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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#262 【1回戦終了】

2010-01-29 | #10 湘北 番外編
第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道

第3試合 ×越野 ○黒川

第4試合 ×植草 ○宮城

第5試合 ○緑川 ×角田




山岡 2
上杉 2




山岡のオフェンス。

強引に得点を奪いに行く。


『キュ!』


『ダム!』


打点の高いジャンプシュート。

上杉のチェックも高い。



だが。



『バシ!』



「しまった!」


上杉の手が、山岡の腕を軽く叩く。

なおも力強くシュートを放つ山岡。

重心のブレはない。


「おりゃ!」


『ザシュ!』



バンクシュートを成功させた。


「おし!」


このトーナメント初のバスカンプレー。




「この場合、ルールは・・・?」

安西をみる選手たち。


「・・・。もう1度、山岡君のオフェンスです。」




山岡 3
上杉 2




再び、山岡がボールを保持する。

「すいません。」

「いいって。俺のオフェンスになったしな。さぁ、いくよ。」

「はい!」


2年生山岡と1年生上杉の攻防を見つめる陵南と湘北の選手たち。

先輩が後輩の相手をするそんな風景に見える爽やかな1on1であった。




(まだまだムラがあるが、拓真はいいキャプテンになれそうだな。)

仙道は微笑みながら見つめる。



(空斗のやつ、いい練習相手に恵まれたな。)

柳は真剣な眼差しであった。



30秒後。



「山岡さんの勝利!」

晴子が高らかに、山岡の勝利を宣言した。



「あとで、コーラを買ってきてね!!」にやり。

「おっ覚えてましたか・・・。」




山岡 4
上杉 2




「第7試合 桜木君対菅平さん!」



「ようやく、天才の出番か。悪いが菅っちにかまっている暇はねぇ。さっさとやるぞ!」

「ぬっ。」


試合中においても、菅平は桜木の相手ではなかった。



「どりゃ!!」


『ガシャン!!』



『キュ!』


『ダム!』


『バン!』



桜木は、力強いダンクでゴールを奪う。

ディフェンスにおいても、菅平のシュートを叩き落した。

7試合目にして、開始30秒に満たない圧勝。



「天才に敵はなし!ハッハッハ!」

調子に乗った桜木の高笑いは、体育館に響き渡っていた。


(菅平め、桜木を調子にのせおって!!)

苛立つ田岡。




桜木 1
菅平 0




第8試合は、湘北の同級生対決、安田と潮崎の試合となった。

一進一退の攻防が続いた3回目の潮崎のオフェンス。

高さを利用した強引なジャンプシュートが決まった。


「ヤス。悪いな。」

「次は、桜木だよ。怪我しないようにね。」

「うっうん・・・。」


こうして、1回戦の8試合が全て終了した。


続く、2回戦。



初戦は、流川対仙道。



早くも、このトーナメントのメインイベントを迎えていた。


静かにコートに向って歩く流川と仙道。


「・・・。」


「・・・。」


両者は言葉を交わさない。




第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道

第3試合 ×越野 ○黒川

第4試合 ×植草 ○宮城

第5試合 ○緑川 ×角田

第6試合 ○山岡 ×上杉

第7試合 ○桜木 ×菅平

第8試合 ×安田 ○潮崎








続く。

#261 【外の山岡、中の上杉】

2010-01-28 | #10 湘北 番外編
第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道

第3試合 ×越野 ○黒川

第4試合 ×植草 ○宮城

第5試合 ○緑川 ×角田




「湘北対決の次は、陵南対決や!!これはまた見物やで!!」

『カチカチカチ・・・。』


『バシ!』


「山岡と上杉をチェックしてどうする!!」

「あっ。それもそうやった。」




「次です。第6試合 陵南の山岡さんと上杉君!」




「ふっ。面白い試合になりそうだな。」

試合後、仙道が始めて、口を開いた。

「外の山岡、中の上杉。」

福田が答える。




山岡のオフェンス。

「先に攻めさせてもらうよ。」

「真剣にきてくださいね。」

「もちろん!勝ったほうが、ジュースのおごり!!」

「いいですよ!!ようやく、念願が叶いました。」にこり。



大きくピボットを踏む山岡が、シュート体勢を見せる。


(これは、フェイク!)


上杉の予感は当たった。



『グッ!』

山岡が、前に踏み込む。

上杉の腰が沈む。

再び、シュート体勢に入る山岡。


(中!!)


『ダム!』


山岡は、中に切れ込んだ。

再び、上杉の予感は的中した。


(いい勘してるね。でも、これはどうかな?)


『ダッダム!』


『シュ!』




「おっ!」

仙道も思わず、声を出す。


それに、流川も反応し、コートに眼を向ける。




『ザシュ!』


レッグスルーからのフェイダウェイ。

仙道が得意とし、流川もオフェンスのバリエーションとしている難易度の高いシュートを山岡が決めた。


「仙道さんとは、2年近くなるし、盗ませてもらったっす。」




「まいったなー。」

(拓真のやつ。)

と仙道。




「山岡さんのそんなプレー初めて見ましたよ!」

「必殺技は取っておくものさ!」

「なら、なんで、湘北との決勝戦で・・・。さては、まぐれ・・・?」


「・・・。」

(5回に1回しかできないのが、たまたま最初にできちまった・・・。)


「図星ですね?」

「入ればいいんだ!!」




上杉のオフェンス。


(上杉ちゃんは、ドライブが本業。ここは、ドライブで来る!)



『キュッ!』


(と見せかけて、外だ!)


上体の上がる上杉に合わせて、山岡がブロックに飛ぶ。

だが、上杉は、宙に舞う山岡の横をドリブルで抜き去った。


(あれ!?)


