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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#351 【キャプテン】

2010-08-26 | #11 湘北 選抜編
コートの中央で整列する10名。




「ナイスゲーーーム!!!」

「山王、優勝おめでとう!!」

「湘北も良く頑張ったぞ!!」

「沢北ーーー!!!」

「5連覇期待しているぞーーー!!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「ナイスファイト!!桜木ーー!!」

「山王も湘北も、また帰って来いよーー!!!」



「スコアどおり!青!!」


「あーーしたっ!!!」




『パチパチパチパチパチパチパチパチ・・・!!』


一向に鳴り止まない拍手が、決勝戦の凄まじさを物語る。


負けた湘北も、勝った山王も、みなその歓声と拍手に、優しく包まれるのであった。




「宮城!」

「ん。」


加藤であった。


「いい試合だった。大学でも負けないぜ。」

「聞いているぜ。お前の敵は、まずは深津だろ!?深津からスタメンPGを奪ったら、相手してやるよ。」

「俺はいつまでも深津先輩のサブじゃない。」

「偉そーに。」

「宮城は神体大なんだって。松本先輩によろしくな。」

「あぁ。」


(スピードの宮城と安定感抜群の松本先輩のガードコンビか・・・。侮れないな。)


(中盤に見せたオフェンス力なら、2番もあるかもしれねぇな。深津と加藤、ホントいやなコンビだぜ。)



柳葉は、福原の肩につかまっている。


そこへ。


「柳葉さん。お疲れさまでした。」

柳が声をかけた。


『コク。』


「来年、俺はまた挑戦させてもらいますから。まずは、IHで会いましょう。」


『コク。』


「春風・・・。」

「快!勝ったお前が、なんでそんなに暗い顔してるんだよ!もっと、いい顔見せろよ!!」


「・・・。おっ俺は・・・。」

「快が山王を選んだこと。みんな、嬉しいと思っている。
あの敗戦で、お前がバスケやめちまうんじゃねぇかって、みんな心配していた。
場所がどこであれ、快がバスケを続けてくれたことを、俺たちは本当に嬉しく思う。
こうしてまた会えたしな。ありがとう、快。」にこ。


「春風・・・。」

「優勝おめでとう。」


「あぁ。今度、神奈川帰ってきたら、みんなで会える・・・かな。」

「当たり前だ。俺たちは、一生仲間だ。ほら、見ろよ。」


柳は、観客席の上杉と黒川を指差した。

「よくやったぞ。春風!快!!」


『パチパチパチ!』


旧友の戦いを見届けた2人。

「空斗・・・。大蔵・・・。」

福原は、静かにうれし涙を流した。


自分の幼いミスにより、敗戦を喫した中学3年最後の全国大会。

卒業後、そのトラウマから逃げるように、柳らの前から姿を消して、秋田の地を踏んだ福原。

今ここに自身の成長と選抜優勝。

そして、再び大切な仲間を得たのであった。



『パッ。』


『ザッ。』


突然、柳葉が柳と福原の手を取り。


『ガシ。』


重ねた。


「・・・・・・・・。なかま。」


「柳葉さん。」

「柳葉さん・・・。」

3人は、優しく微笑むのであった。



(柳、よかったな・・・。)

その光景を後ろから見つめる白田に、河田が声をかけた。


「白田君。お疲れ様。」

「あっ、河田さん。」

「才能っていいな。兄や沢北さん、桜木君、もちろん白田君のような才能は、僕にはない。」

「そっそんなことは・・・。」

「でも、努力は裏切らない。それが今日、証明できた。次も山王が勝たせてもらうよ。」

「俺ももっともっと努力して、次は湘北が勝たせてもらいます。」


『ガッ。』

固い握手をした。


この1年間、山王工業で最も成長を見せたのは、沢北でもない、柳葉でもない、この河田美紀男なのかもしれない。

河田雅史という高校バスケ界の歴史に残る兄を持つプレッシャーの中、
大きな体の優しい男は、スキル、ハートで誰もが認めるほどの成長を見せていた。




「おめでとう。よくやったぞ。よくやった。」

堂本が、5人を迎え入れる。

「沢北、これで全てを摘み終えたか?」

「雑草は、踏み潰せば潰すほど、大きく、そして強くなる。来年はしんどいですよ。」

「今まで簡単に優勝できたことなどなかったが、今日もこうして4連覇を達成できた。
心配するな。山王は簡単には負けん!!
それより、雑草はどこまでも伸びるぞ。例え、海を越えてもな。」

「そしたら、また刈るまでですよ。今以上の刃でね。」

「あぁ。そうだな。」


流川、桜木を見て思う。

(もう、雑草じゃねぇか・・・。あいつらは・・・。)




「さぁ、拍手よ!!明るく迎え入れるのよ!」

と彩子。


『パチパチパチパチパチパチ!!』


大きな拍手で5人を迎え入れる湘北ベンチ。


「アヤちゃん、すまねぇ。」


『パン!』


宮城の背中を叩く彩子。


「謝ることなんて一つもないわよ。さぁ、胸張って!
私の中のNo.1ガードは、ずっとずっと前から、リョータだったわ。」にこ。

「アッアヤちゃん・・・。」


「うっぐっ。マネージャー・・・。リョータ・・・。」

その光景を見ている3年生の安田らは、もらい泣きをしていた。



「桜木君。」

晴子がタオルを渡す。


「・・・。」

うつむく桜木。


「桜木君?」

「ハルコさんに会わせる顔がありません・・・。」

「・・・。優勝はできなかったけど・・・。私は、優勝するより嬉しいことがあったよ!!」

「んっ!?」


「今日の桜木君と流川君のコンビに胸が高鳴った。
2人が今よりももっと仲良くなれば、次は絶対絶対、湘北が優勝する!!確信できたもん!!
来年こそ、全国制覇しようね!!」


