--海南大附属高校 体育館--
藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。
試合は、全部で5試合。
現在、4試合が経過し、2勝2敗のタイとなっている。
続いて、最終戦第5戦が行われる。
「いよいよ、最後の試合だな。メンバーはどうするよ?」
と三井。
藤真が悩みながら、人選をする。
「赤木、ゴール下は頼んだぞ。」
「もう誰にも負けん。高砂であっても、河田であってもな。」
「この試合が終わったら、勝負だからな。」
魚住の鼻息の荒い。
「あぁ。いつでも相手になってやる。」
「体力は持つか?三井。」
「問題ねぇ。俺が出ねきゃ、海南もピリっとしないだろ。」
「外角のシュートと清田のマークを頼む。」
「チョロいぜ。」
(赤木と三井・・・、この2人をベンチから見れるのは、これで最後かな。)
少しだけ目が潤んでいる木暮。
「神を押さえるのは・・・。」
池上と長谷川が、藤真の口元に注目している。
「一志、もうやられるなよ。」
「ディフェンス1本でやらせてくれ。」
「そのつもりさ。」
「長谷川、しっかりな。」
『コクッ。』
池上が、長谷川の肩をポンと叩いた。
「PFは、花形だ。Cじゃなくて、すまんな。」
「なーに、心配ない。進学したら、PFもするつもりだから、いい勉強になるよ。」
「そして、PGは俺がやらせてもらう。」
「際どいパスを出すから、俺から目を離すなよ。」
「OK!」
「よし、いくぞ!!」
「おう!」
混成チームが一つになった。
対する海南。
「真田、いけるか?」
「えっ、はい。もちろんです。試合に出たくて、うずうずしていました。」
真田の声は明るい。
「苦しくなったら、すぐにいえよ。」
「はい。」
「よし。オフェンスは、4アウト。ディフェンスは、マンツーで真っ向勝負。いいな?」
「おう!」
「最後の試合だ。言い残すことはないか?」
「最後は勝たせてもらう。」
「最後も勝たせてもらう。」
牧と藤真が対峙する。
ジャンプボール、例によって、赤木が勝った。
混成チームのオフェンスから最終戦が始まった。
『キュ!』
『ダム!』
藤真が牧を振り切ろうと、速度をあげる。
ベンチからは、木暮や池上の声が聞こえる。
堀田が、三井の旗を振っている。
海南ベンチからは、練習試合と思えないほどの声援が送られている。
コートに立っている10人は、汗が飛び、息が上がり、声を出し、己の精神を集中させ、
体を動かし続けていた。
もちろん、勝利を掴み取るために・・・。
だが、公式戦では見せない笑顔がそこには溢れていた。
ひとつひとつの動きに喜びを感じ、ひとつひとつの動きを記憶しているように思えた。
コートの10人、いやベンチのもの、そこにいる全てのものが感じていた。
『ただただ純粋に楽しい・・・。』
それだけだった。
笑いながら、話しながら、楽しみながら、
昼休みの空き時間にするゴールにボールをただいれるだけの遊びのようなバスケットボール。
そんな感じだった。
そして、掴み取った。
『勝利』以上のものを・・・。
体育館の出入口。
「負けるなよ。」
「負けたら、許さねぇ。」
「会場は近いしな、応援に行くから。」
「お前らの思いを無駄にはしない。」
「優勝カップを楽しみに待ってやがれ。」
混成チームの8人と海南メンバーが最後の挨拶をしている。
「清田、冷静になれ。そして、牧の全てをこの大会で盗むんだ。」
「はい。藤真さん。」
藤真には素直な清田。
「1番はお前だが、俺が神奈川代表センターだ。」
高砂が握手を求める。
「そうだな。」
と赤木と魚住が、同時に手を出した。
「俺が1番だ!」
「俺だ!」
「なにをーー!」
「よし、勝負だ!赤木ーー!!」
「上等!!」
「まぁまぁ。」
