んでからまたこちらにいらしてください。だって「知ってる」より「知らなかった!」のが、楽しいじゃないですか!



とかゆっても、読んじゃう人は読んでしまう(笑)
そして、買う人はそれでも買うのよね(笑)
私も、たとえ3割がネタバレ済みでも、残り7割に私だけのツボがあるかもしれない!と思うから、好きなものはやっぱり実物まで行っちゃいます~v







さて!
まず、最初の見開き。
ファンなら一発でわかる。そう、このカラーは、連載第一回目のカラー見開き表紙ですね!
このエドが、もう8年経とうという今の絵と比べても、全然違和感無い!荒川弘先生の当時からの完成度の高さが感じられますね~。
比べてアルの鎧の、不自然さ!(笑)
先生ご自身、「アルのデザインが固まらないうちに連載が始まって」とおっしゃってたことがありました。

その下に「ハガレンストーリーガイド」
「賢者の石」とか「人造人間との邂逅」とかトピックスで分けてあるんですが、~○巻○話と、話数までちゃんと書いてあるところに、さすが!と思いました。こういう部分の細やかさが、結局は全体の締まった印象につながっていくんですよね。

ページの端っこのオマケ。
「ハガレン小話」は、目新しいこと無いんだけど、「エド百面相」は、イイ!
どうしようもないヒドい顔(誉め言葉)をちっちゃくピックアップしてあって、ああんもーエド可愛い~!って思いました!

そしたら、ダ・ヴィンチHPによると、もっといろいろ集めたそうで。
「ほかにもエドのアンテナコレクションやら瀕死コレクションやら集めたのですが、なかなか今回のページ数では掲載しきれませんでした」
今回の?!今回のってことは、また次もあるんでしょうか?
ぜひまた、お願いしたいですー!


次の見開きは、多分記事的にはメイン?「鋼の錬金術師6つの真実」
「15歳と14歳の兄弟の冒険譚という少年漫画の王道ながら、既存作品に比べ、心に残るものがこれほどまでに違うのはなぜだろう。」
このキャッチ文だけでも、読みたい!って思う。
まず、エドとアルを対等に扱っている。最近はアニメ宣伝でもアルもまた主人公、っていうのを前面に出しているけど、ぱっと見だと主人公はエドだけじゃない?
アルをどう捉えるかって、評論でもファンフィクションでも、私にとって一つの指標なの。(アルを無視してたらダメってのじゃないのよ?ただ、アルをしっかり見てる人は、作品全体も俯瞰的に捉えてることが多くて、つまりは私好みなのだ)
「既存作品に比べ」「これほどまでに」って強調してるのも、いい。私がずっとずっと考えているのは、そこだから。

要点6つは、1.ヒーローがいない 2.大人ばかり 3.伏線 4.小ネタ 5.無情 6.希望の光 
1と2をね。
この順序で持ってくるとこに、「わかってる」と感じました。
命の重さや不条理や戦争は、もっとがっつり描いている漫画があるもの。そこは鋼の重要な要素だけど、「違い」はそこじゃないと思うから。

でも、完全無欠のヒーローがいない、は同意するけど、「女の子らしいヒロインもゼロ!」はちょっと待て!(笑)
いや、それが誉め言葉ってわかってるけど、隣の入江監督インタビューでも「男子に人気が出そうな女子キャラはほとんど登場しませんが?」って聞いてて。
いや確かにそうかもしれないけど、けど、でもウィンとリザはダブルヒロインなんだい!オリヴィエは格好いいしランファンはすげー健気じゃないか!
いや、確かに、誰も彼もが、かーなーり、強すぎる、けどさ~(苦笑)

そして2.「大人ばかりの少年漫画」だ。
これは、歌猫も語っている!拙ブログ記事『少年が一人だけの少年漫画』(<お気に入りの記事v)
ダ・ヴィンチでは
「とはいえ、兄弟を大人としてアドバイスしたり諭すのではなく、自らの役割を果たすべく、まっすぐに歩いている人たちばかりだ」と、語られていて。
これは別の誰かの評論「兄弟を子ども扱いしないから、一人前扱いされたい中高生読者にとって、心地いい」と、同じことを言っているようで、違う。
子ども扱いしない、のではなくて、大人もまた自分の道を不器用に一生懸命歩いていて、だから対等。うーん、上手く表現できない。ここも、もっと深く語りたいなあ!(あ、別の評論も思い出した。「今の子どもは守られているけれど逃げ道が無い」全然別の話なんだけど、どこかで鋼に繋がっている。後で自分が読み返す時用に、メモメモ)(そういうのはブログじゃないところでやれ)

3から5は、鋼ファンならご存知のとおりなので割愛。

6「希望の光」もご存知のとおりだけど、
「ファンタジーにありがちな、全てを解決するスーパーアイテムは存在しない」に続き、
「(バトルでも謎解きでも、その活路は)これまでの冒険で得た知見から導き出され」たものだから、大人読者も納得し、「二人を心から応援したくなるのだ」

私はいつも、6の結論を、読後の爽やかさ、等に持ってきていたけど、わあ!甘かったよ!
なぜ、エドとアルを応援したくなるのか。
それは彼らのキャラとしての魅力(例えばエドの表情やアルの性格)だけでなく。
物語の、理が通っているからだ。
彼ら自身が体験し考え知ったことでしか、前へ進めないということを、きっちり描いているから(もちろん、例えばヒューズの死に落ち込むエドをアームストロングが引っ張っていくように、大人の助けもあるけれど)、だから「誰かどうにかしてくれ」ではなく、「エドがんばれ」と、そう思わされて、しまう。

