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◇ 藤森照信「フジモリ式建築入門」

2021年06月18日 | ◇読んだ本の感想。
ちくまプリマー新書だから、基本的には中学生・高校生くらい向けの内容。
と、思っているのだが、書き手によってスタンスに違いがあるかもね。
書き手によってというより、当初のスタンスとは変わってきているということか。

ざーっとした建築の通史ということで読んで重畳。
内容には藤森さんの主観的な理解が大いに入っているのかもしれないが、
藤森さんは好きだし、もうわたしもこれをもって建築通史ということにしたい。


古今の古代建築は高さを求める。それは権力者の魂を太陽へ送り出すための発射台。
その考え方は面白かった。
10年くらい前にテレビ番組で、「ピラミッドは魂のリブート装置」と
たしか吉村作治が言っていたが、言わんとするところは同じだろう。
魂の発射台という考え方の方がシンプルでわかりやすい。

だから古代建造物は高さを目指す。エジプトと中南米でピラミッドが出来たのも
同じ理由による。……とのことで、日本の古墳は高くないよ?と思ったら、
やっぱりあれも高さを求めたものだそうだ。
どうしてもピラミッドとかに比べると高さ感はないですよね。
丘だし。高さよりも幅広感の方が。世界最大の表面積のお墓とか聞くと特に。
他に御柱とか、出雲大社の心の御柱とかも同類。
こっちの方が発射台としては納得出来る形。


あと、古代ギリシャから連綿と続くヨーロッパ建築の終着がゴシックだという視点。
そうなんですよね、ゴシックまでは認識出来るんだけど、
ルネサンス建築がわからなくて困る。ルネサンス建築って、フィレンツェ一辺倒
じゃないですか。代表作が決まった建築しか出て来ないからさっぱり理解が広がらない。

ゴシックとルネサンスが断絶していると読んで納得するところがあった。
安心した。
それらから別枝で古代ローマからの系譜を引いて、
その頃出て来た科学思想を基に、全体的に軽量化した。
大建築は作られない。整然とした、人間サイズの建築。

その整然とした建築に飽き足らなくなってマニエリスムが生まれ、
バロックが生まれる。
バロックには動きのバロックと力のバロックがあり、
動きのバロックはイタリアの曲線が独特なバロック。
力のバロックはフランスのバロック。大宮殿などで採用される。

そこで内装の可愛らしさから発展するのがロココ。
なのでロココは外観には影響を及ぼさない。
ここが建築の2度目の終着。


そこからは再度ローマ時代から始めようとする。新古典主義。
いや、ローマよりもギリシャだろうという流れも出て、グリーク・リヴァイバル。
その流れは大英博物館。円は閉じる。

ゴジック・リヴァイバルも出て、これがビッグ・ベン。
ネオ・ルネッサンス、ネオ・バロック。そしてそれらの折衷様式。
インド式、アラビア式、日本式、とあらゆるものと結合する。
これらをまとめて歴史主義。折衷の混乱及び混沌。

今後の建築がどこへ向かうかは不明。



なお、日本の建築はまったく世界的な流れからは切れている。
日本の建築は時代様式はまったく影響を受けず、その建物の用途によって様式が
決まる。神社は神社っぽく。寺は寺っぽく。城は城っぽく。茶室は茶室っぽく。
城なんて巨大な建物が、誰が設計したという記録もなく今にいたるまで建っている。

住宅は、時代によって変わってはいくのだが……
様式という気はしない。竪穴式→高床式→寝殿造り→書院造り?→数寄屋?
と並べてみたが、高床式から寝殿造りまでの間が差がありすぎるし、
庶民はどうなんだっていう気もするし、書院と数寄屋の後が全く……知識がない。

農家は寝殿造りからの造作の流れをひく田の字型から発展してきて、
土間がだんだん小さくなり、とかなんとなくイメージはわくのだが、
町家は京の町家のことしか知らない。
京都以外の町家はどうなっていたんでしょうね?

建築の世界は広大。
全部を詳細に知ることはかなわなくても、ある程度のことは知っておきたいものよ。
あ、西田雅嗣の「ヨーロッパ建築史」買ってないや。


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