最初から最後まで2人のなだめ役に回っていた木暮であった。
「俺は、横学にいくことになった。」
「俺は、推薦で拓緑。藤真は・・・。」
「聞いている。俺は、まだ検討中だ。正直、少し悩んでいる。」
「そうだな。焦って決めるもんじゃない。」
「大学で対戦するようなことがあったら、そのときは勝たせてもらう。」
「あぁ。楽しみにしているよ。」
「でも、その前に俺たちは1部まで勝ち上がらないとな。」
笑う三井と花形と牧。
「関東学園に決まった。」
と嬉しそうに長谷川がつぶやいた。
花形と藤真は少々驚いたが、みんなが祝福した。
武藤と高砂が目を合わせる。
「いいそびれたな。」
「あぁ。」
「神、頑張れよ。」
「ありがとうございます。池上さんと長谷川さんのおかげ、今日はいい練習ができました。」
「きっと、俺らクラスのディフェンダーは、全国でもザラなんだろうな。ちょっと悔しいな。」
「いえ。2人は、神奈川が誇る名ディフェンダーですよ。」
「ちぇ、年下にお世辞いわれちまったよ。だが、ありがとな。」
「頑張れ。」
「はい。」
「さぁ、そろそろ帰ろうか。」
「飯でも食っていこうぜ。」
「おう、焼肉だ!」
「イタリアンで、どうだ!」
「美味い寿司屋を知っている。」
ワイワイガヤガヤと体育館を去る8人。
最後に藤真がいった。
「負けるなよ!!神奈川代表!!!」
8人は、前を向きながら、右腕を高く上げる。
「あーしたーーー!!!」
体育館の入口にいた海南メンバーは、8人のその後姿をみながら、
大きな声で挨拶をし、深々と頭をさげた。
「ライバルであり、いい仲間たちだったな。」
と高頭。
「えぇ。最高の仲間たちです。」
牧が笑顔で答えた。
そして、3週間後、東京都にて第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会が始まった。
04 海南 番外編 終了
05 海南 選抜編 に続く。
藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。
試合は、全部で5試合。
現在、4試合が経過し、2勝2敗のタイとなっている。
続いて、最終戦第5戦が行われる。
「いよいよ、最後の試合だな。メンバーはどうするよ?」
と三井。
藤真が悩みながら、人選をする。
「赤木、ゴール下は頼んだぞ。」
「もう誰にも負けん。高砂であっても、河田であってもな。」
「この試合が終わったら、勝負だからな。」
魚住の鼻息の荒い。
「あぁ。いつでも相手になってやる。」
「体力は持つか?三井。」
「問題ねぇ。俺が出ねきゃ、海南もピリっとしないだろ。」
「外角のシュートと清田のマークを頼む。」
「チョロいぜ。」
(赤木と三井・・・、この2人をベンチから見れるのは、これで最後かな。)
少しだけ目が潤んでいる木暮。
「神を押さえるのは・・・。」
池上と長谷川が、藤真の口元に注目している。
「一志、もうやられるなよ。」
「ディフェンス1本でやらせてくれ。」
「そのつもりさ。」
「長谷川、しっかりな。」
『コクッ。』
池上が、長谷川の肩をポンと叩いた。
「PFは、花形だ。Cじゃなくて、すまんな。」
「なーに、心配ない。進学したら、PFもするつもりだから、いい勉強になるよ。」
「そして、PGは俺がやらせてもらう。」
「際どいパスを出すから、俺から目を離すなよ。」
「OK!」
「よし、いくぞ!!」
「おう!」
混成チームが一つになった。
対する海南。
「真田、いけるか?」
「えっ、はい。もちろんです。試合に出たくて、うずうずしていました。」
真田の声は明るい。
「苦しくなったら、すぐにいえよ。」
「はい。」
「よし。オフェンスは、4アウト。ディフェンスは、マンツーで真っ向勝負。いいな?」
「おう!」
「最後の試合だ。言い残すことはないか?」