物語の構成が、キャラへの感情移入をもたらす。
「痛ましさ」のような「情」によるものではなく。
「理」もまた、読者をキャラに引き寄せる力になる。
痛ましさを排してなおキャラが持つ引力。もうキャラに同調する素直さが減じてしまった「大人」もまた、「応援したくなる」。
それはキャラの力ではなく、物語の力、なんだ、と。


さて。さすが本雑誌だけあって、アニメ紹介は4分の1ページだけでした。
入江監督インタビューです。
印象に残った発言はこれ。
「周囲の人を巻き込まざるを得ないのが、『ハガレン』と他のファンタジーとの大きな違いです」
ふむふむ。

続く芸能人のコメントは、まあ、普通の。もう知ってるし。
他の記事と比べると、濃度が薄いっていうか…いやあ、ファンのコメントはブログで散々、濃いィのを読んできてるからさ!(笑)

で、続く「識者が紐解く“本当”の鋼の錬金術師」
ここで!
誰を引っ張ってくるか、ってのが、たぶんライターさんの力量なんだと思うんですよ!
で。
このジャンルの二人を引っ張ってくるのか!とか男女バランスへの気配りとか、確かな取材力を感じました。
いやあ、私、こういうのが読みたいんだよホント…!

一人目は西洋文化史を専門とする早稲田大学講師、中野京子氏。
クセルクセスが古代ペルシャ王の名前、というのはよく知られているけれど、アメストリスはその王妃の名前なんだって!わー知らなかった~!

二人目は、倫理学者で東大文学部教授の竹内整一氏。
「“人間とは何か”という問いは、簡単に『人でなし』を作るマニュアル的線引きを拒む」
「人が生きるということには、“おのずから”と“みずから”という、相異なる営み・働きがあります。生や死、自然現象は“おのずから”そうなるもの。(中略)人間が“みずから”行うものが、欲望や願い」
「生は死を内蔵し、どうやっても死を切り離せない。不死とは、つまりは生の何値する生を生きていないということ」
重い!深い!
考え抜かれて自分のものにした言葉、って、強いですよね…。
うーん。すごい。

三人目は錬金術を専門とする関西大学教授の澤井繁男氏。
これは漫画仕立てで軽く。

こういう人にまで、たかが漫画、について取材するって、すごいと思う。だって前二人には実際に読んでもらってるもの!特に「倫理学者」を持ってくるってところが、すごいよ…!
文章も締まっていて読みやすく、力のあるライターさんだと思いました。

で、検索。
東海左由留 ほほう、文芸ライターじゃ無いんですね。肩書きは「生活品評論家」。職人の手仕事の取材が仕事の中心で、ダ・ヴィンチでは「旬の本棚」を隔月担当している。代表著書は「男の時間 大人の為の極上アイテム」。へえー。
それにしても。
荒川弘先生のインタビュアーって、女性が圧倒的に多いですよね…!

だらだらと長い記事でごめんなさい~;
続き、荒川弘先生のインタビューについては、また次回!
いやあ、知らなかったことがありました~!

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私自身が大ファンなんです (噂のライターです)
2009-06-25 08:08:07
歌猫さん

はじめまして。本記事登場の噂のライターです。
普段、こういうことはしないのですが、
歌猫さんとハガレンで響いてるところが
とても似ているので、思わずコメントしちゃいました。

私自身がハガレンの大ファンで(ガンガンは買ってませんが)単行本刊行スタートからずっと読み続けています。

今回のダ・ヴィンチでのハガレン特集は、何年も編集部に行くたびに「特集を組もう!」と言い続け、再アニメ化されたことが追い風になり、特集にこぎつけたものです。

担当の編集女子2人もハガレンの大ファン。
ハガレンへの愛情で3人が結束し、全力をかけてつくったのが今回の特集でした。
錬金術の基本は、理解・分解・再構築ですが、
これは雑誌の編集・ライティングと非常に重なるところが大きいんです。それもはまった理由かもしれませんね。

歌猫さんの鋭い洞察には圧倒されました。
本物のファンは違います。感動しました。

これからもちょくちょくのぞかせていただきます。
ここまでハガレンは奥を深く読み取る方の批評を読むと、原作を読む楽しさが倍増しますから!

ではでは
返信する
コメントありがとうございます。 (歌猫)
2009-06-28 21:16:51
噂のライター様、こんにちは。
こんなにお返事遅くなってしまって、申し訳ありません。
昨日コメを拝見したんですが、最初、信じられなくて…!あああ、こんな時になんかイタい記事トップに上げてるし!とか、おろおろしておりました。
あのように優れた記事を書く方からコメントを頂ける。
ものすごく光栄です。ありがとうございます。
そしてファン心理として、編集側の…公式に近い側の、内情をちらりとでも教えてくださった、ということに、嬉しくて興奮しています。
「何年も編集部に行くたびに」「ハガレンへの愛情で」「全力で」
ありがとうございます!!
ダ・ヴィンチで特集を組んでくださって、期待以上の内容で、本当にありがとうございました。
拙ブログの批評はほんと、素人の真似事で、失笑な記事も数多くあるかと思いますが、少しでもライター様の楽しみや、鋼考察のトリガーになれましたら、幸いです。
特別なコメント、心から感謝いたします。ありがとうございました。
返信する