お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

はらはら ドキドキ ぶるぶる‥‥そして

2009-09-08 | about 英語の絵本

First Day Jitters

娘の同級生だったジェニファーはこの5月に大学を卒業し、"Teaching America"プログラムに応募して公立幼稚園の先生になりました。

以前このブログでも触れましたが、新卒学生を夏の3か月間徹底的にトレーニングして、赴任希望者の少ない恵まれない学校区の公立学校に優先的に配置するのがこの"Teaching America"の趣旨です。

政府の行政支援プログラムですから、お給料が安いことは想像に難くないのですが、では大学生のインセンティブは何か?というと、将来大学院などに進学するときには(安い給料で働いた分の見返りとして、政府の)奨学金がもらえること。ですから、進学希望なのだけれど「まずは自分で大学院の学費を貯めなければ‥‥」という”新卒学生”が応募します。それから「卒業はしたけれど‥‥」当面何をするか、何をしたいか決めて/決まっていない、そういう”モラトリアム群”(ただし働こうというのですから真面目で勤勉なモラトリアムです)も応募してきます。

言わずもがな、不況の今年は例年よりも応募者が多く、行政予算の不足を大いに補っています。

さてジェニファーですが、恵まれない学校区に行くと聞いてはいたものの、ダウンタウンの真ん中にある赴任先の学校は、彼女の通った郊外の学校とはまったく様相が違い、建物もグラウンドも荒れて遊具もほとんどなく、「なにしろ教材も本もろくに揃っていないの‥‥」という状況。彼女の嘆きを聞いて、友人たちが絵本や文房具を持ち寄って寄付しました。

アメリカの公立学校は、予算不足を父兄のボランティアと寄付で補っているので、親の支援が期待できない学校は"始めから予算不足"。先生の人件費を確保するのが精いっぱいで、建物や施設のメインテナンスや備品の購入は完全に後回しになり、結局「できないまま」になります。そんな時は、ジェニファーが友達に頼んだように、教師や志のある有志の父兄がファンドレイジングしたり、現物の寄付を募るしかありません。アメリカの公共政策は、残念ながら、医療に限らず、ある意味でまったく不十分です。

さて再びジェニファーですが、さらに先輩の先生から「親が忙しいので、子どもたちはろくに朝ごはんも食べてこないし、ランチも持ってこないことがあり、だから授業に集中できない」と聞かされたのです。そこで彼女は考えた末に量販店に出かけ、ポケットマネーをはたいてシリアルの小箱とパワーバーを買いこみました。ジェニファーの寄付希望品目リストに「すぐ食べられて保存がきく健康食品(ただし小分けされていること)」が加わったことは言うまでもありません。

そうこうするうちに新学期が迫ってきました。まるまる3か月のインテンシブなトレーニングを終えたとはいえ、ジェニファーは、これまで幼稚園であれどこであれ「教えた」経験がなく、まさに初めての"先生"体験。それなのに、教材研究するより、教室の片づけやシリアルの買出しに走り回っていた時間の方が長い気がします。初日が近づくにつれ「こんな私に、この学校区で教師が務まるかしら?」とだんだん心配になってしまいました。

そんなジェニファーに、赴任先の先輩先生が「頑張ってね!」と1冊の本をプレゼントしてくれました。ずばり"First Day Jitters"(入学の日の身ぶるい)というタイトルの絵本でした。

「一読、爆笑。これだ!と思ったの」とジェニファーは言い、さらに「入学初日にクラスでこの本を読み聞かせて、『私もあなた方と同じ新入生。新米教師よ』と皆に話そうと決めたとたん、なんだかとても気持ちが落ち着いたの」と話してくれました。

ジェニファーが読んで聞かせると、案の定、子どもたちも大喜び!初めて読み聞かせた入学初日からずっと、何度も「読んで!読んで!」とせがまれる本になっているそうです。

"First Day Jitters"はユニークな”落ち”のついたお話です。

今日から学校。でもセーラは学校に行きたくありません。だって‥‥だれも私のことなんか好きになってくれないかもしれないし‥‥と、ありとあらゆる心配でいっぱいになって、どうしても学校に行きたがりません。仕方がないので、お父さんが車に乗せて学校まで連れていくことになりました。さて学校に着くと、校長先生がお迎えに出ていてくれました。そして校長先生に連れられて教室に行くと‥‥奇想天外なエンディングで、実はセーラは‥‥と明かされます。

この絵本、子どもばかりか、実は先生方に大いに人気があり、アマゾンの読者レビューにも先生からの書き込みが目立ちます。人気の秘密はエンディング。読んでくださいね!きっと笑って納得できます。

新入学!期待に満ちて嬉しい半面、子どもも親も緊張と心配でいっぱい。でも実は、子どもを親を迎え入れる先生も、負けず劣らず緊張しているのです。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする