goo blog サービス終了のお知らせ 

うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#89 【神奈川代表】

2009-04-06 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。

試合は、全部で5試合。

現在、4試合が経過し、2勝2敗のタイとなっている。

続いて、最終戦第5戦が行われる。




「いよいよ、最後の試合だな。メンバーはどうするよ?」

と三井。


藤真が悩みながら、人選をする。



「赤木、ゴール下は頼んだぞ。」

「もう誰にも負けん。高砂であっても、河田であってもな。」


「この試合が終わったら、勝負だからな。」

魚住の鼻息の荒い。

「あぁ。いつでも相手になってやる。」



「体力は持つか?三井。」

「問題ねぇ。俺が出ねきゃ、海南もピリっとしないだろ。」

「外角のシュートと清田のマークを頼む。」

「チョロいぜ。」


(赤木と三井・・・、この2人をベンチから見れるのは、これで最後かな。)

少しだけ目が潤んでいる木暮。



「神を押さえるのは・・・。」

池上と長谷川が、藤真の口元に注目している。

「一志、もうやられるなよ。」

「ディフェンス1本でやらせてくれ。」

「そのつもりさ。」


「長谷川、しっかりな。」

『コクッ。』

池上が、長谷川の肩をポンと叩いた。



「PFは、花形だ。Cじゃなくて、すまんな。」

「なーに、心配ない。進学したら、PFもするつもりだから、いい勉強になるよ。」



「そして、PGは俺がやらせてもらう。」

「際どいパスを出すから、俺から目を離すなよ。」

「OK!」

「よし、いくぞ!!」

「おう!」

混成チームが一つになった。




対する海南。


「真田、いけるか?」

「えっ、はい。もちろんです。試合に出たくて、うずうずしていました。」

真田の声は明るい。

「苦しくなったら、すぐにいえよ。」

「はい。」


「よし。オフェンスは、4アウト。ディフェンスは、マンツーで真っ向勝負。いいな?」

「おう!」




「最後の試合だ。言い残すことはないか?」

「最後は勝たせてもらう。」

「最後も勝たせてもらう。」

牧と藤真が対峙する。



ジャンプボール、例によって、赤木が勝った。


混成チームのオフェンスから最終戦が始まった。



『キュ!』


『ダム!』


藤真が牧を振り切ろうと、速度をあげる。



ベンチからは、木暮や池上の声が聞こえる。



堀田が、三井の旗を振っている。



海南ベンチからは、練習試合と思えないほどの声援が送られている。



コートに立っている10人は、汗が飛び、息が上がり、声を出し、己の精神を集中させ、
体を動かし続けていた。



もちろん、勝利を掴み取るために・・・。



だが、公式戦では見せない笑顔がそこには溢れていた。



ひとつひとつの動きに喜びを感じ、ひとつひとつの動きを記憶しているように思えた。



コートの10人、いやベンチのもの、そこにいる全てのものが感じていた。




『ただただ純粋に楽しい・・・。』




それだけだった。




笑いながら、話しながら、楽しみながら、
昼休みの空き時間にするゴールにボールをただいれるだけの遊びのようなバスケットボール。

そんな感じだった。




そして、掴み取った。




『勝利』以上のものを・・・。




体育館の出入口。

「負けるなよ。」

「負けたら、許さねぇ。」

「会場は近いしな、応援に行くから。」


「お前らの思いを無駄にはしない。」

「優勝カップを楽しみに待ってやがれ。」


混成チームの8人と海南メンバーが最後の挨拶をしている。


「清田、冷静になれ。そして、牧の全てをこの大会で盗むんだ。」

「はい。藤真さん。」

藤真には素直な清田。


「1番はお前だが、俺が神奈川代表センターだ。」

高砂が握手を求める。

「そうだな。」

と赤木と魚住が、同時に手を出した。

「俺が1番だ!」

「俺だ!」

「なにをーー!」

「よし、勝負だ!赤木ーー!!」

「上等!!」

「まぁまぁ。」

最初から最後まで2人のなだめ役に回っていた木暮であった。


「俺は、横学にいくことになった。」

「俺は、推薦で拓緑。藤真は・・・。」

「聞いている。俺は、まだ検討中だ。正直、少し悩んでいる。」

「そうだな。焦って決めるもんじゃない。」

「大学で対戦するようなことがあったら、そのときは勝たせてもらう。」

「あぁ。楽しみにしているよ。」

「でも、その前に俺たちは1部まで勝ち上がらないとな。」

笑う三井と花形と牧。


「関東学園に決まった。」

と嬉しそうに長谷川がつぶやいた。

花形と藤真は少々驚いたが、みんなが祝福した。


武藤と高砂が目を合わせる。

「いいそびれたな。」

「あぁ。」


「神、頑張れよ。」

「ありがとうございます。池上さんと長谷川さんのおかげ、今日はいい練習ができました。」

「きっと、俺らクラスのディフェンダーは、全国でもザラなんだろうな。ちょっと悔しいな。」

「いえ。2人は、神奈川が誇る名ディフェンダーですよ。」

「ちぇ、年下にお世辞いわれちまったよ。だが、ありがとな。」

「頑張れ。」

「はい。」


「さぁ、そろそろ帰ろうか。」

「飯でも食っていこうぜ。」

「おう、焼肉だ!」

「イタリアンで、どうだ!」

「美味い寿司屋を知っている。」

ワイワイガヤガヤと体育館を去る8人。




最後に藤真がいった。




「負けるなよ!!神奈川代表!!!」




8人は、前を向きながら、右腕を高く上げる。




「あーしたーーー!!!」


体育館の入口にいた海南メンバーは、8人のその後姿をみながら、
大きな声で挨拶をし、深々と頭をさげた。



「ライバルであり、いい仲間たちだったな。」

と高頭。

「えぇ。最高の仲間たちです。」

牧が笑顔で答えた。




そして、3週間後、東京都にて第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会が始まった。








04 海南 番外編 終了
05 海南 選抜編 に続く。

#88 【MVP】

2009-04-04 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。

試合は、全部で5試合。

現在、3試合が経過し、混成チームが2勝、海南が1勝した。

続いて、第4戦が行われる。




海南メンバー5名は、すでにコートで待っていた。



「宮益を入れて、ツインシューターか・・・。こちらは・・・、三井。」

「ん!?」

「どうだ、やってみるか?」

海南ベンチを見る藤真。


「あぁ。いいねぇ。初めてだな、あいつとやるのは・・・。」

にやっと笑う三井。




「おっ、藤真がベンチだ!」

「PGは誰がやるんだ?」




混成チームのベンチには、藤真、赤木、長谷川が座っている。

「さぁ、MVPの牧に中学MVPの三井がどこまでやれるか。なぁ、赤木。」

「ふん。人並み以上のバスケのセンスはあっても、復帰して半年足らずの三井が、牧に勝てるわけがない。」

「そうかな。俺は、一方的な勝負にはならないと思うぜ。」

「俺もそう思う。」

長谷川も会話に入ってくる。

「買い被りすぎだ。」




「PGは、三井か。」

笑う牧。

「俺は、オールラウンダーだ。甘く見てると、痛い目見るぜ!」

三井も笑った。



ジャンプボールは、例の如く、魚住。

今度は、三井がしっかりとキャッチした。

「いくぜ!牧!!」

「おっ、気合が入っているな。」

と牧。


牧を抜きにかかるが、コースを塞がれる。


『キュ!』


素早いフロントチェンジ。


だが、同じようにコースを塞がれた。



(ぬっ!)


三井が、牧の足元を見て呟く。



「靴紐。」


「んっ。」


牧が足元を見たその瞬間に三井が牧を抜き去った。




「三井が牧さんを抜いたーー!!」

「なんか、牧さん下向いたぞ!!」




(ちぃ、騙したか。)

と三井の後姿を追いかける牧。


(頭脳プレー!!)

と自画自賛の三井。




「ふっ、三井め、何かやりおったな。」

とベンチの赤木は苦笑いをしている。




「木暮!」

パスは、木暮へ。宮益の上から、ジャンプシュートを決めた。




ボールを運ぶ牧には、三井がついた。

宮益に木暮、神に池上、武藤に花形、高砂には魚住がついた。


「さっきは随分せこい手を使ってくれたな。」

牧の表情は明るい。

「あんな手に引っかかるとは思わなかったぜ。」

「ふん。次は本気でいくぞ。」

「あぁ、楽しみだぜ。」



だが、



『キュ!』



一瞬にして、牧は三井を抜き去り、魚住と接触するも、ボールはネットを揺らした。



(マジかよ!このドライブ、流川並だぜ・・・。)



「さぁ、次はどうする?」

笑いながら、三井に話しかける。

「お楽しみはこれからだぜ!」



三井が静かにボールを運ぶ。

トップの位置、味方の位置を確かめている。


(木暮、池上は、ファーストオプションとしては考えにくい。中を使うか、あるいは、自分でくるか・・・。)


(魚住、花形を使いたいところだが、牧も警戒しているはずだ。まずは・・・。)




『シュ!』



コートにいる9名の虚を突く3Pライン1m遠めからの3Pシュート。



(!!!)



『ガコン!!』



外れたボールを花形がそのままチップインで押し込んだ。



(神のように巧くはいかねぇか。俺にはちょっと長かったかな。)

苦笑いの三井。


(リバウンドに分がある分、思い切りよく打てたということもあるが、あの距離からも打ってくるか。
警戒が必要だな。)




海南のオフェンス。


ボールをキープしている牧。

(そろそろ、やり返さないとな!)



『バス!』



魚住を背中で押さえていたローポ台形ライン上の高砂にボールが渡る。



「ゴール下にはいれさせん!」

魚住が吼える。



だが、



「なっ!!」



『シュパ!』


高砂は、牧からボールをもらった体制のまま、バックシュートを決めた。




「うまい。あの体制では、ボールも見えなければ、ブロックのタイミングも合わせにくい。」

「あのバックシュートは、相当練習しているな。」

と赤木と藤真。




「確率が上がってきたな。」

と牧。

にやっと笑う高砂。

「全国までには、もっと確率をUPさせておく。」




「魚住、気にするな。あんなシュート、そうバンバン決まるもんじゃない。」

「あぁ。だが、注意は必要だ。高砂のゴール下は赤木や花形とは違う味がある。
お前もわかっていると思うが、牧には気をつけろよ。」

「わかってらい。」




三井がトップでボールをキープ。


『ダムダム・・・』


『バン!』


牧の右足の横を通る鋭いバウンドパスが放たれた。


(花形か?)


牧が振り向くとそこには、木暮が走りこんでいた。


(木暮!?)


三井は、ワンフェイクをいれ、右へきれると、そこへ、木暮からのパスが供給される。

やや体が流れながらも、ジャンプシュートを放った。



『シュポ!』




「三井め、牧に張り合ってやがる。」

「練習試合とはいえ、牧が相手じゃ、三井も燃えるだろう。藤真みたいにな。」

「俺は、ただの牧の練習相手だ。」

「どうだかな。」




試合は、文字通りPGとして、牧と三井の2名が支配していた。

三井が得点を決めれば、牧もペネトレイトからアシストを演出。

牧が自分でゴールを奪えば、三井が意表をつくアシストで味方を動かした。

やはり、この試合で1番注目されたのは、PG三井。

荒削りではあるが、外角を決められるPGとして、今後につなげられる可能性を見出した。

ただ、本人にそのつもりはない。


(PGか、俺には性に合わねぇ。やっぱ、俺には、活躍のできるSGがお似合いだ。)


だが、そんな三井の姿を食い入るように清田は見つめていた。


牧のエンジンもかかり始め、この試合、8得点、5アシストを記録。

神と宮益もそれぞれ、1本の3Pを沈め、3点差で、混成チームに辛勝した。



海南 24
混成 21







続く。

#87 【PG清田】

2009-04-03 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。

試合は、全部で5試合。

現在、2試合が経過し、混成チームが先勝し、海南が第2戦に勝利した。

続いて、第3戦が行われる。




「藤真、ちょっと揉んでくれないか?」

「ん!?」

牧は、親指を立てて、清田を指差した。

「あぁ。お安い御用さ。」

笑う藤真。




「清田!次、PGで出てみろ。」

「俺っすか?」

「あぁ。お前がPGだ。」

「OKっす。準決勝のリベンジってとこっすね。」



海南は、牧が下がり、清田がPGへ、小菅がSG、神がSFのポジションに入った。



対する混成チームは・・・、



「夢のようなチームだな。」

木暮が苦笑いをしている。


池上がいう。

「チームワークが気になる・・・。」




「うおーー!でけーー!!」

「2m近いクラスが3人!」




「ふん、ただデカいだけだ。ねぇ、神さん?」

「あぁ、そうだな。」

(でも、正直、牧さんがいないこのメンバーでは、太刀打ちできそうもないな。)

と苦笑いの神。



「ディフェンスは、2-3、リバウンドを1本も獲られるな!」

「OK!」

「このメンバーで獲られるわけにはいかん!!」

「ゴール下は、1本も入れさせん!絶対に死守だ!!」

藤真と三井、そして、3人のセンターがコートに足を踏み入れた。




魚住、高砂のジャンプボールでスタート。


(!!)


高砂は、ジャンプに飛ばない。


ボールは、魚住が前に弾いたが、


『バシ!』


「ナイスパス!」にかっ


清田がキャッチした。



『ビュン!』


『シュパ!』


いち早くスタートを切っていた小菅が、清田からの鋭いパスを受け、レイアップを決めた。


(試合を支配するのは、俺だ!牧さん、見ててくれ!!)

清田に闘志が漲る。




混成チームのオフェンス。


藤真には清田がついた。

「準決勝のリベンジをさせてもらうぜ!」

「やれるもんならな。」


『キュ!』


緩急をつけたドリブルから、清田を抜きにかかる。


(そのパターンは、知ってるぜ!)


間合いをあけて、藤真のドライブに備えた。



だが、



『シュ!』



『スポッ!』



下がった清田の裏をかき、3Pシュートを決めた。



「決めたぞ!」

「ぐっ!!」



海南のオフェンス。


(俺だって、牧さんみたいに!)

藤真と赤木の間に突っ込む清田。




「清田のドライブ!!」




『クルッ!』


「神さん!」


牧と同様に、ペネトレイトから神へパスを供給。



だが、



「甘めーよ。」


三井がカット、藤真の速攻が決まる。



(くそー、三井め!)



再び、海南ボール。

小菅から神にボールが渡る。


「赤木、前!神、チェック!!」


藤真の指示よりも早く神がクイックリリースで3Pを決める。



(やはり、2-3だと、神が空いてしまうな・・・。)


「藤真、俺に付かせてくれ。」

「ん!?」

「俺も準決のリベンジだよ。」

「好きにしろ。」

藤真が花形の腰を叩いた。

混成チームは、神へのボックスワンを形成した。



混成チームのオフェンス。


『ダムダム・・・』


「初めから、神にパスすると決めて、突っ込んだら、バレバレだぞ。」


「な!?」

ドリブルをつきながら、藤真が清田にアドバイスをしている。

「自分でいくか、神を使うか、他の誰かを使うか、その状況状況で、正しく判断するんだ!
牧のようなペネトレイトを目指すなら、その一瞬の判断力、決断力を磨くんだ!」

「言われなくったって、わかってらい!」

「聞く耳を持て!冷静さを保て!周りをよく見ろ!」

「くそぉ!」

「いくぞ!!」

藤真がドライブで突っ込む。


(自分か、三井か、それとも・・・。)

藤真が、ちらっと三井の位置を確認した。


(三井!!と見せかけて、自分で突っ込むんだろ!)

清田が藤真のドライブをとめにかかる。


(いい読みだ。だが、もっと周りをよく見るんだ!)



『ガシ!』



清田は赤木のスクリーンにつかまった。



(ぐっ!)



藤真から、赤木へ、ピック&ロールでゴールを奪う。




「周りが見えていたら、お前なら交わせていたはずだ。」

「・・・。」

藤真の言葉に清田は返す言葉がなかった。




試合は、ゴール下を圧倒的に支配した混成チームのペースで進んだ。

清田は藤真をとめられず、また小菅も三井をとめられず、
海南の十八番、牧-神ばりの必勝パターンで、藤真-三井が3本の3Pを決めた。

対する海南は、長谷川、池上をもってしてもとめられない神を花形がとめるわけもなく、
この試合18点中14点を神がたたき出した。


なお、試合は、混成チームの圧勝であった。



海南 18
混成 28




「清田は、どうだ?」

「悪くない・・・が、まだ青いな。プレーの資質は問題ないが、精神力が弱い。
もう少し大人にならないと、PGとしては、厳しいかもな。」

「俺も同意見だ。だが、あいつにはやってもらわなければならない。」

藤真と牧が話しているところに、清田がきた。


「藤真・・・、いや、藤真さん。ありがとうございました。」

深々と頭をさげる清田。


「来年は、清田がPGをやるみたいだな。」

と藤真。


「おっ俺がですか?」


「あぁ。お前が海南を勝利へ導くんだ。」

牧が続いた。


「だが、もっと大人になってもらわなきゃ困る。」

「・・・。はい、牧さんの期待にこたえられるよう、この清田信長、誠心誠意、努力します。」

「二言はないな!」

「No.1ルーキーの名にかけて!」

「まだいうか!!」

3人が笑った。







続く。

#86 【湘北コンビ】

2009-04-02 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。

試合は、全部で5試合。

現在、1試合が経過し、混成チームが1勝をあげた。

続いて、第2戦が行われる。



海南は、第1戦同様のスタメンを起用。



対する混成チームは・・・。


「赤木、次は俺が出る!」


「断る!!」


「何をーー!!」

「わかった。俺が変わる。だが、魚住は引退して随分経つ。体が鈍っているんじゃないか。」

花形が大人の対応。

「愚問だ。」


「さぁ、次は俺たちの出番だな。木暮いくぞ!」

「おっおう。」


「今度は、1-3-1のゾーンで守ろう。うちは、あくまでも、海南の練習相手だからな。
いろんなバリエーションでやってやるのがいいと思う。」

「あぁ、ちげーねぇ。だが、負けるのはまっぴらだ。」

と三井。

「もちろん、勝ちに行く!」

藤真が続ける。

「トップは俺、左右に三井と木暮、センターは赤木、ゴール下は魚住。
リバウンドを取ったら、すぐに速攻だ。ディフェンスは思い切り良くいこう。
三井、木暮、ガンガン打っていっていいぞ。赤木と魚住は、リバウンドを頼む。」

「OK!」


(的確な指示に、リーダーシップ・・・、気合だの、死守だのいっている俺とはかなり違うな・・・。)

と心の中で呟く赤木。




ジャンプボールは、魚住と高砂。


『バチィーン!』


魚住が思いっきり叩いたボールは、海南のエンドラインまで転がっていった。


「バカ!何やってんだよ!ちゃんと味方に渡せよ。」

「すっすまん。」


怒鳴りつける三井に対して、素直に謝る魚住。

魚住にとって、数ヶ月ぶりに行うバスケの試合。

誰よりも興奮し、誰よりもこの練習試合を楽しみにしていたのは、
藤真でもなく、赤木でもなく、魚住だった。

その興奮を抑えられない魚住は、勢い余って、ボールを思いっきり叩いてしまった。


ボールを叩き、ジーンとなっている手を見つめているその瞳からは、涙が流れている。


(バスケもこいつらも、俺にとっちゃ大間のマグロ以上の価値があるんだ・・・。)



『ドガ!』



「バカ!何泣いてんだよ!」

後ろから、三井が蹴る。


「おっおう。」




涙を拭いて、守りにつく魚住を感慨深く池上が眺めていた。

(魚住・・・、ボールに、コートに、バスケに飢えているんだな。お前も福田も変わらないな。)




「1-3-1か。」

「うちは海南の練習相手だからな。」

「手は抜くなよ。」

「まさか。」


牧が一気に加速。藤真と木暮の間を抜きにかかる。



「木暮!」

「おう。」


藤真と木暮で牧を囲んだかに見えたが、


『クルッ』


牧のキラーバックロール。



(速すぎる!!)



木暮側のサイドを抜き、リングに突っ込んだ。



「来い!」


(赤木!)


今度は、赤木と魚住のツインタワーで牧の進路を塞ぐ。


(さすがにデカい!!ならば・・・)



『シュ!』



牧は、半回転から、神にパスを送った。



『バシ!』



「そのパターンはお見通しだ。」



ボールを取ったのは、三井だった。



「何!?」

「三井は逆サイドだろ!」



ゾーンの左側を守っていた三井だったが、散々この牧-神の必勝パターンにやられたこともあって、
左側の清田をフリーにする危険を顧みず、右側にいる神のもとへ走り込んでいた。
「神にパスする」という確信のもとに・・・。


(三井、さすが読みが鋭い。)

赤木の顔が自然とほころぶ。



「藤真!」

「おう!」

混成チームの速攻、藤真がレイアップを決めた。

第1戦に続き、先制点は混成チーム。




だが、



『スポッ!』


神が三井の前から、宣戦布告ともいえる3Pを決めた。

三井を見て、にこりと笑う神。


(また、遠くなりやがったな。)

三井も笑った。


神は、陵南戦よりも50cm遠い、3Pラインから1.5m離れたところから、3Pを放っていた。


三井の胸の熱い想いがメラメラと燃え始める。

(いいねー、この感じ。)



『ザシュ!』


神を振り切り、ミドルシュートを決める三井。



『シュパ!』


神は、木暮を抜いて、ジャンプシュートを決めた。



『ドガァ!!』


藤真のアシストを魚住がアリウープでねじ込む。



『ザシュ!』


木暮を交わして、ジャンプシュートを決める清田。




試合は一進一退の攻防が続いた。

第2戦も残り2分となったところで、再び三井のバスケセンスが光る。



『ドン!』



「オフェンス!清田、ファウル。」


「くそー、三井!」


木暮のところを中心に攻める海南の裏をかいて、素早いヘルプに回っていた三井が、
この試合2つめのオフェンスファウルを奪い取った。


「まだまだだな。」

「ちいっ!」


(ブランクがなかったらと思うと、ホントに恐ろしい男だな。)

牧が呆れ顔で三井を見ている。


(シュート力もさることながら、ディフェンスもよくなっている。
センスだけじゃない、相当な練習もしているはずだ。)

藤真の考えは、当たっていた。


三井は、海南に敗れたあとも、宮城らとともに、練習に精を出し、
特に苦手であったフットワークを中心に鍛えていた。

その成果が本日の表われでもあった。



その後、試合は、神、清田が積み重ねた前半のリードをなんとか守りきり、
海南が僅差で混成チームを下した。

清田のジャンプシュートの確率の向上が目立ち、神のロングシュートも披露された。

海南にとっては、練習の成果が出た試合であった。

だが、一向にインサイドから得点を重ねることはできず、全国大会を前に厳しい現実を突きつけられる。


対する、混成チームでは、三井のディフェンス力、赤木のリバウンド力と、湘北コンビの動きが目立っていた。


(あと1年早く三井が戻っていたら・・・。)

少しだけ悔しさがこみ上げる赤木に、三井の無邪気な言葉が胸に響く。


「横学来いよ!また、一緒にやろうぜ!!」

「・・・。」

ほぼ志望校が決まっていた赤木の心が揺らいだ。



海南 25
混成 24







続く。

#85 【練習試合】

2009-04-01 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

「藤真め、まずはまとまりのあるメンバーを揃えてきたか。」

とにやけながら高頭がいう。

「さすがの藤真でもあのメンバーを束ねるのには、時間がいりますよ。
初戦は、様子見ってところですかね。」

と牧が分析する。



海南は、ベストメンバーを出場させる。


「急造されたチームになんかに負けてたまるか。」

と清田の息が荒い。

「だが、花形、赤木のインサイドは、強力だ。これほどのインサイドは、なかなか見つからないぞ。」

「えぇ、そうですね。対山王、河田・野辺コンビ対策として、練習相手には申し分ないですよ。」




赤木、高砂のジャンプボールとともに、第1戦が始まった。


「No.1センターは譲らんぞ。」

「ふん、たわけが!」

勝ったのはもちろん、赤木。


ボールは、花形から藤真へ。

「まさか、高校でまたお前とバスケができるなんて思ってもいなかったぜ。」

「負け続けるわけにはいかないからな。」

笑顔がこぼれている牧と藤真。


「練習試合とはいえ、本気でいくぞ。」

「えぇ。こちらも本気でいきます。」

神には、池上が吸い付くようにマークする。


「やっぱり、でけーな。」

「・・・。」

11cmのミスマッチ、長谷川は、清田についた。


「怪我をせず。」

「あぁ、お手柔らかに。」

14cmのミスマッチが生まれた花形と武藤。



赤木がローポストで、ポジション取りをしようとした瞬間、鋭いパスが藤真から供給された。


(!!)


『バス!』


赤木が、ゴール下の先制点を決める。


(牧にマークされながらも、俺の動きを予測して、このタイミングでパスを放つか・・・。)


「ナイスパスだ、藤真。」

「あのパスを取れるとは思わなかったぜ。さすがだな。」

「試したのか?」

「まずは、味方を知らないといけないからな。」

「ふん。もっと、速くてかまわないぞ。」

「了解。」

藤真が笑った。


(ポジション取りをしてから供給される宮城のようなパスではなく、
俺の動きを予測してのリードパス、そして寸分違わぬ確実なパス、明らかに宮城とは違う。
これが、藤真健司のパスワークか・・・。)


改めて、藤真のPGとしてレベルの高さを実感した赤木であった。




『キュ!キュ!』




「池上め、かなりはりきっているな。」

ベンチの魚住が笑いながらいう。




(俺だって、大学でバスケをするために、引退した今もなおフットワークだけは、
毎日欠かさずやっているんだ!)

(ん!?IHよりもディフェンスがよくなっているな。)

厳しいマークをされながらも、神は少しだけ、嬉しくなった。


(神は厳しいか。なら・・・。)


『バシ!』


ボールは、牧から清田へ。


「バスケは高さじゃねぇ。」

「・・・。あぁ、練習と努力だ。」


『キュ!』


清田がワンフェイクから、一気に抜きにかかる。


『キュ!』


だが、長谷川はフェイクにはかからず、進行方向をしっかり防いだ。


(思っていた以上に、いいディフェンスしてやがる。
神さんは、こいつを交わして、あんなに得点を決めていたのか・・・。)

(神よりもスピードがある、ドライブ主体。なら、間合いを少しあけていれば・・・。)

(だが、俺はこんなところで負けてられねぇんだ!)



『ダム!』


『シュ!』




「レッグスルーから、フェイダウェイ!」

「仙道の技だ!」

「流川もやっていたぞ!」




『シュパ!』



「誰にも負けねぇ。」


「・・・。」

(スピード、ジャンプ力、バスケセンス、確かにいいものを持っている。)

長谷川の眼光が鋭くなった。




その後、海南、混成チームともに、様子を見ながらということもあり、試合は、スローテンポで進んだ。

海南は、スピードで長谷川を勝る清田を中心に攻める。
また、試合ではなかった牧のスクリーンプレーから、神が2本の3Pを決めた。

高さで勝る混成チームは、花形-赤木のハイ&ローで、得点を重ねると同時に、
以前より、課題となっていた海南のインサイドの弱さが、ここでも露出される形となった。



そして、第1戦の終了を告げるブザーがなる。



海南 16
混成 18




「牧のスクリーンプレーか、これは使えるな。」

と藤真。

「あぁ。清田をトップに回して、俺が神をフリーにするという新しい作戦だ。
俺のほうが、体格がいいから、スクリーンもよくかかる。」

「ごもっともだ。」


「だが、俺たちのように200cm近い選手が、2人いるとインサイドはきついな。」

と花形。

「うむ。なかなか克服されない課題だが、そこらへんは2-3で守るしかないと思っている。」

「大型インサイドは、山王、愛和、秋月あたりか。できれば避けたいところだが、そうもいってられないな。」

「勝ち上がれば、山王や愛和のどっちかは必ず当たるからな。」




試合終了後は、簡単なミーティングタイムを設け、プレーの振り返りや対策等を話し合い、
確実に海南の経験値の向上に役立てていった。




続いて、第2戦のブザーがなる。








続く。

#84 【サプライズ】

2009-03-31 | #04 海南 番外編
全国大会を3週間後に控えたある日、高頭のもとへ1本の電話がかかってきた。


「高頭監督、電話ですよ!」

「誰だぁ?牧、このあとは、3線をやっておいてくれ。」

「わかりました。」



電話をとる高頭。



「お世話になっております高頭監督。」

「その声は・・・じゃないか。どうした、久しぶりだな。うん!?ん?うん。
そういうことか、それは牧たちも喜ぶだろうよ。で、いつだ?
・・・・・・、今だと!?」




そのとき、バスケ部の体育館のほうから、賑やかな声が聞こえた。

高頭の耳には、電話越しに牧の声が聞こえた。



「藤真じゃないか。」


「そういうことですので、高頭監督、すぐに体育館にお戻り下さい。」


『ブチッ』


「ったく、なんて強引なやつだ。」


苦笑いの高頭が、体育館に戻ると、見慣れた男たちが立っていた。




「おい、赤木!海南の体育館ってすげーな。うちの体育館が3つも4つも入っちまうぞ。」

「あぁあ。」

驚きを隠せない赤木。

(こういうところで練習すれば、俺ももっと強くなるのか?)


「あれ!?藤真や花形は、ビックリしないのか?」

「俺たちは、練習試合で何回か来ているからな。」


「落ち着け、三井。」

「お前だって、ビックリして、ゴリラ顔になっているぞ。」

「そっそんなことはない。」

慌てる魚住。


「まさか、こんな夢のようなことが起きるとはな。」

少しだけ涙ぐむ木暮。



「なんなんですか?牧さん、こいつらは?」

「わからん。だが、遊びに行きましょうっていうわけではなさそうだな。」

笑う牧。



「牧、更衣室はどこだ?」

「そこを右にいったところだ。」

「ありがとうよ。借りるぜ。みんなも行こうぜ。」


「池上・・・。」

「なんだ、魚住?」



『バサ!バサッ!』



「俺たちはいらん!!」

藤真、花形、赤木、三井、魚住が口を揃えていった。

そして、着ていた私服を脱ぐと、すでにトレーニングウェアを着ていた。



「凄いやる気だな。」

笑う木暮。

「ついていけないぜ。なぁ、長谷川?」

誰よりも後ろにいた長谷川に、池上が尋ねると・・・、



『バサ!!』



長谷川もすでにトレーニングウェアを着ていた。


「お前もかい!」




高頭が事情を話す。

「さっき、藤真から電話がかかってきてな。お前らの練習相手をやってくれるということなんだ。」

「これで彦一の最後のFAXの意味がわかりましたね?」



(『俺たちが相手になってやる!!』)



「あぁ。三井の自筆のようだ。」

「だけど、練習相手って、藤真に、赤木に、三井・・・、
このメンバーだと、うちだってかなりきついですよね。牧さん?」

「全国制覇を目標としているうちには、願ったり叶ったりだ。なぁ、神。」

「えぇ。メンバーだけみると、全国ベスト8はいけそうな気がしますけど、
チームプレーはうちのほうが上なので、いい勝負じゃないですかね。」

冷静に分析する神。




「牧、練習相手をするとはいったが、本当はただ熱いバスケがやりたいだけなんだ。こいつら、みんなな。」

「あぁ、わかっているよ。だが、言いだしっぺは、お前だろ、藤真。」

「ふん。」

笑う藤真。

「引退試合にしてやるよ。」

「んじゃ、有終の美を飾らせてもらうよ。」




藤真の強引な練習試合の申し込みによる海南対神奈川3年生混成チームの夢のような練習試合が実現する。

混成チームに参加したメンバーは、藤真健司、花形透、長谷川一志、赤木剛憲、三井寿、木暮公延、魚住純、池上亮二の引退した8名。

海南の力になるため、牧を倒すため、No.1シューターを証明するため、更に上を目指すため、
ただみんなとバスケをしたいためなど、それぞれが抱いている思惑は違えど、
バスケへの熱意が枯れぬ神奈川の猛者たちであった。



高頭、牧、藤真の話し合いの結果、試合は、10分流しを5本することとなった。




混成チームの第1戦めのメンバーは・・・、

PG藤真、SG池上、SF長谷川、PF花形、C赤木となった。


「ディフェンスは、もちろんマンツーだ。池上、神には1点も入れさせるなよ。」

「今でも神奈川県一のディフェンダーは俺だと思っているぜ。」


「一志、ドンドン攻めてかまわないぜ。」

「あぁ。」




「なんで、三っちゃんが出ないんだよ!!」

体育館の隅から太い声が聞こえた。

「そっその声は・・・。」

振り向くとそこには、堀田番長率いる三井寿応援団神奈川県本部のメンバーがいた。


「なっなんで、お前らがここにいるんだーー!!」

「三っちゃんのいくところなら、例えアメリカでも、地獄でも、応援に行くぜ!」

「どっから、情報を得たんだ・・・。」

慌てふためく三井を見て、みんなが笑った。




「赤木、俺はお前が神奈川県一のセンターだと思っている。だから、俺はPFをやる。」

「ふっ、ありがとうよ。」


『ピクッ!』


「それは聞き捨てならんな!花形!!赤木勝負だ!!」

魚住が立ち上がる。


「うっ魚住、まっ待てって。今は同じチームなんだ。赤木との勝負はあとでやればいいから!」

必死にとめる木暮。

(メンバーは問題ないけど、チームワークは・・・。)

不安でしょうがない木暮であった。




そして、練習試合が始まった。








続く。

#83 【48代表校】

2009-03-30 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

練習終了後のミーティングタイム。

残り少ない彦一の資料に目を通している。



「やはり、大阪は大栄か。」

「唯一、IHで名朋の森重を25点以下に押さえたチームだ。
いくらオフェンス主体の豊玉だろうが、そう簡単には勝てないさ。」




-----------------------------------------------------------------------

■大阪府代表 【大栄学園】

全国屈指のディフェンス力に長けたチーム。

府予選決勝豊玉戦では、72対59と豊玉をロースコアに押さえ込み優勝した。

そのディフェンス力は、全国の強豪校と比べても群を抜いておる。

また、ハーフディフェンスだけでなく、今大会からオールコートゾーンのレパートリーを1つ増やし、
鉄壁の守りに磨きがかかった。

チームの顔は、もちろん長身オールラウンダーの土屋さんや。
味方を動かし、リバウンドを奪い、自らが攻め込む。

誰からでも点の取れるチームで、バランスオフェンスを重視しておるが、
試合のポイントとなるプレーでは、必ず土屋さんが動く。

まさしく、オールラウンダーの名に相応しい方や。陵南の見本となるチーム。

★★★★★★★★☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「予選6試合、毎回のように、ゲームヒーローが変わっているな。
しかも、スタメン全員が12P以上の得点アベレージか。」

「まさしく、バランスオフェンスだな。」

「ただ、土屋はやはり別格、他のスタメンより、数字がいい。
土屋を押さえることが、勝利の鍵なのは確かだ。」

「ディフェンスもすげーな。平均失点48.9だってよ。」

「ハーフは、マンツー、2-3、1-3-1、3-2、
オールなら、マンツー、1-2-1-1、2-2-1と巧みにディフェンスを変え、相手にペースを握らせない。」

「こういうチームを倒すのは、かなりしんどいぞ。」

「ええ。そうですね。」


(土屋淳・・・。)

牧は、他のチームメイトとは、異なる思いで土屋のことを考えていた。




-----------------------------------------------------------------------

■京都府代表 【洛安】

ラン&ガン、アーリーオフェンスを得意とするオフェンス力のチームや。

PG小関さんから供給されるパスは、まさに神業。
ノールックはもちろん、後ろにも眼があるのではないかと噂されるほどや。

C瀧川さんとの相性は抜群で、予選大会では、小関→瀧川ラインで23本のアリウープを成功させた。

SG林蔵ノ介さんはディフェンスに定評のあるプレイヤー。
山王の一之倉さんのすっぽんディフェンスと並び称されておる。

また、きっちりとポジション分けがされていないのも特徴や。
PG小関さんがローポにおることもあれば、Cの瀧川さんが3Pを打つこともある。

守るのが難しいチームや。

★★★★★★★★☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「アーリーオフェンスね。」

「豊玉と似ているんじゃないですか?」

「いや、IHを見る限りでは、洛安の方が、数段豊玉より上だな。
豊玉のラン&ガンは、実際には南、岸本、板倉の3枚だけだが、洛安は全員が走る。
時には、瀧川がボールを運ぶことだって、あったからな。」

「マジっすか?高砂さん、大丈夫ですか?」

「・・・。ちょっと厳しい・・・。」

と苦笑い。


「速攻を封じるためにも、早く戻って、しっかりディフェンスだ。いいな?」

「はい。」




「おっ、ようやく九州地区に入りましたね。」

「それにしても、彦一の情報網はすごいですね。こんなに資料をかき集めて、いつまとめているんだろう?」

「こんなことばっかりやっていたら、バスケだってうまくなんねぇよ。」かっかっか。




そのころ、陵南高校体育館では・・・。


「牧さんは★10、高砂さん★7は、神さんは★9と・・・、ふうー、海南選手もチェックせなあかんからな。
清田君は・・・★7、いや★6やな・・・、性格が悪そうや。」

何かを感じた彦一であった。




-----------------------------------------------------------------------

■福岡県代表 【博多商大附属】

IHベスト4にして、全国大会出場連続24年という強豪校や。

得点の9割を獲得するビッグ3とゆわれとる3名の選手がチームを勝利へ導く。

SG牧瀬さんは、アウトシューターで、5割に近い3P成功率を誇る。

SFの徳永さんは、鋭いドライブではなく、こじ開けるゆわば、パワードライブを得意とする。

PF新庄さんは、198cmの身長からは想像ができないほどのスピードがあり、ジャンプ力は今大会屈指。

バラエティにとんだこの3名をどうやって押さえるかが勝利の鍵となる。

山王、愛和学院と並ぶ優勝候補の一角や。

★★★★★★★★★☆


-----------------------------------------------------------------------



「九州の雄 博多商大附属か・・・。」

「九州大会 3年連続優勝の強豪校にして、未だ全国大会優勝はない。悲運のチーム。」

「キャプテン徳永が入部して以来、九州においては、この3年間一度も負けたことがない。」

「彦一がいうように、今1番脂がノったチームだろうな。要注意だ。」




「おっ、初全国のチームだな。」

「けっ、彦一もおかしなこと書きやがるぜ。」




-----------------------------------------------------------------------

■宮崎県代表 【延北商業】

全国大会初出場の新鋭。プレースタイル、勢いなど、湘北と似とる部分がある。

PG三浦さんのスピードは、全国でも屈指。ジャンプシュートの安定性にも定評あり。

湘北の宮城さんと三井さんを足して2で割った感じの選手や。予選得点ave.28

C真鍋さんのリバウンドは、宮崎県第1位を記録。ゴール下のディフェンス力は驚異。

同じく、桜木さんと赤木さんを足して2で割った感じの選手。予選リバウンドave.16 ブロックave.5。

真鍋さんは、人格に問題あり。

安定感のある湘北とゆってええと思いますが、派手さはない。

★★★★★★☆☆☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「侮ってはいかんぞ、清田。ここを見てみろ!
九州大会では、さっきの博多商大に惜しくも延長戦で負けたチームって書いてある。」

「監督、ここも見てください。」

「ん!?」




-----------------------------------------------------------------------

くじ運が悪い!

IH県予選では、2回戦で、IHに出場した青鳳と対戦。惨敗。

選抜県予選では、1回戦から昨年の県覇者 東原工業と対戦。辛勝。

九州大会では、1回戦から博多商大附属と対戦。惜敗。


-----------------------------------------------------------------------



「初戦で山王と当たって、敗退ってこともあるんじゃないですかね。」

と笑う清田。

「うちだって、優勝候補といわれている。うちと当たる可能性だって、十分に考えられる。」

「どっちにしても、勝ち上がることは難しいチームですよ。かっかっか」




「沖縄は、那覇水産ね。」

「長かったな。」

「よし、48校これで全部だ。」


「くたびれましたね。牧さん。」

「あぁ。練習よりも体力使ったな。肩が凝ってしまったよ。」



「あれ!?まだ1枚あるぞ!!」



宮益の言葉で、最後の1枚に目をやると・・・、



A4用紙に、でかでかと、筆でこう書かれてあった。




『俺たちが相手になってやる!!』




「どういう意味だ?」

「彦一の冗談か?」



何のことだかわからず、海南選手はスルーしたが、数日後、その真意がわかる。








続く。

#82 【土屋淳】

2009-03-28 | #04 海南 番外編
残り試合時間 7分

大栄 58
豊玉 53




「どうや、土屋!わいらのラン&ガンディフェンスは?」

「ラン&ガンディフェンス?」

「そうや、豊玉のラン&ガンディフェンスや!走って走って走りまくるディフェンスや!」

「・・・。」

「もう止まらへんで、堪忍しいや!」

「・・・。」



再び、土屋から桜井にボールが回る。



板倉が、桜井のドリブルカットに手を出すと、
桜井-小池間を矢嶋が、桜井-青島間を岸本が、桜井-赤井間を岩田が、
それぞれスティールを狙いに走りこんだ。

南は、桜井のドリブルカットに向かう。

桜井は、板倉を抜き、南を抜きにかかると、
今度は、桜井-土屋間を矢嶋が、桜井-小池間を岸本が、桜井-青島間を岩田が走りこんだ。

板倉は、後方から桜井のドリブルカットに向かう。



一部始終を見ている土屋がつぶやく。

「なるほどな。一見でたらめに見えて、しっかり組織立っているっちゅうわけか・・・。」



『バシ!』



「しもうた!」

主審が、板倉のファウルを告げた。



そして、大栄学園が、たまらずタイムアウトを取った。




「なんや、あのディフェンスは!5人が一斉にわいに迫ってくる感じや。
監督、何かいい手はないですか?」

「うむ。」


「あるで!」

土屋が口を開いた。


「豊玉のディフェンスは、前へ前へ押し寄せるディフェンスや。
1人がボールマンのドリブルスティールを狙い、他の選手がパスコースを塞ぐ。
スティールに失敗すると、一列前へ押し寄せ、ボールマンに2人、
他の3名が相手ゴールに近い3名のパスコースを塞ぐようにディフェンスする。
つまり、ボールマンに対して、波のように押し寄せ、プレッシャーを与え、
ニアのパスを奪うっちゅうパスカット主体のディフェンスや。」

「そしたら、ロングパス1本で、ゴールが奪えるやないかい。」

「ロングパスっちゅうのは、少なからず、パスモーションが大きうなる。
そこを後ろからのスティールを狙っているんや。」

「しっかりオフェンスを止めるっちゅうより、
ドリブルスティールやパスカットを狙う、まさしく攻撃的なデイフェンス。
それが、ラン&ガンディフェンスや。」

「どないして、このディフェンスを破るんや?」

「パスせず、一人で抜く、これが一番やろな。」

「あの走る豊玉相手に、一人で抜けるんか?」


「わいがやったる。」

土屋が自信ありげにいった。


「わいがボールを持ったら、みなは走ってくれ。そうすれば、わいと南との1on1や。それと・・・。」




大栄ボールからスタート。

ボールは、土屋に渡った。

と同時に、大栄の選手が、豊玉ゴールに向かって走った。



「そういうことか。」

「そうや。」

大阪の得点王対大栄のオールラウンダーの1on1。


『キュ!』


190cmの男とは思えないほどの身のこなしで、一気に南を抜きにかかる。



「させへんで!」



『キュ!』


『ダム!』


南がスティールしようとするが、レッグスルーで方向転換。

だが、前には板倉が間合いをつめてきた。


『キュッキュ!』


(速っ!)


フェイクから、あっさり板倉を抜いた土屋が、青島を一瞥し、パスをさばこうとしている。



「甘いで!ここやろ!!」

岸本が、土屋-青島間に走りこんできた。



だが、



『シュ!』


パスは、青島と反対側の小池へと供給された。



「わかってたで!」

矢嶋がパスカットに向かう。



だが、



ボールをキャッチしたのは、



矢嶋の前に飛び出してきた桜井。

「土屋さん、ナイスパスや!」



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

タイムアウト中


「それと・・・。豊玉より先に、ボールに向かって走る!これや。」

「真っ向勝負か!」

「豊玉に走り負けるようなら、全国でも勝ち上がることは難しいからな。」

「わかった。OKや。わいらもボールに向かって走ったるよ!」

-----------------------------------------------------------------------



(ナイスランや、桜井。)




「大栄3対1、アウトナンバーや!」




南、板倉、矢嶋が桜井の後方から襲い掛かるが、


『ヒョイ』


桜井は岩田の頭上を越えるループパスを赤井の動きに合わせて放った。


『シュパ!』


赤井がタップシュート決める。



大栄 60
豊玉 53




「気にするな!もともと博打みたいなディフェンスだ。
もっと、プレッシューを与えて、前からボールを奪っていけ!」

金平から檄が飛ぶ。




だが、




「土屋が抜いた!」

「すげー、ノールックパスや!」


『シュパ!』



「今度は、ビハインドパス!」

「おー!岸本まで抜いたでーー!!」


『ザシュ!』



大栄学園は、土屋の巧みなドリブル、パスワークを起点に、豊玉のラン&ガンディフェンスの攻略に成功した。

脚力はあっても、ディフェンスの根本的な部分が欠けている豊玉選手では、
ドリブルで抜ける、パスでさばける、ボールを奪える、オールラウンダーの土屋の動きをとめることができず、
土屋が2人を抜き去ることによって、アウトナンバーを作り出し、確実に点を重ねていった。

対する、豊玉も得意のラン&ガンオフェンスで、大阪の得点王南を中心に攻め立てはしたものの、
他の4人が押さえられ、冷静さを取り戻した大栄学園が、きっちりと守り、
圧倒的なディフェンス力で大阪府の頂点に立った。



大栄 72
豊玉 59






【大栄学園】

土屋 淳  23P 9A 7R 5S 3B


【豊玉】

南 烈  21P 3A 4R

岸本 実理  15P 2A 8R




北野式ラン&ガンオフェンスで全国制覇を目指してきた南、岸本は、選抜府予選決勝で、
その3年間の高校バスケに幕を下ろした。

その後、南は、東海地区の大学に入学し、
あの怪物と呼ばれた男と神奈川の猛者たちともにもう一度全国制覇を目指すこととなる。

岸本は、関西の大学に進学、後に関西の頂点に立つのだが、それは、まだ先の話。








続く。

#81 【ラン&ガンディフェンス】

2009-03-27 | #04 海南 番外編
残り試合時間 8分

大栄 58
豊玉 48




『バシ!!』


小池から土屋に渡るボールを南がスティール。

南がワンマン速攻を繰り出す。


「ナイスカットや!南!」


後ろからは岸本が駆け上がり、土屋も追走するが、南のスピードには誰もついていけない。


レイアップが決まった。



そして、南が叫ぶ。

「オールや!!当たるでー!」



南の指示により、オールコートゾーンプレスをしかけた。



「南、板倉!どんどん、スティール狙っていけ!豊玉の攻撃的なディフェンスを見せてやれ!!」

豊玉監督の金平から指示が飛ぶ。

(ディフェンスには見向きもしなかったあいつらが気付いたディフェンスの楽しさ・・・。
これも北野さんのおかげだ。)




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

IH湘北戦 敗北後・・・


「北野さん・・・。」

「北野さんに教えてもろうたラン&ガンで、全国制したるおもうてましたが、
こないなところで負けてもうて、ほんま申し訳ありません。」

「ええって。気にせんでええって。だがな、南、岸本、もっと楽しそうにバスケットせなあかんぞ。
ディフェンスかて、ほんまは楽しいんや。今のお前らなら、きっとわかるはずや。
あとは、とにかく金平監督のゆうことをよう聞くことや。金平監督は、若いのにようできた監督やで。」


「北野さん・・・。」

金平も真剣に北野の話を聞いていた。



(楽しいディフェンス、そないなもんあるんやろか・・・。)