「ハッハルコさん・・・。」

「ありがとう。桜木君。」

「はっはい!流川の力なくとも、この天才桜木が、ハルコさんを優勝に導きます!!!ハッハッハ!!」

「わっわかってないかな・・・。」

晴子は苦笑するのであった。




安西の周りに選手が集まる。

静かに口を開く。


「素晴らしい試合でした。優勝できなかったのは私のせいです。
君たちの素晴らしい能力を100%引き出せなかった私の責任です・・・。」


「先生・・・。」

「オヤジ・・・。」

「いえ、先生は何も・・・。先生の指導のおかげでここまで来れた。本当に感謝しています。」


柳と白田を見る安西。

「柳君、白田君。お疲れ様でした。君たちが、湘北に来てくれたおかげで、湘北は強くなった。
この敗戦は、必ず君たちを強くする。もう一度這い上がりましょう。」

「先生・・・。」

「・・・安西先生。」



「流川君。沢北君相手によく頑張りましたが、今回も彼を超えられなかった。」


「・・・。」

「これから、どうしますか?」


「日本一になって、あいつを倒しにいく。」

「それがいい。流川君ならできる。ここにいる全員が思っています。期待していますよ。」

一人を除き、みんなが輝く瞳で流川を見つめている。


「うす!!」

流川は、決意表明をするかのように、力強く返事をするのであった。



「桜木君はどうしますか?」

「全員ぶっ倒す!!それだけだ!!」


「よろしい。仙道君も沢北君もいない高校バスケ界で、もう負けるわけにはいかないですよ。いいですね?」


「うす!!」

「おうよ!!」

「はい!!!」



「宮城君。」

「はい。」


「3年間、お疲れ様でした。ここまで来れたのは、君の力があったからこそです。」

「俺は・・・。」


「宮城君が束ねたからこそ、この湘北は強くなった。
宮城君の力が、この湘北をここまで強くしたのです。」

「先生・・・。」

再び涙がたまる宮城。

「その小さな体で、赤木君たちが抜けた大きな穴をよく補ってくれました。
もちろん、宮城君だけじゃない。安田君も、潮崎君も、角田君も、彩子君も・・・。
みんなありがとう。」


「うっうっ。」

今にもこぼれそうな涙を必死に堪える3年生たち。



「君たちを指導してきた日々は、私にとって誇りです。素晴らしい日々を本当にありがとう。」



「ぐっぐしゅん。」

安田の涙がこぼれた。

「ううう・・・。」


続いて、潮崎、角田、そこにいた多くの選手の眼から涙が流れた。



「先生を・・・。先生を優勝監督に出来ず、申し訳ありませんでした。
でも、必ずこいつらがやってくれます!なぁ、流川!花道!!」


「うす。」

「へへっ、もちろんだぜ!!このキャプテン桜木が、オヤジを優勝に導いてやるぜ!!」


「あぁ、任せたぜ!キャプテン花道!!」



「!!!!!」



「えっ!!!」



「なっ!!!」



「あっ!!!」



「ハッハッハ!!!」



「ほっほっほ。」



そこにいた全ての人が、宮城の発言に驚愕した。

湘北が初めて進出した全国大会決勝、惜しくも絶対王者の山王工業の前に夢破れた日のことであった。



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選抜優勝大会 決勝 

山王工業×湘北

山王 81
湘北 80


【山王工業】青 81

#4 加藤 8P 12A
#5 烏山 8P  
#7 沢北 27P  
#9 柳葉 19P 
#10 河田 8P 13R
#15 福原 11P 8R


【湘北】白 80

#4 宮城 8P 9A
#7 流川 23P
#9 柳 14P
#10 桜木 17P 17R
#14 白田 12P 9R
#15 緑川 6P

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第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会

優勝 山王工業

準優勝 湘北

第3位 名朋工業

第4位 喜多島


最優秀選手 沢北 栄治


ベスト5
G 天野 之博(名朋)
G 柳葉 敏(山王)
F 沢北 栄治(山王)
F 流川 楓(湘北)
C 桜木 花道(湘北)







#11 湘北 選抜編 終了
#12 大学 新人戦編 に続く。

#350 【キセキ】

2010-08-23 | #11 湘北 選抜編
残り試合時間 1.7秒

山王 81
湘北 80




沢北の起死回生のジャンプシュートが決まった。



桜木、流川を超える尋常ではない高さの跳躍。



右手一本のみで、2人のブロックを交わしたボールコントロール。



まさに最高峰のジャンプシュート呼ぶべきジャンプシュート。



湘北の想いを打ち砕き、山王の想いを叶える高校バスケ界最高の男、沢北栄治。



試合残り時間は、2秒を切っていた。




『ぶわぁ。』

「ぅぅぁぁぁ・・・。」

湘北ベンチの晴子の眼から涙があふれ出た。


安西の眼鏡は曇っている。


彩子は、唇をかみ締め、控え選手の口は開いたままであった。




『パン!!』


堂本は、握っていた右手の拳を、左の手のひらに当てた。


狂喜乱舞の山王ベンチの選手たち。


拳を突き上げる。


タオルをぶん回す。


大きく跳びはねる。


そして。


コートを囲む大観衆が、騒ぎ出す。




「ぎゃ逆転だーーー!!!!」

「沢北ーーーーー!!!!!」

「キターーー!!!」

「山王ーーー!!!」

「さすが!沢北ーーーー!!!」

「奇跡だーー!!」

「凄すぎるーーー!!!」




加藤、柳葉、福原、河田が沢北に笑顔を送る。


沢北は、右手の人差し指の立てて、ひと言。


こう答えた。



「まだだ!!足を止めるな!!もう1本獲るぞ!!」


「はい!!!」

「ボールマン!!」

「OK!!」

「桜木さん、いきます!!」

「流川!チェック!!」

「ディフェーーンス!!」



残り2秒を切っていても、マークマンへのディフェンスは緩めない。


沢北のひと言が、山王選手の心を今一度締める。



一方、視線が合う流川と桜木。



「・・・。」


「・・・。」


することは一つ。



『キュ!!』


『キュッ!!』



山王ゴール目掛けて、無言で駆け上がった。



ボールは、エンドの白田から宮城へ。



加藤のディフェンスを掻い潜り、ボールをもらう。



『キュッキュ!!』



『キュッ!!』



加藤と柳葉が、容赦なく宮城を襲う。



「!!!」



『ブンッ!!』



宮城は、脇目も振らず、サイドスローから大きく前方にボールを投げた。



ボールの軌道を見守る全選手、全観衆。



祈る想い、願う想いがボールに託された。



湘北ベンチは、胸の前で手を握り祈る。



山王ベンチは、両腕を高らかに掲げる。



そして、ボールがハーフラインを越え、最高点を迎えたところで・・・。



『ビィーーーーー!!!』



試合終了を告げる長い長いブザーが、会場全体に響き渡った。



『ダン!』


ボールがコートに落ちる。


『ダン。』


『ダン。』


寂しく弾んだ。




『グッ!!!』

「よぉぉしぃーー!!」

堂本のガッツポーズを合図に、今一度山王ベンチが歓喜に沸いた。



「!!!!!!」

「勝ったーー!!!」

「4連覇ーーー!!!」

「優勝だーーーー!!!!」




タオルを舞い上げ、全身を大きく震わせ、喜びを表現する。

敗者への敬意を表す山王にとっては、珍しい勝利の雄たけびであった。

それは、この試合がかつてないほど激戦だったことを物語る。




河田と福原が、山王ベンチの歓喜を笑顔で見つめる。


柳葉は限界を迎えていた足を伸ばしている。


(優勝・・・。やりましたよ。深津さん・・・。)