「えっ!?」


上杉も驚くほどに、山岡は高く飛んでいた。

あっさりとフェイクに引っかかった。



『シュパ!』


レイアップを決める。




「なっなんだ、あいつ!アハハハ!」

「一人で飛び上がった!!マヌケだぜ!山猿!!ハッハッハ!」

宮城と桜木がバカ笑いをしている。


「あははは。」

仙道も笑う。




「ぐっ・・・。」

勘が完璧にはずれ、悔しがり、恥ずかしがる山岡。




「まるで、花道のようだぜ!!アハハハ!」

宮城の笑いは続いていた。

「なぬ!リョーちん!山猿と一緒にするな!!」

騒ぐ桜木に流川がポツリ。

「どあほうが増えた。」

「おっおのれ!流川!!調子に乗りおって!てめーぜってーー決勝まで上がって来い!!ぶっ倒してやる!!」

「てめーは、初戦敗退だ。」

「なんだとーー!!!」


「桜木君!!!」

「ハルコさん!!」

「喧嘩はダメ!!」

「はっはい・・・。」

(流川め!今に見ていろ・・・。)

桜木が流川に仕返しを企んでいた頃。




『スト。』


山岡が、再び綺麗にネットを揺らしていた。

(うん、いいタッチだ。)




山岡 2
上杉 1




続く、上杉のオフェンス。

山岡を左右に振るドリブル。

「そんなドリブルじゃ抜けないよ。」

「これなら、どうですか?」

「ぬっ。」



『ダッダン!』


上杉のハーキー。


目線とは、反対の方向に切れ込んだ。



『シュパ!』


山岡の腕を交わしながら、レイアップを決める。



「決勝戦では、いい結果を残せませんでしたが、今日は残します!」

「・・・。望むところだね!!」


山岡の眼つきが変わった。


山岡 2
上杉 2







続く。

#260 【緑川】

2010-01-26 | #10 湘北 番外編
第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道




「第3試合 越野対黒川!」



「キャプテンの俺が、1年に負けるわけにはいかねぇ。」にやっ。

「本気でいきますよ。キャプテン。」

密かに下克上を狙う黒川。



越野のオフェンスから始まる。


『ダムダム!』


越野が見せる。

キレのあるバックビハインドとフロントチェンジを織り交ぜて、黒川を抜き去る。



『シュパ!』


キャプテンの意地を見せた越野の先制点。


「どうだ?」

「さすがですね。でも、もう通用しませんよ。」

「けっ、生意気な!」


だが、この黒川の言葉は、現実のものとなった。

その後、越野のシュートは、リングを通過することはなかった。

高さと力で圧倒した黒川が、越野をねじ伏せる。


「今日は、このくらいにしてやろう!」

負けた越野が強がりを見せる。


「吉○新喜劇かい!!」

山岡が突っ込んだ。



越野 1
黒川 2




第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道

第3試合 ×越野 ○黒川




彩子が、再び対戦表を読み上げる。



「第4試合 植草対宮城!」



「PG対決や注目の1戦やで!」

「お互い、手の内を知り尽くしている植草と宮城。
ディフェンスでは植草だが、オフェンスは宮城。さて、どっちが勝つか・・・。」

(植草、宮城の外はないぞ。ドライブだけに気をつけるんだ。)

田岡が植草を見つめる。


「リョーちん。湘北のキャプテンとして、負けるわけにはいかねぇぞ!」

「当たり前だ!あっちのやつとは違う!」


「ぬっ!宮城のやつ・・・。」

不機嫌になる越野。

「すいません・・・。」

黒川が謝る。

「謝るな!余計、俺が惨めになるぜ・・・。」




試合は、田岡の予想通り、互角の戦いを見せた。

お互いのシュートが入らぬまま、3回目の植草のオフェンス。



『バシ!』


「!!」


宮城のブロックが炸裂。


「へっ。そう何度も打たすかよ。」




「あの体で、ホントよく跳ぶな。」

と感心する柳。




ここから、宮城がノッた。


電光石火のドリブルを繰り出すと、植草も反応が遅れた。

畳み掛ける宮城が、跳躍力のあるレイアップシュートを決めた。




「さすが、宮城さんだね。スピードは、春風以上とみたけど、どう?次は勝てそう?」

と上杉。

「確かに、だけど、得点力は柳のほうがありそうだ。ん~、外角さえ決められなければ、俺の勝ちかな。」

答える黒川。


「なんだ、リョーちん。苦戦してんじゃねぇか!」

「なぬ。ウォーミングアップを長く取っただけだ!」

「強がっているとあっちのみたいになるぜ!」


「ぬっ!桜木まで、バカにしやがって!!」

怒る越野。

「すいません・・・。」

黒川が謝る。

「謝るな!謝るな!俺が惨めになるだけだ・・・。」




植草 0
宮城 1




第1試合 ○流川 ×福田

第2試合 ×柳 ○仙道

第3試合 ×越野 ○黒川

第4試合 ×植草 ○宮城




半分を消化したところで、大きな波乱はない。


「晴子ちゃん。次から、やってみない?」

「わっわたし?はっはい。
おほん!次、第5試合を始めます。えー、緑川君と角田さん!」



「緑川、本気でいくぞ!」

「はっはい。」



(あいつにあって、俺にないもの・・・。)

安西の言葉が脳裏に浮かぶ福田が、緑川を睨む。


(緑川を選んだ安西先生・・・。
そんなに彼は、いい選手なのか?この1on1で見極める!)

田岡の視線も熱い。



流川は、端のリングでシュート練習をしている。


仙道は、壁に寄りかかり、座っている。


お互いに、次の対戦に集中しているようであった。




「カク!頑張れ!!」

安田が、同級生の角田を応援する。




緑川のオフェンス。


『シュ!』


「えっ!!」

ボールを受け取ると、躊躇なく、シュートを放つ。



『ザシュ!』



「決まっちゃった!」




「速いリリースに気をつけろ!」

と安田と潮崎。


(シュータータイプか?)

