決勝戦、試合残り時間は、30秒を切った。
ゴール下では、鍛えられた3つの体が競り合っている。
赤木のシュートに、前後から畳み掛ける徳永と河田。
深体大、世代最強クラスの2人が赤木に襲い掛かる。
「ウホォォォーーー!!ウホッ!!!!」
「打たせるもんかよ!!」
「赤木!ジエンドだーー!!!」
「負けーーん!!」
『バス!!』
『ザシュ!!!』
赤木の力強いゴール下のシュートが決まった。
そして。
『ピィーーーー!!!』
「青!#9!プッシングーーー!!!」
「バスカーーーン!!!」
「ファウルは河田だーーーー!!!」
「赤木が河田から、バスカンを奪ったーーーー!!!」
「いいぞ!!赤木ーーー!!!」
「ゴール下では力強い!!!」
「うぉぉーーー!!!」
再び雄たけびをあげる赤木。
「赤木!!見事だぜ!!!」
諸星が詰め寄る。
「ナイッシュ!赤木!!!」
「いいぞ!!」
藤真、真下、野辺らも赤木のプレーを大いに称えた。
「うぉぉぉーーー!!」
なおも叫ぶ赤木。
(俺は河田にも負けてはおらん!!!)
今までに感じたことのない興奮状態にいた。
「赤木のやつ。」
と河田。
「わりー。今のは俺のファウルだよな。審判、どこ見てんだか。」
「構わねぇよ。決められたのには、変わらねぇからな。」
「まぁ、そうだな。」
(俺は、インサイドなら河田にも負けておらんのだ!!!
もっと技術を磨いて、やつの、河田の全てを超える!!!!)
赤木は拳を握り締め、河田を睨んだ。
「いつでも相手してやる。うはっ!」
「いつまでもいい気にはさせんぞ!」
だが。
『ガンッ!』
「あっ・・・。」
「なに、やってんだよ!!決めろ!バカ!!」
ワンスローを外した赤木。
リバウンドは、C辻が奪い、深津がゆっくりとボールを運ぶ。
そして。
『シュパ!!』
先ほどのお返しとばかりに、河田が赤木を抜いて、ゴールを決めた。
「うし!!」にかっ。
力瘤を見せ付ける河田。
(あのやろう。)
『プルプルプルプル。』
怒りを抑える赤木。
決勝戦ラストプレー。
『スパ。』
諸星が、深体大ディフェンスを切り裂いた。
「どうだ!このやろう!!見たか!!深体大!!」
無駄に吼える諸星。
エンドラインから深津にボールが入ったところで、試合が終了した。
「醜いぞ。諸星。」
と赤木。
「さぁ、整列だ。」
と藤真。
「なっ!!赤木てめーー!てめーだって、吼えていただろう!!!」
「諸星、今も昔も変わらねぇな。うはっ!」
「いじられキャラは昔からピョン。」
「ぐっ、河田、深津・・・。」
「諸星君は、口を開かなければ男前なのにね。」
「そうだな。話すとバカそのものだ。」
「なっ、牧瀬!徳永!!」
『ガツッ!』
「ぬ!」
「整列だ。ばかもん。」
赤木は、諸星の頭を掴み、強引に整列させた。
「スコアどおり、青!深沢体育大学!!!!」
審判が、深体大の優勝を宣言した。
「優勝おめでとうーーー!!」
「両チームともよかったぞーーー!!!」
「深体大おめでとう!!!!」
「慶徳もよくやったぞーー!!」
「この点差で、よくやったか。」
と三井。
「ちっ、まだまだ練習が足りないっすね。」
宮城が答える。
「この新人戦、深体大の凄さを骨身まで感じたな。」
「決勝戦で、14点差・・・。」
「難攻不落の深体大。あと2年のうちに、打ち崩すことができるか・・・。」
花形を初め、慶徳に14点差をつけ、圧勝ともいうべき勝利で、優勝を飾った深体大に、
どの選手も自信を失う。
だが、それを打ち消すような言葉が発せられた。
「2年後、うちが深体大の首をもらう。」
「!!!」
「!!!」
声の方向に振り返る各選手。
「やはり、お前か、牧。わりーが、深体大の首はうちがもらうぜ。なぁ、仙道。」
三井は、仙道に問いかけた。
ビックリしたような眼で、牧を見る仙道。
しばし、沈黙が流れた後。
「ええ。」
柔らかに答えた。
「ふっ、楽しみになったな。」
と牧が笑った。
「いや、深津や藤真、牧でもねぇ。No.1PGはこの宮城リョータだ!ねぇ、新庄のダンナ!」
「宮城、それをいうならスタメンPGを奪ってからにしろ!!
悪いが、白金にも、横学にも、河田を止められる選手はいない。
河田を止められるのは、俺だけだ!」
「柔よく剛を制す。河田を止めるのは、俺だ。」
答えたのは、花形。
「深津さんは、俺が止めます。」
「徳永は、俺が。」
両サイドの織田、大和も花形に続いた。
「では、2年後、全日本大学バスケットボール選手権大会の決勝の舞台でお会いしましょう。」
神がその場を締める。
「ふん!相変わらず生意気なやつだ。」
と三井。
「全日本大学バスケットボール選手権大会、楽しみだな。」
と新庄。
「2年後といわず、来年でもいいけどな。」
と大和。
「これより、表彰式を行います。」
と体育館にアナウンスが流れる。
「おっ!表彰式が始まるぞ!」
「牧さん。」
「あぁ。」
「仙道、帰って練習だ。」
「ふーーー。」
「さぁ、俺たちもだ。」
「あぁ。」
「ダンナ、俺たちも負けてられねぇぜ。」
「まずは、スタメンを奪え。他の大学のことは、それからだ。」
「ダンナは、そればっかりだな。」
「期待してるんだよ、お前に。」
「そうなんすか。」
「松本!余計なこというな!」
「ふっ。」
アナウンスの声を合図に、選手たちは、各方面へと歩みを進めた。
再び、熱い火花を散らす日を信じて。
第50回 関東大学バスケットボール新人戦
優勝 深沢体育大学
準優勝 慶徳義塾大学
第3位 名稜大学
第4位 白金学院大学
最優秀選手 河田 雅史
得点ランキング
1 河田雅史(深体大) 30.9
2 諸星 大(慶徳義塾大) 27.3
3 市原朝日(名稜大) 27.2
アシストランキング
1 深津一成(深体大) 13.1
2 藤真健司(慶徳義塾大) 12.8
3 仙道 彰(横学大) 12.0
リバウンドランキング
1 赤木剛憲(慶徳義塾大) 14.5
2 河田雅史(深体大) 14.2
3 里中悠介(名稜大) 14.0
ベスト5
G 深津一成(深体大)
G 諸星 大(慶徳義塾大)
F 河田雅史(深体大)
F 里中悠介(名稜大)
C 赤木剛憲(慶徳義塾大)
#12 大学 新人戦編 終了
#13 神奈川 国体編 に続く。