加藤は、誰よりもほっとした表情を見せていた。




「残念だったな。」

と観客席の田岡。

「ぐっぐ・・・。湘北、よく頑張ったで・・・。」

彦一は涙を流している。


「惜しかったな。春風・・・。」

「あぁ・・・。あと1歩だったな。」


「この敗戦が、また湘北を大きくするだろう。」

と田岡。

「湘北とまた勝負がしたい。」

と福田。

「あぁ。またできるさ。きっと。」

微笑む仙道。




「相田さん・・・。終わっちゃいましたね・・・。」

「えぇ。終わったわ。」

「湘北・・・。負けちゃいましたね・・・。」

「えぇ。負けたわ・・・。」

「奇跡の逆転勝利がまた見られると思ったんですけどね・・・。」

「奇跡か・・・。湘北の強さは、奇跡なんかじゃないわ。
彼らは、実力は本物よ。むしろ・・・、沢北君のあのシュートのほうが、キセキだったかもしれない。」




湘北コート上。


エンドライン上に立っている白田は、大粒の涙を流していた。


試合中における自分のミスが、脳裏をよぎる。

あのとき、こうすれば・・・。

あのとき、ああすれば・・・。


悔しさは涙に変わり、頬を流れる。


(あの1本を・・・。)



柳は、天井を見上げ、両手の拳を腰の辺りで握り、涙をこらえている。


『パシ。』


「最後までよくやったぜ。」

「・・・。」

後ろから肩を叩いたのは、宮城だった。

宮城の頬には、涙がつたった痕があった。

それを見た柳の眼からは、溜まっていた涙が一気にあふれ出た。


うつむく柳。


『ガシ!』


宮城が柳の頭を掴む。


「その悔しさは、来年晴らせ。湘北のPGは任せたぞ。2代目スピードガード!」

「はい!!」




一方、山王コート。


「はぁはぁ。」


「ぜぇぜぇ。」


無言で見つめあう流川と桜木。

湘北の敗北を未だに受け入れられずに、山王ゴールの下でただ立ち尽くす。

2人には、お互いの呼吸しか耳に入らない。



『サッ。』



視線を外した流川が、右手を差し出した。



「てめーにしては、上出来だった。」



『パン。』



流川の手を弾く桜木。



「てめーにしては、よくやった。」



『プイ。』



不器用ながら、そしてぎこちなくも両者を称えあった。



そこへ。



「おい。流川、桜木!」

沢北であった。


「ん。」

「なんだ。小坊主。」


「ナイスゲームだったぜ。」


「フン。」

「負けたら意味がねぇ。」


「桜木のディフェンスは、ハイスクールのやつよりも上だった。
あそこまで、俺のドライブを止めたやつは、正直あっちにもいなかった。」

「この天才が抜かれるわけない!!」

「いや、抜いただろ。」

沢北は続ける。


「流川のオフェンスは、アメリカでも十分に通用するはずだ。
あとは、超一流とやれるだけの体力とフィジカルが必要だ。」

「・・・。」


「2人ともあっちで待ってるぜ。必ず来いよ!そのときは、好きなだけ相手してやる!!」


「ジョーートーーだ!」

桜木と流川の声が揃った。


「首を洗って待っとけ!!」

「それまで誰にも負けんじゃねぇぞ。」



「但し!!・・・。日本一になってからだぜ!!」



「わかってるぜ!!」

「ぜってー、ぶっ倒しにいってやる!!」



「ふっ、来年の柳葉と河田を倒すのは至難の技だぜ。」



桜木、流川、2年生の冬。

打倒沢北という目標は、まだまだ続くのであった。








続く。

#349 【パッサ】

2010-08-20 | #11 湘北 選抜編
試合終了まで残り6.9秒

山王 79
湘北 80



ストロングサイドには、沢北と桜木のみ。



青地に気高く輝く背番号7の数字。


白地に烈火のごとく燃ゆる背番号10の数字。


体育館の全ての視線が対峙する2人に注がれていた。


3Pライン外。


ボールは、沢北の手の中。



「・・・。」にこり。


「・・・。」にや。



沢北の四肢の筋肉が、まだかまだかと爆発を促す。


桜木の四肢の筋肉が、今まさに起きようとしている爆発に備える。



「!!!」



『ピク!』



「!!!!」



『ザッ!』



「!!!!!」


「!!!!」



『キュッッ!!』



『キュッ!!!!』



『ダムッ!!』



「!!!」


「!!!!」



沢北が爆発させた音速のドライブ。



だが。




「うわぁーーー!!」

「なんてことだーー!!」

「とっ止めたーーー!!!」

「沢北を止めたーーー!!!」

「残り5秒!!!」

「まただーー!!」

「桜木が止めたーー!!」




「桜木くーーん!!!!!」

湘北ベンチから、晴子が涙を飛ばしながら叫ぶ。




2度の小刻みなフェイントに惑わされることなく、桜木は沢北の初歩を止めた。



沢北の第2波。



手を緩めない。



まるで初歩を止められることがわかっていたかのように、沢北は再撃する。




「沢北ぁ!いけーー!」

堂本も鬼気迫る表情で叫ぶ。




『キュッ!!!』



「!!!!」



『ズバッ!!!』



『ダムッ!!』



『キュッキュ!!』



『バッ!!』



「!!!!」



『キュ!!!』



「!!!!!」




「まただ!!!」

「また止めたーー!!!!」

「一度ならず二度までも!!!」

「山王が負けるーー!!」

「凄いぞ桜木ーー!!」

「沢北が止められた!!!」




桜木は、音速に切り返す沢北に、再び完璧に対応した。



桜木の本能が、沢北の技術を超えた瞬間だった。



だが、沢北に動揺はない。



流川が思い出す。



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「・・・。あっちでてめーを抑えたやつはいたか?」

「ん?ハイスクールか?シュートは、ブロックされたな。だが、ドライブを完璧に止めたやつはいなかった。」



「俺のドライブをとめられるやつは、日本にはいない。」


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(桜木!!)



残り試合時間 5.1秒




「時間がない!!!」

「湘北の勝ちだーー!!!」

「まだだ!!!」

「沢北が負けるーー!!」

「どっちだーー!!」

「いけーー!!」




極限状態の2人。


観客の声援はおろか、周りの状況も視界には入っていない。


存在するのは、目の前の男を抜く、止める、それだけであった。



ここで、技術を超える沢北の本能が呼び起こされた。



(桜木ぃぃーー!!)