と田岡。




緑川 1
角田 0




続く、角田のオフェンス。

難なく、リングに沈める。




緑川 1
角田 1




『ザシュ!』




「フェイダウェイ!!」




(綺麗なフォームだ。やはり、シュータータイプ。
なのに、なぜ福田と1on1をさせた?安西先生はいったい何を・・・。)

田岡の疑問は、解決しない。


お互い、シュートを外さない。




緑川 3
角田 3




「こらぁー!カク!3年が1年に負けてどうする!!しっかりしろ!!」

桜木が角田に気合を入れる。

「俺は、1年でキャプテンのゴリに勝ったけどな!ハッハッハ!」

「それが言いたいだけだろ・・・。」


「柳君。彼をどう思いますか?」

「緑川ですか・・・。シュートは、いいものを持っていますが、少し精神的に弱いところがありますね。
ボールへの執着心がないので、玉際にも弱く、SFとしては、難しいかと。」

「その通りですね。ただ、今はその弱い部分が彼の武器でもあります。」

「ん!?」




『シュパ!』


緑川の3本目のフェイダウェイが決まった。




「体の接触を好まない緑川君が放つフェイダウェイの安定感は、みんなも周知しているところ。」

「はい。だから、あいつがベンチ入りしていることに、誰一人疑問を持たない。」

「彼に足りないもの。わかりますか?」

「やっぱり、ボールへの執着心ですかね。」

「確かに、福田君のような粘りも足りませんが、何より自信がないようです。
そして、それを植えつけるのが、柳君、君の役目です。」

「おっ俺?」

「宮城君が桜木君をノせるように、柳君は緑川君にノせる。
緑川君の成長は、君のためでもあり、湘北のためでもあります。頑張ってください。」

「はぁ・・・。」

(どうすればいいんだか・・・。)

苦笑いの柳。




第5試合は、上級生の威厳を見せることはできず、シュート力の安定感を見せた緑川が角田を下した。


「ガッデム!」

「勝っちゃった!」




緑川 4
角田 3







続く。

#259 【優勝候補登場】

2010-01-25 | #10 湘北 番外編
第1試合 ○流川 ×福田




「俺もくじ運がないですね。勝っても流川さんだし。」

「流川とやるために、お互い頑張ろうか。」にこり。

「そうっすね。」



彩子が再び、トーナメント表を読み上げる。


「第2試合 柳対仙道!」




「これは、また異色な対決やで!!!」

「ここで、仙道さんとは!!」

「身長差20cm!仙道先輩の勝ちは決まったも当然!!」




「バスケは、身長だけじゃないですよ。」

「もちろん。努力と・・・センスだ。」

「面白いすね!」




柳のオフェンスから始まる。


『ダムダム!』


(さすがに、ドリブルが低いな。突っ込まれたら、厄介だ。)


『サッ!』


仙道は、一歩引いた。


柳のドリブル突破に備える。


(俺の相手は、今まででかいやつばかりだったけど、さすがに20cmはきつい。
しかも、仙道さんが相手となると勝機は0に等しい。)



『キュ!』


柳のドリブルが更に低くなる。


(だけど・・・、ドリブルだけはとめられるわけにはいかない!!!)




「いけ!!柳!!湘北No.2のスピードを見せてやれ!!」

宮城も声援を送る。




(ぬっ。No.1っすよ!!)


『ダム!』


柳の低いレッグスルー。


『ダム!』


再びレッグスルー。


『ダム!』


3回連続の素早いレッグスルーと同時に、体を揺らす。



(!!)


仙道の対応が遅れる。



『シュン!』


その一瞬をつき、柳が仙道に並んだ。



(速い!!)


柳のレイアップ。


ボールを体で守るように放るが、サイドから、仙道の腕がボールを襲う。



『バシ!』


虚しく弾かれるボール。




「容赦ない!!!」

「うわぁぁーー!」

「柳おしいぃーー!!」

「ミスマッチが堪えたか。」




(さすが、全国No.1プレイヤー。そう簡単に、ゴールを奪えないか・・・。)




「柳のスピードを持ってしても、仙道さんを完璧に抜けない。」

「20cmのミスマッチじゃしょうがねぇよ。」

仙道の勝利を確信する選手ら。




だが。




(勝てないまでも、必ず1本!)

柳の眼は死んでいない。


そして、彼らも。




「柳!スピードで負けたら、許さねぇぞ!」

「所詮、センドーだ。この天才との1on1を思い出せ!さすれば、勝てる!!」




(いや、桜木さんとしたことないし・・・。)


これを決めれば、仙道の勝利となる。


(勝つためには・・・ポストプレーだな。でも、それは・・・。)


『キュ!』


仙道が、柳を抜きにかかる。


(真っ向勝負してくれますか?恩にきますよ!!仙道さん!!)


『キュ!』


『ダムダム!!』


『キュッ!』



激しい1on1。


(何か、狙っている。)


(このドリブルの高さは、以前の流川さんと同じ。タイミング次第では・・・。)

柳の眼が光る。


(一か八か!)


『ダム!』


『キュッ!』


仙道が、バックロールを繰り出す。



その瞬間。



『ダン!!』


柳が強くコートを蹴った。 



『パシ!』



「!!!!」




「なっ!!!」

「すっ凄い!!あの仙道先輩から!!」

「仙道さんのドリブルをスティールしたで!!」


「春風のやつ、初めから狙ってたな。」

「あぁ。」

少し嬉しそうな上杉と黒川。


「勘が冴えたな。」

と宮城。

(・・・勘。)




「ナイスカット。」

「余裕ですね。」

「勝つのは俺だから。」にこり。

「いいますね。」

(今のは、運よくスティール出来たけど、次も奪えるとは思えない。とすれば、この1本は、確実に決めないと。)


再び柳のオフェンスが始まる。


(シュートまでは打てるんだ。あとは、決められるかどうか・・・。)



『ダッダム!』


瞬発力を生かした柳のドリブル。


仙道を抜く。


横から、シュートブロックを狙う仙道。



『キュ!』


『ダム!!』


柳は、足腰に力をいれ、急ストップ。

そして、後ろへバックステップを繰り出した。




「ぬっ。あれは、俺の稲妻ステップ。」

と宮城。




(後ろ!!)


前方に意識を集中していた仙道は、完璧に柳の姿を追うことは出来なかったが、まだ射程範囲内。


ミスマッチ20cmが大きく効いている。



『ダン!』


仙道の跳躍。



(!!!)



『ダム!』


『ダン!!』



(!!)



だが、更にバックステップを踏む柳。

仙道から大きく離れた。




「またしても・・・。あれは、完璧に俺のパクリだな。」

と不機嫌そうな宮城。




そして、放つフェイダウェイシュート。

柳の体が、大きく後方にのけぞり、静かにコートに倒れる。

シュートは、仙道の手の上を超えた。

仙道越しにボールの行方を確認する柳は、拳を小さく握る。



『シュパ!』



ボールは、優しくネットに包まれた。




「決まったーーー!!!」

「あの仙道さんから、奪い取った!!」

「20cmのミスマッチを跳ね除けたーー!!!」




倒れこみながら、微笑む柳。


(よし!)


(ふっ。やるな。)

仙道が手を出し、柳を起こす。


「ナイッシュ。」

「ありがとうございます。」




「2度のバックステップからのフェイダウェイか・・・。春風のあんなプレー初めて見たな。」

「中学より数段プレーの幅が広がっている・・・。」

「だが、それは俺たちも同じ。」

黒川と上杉は、幼馴染の成長を喜ぶと同時に微笑んだ。


「俺のバックステップから、ヒントを得やがったな。」

といつまでも、ぶつぶついっている宮城。




その裏、仙道は、柳を鮮やかに抜き去り、同点とする。

続く、柳のオフェンスは、仙道の前に封じられた。



3度目の仙道のオフェンス。


高く、そして速いジャンプシュートを決めた。

流川でさえ、とめることが困難な最強のジャンパー。




(仙道にあのジャンパーを打たせるとは、柳はそれほどの男というわけか・・・。
柳春風、来年宮城が去って、G陣手薄になると考えていたが、そう甘くはないな。)

田岡は、腕組に力が入った。




「やっぱ、負けちまったな。あはっ。」

敗退したにもかかわらず、明るい表情を見せる柳。


そして、安西が声をかける。

「素直になってもいいですよ。」

「・・・はい。」


(ぐっ。)

柳はうつむき、強く握った拳は、悔しさで震えていた。



柳  1
仙道 2







続く。

#258 【福田×流川】

2010-01-22 | #10 湘北 番外編
安西の提案により、1on1トーナメントが開催されている。

ルールは、サドンデス方式。



第1試合

福田 1
流川 0




福田が、ゴール下でねじ込んだ。

続く、流川のオフェンス。

ドライブを警戒する福田。




「1本でも、流川のドライブをとめられたら、お前も一人前だぜ。」

と越野。




だが。



『シュパ!』



「!!!!」



流川の切れ味鋭いドライブが炸裂。

福田は、あっさりと得点を決められた。



「・・・。」


「!!」

どうだといわんばかりの流川。


(嫌なやつ。)

福田の中で、流川は桜木と同じ扱いにされた。




(やはり、福田にはまだ早いか・・・。)

少し残念そうな田岡。




福田 1
流川 1




攻守が入れ替わり、福田のオフェンス。



『バス!』


ゴール下。

ポンプフェイクから、再び福田がねじ込んだ。


「うぉぉー!!」

吼える福田。

どうだといわんばかりの福田。


(どいつもこいつも・・・。)

どいつの桜木、こいつの福田。


流川の中でも、福田は桜木と同じ扱いにされた。

そんなことを知る由もない、桜木。




「フク助!キツネ!どっちも負けやがれ!!」




『ギロッ。』

桜木を見る福田と流川。

I don't knowのジェスチャーを見せる。




「おのれ!2人揃って!!」




福田 2
流川 1




「決めねーと負けか。」

「負けるわけがないですよ。あの人は。」

宮城と柳の会話。




『ダム!』


流川のハイスピードなフロントチェンジ。

福田のディフェンスを翻弄する。




「抜いたーー!!!」




流川が福田の左を抜く。

右サイドからリングを狙う。


そして、大きく宙を舞った。




「あのやろー。ダンクする気か?」

「でしょうね。」

満足そうな柳。




だが。



福田が、後ろから流川のダンクを叩きにいく。




「あっあれは!」

「決勝戦で見せた福田のブロック!!」

「また、やられる!!」

湘北1年生が心配そうに見ていた。




(あいつが同じ手にかかるわけがない。)

と仙道。



流川は、空中でボールを抱え込むように、胸に引き寄せ、福田のブロックを交わす。

そして、そのまま腕を前に大きく伸ばし、手首だけでスナップシュートを放った。



『ザシュ!!』



ボールは、勢い良くボードにあたり、ネットを通過する。




「すげーーー!!」

「さすが、流川先輩!!!」

「鳥肌がたった!!」

湘北1年生が活気だつ。



「おしい!!」

「あと少し!」

反対に悔しがる陵南選手ら。


「ふっ。あれは、とめられないな。」

仙道も白旗を揚げていた。


「まだ同点や!フクさん、次決めてこーー!!」




福田 2
流川 2




福田のオフェンス。



『シュ!』


「!!!」


流川の意表をつく、3Pシュートを放った福田。


ランニングリバウンドを狙う。



『ガンッ!』



『バシ!』


流川の白い腕がボールを掴む。




「あーーーあ。」

残念そうな声をあげるのは陵南選手。


「いい選択でしたが、少し焦りすぎましたね。」

と上杉。

「シューターにとって、必要なものは、平常心と自信。入らないと思って打つシュートは入らない。」

胸を張っていう山岡。




同点のまま。


流川のオフェンスを迎える。

これを決めれば、流川の勝利。

体育館に緊張が走る。



『キュ!』


『キュッ!』


ピボットを踏む流川。



そして。



『シュ!』


「んっ!!」

福田は、驚くとともに、振り返る。


揺れるネットが眼に映る。


最後は、3Pシュートを決め、勝利を決めた。




「流川先輩の勝ちだーー!!!」

「さすが、流川さん!!」

「フクさんも大健闘やで!!」




「・・・。」

再び、どうだといわんばかりの表情を見せる流川。


「むむむ。」

悔しがる福田。




福田 2
流川 3




第1試合は流川が勝利、福田は1回戦で消える結果となった。



流川は、仙道を睨む。

(待ってるぜ。)



そして、第2試合ミスマッチ20cmの2人がコートに足を踏み入れた。








続く。

#257 【安西の企画】

2010-01-20 | #10 湘北 番外編
休憩後、選手らが安西の指示を待つ。

そして、安西、田岡に呼び集められた16名が、安西からの指示を受けた。


「では、みなさん。これを引いてください。」


彩子の手にある、16枚の折りたためられた紙。

16名が、その紙を引く。


「今度は、なにやらせるんだよ、オヤジ!」

「なんか、くじ引きみたいっすね。」

「うん。1on1の大会でもするのかな。」にこり。

と答える仙道。


(1on1。)

それに反応する流川。


紙には、1から16までの数字。



「これから、みなさんには、1on1の試合をやっていただきます。」



「!!!!」


「!!!!」


「なっ!!」



「さすが、仙道さん。当たりましたね。」


(まいったなー。)

と仙道は苦笑い。



「陵南、湘北の中で、誰が一番1on1が強いか決めましょう。どうですか、みなさん?」



「なっ!!!!」


「えっ!!!!」


「あっ安西先生!!!」

驚愕の表情を見せる田岡。


「へへっ、おもしれー。」

と宮城。


(上等。)

流川にも気合が入る。


「これは、ホントにまいったなー。」

と仙道。


(ふん。俺が優勝だ。)

福田にも気合が入る。


「試合をすることもねぇ。なぜなら、優勝はこの天才桜木だからな!ハッハッハ!!」



「これは、遊びではありません。本気でやってください。」


「はい!」



「安西先生・・・。」

驚く田岡とは、別に安西は楽しそうな表情を浮かべていた。



くじ引きによって、決まったトーナメント表が、彩子、晴子により貼り出された。



「うぉぉぉーー!!!」

それを見た選手から、声が上がる。


「なんやてーーー!!こりゃーえらいこっちゃ!!要チェックやーー!!!」

『カチカチカチカチ・・・。』

彦一がシャーペンを取り出した。


「ふっ。」

笑うのは仙道。


「へっ、相手にとって不足はねぇ!」

宮城も笑う。


(誰だろうと関係ねぇ!!)

流川の瞳に炎が見える。


「天才の優勝は間違いない!!ハッハッハ!!」

桜木の根拠のない自信。


「これは、ラッキーだったね~。」

と山岡。

「どっちがですか?」

「俺!」

「その言葉、そっくり返しますよ。」にこ。

「上杉ちゃんも言うね~。」


『ギロッ!』

福田が流川を睨む。

(流川も桜木も仙道も倒す!)



「ルールは、簡単です。サドンデス方式。」

安西が、ルール説明を行い、付け足す。

「試合を行っている人も、見ている人もいいプレーは盗んで下さい。
競争心、向上心、そして、吸収心を持って臨んで下さい。
それでは、始めましょう。彩子君お願いします。」



「おほん!始めるわよ!んっ、うん。第1試合 福田対流川!」



「いきなりの好勝負や!!試合でも、あまり対戦のなかった2人や!見ものやでーー!!」

彦一のテンションは、うなぎのぼり。


「オフェンスの鬼流川と粘りの福田。流川優勢だが、福田にもチャンスは、十分に考えられる。」

と田岡。



福田と流川の2人のみが、コートに足を踏み入れる。


「流川。容赦しない。」

「借りは返す。」

「??決勝のブロックか。根に持つタイプとみた。」きらん。

「・・・。」


2人がともに、静かな気合を放っている。



そして。



「初め!!」


彩子の声で、1on1トーナメント大会が始まった。




福田のオフェンス。


『ダムダム!!』


「ぐっ!」


小細工なし、一気にパワードリブルで、ゴール下に押し込んだ。


『キュ!』


そして、素早いバックロールを見せる。




「なっ!フク助!この天才の技を!!」


「おめーの技じゃねーよ!」




『キュ!』


食らいつく流川。



『シュ!』


流川に接触するようにシュートを打つ福田。



「!!」


『チッ。』


流川は、わずかにシュートに触れた。



だが。



『ダン!』


『キュ!』


福田は、着地すると同時に、ゴール下に向かう。


「!!」

(ぬ!)

流川も咄嗟に方向転換し、ゴールへ向かうが。



『ガン!』


『バス!』


リングにあたり、跳ね上がったボールを、福田がタップシュートで押し込んだ。




「おのれ!!フク助!!またしても、天才の技を!!!」




ボールへの執着心を見せた福田が、流川から先制点を奪った。


(流川から、簡単に得点を奪うか。さすが、粘りの福田・・・。花道以上だぜ。)



福田 1
流川 0




期待と不安、楽しさと厳しさ、様々な表情が映し出される安西の考えた企画が、始まった。







続く。

#256 【意図。そして。】

2010-01-19 | #10 湘北 番外編
安西の指示により、各コート、各リングで、白熱の1on1が繰り広げられている。

それを遠目から見る安西と田岡。


「安西先生、このあとのメニューは、どういったものでしょうか?」

「今日は、1on1だけですよ。」


「!!」


「!!」


(せっかく、陵南にきてもらっているにも関わらず、1on1だけとは・・・。
ホント、安西先生の考えることは奇抜だわ。)

と苦笑いの彩子。




そうとも知らず、選手らは、1on1に打ち込む。


『シュパ!』


「へっ、どうだ!No.1キャプテンは譲らねぇぜ!」

「ぬっ。」


『パシ。』


「なにっ。」

「甘いぜ!宮城!!」


キャプテン対決は、どこよりも熱い攻防をみせている。




そして、ここは静かに燃える。


『ダム!』


『キュッ!!』


『シュパ!!』



『ティン!!』


『ダン!』


『ザシュ!』 


一言も言葉を発しない2人は、1on1を通じて、会話をしている。


(1週間、どういった練習をしてきた?ディフェンスが、抜群によくなっている。)

と驚きの表情を見せる仙道。


(いける。)

宮城らのドリブルに比べれば、仙道のドリブルは高かった。

仙道に追いついた、そう思った流川は少しだけ笑った。



だが。



仙道は、更に上をいく。


(まだ甘い。)


『ザシュ!』


今度は、高さを利用し、ポストプレーで、流川から得点を奪った。


「さぁ、もう1本だ。」にこり。


(にゃろー。)




柳と植草。

ここは、センターサークル内でボールの取り合いをしている。

柳を巧くライン際まで、押しやり、ボールを奪う植草の頭脳プレー。


(地味だが、巧い。間違いなく、全国クラスのPGだな、この人。)


「柳君のスピードは申し分ないけど、もう少し緩急があってもいいかな。」

植草は、助言までしていた。


「あざす。」

(面倒見も◎っすね。)