ディフェンスに対する意識が少しずつ変わり始めた南と岸本であった。




<<回想>>

豊玉高校 体育館


「おい、金平!」

「北野さんがゆうてたディフェンスが楽しいってなんやねん!」

「ようやく、お前らもディフェンスに興味も持ち始めたか。北野さんの言葉だけは、信じているんだな。」

「うっさい!はよ教えんかい!!」

「いいか、ディフェンスには、大栄のように鉄壁に守るディフェンスもあれば、
攻撃的なディフェンスもある。わかるか?」

「攻撃的なディフェンス?」

「あぁ。走って走って走りまくるディフェンスだ。お前らの得意なラン&ガンディフェンスだ。」

「そないディフェンスがあるんか?」

「ボールに向かって走る。それだけだ。」

「はぁ?そないことしたら、パスされて、あっちゅうまに決められてしまうでないかい!」

「5人が組織だって、予測しながら、ボールに向かって走れば、そういうこともないんだ。」


金平は、作戦ボードを取り出し、人に見立てた磁石を動かしてみせた。


「こういうことだ。」


「なんか博打みたいやな。」

「せやけど、うちらにはあっておるんやないか、これ。」

「そやな。」




「南!もっと走れ!」

「板倉は、そっちじゃない、こっちだ。」

「そうだ!そこだ!よし!!いいぞ、岸本!!」

「ナイスカットだ!矢嶋!」




「ディフェンス嫌いのお前らが、よくここまでできるようになったな。」

「うっさいわ!」

「だが、ちーと、あんたには感謝してる。」

「南・・・。」

少しだけ目頭が熱くなる金平。


「だが、このディフェンスは、もって5分だ。ただでさえ、お前らはラン&ガンで体力をすり減らしているんだ。
それ以上やったら、体力が持たない。南、勝負どころの5分だけだぞ!忘れるなよ。」

「あぁ。わーてる。」


-----------------------------------------------------------------------



エンドラインの土屋から、桜井にボールが入る。


「とったるでー!」

板倉が、桜井のドリブルをカットにいく。


『ダム!』


バックロールで簡単に交わす。



だが、



『キュ!』



「あぶなー。」



南も同じように、桜井のドリブルをカットすべく、手を伸ばしていた。



「土屋さん!」

板倉、南に囲まれる前に、桜井は土屋にパスを出した。



だが、



「もろうたで!!」



『バシ!』



岸本がそのボールをカットし、シュート体勢。



「いくで、土屋!・・・なんつって。」



『シュ!』


『バス!』


逆サイドの南にパス、レイアップを決めた。



「オールコートプレスか。みんな、落ち着いていこうや。」

一呼吸おいて、再び土屋から桜井に。


「ほらほら、またとったるで!」

板倉が、桜井のドリブルカットに突っ込む。


(また、突っ込んできおった。)


(!!)


同じように、南もスティールを狙う。


(どないなってん。こいつら、抜かれてもええ、ディフェンスしておるわ。)


板倉、南を抜いた桜井が、豊玉陣内に駆け上がる。


「とりゃ!」

矢嶋がヘルプディフェンスに、桜井に寄った。

岸本は小池に、岩田は青島に寄る。



(ゴール下ががら空きや!)



『パン!』



(!!!)


(南!)


桜井がゴール下にいる赤井にロングパスを出す瞬間を狙って、南が後ろからボールを叩いた。



「ナイスや、南!」

ルーズボールを奪ったのは、岸本。


「板倉!」

すかさず、最前線の板倉へパス。


そして、


『シュパ!』


「3Pだ!ボン!!」

鮮やかに3Pを決めた。



豊玉がラン&ガンディフェンスを繰り出し、一気に点差を縮めた。



残り試合時間 7分

大栄 58
豊玉 53







続く。

#80 【大阪府予選】

2009-03-26 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

練習終了後のミーティングタイム。

海南選手たちは、愛知県代表愛和学院と名朋工業との決勝戦の資料を釘いるように見ていた。




「名朋相手に、45点って愛知の星もすげーな。半分獲っちまっているぜ。」

と冷や汗を流す清田。

「ふっ、3Pの威力が増したようだな。だが、うちにはピュアシューターがいる。
神にはかなうまい。」

牧の言葉に微笑む神。

「ドライブは、流川並か。」

と真田。

「ということは、俺以下ってことですね。」にかっ。


「はい、次のページ。」

高頭も清田を無視した。


「俺の存在って・・・。」

誰からも相手にされなくなった清田であった。




「次は、大阪か・・・。」




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>> 

大阪府 選抜府予選 決勝戦

大栄学園×豊玉

第4Q



『ヒョイ!』


『シュパ!』



「勝負せんか!土屋!!」



大栄の速攻、2on1。土屋は、岸本との勝負を避け、SG小池にパスを供給、ジャンプシュートを決めた。



「岸本、入れられたら、入れ返す。それだけや。」

「せやけど、南。こんなん豊玉のバスケちゃうやんか!!」

「我慢も必要や。」



だが、



『ピィーー!』


「バイオレーション!」




「うわーー。また、24秒や!!」




シュートさえ、打たせない大栄のディフェンスは、まさに鉄壁。


大栄のPG桜井が、ゆっくりとボールを運ぶ。


「もう抜かれまへんで。チビ助君。」

板倉が桜井を挑発。


だが、挑発にはのらず、土屋にパスを出し、板倉には冷静に対応する。


「わいらの見ている先は、全国や。お前らじゃあらへん。」

「ピクッ!!」

(チビが!!)

板倉の目つきが変わった。



シュートクロックぎりぎりまで、パスを回す大栄アウトサイド陣。

そして、機械のように、残り5秒になると、ゴールを狙う。


桜井からのパスを土屋がふわりとゴール下に弾いた。

ボールは、アーチを描きながら、C赤井がキャッチ、軽やかにゴールを決めた。



大栄学園は、パスを多用し、時間を使いながら、スローオフェンスを展開。

豊玉は、ラン&ガンオフェンスに、更に磨きがかかり、
準決勝までの5試合に奪った平均得点は、114.8と全ての試合で100点ゲームを記録していた。

だが、大栄のオールコートディフェンスの前には、まったく歯が立たたず、
第3Q終了時には、54対44と10点差のリードを奪われていた。

大栄のオールコートディフェンスは、土屋の指示により、マンツー、1-2-1-1、2-2-1と変化させ、
相手に対応を許さないのが特徴であった。



拳を高く突き上げる土屋。

「1-2-1-1や。」



大栄のオールコートディフェンスが、マンツーから1-2-1-1に変わる。



矢嶋から板倉へボールが渡る。


「ちょこまかと目障りなんや!!」

土屋と桜井が、囲みにかかるが、板倉は強引に桜井を吹っ飛ばした。


主審がファウルを告げる。


「チビ助が!引っ込んでおれ!!」


「ちょっと、待てや!!」

大栄PF青島が板倉に食って掛かった。


「なんや!?」

「青島、ええって。ファウルもろうたしな。」

桜井が青島を止め、板倉にいった。

「板倉、バスケで勝負せいや。わかってるやろ?お前が、豊玉の足をひっぱてんねん。」

「なっなんやて!!!」

「冷静さを欠いたPG、くだらん挑発ばかりを繰り返すPG、自己中なPG。」

「もう一回ゆうてみん!!」


主審が笛を吹こうとしたとき、南が2人の会話に割って入った。


「待てや、板倉!!桜井、土屋、板倉が申し訳なかった。」

南が頭を下げた。


「南さん!!」

板倉が叫ぶ。


「ええって、南さん。」

微笑みかける桜井。


「・・・。」

無言で見つめる土屋。

(湘北の一見以来、あいつの性格はまるうなった。
だが、それがまた、バスケへの熱意や不気味さを増幅させておる。残り時間少ないけど、要注意やな。)


南の、豊玉の逆襲が始まる。



残り試合時間 8分

大栄 58
豊玉 48






続く。