(小坊主ぅーーー!!)



本能と本能とのぶつかり合い。



『グワァ!!!』



眼が見開く沢北。



「うっ!!」



桜木は、その迫力、執念、闘志に一瞬押される感覚がした。



「!!!!」



『ダムッ!!!』



「!!!!」



『キュッ!』



「!!!!!」



その一瞬を見逃さなかった沢北。



桜木の横を沢北の風が吹き抜けようとした。



「!!!!」



(しまったぁ!!!)



沢北は桜木を抜いた。




「ぬっ抜かれた!!!」

「諦めるな桜木ーーー!!!」

「湘北!万事休す!!!」

「さすが沢北だーーーー!!!」

「ナンバーワンはお前だーーーー!!」




残り試合時間 4.1秒



『ダムダムッ!!』


突っ込む沢北。


狙うは、湘北リングのみ。



だが。



『バッ!!!』



「・・・。」



『キュッ!!』



「!!!!!」



沢北の前に現れた無二のライバルと認めた存在。



再び、流川が立ちはだかった。





「流川がカバー!!!」

「ナイスカバーだ!!!」

「沢北対流川ーー!!」

「あと4秒!!!」




優勝をかけた最後の1on1。



『キュッキュ!!!』



『ダムダムッ!!』



『キュ!!!!』



『ダン!!!』



『ダン!!』



沢北が、流川が、力強くコートを蹴った。



「!!!!!」



「!!!!!」



ライバル流川を目の前に、沢北の選択は。



最も自信のあるジャンプシュートであった。



(決める!!!)



『バッ!!』



沢北の体が伸びる。



(打たすか!!!)



『グッ!』



流川の腕が伸びる。



そこへ。



「小坊主ぅー!!」



沢北の後ろから、桜木がチェックに跳んだ。



空中に舞う3つの体。



わずかに体勢を崩しながらも、揺るがない上半身の沢北。



右手を懸命に伸ばし、後ろから襲い掛かる桜木。



高校バスケ界、いや日本の至宝に真っ向から立ち向かう流川。



(もらった!!!)



(届く!!!)



(止める!!!)



流川の指と桜木の指が、沢北のボールに触れようとした。



瞬間。



『グッ!!!』



左手を外し、右手一本のみでボールをコントロール。



更に沢北の腕が伸びた。



「なっ!!!」



「んっ!!!」



湘北リングを捉える。



「これで最後だーー!!!」



沢北が放つ最高峰のジャンプシュート。



沢北の右腕は、桜木のチェックを交わし、流川の手を超えた。



『シュ!!!』




「打ったーーー!!!!」

「打たれたーー!!!」

「逆転かーー!!!」

「逃げ切りかーーーー!!!!」




「外れろーーー!!!」

湘北ベンチからの想い。




「入れーーーー!!!」

山王ベンチからの祈り。




「!!!!!」



「!!!!!」



桜木と流川の眼に、沢北の手から、リングに真っ直ぐに向かうボールが映った。



「!!!!!」



沢北は、右手を力強く握る。



『ダン!』



3者同時に着地。



リングに眼を向ける。



体育館は静まり返る。



そして、その静寂があの音を一層引き立たせる。




『パッサ。』




残り試合時間 1.7秒


山王 81
湘北 80







続く。

#348 【ラストプレーへ】

2010-08-19 | #11 湘北 選抜編
試合終了まで残り18秒

山王 79
湘北 80




『ザシュ!!』


流川の逆転3Pシュートが決まった。




「うぉぉぉーーーー!!!」

「逆転だーーーー!!!」

「あの夏の奇跡が再びーー!!!」

「ありえなーーい!!!」




体育館が揺れていた。




「三井先輩・・・。」


彩子がふと、流川の姿を見ながら、つぶやいた。


「三井さん・・・。」

「三井先輩・・・」

「三井さんだ。」

「三井先輩!!」

2,3年生も続くように、その名を口にした。


ピンチになろうとも決して最後まで諦めることがなかった三井。

その跳び道具は、湘北に粘りと勝利をもたらした。



「赤木君の想い、三井君の想いがしっかりと彼らにも伝わっている。」

安西の眼鏡が光った。


「お兄ちゃん・・・。三井さん・・・。」



三井イズムの伝承。

三井を知るものは、流川の姿に三井寿の姿をダブらせるのであった。

桜木に赤木の姿をダブらせたように。




「こっこんなことって・・・。」

中村の眼から大粒の涙が流れた。

「いや、まだ18秒ある。気は抜けないわよ!」

冷静な弥生。




「・・・。」

言葉の出ない陵南の1年生。

「決めた流川君も凄いけど、パスを出した桜木さんも凄すぎやで・・・。
沢北さんの動きを読んでいたとしか思えへん・・・。」

「2人とも確認などしておらんだろう。
パスを出したところに流川がいた。動いたところに桜木からのパスがきた。そんなところだ。
お互いを思う信頼関係があって、初めて成立するパスだ。」

「仲いいなぁ。あの凸凹コンビ。」

仙道は笑った。




エンドラインから加藤へボールが渡る。


(18秒・・・。)

加藤のゲームメイクが優勝校を決めるといっても過言ではない。




「これが最後の攻防戦です。」

と拳を握る安西。




「選手を信じるのみ。」

と同じく拳を握る堂本。




「17秒・・・。」

『ゴクッ。』

晴子は息をのんだ。




「残り16秒・・・。」

弥生がペンを強く握った。




『パシ。』


『パシ。』


時間を使うように、山王が高い位置でパスを回す。


加藤ー柳葉ー福原ー加藤。


ボールの保持者が流れるように切り替わっていく。



残り10秒となった。



「10秒!!」

「どうする山王ーー!!!」

「速く攻めないと!!」

「沢北で来るはずだーー!!」



ボールは、未だ加藤がキープしていた。

沢北には、桜木の執拗なディナイディフェンス。


「フンフンフン!」

足を動かし、腕を振るい、パスコースを塞ぐ。



だが。



『キュ!』


『キュッ!』


「ん!!」


突如、桜木の前から沢北の姿が消えた。


「ぬっ。」


少し離れたところで、パスを受けた沢北に、山王の命運は託された。




「あっ!!」

「沢北だーー!!」

「やっぱり沢北だーーー!!」

「どうする湘北!!」




沢北の一瞬のキレは、桜木の身体能力を超える。




「やはり、桜木一人では抑えられないかもしれん。」

と田岡。

「桜木さん・・・。」

心配そうな彦一。




と、そのとき。



河田がハイポに上がった。

続いて、福原が逆サイドの柳の下へ、スクリーンをかけに動き出す。


「うなじ。」


「ん。」


『ガシ。』


「ぃって。」


福原は柳にスクリーンをかけた。

その結果、柳葉は沢北からフリーでボールを受け取った。




「沢北じゃない!!」

「最後は柳葉だーーー!!」

「沢北は次期エースの柳葉に託したーーー!!」




(やば。)


流川が決死のカバー。



電光掲示板の数字は、8.8秒



柳葉の腕が動いた。



「!!」


「!!!!」



『シュ。』



「!!!」


「!!!」



ボールは、ハイポへ放たれた。




「また、パスだ!!」

「河田か!!」

「インサイド!河田と白田の勝負だ!!」




『グッ。』


足腰に力を入れ、河田の重圧に構える白田。


(来い!ぜってー止めてやる!!)



だが。



『パン!!』


河田はボールを外には弾いた。




「またパス!!」

「やっぱり最後は・・・。」

「あの男ーーー!!!」

「ナンバー1高校生!!!」

「沢北だーーーー!!!!」




『パシ。』



3Pライン外。



「・・・。」にこり。



ボールを受け取ったのは、紛れもなく山王の大エース、高校バスケ界の至宝沢北であった。 



しかも。




「まっまただ!!」

「山王が寄せたーー!!!」

「アイソレーション!!」

「湘北、絶体絶命のピーーンチ!!」




沢北とリングの間にある障害は、桜木のみ。


桜木にとって、正真正銘最後の闘いが始まる。


実に、試合終了まで残り6.9秒のことであった。



山王 79
湘北 80







続く。

#347 【くらえ。山王。】

2010-08-18 | #11 湘北 選抜編
試合終了まで残り32秒

山王 79
湘北 77




沢北を止めた流川のテイクチャージ。


湘北の奇跡の逆転劇へ。


シナリオが、また一行、また一行と書き綴られていく。



「どっどしよう。またアイソレー。」


『パン。』


「わぁ!」


美紀男の腰を叩いた沢北が話しかけた。


「美紀男。そんなに緊張するな。まだ、時間は十分にある。1本入れられたって同点だ。
しかも、うちのボール。それを叩き込めば、山王は優勝だ。緊張することは何もない。」

「さっ沢北さん・・・。あっありがとうございます・・・。少し楽になりました。」

「桜木を頼んだぜ。」

「ふぁい!」


(とはいえ、美紀男じゃ桜木を止めることは難しい。となるとやはり・・・。)



『ダムダム・・・。』


安西、宮城の指示はない。



だが。



湘北は動いた。



『サッ!』


『キュ!』




「まっまただ!また桜木で攻める気だーー!!!」

「河田に止められるのかーー!!」




(だろうな。)


(にゃろう。何か企んでやがる。)


桜木と河田を見つめる沢北を流川の視線は捉えていた。



『パシ。』


ボールは、桜木へ。


3Pラインの外。




「キタで!キタで!キタで!!!」

「桜木さん!!!」

「桜木!!」

陵南選手にも力が入る。




「サークラギ!サークラギ!サークラギ!サークラギ!」

「ミキオ!ミキオ!ミキオ!ミキオ!ミキオ!ミキオ!」




「へっ。大声援って気持ちのいいもんだな。」

「・・・。」


「丸男。これで同点だぜ!」

「違うよ!!!」


河田は、桜木の動きに全神経を集中した。


桜木の赤い髪の1本1本までが、はっきりと見えるほどに。



『キュ!』


『キュッキュ!』


軽いピボッドを踏む。



「!!」


河田は、桜木の凝縮した筋肉の変化を感じた。



「くるぅ!!」



『ズバッ!!』



『バッ!!!』



『ダムッ!』



「!!!」


河田は直感した。


桜木は右手ドリブルで来ると。


大きな体を桜木のコースへと押しやった。



だが。



桜木は河田の右側を抜けていた。


初歩は、左手ドリブル。


つまり・・・。




「桜木がまた抜いたーー!!」

「どっ同点だーー!!」

「桜木がやりやがったーー!!!」



だが。



『キュッ!』



「!!」


「なにっ!!」


「!!」にや。



突然、沢北が河田の大きな体の後ろからコースに現れた。



『キュ!』


桜木の体勢が崩れる。



「小坊主ぅー!!」


「おしまいだ!桜木ー!!」



『キュ!』


ドリブルをカットするため、手を伸ばす沢北。



「!」にやっ。


(笑った?)


「やはりな。」


桜木が薄ら笑いを浮かべながら、言葉を放った。



と同時に。



「フン!!!」



『バチン!!!』



ドリブルで上がってくるボールに合わせ、真横にボールを弾いた。



(なっなに!!!)


「パッパス!!まさか!!」




「桜木!!」

と福田。

「野生の勘、いや読んでたか?」

と田岡。

(あいつ。)

仙道は拳を握った。




「小坊主の動きなんぞ、お見通しだ。」



桜木のパスが向かったその先には、もちろん・・・。



仙道を倒し、沢北が認め、桜木の追う男。



流川楓がいた。



『パシ!!』



「ぜってーー!決めろ!!流川ぁーーー!!!」



「てめーにいわれるまでもねぇ。」



胸の辺りで受け取ったボールを素早く頭の上に移動させる。


横から、跳び込んでくる柳葉の姿。



「ーーーー!!!」


柳が叫んでいるが、流川の耳には届かない。


流川の眼には、周囲の状況がスローモーションのように、ゆっくりと映っていた。



「くらえ。山王。」



『シュ。』



流川は、柳葉の存在を否定するかのように、柔らかなシュートを放った。



中学より幾度となく修羅場のシュートを決めてきた流川。



プレッシャーを感じない強靭な精神力が、柳葉の手にボールを触れさせない。



審判が、3本の指を上げる。




「3Pーーーーー!!!」

「決まったら、逆転だーーーーー!!!」

「まっまじかよ!!」




「リバウンドだーー!!」

加藤が叫ぶ。


福原、白田がゴール下へ向かう。


スナップの利いた流川のシュートは、高い放物線を描く。



弾道。



軌道。



パーフェクト。



『ザシュ!!』




「3Pーーーー!!!!」

「決まっちまったーー!!!」

「まさかのーー!!!」

「そのまさかのーーー!!!」

「逆転だーーーー!!!!」

「湘北が逆転したぞーーー!!!!」

「ありえない!!!」

「キセキーーー!!!」




体育館が揺れた。


湘北ベンチは、総立ち。


跳び上がって喜ぶ。




堂本が時計を確認する。


(残り18.3・・・。まだ大丈夫だ。)

「最後まで選手たちを信じよう。」

大きな汗が滴った。




湘北か。



山王か。



この試合最大の山場を迎えた。



優勝まで残り18秒

山王 79
湘北 80







続く。

#346 【奪取】

2010-08-13 | #11 湘北 選抜編
試合終了まで残り37秒

山王 79
湘北 77




沢北と桜木の1on1。


沢北が激動する。


桜木が防戦する。



『キュッ!』


『ダムッ!!』


『キュ!!!』



観客が見つめるその先には・・・。




「さっ桜木がとっ止めたーーー!!!!」

「沢北を止めたーーーー!!!」

「いや、まだだ!!!」

「並んでいる!!!」

「まだわからねぇーー!!!」




桜木が沢北の初歩を止めた。


それは、バスケの技術でもなく、経験でもなく、桜木の本能によるものであった。



『ダムッ!』


『キュッ!』


『ダム!』



沢北のドリブルに、手を上げながら並走する桜木。




「すっ凄いで!桜木さん!!」

「桜木。」

「桜木・・・。」




鬼の形相の沢北。



決死の形相の桜木。



桜木が沢北の前に回りこんだ。




「身体能力は沢北君以上なの!?」

と弥生。




「止めたーー!!!」

「いや、まだだ!!!」




(ここだ!)


沢北は桜木の逆足を捉えた。



『ダムッ!!』


『キュ!』


『クルッ!!』


沢北の高速バックロールが繰り出される。




「巧い!速い!」

「鮮やかなバックロール!」

「抜かれるー!!」




『ダム!』


(ぬっ!しまったぁーー!!!)


(よし!)




「抜いたーー!!」

「沢北が抜いたー!!!」

「さすが沢北だーー!!!」

「沢北が桜木に負けるかよーーーー!!」




「!!!」



桜木の眼に映る沢北の背中ともう一人の男。



「!!!」



桜木を視界から消し去った直後、突然現れた湘北背番号7のユニホーム。



「!!!」



無念の表情を浮かべる桜木と突っ込んでくる沢北の姿を捉える鋭い視線。



『ドンッ!!!!』



接触。



「!!!!!」 



「!!!!!」



倒れかける沢北。



その眼の前には、同じく倒れかける流川の姿があった。



「るっ流川!!!」



「ざまーみろ。」



『ダーーン!!』



沢北は流川に覆いかぶさるように倒れた。



体育館に雄たけびがあがる。




「マッマジかよーーー!!」

「流川がーー!!」

「沢北がーーー!!」

「遅かったか!!」

「オフェンスか!!!」

「ディフェンスか!!」

「チャージングか!!!」

「どっちだーーーー!!!!」




「流川くーーーーん!!」




「沢北ーーーー!!!!」




審判の行動に、全視線が注がれた。



『ピィーーーー!!』



一瞬の間が空く。



審判の判断は・・・。



『グッ!』


『バッ!』 


拳を前方に押し込んだ。



「オッオフェーーーーンスッーー!!」




「うわわわーーーーー!!!」

「うぉぉぉーー!!!!!」

「オフェーーーーンス!!!」

「流川が沢北からテイクチャージだ!!!!!」

「流川すげーーーーーー!!!」

「沢北のチャージングだーー!!!!」

「ターンオーバー!!!」

「2点差じゃ、本当にわからねぇーー!!!」




「流川!!」

「流川さん!!」

宮城らが流川の下に駆け寄る。


ゆっくりと立ち上がる流川。


「負けてたまるか。」


一言だけ、言葉を放った。


「あぁ。」

宮城が答え、白田らがうなずいた。


「キツネにしては、上出来だ。」

「抜かれてるじゃねぇかよ。ド素人。」

「甘い!わざと抜かれて、後ろから叩く天才の作戦だったのだ!」

「やれやれだぜ。」



「止めたぜ。」

「・・・・・・。流川。」

(桜木に気を取られていたとは言え、流川はノーマークだった・・・。迂闊だったぜ・・・。)

沢北の表情は、悔しさでゆがんでいた。



「エージ。」

「夏輝、申し訳ない。だが、この借りは倍にして返してやる。」ギラ。

「あぁ。お前は嘘をつかない男だ。」にこ。




「流川君が、初めてチャージングを奪った・・・。」

「あの流川が・・・。」

「この場面で・・・。」

「なんてこなの・・・。」

湘北の選手が、安西の言葉を思い出す。



-----------------------------------------------------------------------


「桜木君でさえ、数々のチャージングを奪ってきました。
しかしながら、1年生より湘北のエースと呼ばれてきた流川君には1度もありません。どういうことかわかりますか?」


「奪う気がないからでしょう。」


「オフェンスでやり返せば、いいと思っているからでしょう。」


「ずば抜けたオフェンス力に頼りすぎている。私が、流川君をエースと認めないゆえんです。
仙道君や沢北君のように、オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、
本当のエースですよ。流川君。ほっほっほ。」


「沢北君を止め、沢北君以上の得点を奪い、日本一になったら、流川君を日本一の高校生プレイヤーだと認めます。」


-----------------------------------------------------------------------



「流川君。素晴らしいディフェンスですよ。そして、桜木君も。」

真剣な眼差しの中で、安西は静かに微笑むのであった。



湘北の逆転への可能性は残された。




残り32秒

山王 79
湘北 77







続く。

#345 【日本一の高校生】

2010-08-11 | #11 湘北 選抜編
残り試合時間 57秒

山王 79
湘北 77




桜木のアイソレーションで2点を奪い、1本差に詰め寄った湘北だったが、リードされていることに違いはない。


そして、このあと、呼吸を忘れるほどの壮絶な1分間を迎える。



「夏輝。」

沢北がつぶやく。

「あぁ。」

静かに答えた。



湘北はハーフマンツーでしっかり抑える作戦。

マッチアップの変更はない。


加藤に宮城、柳葉に柳、福原に流川、河田に白田、そして、沢北に桜木。

3Pのスペシャリスト烏山がベンチにいるため、桜木を除いた4人は小さく守っている。


それは、ダイヤモンドワンのようにも見えた。


だが、加藤の一言でそのディフェンスは崩れる。



「ゼロ。」


「ゼロ?」

「えっ!!」

「なっ!」


加藤が告げたのは、紛れもなくナンバープレーであった。


「!!!」


「福原か!!」




「疲労度の高い流川のところから攻めるか!!」

「いや、わからないぞ!」

「ゼロは初めて見るナンバープレーだ!!」




『キュッ!』


『ザッ!』


『キュッキュ!』


『パシ。』


『サッ!!』


『パシ!!』


ガードとインサイドでボールが回る。


そして、仙道が気付く。




「寄せられている。」




『パシ!』


複雑なスクリーンプレーを多用し、ボールは、左45°沢北に渡った。




「あっ!!!」

「なんとーー!!」

「こっこれは!!!」




「アッ!!」

中村が叫ぶ。




「アッ!!」

観客席で彦一が叫ぶ。




そして、会場が叫んだ。


「アイソレーション!!!!」




「桜木とのマッチアップなら、当然の選択。」

と田岡。


「・・・。」

無言の仙道と福田。




(にゃろう・・・。)

と流川。


(くそう。真似しやがって!)

と宮城。




「わぁわぁわぁ・・・。」

声が出ない中村。

「確かにこれは、分が悪いわね。」

冷静な弥生。




「へっ。上等だ!小坊主!」


「一瞬で終わらせてやるよ。」



残り40秒

24秒バイオレーションまであと7秒



『ジジジ・・・。』


誰にも気付かれることなく流川は、沢北側による。



「来るならきやがれ!!!」


気付くと桜木は笑っていた。


沢北も同様であった。


「ちっ。」

流川の舌打ち。




「楽しそうだな。あいつら。」

と仙道。




沢北と桜木に漂うある意味死闘にも似た空気。



(流川が止められねぇ小坊主を止めれば、俺が日本一の高校生だ!!)



(身体能力だけなら流川以上。だが、それだけじゃ、俺は止められねぇぜ!!)



「いくぜ!!!」


「きやがれ!!!」



「!!!!」


「!!!!」 



『ダムッ!』



『キュッ!』



『キュ!』



今までにない、激しいバッシュの音が体育館に響き渡る。



「!!!!」



「!!!!」



選手、ベンチ、観客が吸い込まれるように見つめる1on1の先に見たものは・・・。 



残り37秒

山王 79
湘北 77







続く。

#344 【1%】

2010-08-09 | #11 湘北 選抜編
残り試合時間 1分4秒

山王 79
湘北 75




「10番!」


宮城の指示したナンバープレー。


動き出す湘北。


迎え撃つ山王。


体育館を揺るがす観客の声。




「あっあれは!」

「なんだとーー!!」

「湘北が賭けに出たーー!!」




コート上。


ボールを持っているのは、桜木花道。


宮城、柳、流川、白田は、桜木の逆サイドに大きく開き、固まっている。




「さっ桜木君のアッアイソレーションだ・・・。」

「・・・。」

無言の弥生。

(沢北君にマークされた流川君、河田君にマークされた桜木君。
確かに比較すれば、確率は桜木君のほうが高いかもしれないわ。)




「アイソレーションやて!!」

「大胆な作戦かもしれんが、理にかなっている。」

と田岡。


「あのマッチアップなら、桜木のほうが断然上だ。」にこり。

仙道は笑った。


「だが、あの位置で何ができる?」

と福田。




湘北の期待が、夢が、桜木の双肩にのしかかる。




(桜木君・・・。)

晴子が祈る。


(桜木花道・・・。)

彩子が見つめる。


(桜木君・・・。)

安西が見守る。



「よし!あれやるぞ!!」

石井が桜木に向かって、手のひらを広げ、つぶやき始めた。

「入れ~~~。入れ~~~。入れ~~~。」

桑田、佐々岡らも一緒になってやり始めた。

「何ですか?それは。」

「いいから、緑川もやれ!!」

「はっはい!」




「丸男。さっきのリバウンドの恨みは倍にして返してやる!!!これで湘北の優勝は決まりだ!!!」

「やってみないとわからないよ!!」

「生意気な!!」

「こい!!桜木君!!」



45°3Pライン上に位置取る桜木。

逆サイドの沢北はいつでもカバーにいける体勢でいた。



だが。



(流川をフリーにするわけには、いかない。ちっ、面倒な作戦だぜ。)



(俺と柳で速攻を封じる。白田は跳び込みリバウンド。
流川は、沢北の注意を引きつけ、花道が止められたときのフォローに回る。
邪魔するものはいねぇ。思いっきりやれ!)


「花道ーーー!!」



「ふーーー。」



桜木が静かに息を吐いた。



その瞬間。



『ズバッ!!!!』



河田に風が通り過ぎた。



「え!!!」



『キュ!!!』



『ダムダムッ!!!』



『ダン!!!』



『ドガァァァッ!!!』



それは、正しく一瞬の出来事であった。



『タン。』



着地する桜木が電光掲示板を確認する。



数字が変わる。



75 76 77




山王 79
湘北 77




信じられない光景に体育館は、静まり返っていた。




「さっ桜木くーーーーんーーー!!!」

第一声は、晴子。

力強く眼をつぶり、大きく口を広げ、叫んだ。




「・・・。」にっ。

桜木は、振り向き無言で優しく笑いかけた。


そして、隣の安西に視線を移す。

両腕を上げ、両手をめいっぱいに広げていた。


安西が高く掲げたもの。

それは、正しく10本の指で形成された10の数字であった。



集中していた桜木の耳に歓声が届く。




「うわわわぁぁーーーー!!!」

「ダーーーーーンクーーー!!!」

「わぁぁぁーーー!!!」

「なっなんていう速さのドライブーーー!!!」

「高い!!高すぎるーーー!!!!」

「沢北並!!いや、それ以上かもしれない!!!!」

「桜木のダンクで2点差だーーーー!!!!」




「戻るぞ。時間はある、確実に1本止めるぜ。」

宮城は冷静に指示を出す。

「はい。」

白田が答える。

柳は安西を見る。

(バボちゃんがいる・・・。)



沢北がつぶやく。

「おい。流川、桜木のやつ・・・、なんてドライブしやがるんだ・・・。」


「・・・・・・。」

(あんにゃろう。)


(・・・。流川並、いや、俺と変わらない・・・。)




「アンビリーバブルや!!!!」

「あのドライブは、合同練習の1on1トーナメントで仙道さん相手に見せたドライブと一緒ですか。」

「いや、もっと速い。」

と答える福田。

「完成していたんですかね・・・?」

「いや、まぐれだろう。おそらく、10%。いや1%の確率くらいだろう。」 

(もしかすると、この試合、最初で最後かもな。)