「勝負はリバウンドからだ!いいな!!」

「望むところです。」

「よし!ハクタス、投げてくれ。」



『ガコン!』


『バチィーーン!!』


こちらは、桜木と黒川。

白田に、ボールを投げさせ、そのリバウンド争いから、1on1を開始した。



『ザシュ!』


桜木が得点を決める。

身長、跳躍力に勝る桜木が、8割のリバウンドを制している。


「黒坊主!リバウンドを制する者は、試合を制すだぞ!覚えておけ!!」

「はい!!」

(この人を飛ばせないことが先決。だが、スクリーンアウトでつかまえることができない。
どうすれば・・・。)



『バシ!』


『シュパ!』


再び、桜木がゴール下を決めていた。




一方、白熱した1on1にならないのが、この組み合わせ。



緑川対福田であった。



これまで、8-0。

福田の圧勝である。


(なぜ、俺の相手がこいつ・・・。)


『バチン!』


福田のシュート。

緑川が激しく腕を叩いた。


「あっ。ごめんなさい。」


なおも、ボールに飛びつき、シュートを決める福田。

粘り強いオフェンスを見せた。


(はぁはぁ。全く相手にならない・・・。)


沈黙する緑川に、安西が一声かける。


「どうですか?福田君、緑川君。」


「・・・。」

「・・・。」

お互いに言葉を発しない。


「緑川君は、福田君と1on1をして、何か感じましたか?」

「・・・。」

(何か・・・。)

「福田君にあって、緑川君にないもの。緑川君にあって、福田君にないもの。
それをお互いに見つけてください。」


(ないもの・・・?)

と緑川。


(なんだ?)

と福田。




その後、安西は、各1on1を回り、ペアの変更を指示したり、細かなスキルの指導を行ったり、約2時間1on1を繰り返させた。



「安西先生。お言葉ですが、この1on1にはどのような意味が、おありでしょうか?」

(きっと、安西先生だ。重大な意味深い理由があるに違いない!!)


「わたしの個人的な趣味ですよ。」


「しゅっ趣味ですか?」

「そうです。ほっほっほ。」


(なぬ!趣味ですと・・・。いや、違う!!
これは、私にご自分の意図を知られたくないために、わざと趣味と仰ったんだ!さすが、安西先生、侮れぬ!!)


「そろそろ、よろしいですかね。」

安西は休憩を言い渡す。


選手によっては、1on1の相手が引っ切りなしに変更したり、全く変わらないものなど、様々であった。



「1on1しかしなかったけど、どんな意味があったんだろう・・・。」

「でも、試合の中では、知りえなかった情報が、1on1から知ることが出来た。」

「うん。その意味では、良かったけど、それは相手も同じ。
次の試合は、更にやりずらくなるかもしれないね・・・。」

選手の間にも困惑があった。



安西が1on1をさせた意図。



それは・・・。



お互いのチームの個人スキルを熟知させることにあった。



お互いが、お互いの手の内を知ることで、
更に次のステップのスキルを身に付けようとする吸収力、向上心、そして、競争心をこの合同練習の初期において、
植えつけようと考えていたのであった。



そして、もう一つ。



それは・・・。



安西も口にしていた単純な趣味であった・・・。

選手の個々の成長をみたい・・・、そんな想いだった。



「彩子君。さっきのを。」

「はい。先生。」

「田岡先生。陵南の選手の中から、8名選出してもらっていいですか?」

「はっはい・・・。」

(また、何か考えましたか?)



こうして。



安西が選出した8名、田岡が選出した8名が、計16名が、呼び集められた。








続く。

#255 【1on1】

2010-01-18 | #10 湘北 番外編
湘北・陵南合同練習初日。

午前中の練習が終了した。



「キャキャプテン・・・。」

「はぁはぁ・・・。」

「ぜぇぜぇ・・・。」

「うるせー。なにもいうな!!」



午前中は、ランニング・ストレッチ・フットワークのみで、終了していた。


宮城は、陵南の選手に比べ、不甲斐ない味方選手へのあてつけと、湘北の練習量の誇示のため、
あえて、通常の3倍のランニング、フットワークを行った。


これには、さすがの陵南も息を上げるものもいた。



「さすが、宮城さんや!自称鬼キャプテンというとることはある!!はぁはぁ。」

倒れるように、座る彦一。


「だがよ。ホントに、毎日こんな練習してんのかな?」

疑うこちらも自称日本一の練習量を誇るチームのキャプテン越野。


「どっちでもいいんじゃないっすか?」

と山岡は軽い。


「いつもと違う練習、いつもと違う相手というのは、やっぱり刺激があっていいですね。」

と上杉も喜ぶ。


(こうして、春風と一緒に練習できるのも久々だし、楽しみだな。)

黒川の表情も緩む。


仙道と福田は、静かにその会話を聞いていた。

(腹減った・・・。)

(学食やってるかな??)




一方、湘北。

「リョーちん。気合はいってるじゃねーか!!」

「あたりめーよ!!」

「試合でも練習でも陵南に、負けるわけにはいかねぇからな!!」

「よく言った!!さすが、リョーちん!!」


『ガシ!』

肩を組む宮城と桜木。


「リョーナンをぶっ潰す!!」

声が揃った。


流川は、大粒の汗を大量に流しながら、スポドリを飲む。

湘北一の体力を持つ柳も、少し疲れた表情を見せる。

白田は、別メニューで、足腰の筋力強化を図っていた。




そして、午後の練習が始まる。

安西、田岡の前に集合する湘北、陵南の選手たち。


「午後は、個人のスキルを磨いていきます。普段とは違う相手と思う存分、1on1をしてください。
ペアは私が決めておきました。彩子君、これを。」

安西は、彩子にメモを渡す。


(!!!)


(1on1!!)


(おもしれー!)


(誰が相手だ!!)


(誰にも負けない!!)


(センドー!来い!)



(いきなり、1on1ですか?選手たちの闘争心に火をつけるわけですね?)

田岡が腕を組む。



「では、ペアを発表するわね。えーと、湘北宮城・・・。」


「おう。」


「陵南越野。」


「おう。」


「宮城、どっちが合同練習チームのキャプテンか、決めようじゃねーか!」

「チョロいね。」



「いきなり、キャプテン対決やーーー!!!」

彦一のテンションが上がる。




「湘北流川と陵南仙道。」


「うぉぉぉぉーーー!!!」

どよめく体育館。


(センドーー!!)


