プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< フィレンツェ・ラビリンス 15世紀の私を探して >

2012年01月26日 | ドラマ。
おーまいがっ!……いや、舞台がイタリアだけに、マンマ・ミーア!

おいおい、これはもっと面白く作れただろう!
ドラマにするならする、不思議風味ドキュメンタリーにするならするで、
どっちかに決めれば良かったのに。勿体ないのう。題材はいいのに。

これは原作が……もう20年くらい前の出版だろうか。


デジデリオラビリンス―1464・フィレンツェの遺言
森下 典子 集英社 売り上げランキング: 399025



「デジデリオ ラビリンス -1464 フィレンツェの遺言」という本でした。
当時はあまり知らない本には手を出さない方だったんだけど、図書館の書棚でタイトルに惹かれた。
読んでみたところ、ごっつう面白かった。ミステリ好きでルネサンス好きのわたしのツボにはまる。
あまりに面白かったので、「字の本は文庫で買う」という掟を破って単行本を買ったほど。
(この内容で文庫化するとは、実は思わなかった)

それなのに、下手なミステリよりはるかに面白かった内容を、こんな映像作品にしてしまって。

とにかく失敗はまず台本だね。2時間ドラマで作れる内容ではなかったとは思うけど、
本当に「ドラマならドラマにしろ!」と言いたくなる。
原作は、確かにフィクションとノンフィクションの稀有な間(あわい)を行っていて
それが魅力的なのだが、それはどっちつかずのものを作れという意味ではないんだよ。

もう小芝居が退屈で退屈で。
ライターと編集者の会話も、前世読みの夫人(って、おかしいよ、この言い方。)も、
いい加減にして!な陳腐さ。無駄に時間を使うな!
なんでこうなるかねえ、脚本家。
アクサ生命。せっかく冠番組を作るんだったら、もう少し予算を出せ。
むしろ悪印象を与える。

相棒にイケメンのイタリア人を持って来たのは……気持ちはわかるけれども、
そのせいで話の密度が全く失われてるんだからね。わかってるか?
しかもなんであんな適当な喋りをさせる……。
むしろ、彼の素はもっと真面目で知的な奴っぽかったよ。実際に美術の大学院生でも驚かない。
日本語で喋った内容は薄かったけど、美術についての語りは(微妙に鼻につく)プライドを感じた。
別に原作通り、フィレンツェ在住のイタリア語が達者な日本人で良かったのに。
そうすればもっと密度の濃い情報のやりとりが出来るのに。
……だから何がしたかったんだ、脚本家!ふつふつと怒りが湧き上がる。

そして、これが杏をちゃんと見た初めての機会になるわけだが、
これってもしかしてかなり不幸な出会いなのではないだろうか。
すっごい大根に見えますが。表情もほとんど同じ。“演じる”レベルまで全然行ってないよね?
それはこのヘタレな脚本のせいなのか。

原作はこのドラマ(?)の10倍は面白いですから。
そもそも、情報を追っていく過程が面白いんであってねー。
内容も、これだとまあ5分の1くらいかな……。ルビーの話も出て来ないし、
ミケランジェロの隠し部屋とかも印象強かったし、
そう!何と言ってもボッジオ・ア・カイアーノのシーンがいいのになあ。

ノンフィクションを書いていても、やはり話を作る部分は出て来ると思う。
それがあっても(という言い方も何だが)、ぞくぞくする謎解き。
この映像作品では、そういうぞくぞく感がちょっともなかった。そしたら、もっと密度の濃い
ドキュメンタリーの方がなんぼか良かった。

まあとにかくこの映像作品はダメダメでした。
反省して出直して来い!と言いたい。主に脚本家に。




フィレンツェに行った時も、デジデリオの作品は“あのデジデリオ”と思って心して見た。
サン・ミニアート・アル・モンテ教会でポルトガル枢機卿の墓も見た。
バルジェッロ宮で誰だかの胸像も、聖ロレンツォ教会でサクラメントの祭壇も見た。
実はロンドンのヴィクトリア&アルバートミュージアムにもレリーフの模刻がある。

ただ、今回ドラマ内で初めて見たのが「若き司祭の胸像」。
多分当時の本には出ていない。実際に見てみたいな。
だが、テレビでちらっと見る限り、デジデリオ作品にしては――円熟しているかと見えた。
デジデリオ作品は頼りないほどに繊細、そして古拙さが漂うと感じるんだけど、
そういった危うさの少ない、バランスのいい仕事。






最初の、わけのわからない、とても一般受けするとは思えない、しかし謎めいたタイトルが
とてもいいと思ったのになあ……。
1995年の最初の単行本では「デジデリオ ラビリンス 1464 フィレンツェの遺言」。
2000年の最初の文庫本で「デジデリオ 前世への冒険」
2006年の二度目の文庫化で「前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って」
後二者では、タイトルでわたしの食指が動くことはなかったであろう。



コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < 舞台 テンペスト>(テ... | トップ | 負けたなー。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ドラマ。」カテゴリの最新記事