「最後は勝たせてもらう。」
「最後も勝たせてもらう。」
牧と藤真が対峙する。
ジャンプボール、例によって、赤木が勝った。
混成チームのオフェンスから最終戦が始まった。
『キュ!』
『ダム!』
藤真が牧を振り切ろうと、速度をあげる。
ベンチからは、木暮や池上の声が聞こえる。
堀田が、三井の旗を振っている。
海南ベンチからは、練習試合と思えないほどの声援が送られている。
コートに立っている10人は、汗が飛び、息が上がり、声を出し、己の精神を集中させ、
体を動かし続けていた。
もちろん、勝利を掴み取るために・・・。
だが、公式戦では見せない笑顔がそこには溢れていた。
ひとつひとつの動きに喜びを感じ、ひとつひとつの動きを記憶しているように思えた。
コートの10人、いやベンチのもの、そこにいる全てのものが感じていた。
『ただただ純粋に楽しい・・・。』
それだけだった。
笑いながら、話しながら、楽しみながら、
昼休みの空き時間にするゴールにボールをただいれるだけの遊びのようなバスケットボール。
そんな感じだった。
そして、掴み取った。
『勝利』以上のものを・・・。
体育館の出入口。
「負けるなよ。」
「負けたら、許さねぇ。」
「会場は近いしな、応援に行くから。」
「お前らの思いを無駄にはしない。」
「優勝カップを楽しみに待ってやがれ。」
混成チームの8人と海南メンバーが最後の挨拶をしている。
「清田、冷静になれ。そして、牧の全てをこの大会で盗むんだ。」
「はい。藤真さん。」
藤真には素直な清田。
「1番はお前だが、俺が神奈川代表センターだ。」
高砂が握手を求める。
「そうだな。」
と赤木と魚住が、同時に手を出した。
「俺が1番だ!」
「俺だ!」
「なにをーー!」
「よし、勝負だ!赤木ーー!!」
「上等!!」
「まぁまぁ。」
最初から最後まで2人のなだめ役に回っていた木暮であった。
「俺は、横学にいくことになった。」
「俺は、推薦で拓緑。藤真は・・・。」
「聞いている。俺は、まだ検討中だ。正直、少し悩んでいる。」
「そうだな。焦って決めるもんじゃない。」
「大学で対戦するようなことがあったら、そのときは勝たせてもらう。」
「あぁ。楽しみにしているよ。」
「でも、その前に俺たちは1部まで勝ち上がらないとな。」
笑う三井と花形と牧。
「関東学園に決まった。」
と嬉しそうに長谷川がつぶやいた。
花形と藤真は少々驚いたが、みんなが祝福した。
武藤と高砂が目を合わせる。
「いいそびれたな。」
「あぁ。」
「神、頑張れよ。」
「ありがとうございます。池上さんと長谷川さんのおかげ、今日はいい練習ができました。」
「きっと、俺らクラスのディフェンダーは、全国でもザラなんだろうな。ちょっと悔しいな。」
「いえ。2人は、神奈川が誇る名ディフェンダーですよ。」
「ちぇ、年下にお世辞いわれちまったよ。だが、ありがとな。」
「頑張れ。」
「はい。」
「さぁ、そろそろ帰ろうか。」
「飯でも食っていこうぜ。」
「おう、焼肉だ!」
「イタリアンで、どうだ!」
「美味い寿司屋を知っている。」
ワイワイガヤガヤと体育館を去る8人。
最後に藤真がいった。
「負けるなよ!!神奈川代表!!!」
8人は、前を向きながら、右腕を高く上げる。
「あーしたーーー!!!」
体育館の入口にいた海南メンバーは、8人のその後姿をみながら、
大きな声で挨拶をし、深々と頭をさげた。
「ライバルであり、いい仲間たちだったな。」
と高頭。
「えぇ。最高の仲間たちです。」
牧が笑顔で答えた。
そして、3週間後、東京都にて第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会が始まった。
04 海南 番外編 終了
05 海南 選抜編 に続く。