「いきなりか、まいったなー。」

言葉とは反対に、嬉しそうな表情を見せる仙道。


「逃げやがったな!センドー!!!」

「すまん、安西先生の指示だから。あとで、相手してやるよ。」

「ふん、キツネごときに負けるなよ!!」

(どあほう。)



「うぉぉーー!!こちらも注目の対決や!!エース対決!!要チェックや!!!」



(ちゃんと練習になるのかしら・・・。)

心配そうな彩子。




「続いて、湘北柳と陵南植草。」


(ぬっ。空斗じゃないのか?まぁ、いいか。神奈川きっての冷静な植草さん。
そのスキル、奪わせてもらいますよ。)

「よろしく。柳君。」




「湘北潮崎と陵南山岡。」


「よし!!俺のディフェンスの成果を見せる!!」

「いっちょ、揉んでやりますか。」にこり。




「湘北角田と陵南菅平。」


「負けない!」

「こっちもだ!!」




「湘北安田と陵南上杉。」


(柳の同級生の上杉・・・。相手にとって、不足はない!)

(安田さんか・・・。柳とやりたかったなっ。)




次々と対戦相手が決まっていく一方で、一向に呼ばれないイライラする2人。



「なぜ、この天才が呼ばれぬのだーー!!!」

「桜木!勝負!!」

「おうよ!フク助!行くぞ!!」

フライングをする桜木と福田。

周りもみなこの組み合わせだと思っている。



だが。



「湘北緑川と・・・えっ、陵南ふっ福田。」


「なっ!」

「ぬっ!」

「グリとフク助だと!!」

驚く選手たち。


それもそのはずである。



背番号15緑川航(わたる)


1年生ながら、柳らとともにベンチ入りを果たしていたが、試合出場経験はない。

ポジションはSF、身長184cm、65kg

実力も湘北高校において、中の上あたり。

外角のシュートに定評のあるもの静かな男だった。

ちなみに、緑川=グリーンという安易な発想から、緑川は桜木からグリと呼ばれていた。


それが、県ベスト5にも選ばれた福田と対決することになったのである。



「僕が福田さんと・・・。」

「手加減はない。」

と福田。



(安西先生は、何を考えておられる。
試合経験の少ない緑川のスキルアップが目的ですか、はたまた福田の飼い殺しか・・・。)

と田岡。




「最後は、湘北桜木と陵南黒川。」


「けっ。黒坊主か。格の違いを見せてやるぜ!!」

「胸を貸してもらいます!」

「おうよ!ありがたく思え!!」




こうして、対戦相手が決定した。


そして、両校の威信を賭けた1on1が、始まったのだが、
このとき、安西の計画もう一つのサプライズ企画を誰も知る由はなかった。








続く。

#254 【安西のサプライズ】

2010-01-15 | #10 湘北 番外編
突如、聞こえた聞きなれた声。


『ガシ。』


「おはようございます。安西先生。」

「よくお越しくださいました。」

微笑みながら、握手を交わす安西とその男。


「どっどういうことだよ!オヤジ!!」


『タプタプタプ・・・。』


「ほっほっほ。」

「ほっほっほ。じゃねー!理由を説明しろ!理由を!!」


『タプタプタプ・・・。』


「安西先生・・・、言ってらっしゃらないのですか?」

「ほっほっほ。サプライズ企画ですよ。」

「はぁ・・・。」

男も冷や汗を流す。



「センドー!!!」

叫ぶ桜木。


(センドー!)

心の中で叫ぶ流川。



「どーして、ここにセンドーがいやがる!!
いや、なぜに陵南のやつらがいやがるんだーー!!!」



「安西先生、これは?」

と宮城が選手を代表して問いた。



「今日から、1ヶ月間、週末に陵南高校さんと合同練習を行います。」


「ごっ合同練習!!!」

湘北選手が大きな声をあげる。


「1週ごとに、体育館を行き来しながらの合同練習を行います。まずはうちからスタートです。」

「せっ先生!?」

「なんですか?宮城君?」

「陵南と合同練習って、これから俺たちは、全国制覇に向けて、
個人のスキルアップ、チームプレーの確認とか、やらなければならないことが山ほどあります。
そんな大事な時期に、合同練習って・・・。」

「それに、陵南は、俺たちに負けて、試合もねぇーだろ!邪魔者だぜ!オヤジ!!」

桜木も割り込んだ。


だが。



「この合同練習は、私から田岡先生に提案し、快諾をいただきました。」



「なっ!!!」

「オヤジ!!!」



「うちは、来年早々に天皇杯がある。それを安西先生はご存知だった。」



「天皇杯!!!」

更に驚く湘北選手。


「リョーちん。天皇杯って、元旦に観にいったやつか?」

「そうだ。選手権優勝枠ってやつだ。そうか、それで仙道や福田がまだいやがるのか?」



「どーも。」

仙道は、軽く頭を下げる。


(願ってもねぇー!)

流川の眼は、すでに戦闘モードになっていた。

それに気付く仙道。


「まいったなー。」

(そんな眼で見るな。すぐに相手してやるから。)にこり。



「お互いに全国制覇、天皇杯という大きな目標がある中で、切磋琢磨しながら、ともに練習するのは、
お互いの意識やスキルの向上にいい刺激になるのではとお考えになった安西先生が、
県予選の決勝後に、私に合同練習を提案してこられた。そして、私もそれに賛同し、快諾した。」

と田岡が補足説明し、続けた。

「宮城、桜木、それともうちでは相手不足か?いや、うちの練習についてこれないと?」



『ピクッ!』



「上等だーーー!!!」

と宮城。

「湘北をなめるな!!じじい!!」

と桜木。

(なんだっていい、センドーとやれれば。)

と流川。


「はぁ・・・。揃いも揃って単純だ。」

呆れ顔の柳。



「ふっ。では、選手も納得したところで、そろそろ練習を始められますか、安西先生?」

「はい。そうですね。」

(安西先生。湘北の練習内容を盗み、そして更にそれに上乗せをして、陵南の練習に組み込む。
いいチャンスをいただきましたよ。)にやり。

田岡は腹黒かった。



だが。



(さすが、安西先生。白田を怪我で欠き、練習相手を失った桜木の練習相手を陵南から、連れて来るとは・・・。
しかも、仙道もいる・・・。流川にもこの上ない、練習相手・・・。さすがとしかいいようがない。)

彩子は、安西の顔をそっと見る。

安西は、凄く満足そうな顔をしていた。

その横で、流川を見つめる晴子。

(流川君、また仙道さんと対決できるね。今度は、きっと勝てるから、頑張ってね!!)




