プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 万城目学「べらぼうくん」

2024年06月09日 | ◇読んだ本の感想。
てっきり小説だと思って読み始めたらエッセイだった。
実は今まで読んで来た万城目学のエッセイはいまいち……ちょっと薄くて。
でもこれはけっこう面白く読んだ。

これは大学受験を失敗した時点から浪人、就職を経て、小説家になるまでの
イロイロを書いたエッセイ。

この人は自己卑下系の人なんだけど、自己分析がなかなか面白かった。
建設的な(あるいは「ほほう」という)分析もあったよ。


いわく、自分は抽象的な論を受け付けない。具体的なイメージを連ねて物語を構成する。

いわく、海外旅行に出る人は、その国の暗部が見える人と見えない人の二種類がいる。

万城目は沢木耕太郎の「深夜特急」を読んで海外に憧れた口だそうで、
ノンフィクション作家は暗部を見る力が強いと書いていた。

わたしは「深夜特急」を読んで、「他人のうちの台所を勝手に覗く行為」と感じて嫌いだったけどね。
まあわたしは「深夜特急」を読んだのは遅かったし、そもそも暗部を見る姿勢に反感を持つ。
わざわざ行くのに、なぜその場所の暗部を見るのか。見たくないです。
せっかく行くのなら素敵なところを見て幸せになりたいよ。

いわく、将来について悩んでいる人は、他人の成果について「こうすればいいのに」と
自然に、あるいは簡単に発想が沸いて来るジャンルに注目してみるといい。

これは一面の真実かも。少なくとも手がかりの一つかも。
自然、簡単という部分は他人がどのくらい思っているのか難しいけど、
しかし文句が出てくる=不満があるということは、少なくともその分野に興味関心が
あるのは間違いない。興味関心がない分野には、興味も知識もないわけだから。
そこを追求してみる価値はある。


――全体のページ数の半分くらいを読み直して、こんなとこかな。
最後まで読み直したら倍くらいに増えるかもしれないが、疲れたので以下は省略する。



その他に面白かった話題は、

ロザン宇治原と同期生だったこととか、
初めての海外旅行一人旅で置き引きに遭ってすってんてんとか、
大学に入ることがゴールで、京大に入ったら人生バラ色を本気で信じていたとか、
「文化」の盛衰を音楽シーンによって実感したとか、
京都大学の学生は、卒業が150人、留年が300人とか、
山寺宏一にサイコロトークの極意を聞いたこととか、

要はけっこう面白かったという話です。
万城目学のエッセイを読んでみようかという人は、これをまず読むといいよ。


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