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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展

2020年10月22日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館にて特別展。

入ってすぐ、今回のメイン展示である「濤声」。
これは16面の襖。唐招提寺の東山魁夷の襖絵となれば、これ。

急に暗くなる展示照明のせいか、ふわふわした気分のまま「濤声」の前に立つ。
――色合いが不思議。実際に目の前にある物体の気がしない。
これはプロジェクション・マッピング?映像で構成されているような色合い。

どうしても疑いが抜けなくて、プロジェクション・マッピングなのではないかと
2回も確認したもの。しかしキャプションには紙本彩色と書いてある。
本当だろうか。

前に東北歴史博物館で「最先端技術でよみがえるシルクロード」
でやっていた変幻光でも当てているんじゃないかと思った。

だって水面が揺らめいて見えるんだもの。

緑色で描かれた海。思っていたよりもずっと靄のかかった色合い。
ストレートな気持ちのいい澄んだ色ではなく、二段階か三段階くすんだ色。
こんな色だとは思っていなかった。単に東山魁夷得意の、あの青緑かと。

この襖絵を見て、日々を過ごす人もいる。
まあそれはお坊さんとかの数が限られた人だけれども。

この展示、やり方も良かった。ちゃんと襖絵を襖として使った状態で展示してくれてる。
けっこういい柱を使っているし、釘隠しもちゃんとついている。襖の手前は畳。
環境展示で気分が三段階くらい上がりますね。


「濤声」を存分に堪能したところで裏に回ると、
「桂林月宵」の半分と「揚州薫風」の半分の並び。これらは水墨画。

「揚州薫風」は中国の広い池の風景。柳が風にたなびく。
遠くに楼閣を備えた三間の橋が見える。
柳が一様で少し面白みがないかと思ったが、橋と柳の遠近感は良かった。
水辺の風が吹く。

「山雲」。
これも良かった。
上段の間の床の間と違い棚と右側の襖と最後の襖。4つとも別な画題で密度が濃い。
一番素晴らしいのは床の間の部分で、尾瀬の早朝のもやのシーンを思い出させる。
だがここに花は飾れなかろう。絵を邪魔する。花を殺す。
山桜の一枝でもあれば、あるいは。

残念ながら全てを環境展示というわけには行かなかった。
「濤声」は出来てたし、「山雲」もかろうじて達成だろうが、
「桂林月宵」「黄山暁雲」は8面の襖なのにもかかわらず、4面4面に分けて、
その上全然別のところに展示しちゃったので良さが半減。いや、4分の3減。
これは残念だった。


襖絵の他に来ていたのは、基本的にその襖絵関連の下絵。
実物の5分の1の割り出し図なるものがあって、タテヨコナナメに基準線を引いて、
そこに下図を基にした絵を描きこんでいるの。それが思いのほか細かく……すごい。

岩や木の配置ならともかく、水面の模様などはもう少しフィーリングで
描いているのかと思っていたので、新知識が得られて重畳。

下絵の色はストレートだったね。東山魁夷らしい色使い。
それが本体はあんなにくすませる。どんな心境がそこにはあったんだろう。


いいもんを見ました。一度は見たいと思っていたものなので、見せてくれて感謝。
通常の展示期間だと年に数回しか開けないそうだし、そんな時には混んで混んで
とても行く気にはならないだろうから、ありがたい機会だった。

欲をいえばやっぱりもう少し環境展示に近づけて欲しいことですね。
繰り返すが「桂林月宵」「黄山暁雲」はほんと残念。
「山雲」も、その場で見ればまた相当に感じが違うもんなんだろうと思った。

透明人間になれたら、夜な夜な美術館に忍び込んで展示物を一人でゆっくり見て回る。
(盗難防止システムにひっかからないと仮定した上で。)
……しかし照明がないと見えないですね。



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