合同練習初日。

ホームの監督が、練習の主導権を握ることになっていた。

すなわち、今日は安西のメニューで練習が行われる。


「宮城君。いつもどおりにお願いします。」

「はい。」



だが。



「はぁはぁ・・・。」


「ぜぇぜぇ・・・。」


「キャプテン・・・。」



「宮城さん、いつもより3倍のランニングをしていますね。もう1時間、走りっぱなしですよ。」

と焦りの表情を見せる晴子。

「リョータのやつ。練習量は、うちのほうが上だと言わんばかりですね。ったく。何を競ってんだか!!」



(湘北が陵南に練習量でも負けるわけにはいかねぇ!!)


(ふっ。やるな。宮城!だが、俺たちはこれくらいで参らないぜ!)

越野は、対抗心を燃やしていた。



「ダッシュ!!」


「はい!!」

「おう!」

「ひぃーー!!」



結局、最初のランニングは、ダッシュを含めながら、60分間行われた。

練習前の自主練が効いていたのか、湘北のほとんどの選手が、脱落していく中、
桜木、柳、そして、しぶとく後方より流川がついていく。


一方、陵南は、全ての選手が走り続けていた。


(宮城、うちは1日練習ともなれば、2時間は走る。まだまだ青いな。)

田岡の顔は勝ち誇っていた。



(くそう!情けねぇやつらだ!!もっと、走りこませてやる!!)

鬼キャプテン宮城は、仲間の不甲斐なさに、イラついていた。








続く。

#253 【来訪者】

2010-01-14 | #10 湘北 番外編
土曜日。

選抜県予選から、1週間が過ぎた。

練習開始1時間前。



『キュッ!』



「流川!腰が高くなっているぞ!!」



『ダムダム!』



「柳!ドリブルが高い!!」



宮城の声が体育館に響く。

宮城、流川、柳による練習前の1on1は、今も尚続いていた。

流川のディフェンスの向上はもちろん、宮城、柳のボールハンドリング、ドリブルテクニックも、
一段階上のレベルアップが見られていた。



『シュパ!』


『ザシュ!』



『ダン!』


『ダムダム!』



(こりゃ、もう練習前とは言えねぇな。)

苦笑いの宮城が周りを見渡すと、湘北バスケ部全ての選手が、体育館に訪れ、
シュートやドリブル、1on1などの練習をしていた。

宮城らの練習前の自主練を見た安田らは、次の日からできる限り早く来て、練習を始めていたのであった。


次の日から、また一人。

そして、また一人と。


3日も過ぎれば、全ての選手が、遅くとも30分前には体育館に訪れ、練習を始めていた。


一人のモチベーションの高さが、みんなに波及する。

湘北バスケ部は、今最高のコンディションの中、練習をしていた。



もちろん、この男も。



「スーハー。スーハー。」


桜木はストレッチに余念がない。

ボールに触れたい逸る気持ちを抑えて、自分の体を伸ばし、労わる。


(体のケアが大切。ボールに群がる庶民どもとは違う!さすが天才!!)


コートに、ボールに、リングに、誰よりも飢えていた桜木にとって、
誰よりも長くストレッチをしていたことは、大きな大きな精神的な成長であった。


「桜木君。以前とは別人のようだね。」

「何がですか!?ハルコさん?」

「ほらだって、昔はさぁ、誰よりも先にコートに入って、
ボールに触って、シュート打って、とにかく誰よりも先にバスケをしていたけど、今はどっしり構えているっていうか。
なんか、体も心も成長したって感じ。」

「そっそうですか?桜木は、昔からどっしりしていましたけど。」

「昔は、態度と実力が・・・。」

「ぬ!?」

「あっ。ちっ違うの!今は、実力も態度も、なんか頼れるプレイヤーって感じだよ!!」


「ハッハルコさん!」


(ほわーーーー。)


「練習が終わったら、また背中のマッサージしてあげるね。」

「はっはい!!」


(ハルコさん・・・。こっこの関係は・・・、カッカレシとカッカノ)



『バシ!』


「なに、妄想しているのよ!!」


「アヤコさん!」

(おのれ!せっかくのハルコさんとのラブラブを・・・)


「ったく。みんなが1時間も早く来るから、私も来なくちゃならなくなったじゃない。
もう、これは絶対に全国制覇してもらわないと割に合わないわね!」

「もちろんです!!
必ずや、この桜木花道が、アヤコさんを日本一のマネージャーにさせてあげます!!ハッハッハ!!」


「ノーノー。日本一の美人マネージャーね。おーほっほっほ。」


「ハッハッハ!」



『ピクッ。』

(花道のやつ、アヤちゃんとあんなに楽しそうに・・・。)



(宮城さんの眼が血走っている・・・。今日の練習は、ハードそうだな。)

と柳は苦笑いをした。




練習開始、30分前。

安西が登場する。


「チューーーース!!!」


「ほっほっほ。今日も元気ですね。」


「オヤジ!今日は早ぇじゃねーか?」

「今日は、お客さんがきますから。」

「お客さん?」

選手の多くが聞き返す。


「誰だ?お客さんって?宮城さん聞いています?」

「いや、何も。」


ご機嫌そうな安西とは反対に、選手の顔は困惑の表情を見せていた。

時刻は、8時30分を過ぎていた。

そこに聞きなれた声が、体育館の出入口から聞こえた。


「チューーーース!!!!」


振りぬく湘北選手。


「!!!!!」

「なっ!!!」

「えっ!!!」

「なんで!?」

「どうして、お前らが!!」

「!!」


「来ましたね。ほっほっほ。」








続く。