と真剣な仙道。




桜木の沢北並のドライブから、叩き込んだワンハンドダンク。


ナンバープレー10番は、最高の形で、結果を出したのであった。



山王 79
湘北 77







続く。

#343 【10番】

2010-08-07 | #11 湘北 選抜編
残り試合時間 1分16秒

山王 77
湘北 75




『ピィ・ピィ・ピィ・。』



河田のティップアウトから3秒後。



『キュッ!!!』



『ダムッ!!!』



『ドガァァァ!!!』



湘北リングを掴む柳葉の姿があった。



盛り上がる山王応援団。

勢いに押され、観客も山王を応援する。



「サンノー!サンノー!サンノー!サンノー!」

「ヤーナギバ!ヤーナギバ!ヤーナギバ!ヤーナギバ!」




「出たー!!柳葉のダーーーンク!!!」

「山王の速攻ーーー!!!!」

「決まったーー!!柳葉が決めたーー!!」

「まずいぞ!湘北!!これはやばい!!」




(ちぃ、柳葉のやつ、格好つけやがって。)

嬉しそうな表情の沢北。




「おっしゃーーー!!!」

「柳葉ーー!!」




山王ベンチは狂喜乱舞。


拳を突き上げる堂本。


沢北不在の山王を支えてきた柳葉が、値千金のダンクシュートを決めた。



湘北ベンチでは、敗北を決定付けられたかのように沈む。




「・・・・・・。」

「・・・・・・。」




「こっこんなのって・・・。」

神奈川ファンの中村は、今にも涙が零れ落ちそうである。

「奇跡は・・・、2度は起きないか・・・。」

弥生は静かにつぶやいた。




「アンビリーバブルや・・・。」

「足が攣っても、決めるところは決める。やつは本物だったということか。」

(あえてダンクを決めることによって、湘北の執念をシャットアウトしおったか。)

と田岡。

「決まった・・・か?」

と上杉。

「8割は・・・。」

黒川が答える。


「2割あるなら、十分だ。あいつら、きっとやる。」

仙道がいった。




肩を落とす湘北選手とベンチ、応援団。


(勝たせてあげたい。)


この2年間の光景が、走馬灯のように安西の脳裏に映し出されていく。



赤木ら上級生と流川・桜木ら1年生の紅白戦・・・。



宮城と三井の復帰で荒れたIH予選前・・・。



全国行きの報告を受けた病室のベッドの上・・・。



桜木らと共に、汗を流した合宿の日々・・・。



山王を撃破した暑く長いあの夏の日・・・。



桜木不在のまま挑んだ昨年の選抜・・・。



新たな戦力を加え、乗り込んだ2度目のIH・・・。



そして、多くの才能に出会った・・・。



神奈川県立湘北高等学校の体育館・・・。



安西の心が今、解き放たれる。



「宮城君!!まだ時間はあります。焦ることはありません!」

安西が珍しくコートに向かって叫んだ。




「せっ先生!」

「安西先生・・・。」

「オヤジ!!」




「宮城君。今です。」




「今・・・。」


『コク。』

(わかりました。やってやるぜ!)



「よーーし!!まだいけるぞ!!気合入れていくぞ!!おめーら!!!」

「はい!!」

「おう!!」


(負けてたまるか!)


(このまま終わらせられるか!!)


(負けるなんて、まっぴらごめんだ!)


(ダンコ勝つ!!!)




「さぁ、私たちも応援するのよ!!!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」




湘北ベンチから沸き起こる湘北コール。

波のように、体育館を飲み込んでいく。




「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」




「きっちり守れーー!!自分のマークマンをフリーにさせるな!!」

堂本が叫ぶ。




エンドの柳から宮城へ。


一気に突き進む。



『ダムダムダムッ!!』



残り試合時間 1分10秒


ここで宮城が思いもよらない行動を起こす。



(いくぜ!)



『サッ!』



手を高らかに掲げる宮城。



「ん!!」

「!?」

疑問に思う山王選手。



そして、宮城が叫ぶ。



「10番!」



「!!!」


「!!!!」


「!!」




「ナンバープレー!!」

「湘北にそんなものがあるのか!?」

「嘘だろ!!」




「ナンバープレー・・・。そういえば、安西先生は合同練習のときにいっておられた。
オフェンスを縛り付けるようなナンバープレーは好まないが、試したいプレーがあると・・・。
それがこれなのか・・・?」 

「湘北がナンバープレーができるとは、知らんかった・・・。わいのチェック不足や。」




(安西先生に賭ける!!)


(ここであれか!?)


(頼みましたよ!)


(10番・・・。俺じゃねぇ。)


(オヤジ!ナイスタイミングだ!!)



『キュッ!』


『キュッ!!』


『キュッキュ!!』



湘北の5人が一斉に動き出した。



そして。




「あっあれは!!!!」

「なにーー!!!」

「だっ大丈夫なのか!!!」




果たして、安西の指示した10番のナンバープレーとは・・・。



残り試合時間 1分4秒

山王 79
湘北 75







続く。

#342 【起死回生のリバウンド】

2010-08-06 | #11 湘北 選抜編
残り時間 1分38秒

山王 77
湘北 75




第4Qは、両校とも速いオフェンスを展開し、乱打戦となっていた。

運動量も上がり、呼吸は乱れ、大粒の汗を流し、一心不乱にコートを走り回る。

各選手、緊張、興奮とも取れぬ感情に、頭を、体を、心を支配されていた。


「はぁはぁ。」

「ぜぇぜぇ。」


聞こえるはずのない選手たちの息遣いを観客席にいても感じることができる。

観客もまた、緊迫した状況のなかで、観戦していた。



湘北ボール。


(2点差。時間は十分だ。焦らず確実に1本。)

宮城の動きを冷静に見つめる加藤。

第3Qのような心の乱れはない。



『ピィピィ・・・。』

時間が静かに過ぎていく。



24秒バイオレーション。

残り10秒。



『キュ!』


『キュッ!』




「いったー!!」

「宮城自ら切れ込んだーーー!!!」




『ダム!』


『キュッキュキュ!』


宮城と加藤の最終決戦に柳と柳葉が絡む。


宮城が切れ込む。


柳がセーフティーに上がる。


その瞬間。



『バッ!』


柳葉が宮城を襲った。




「ダブルチームだ!!」

「山王は狙ってやがったーー!!」

「宮城が囲まれたーー!!」




宮城を左右で囲む加藤と柳葉のディフェンス。



(違うぜ!)

と宮城。


(狙っていたのは!)

と柳。


(俺たちだ!!)

宮城と柳が同時に心の中で叫んだ。



宮城の大きな賭け。

柳葉を誘い、柳をフリーにする作戦。



『ダッダン!!』




「低い!!なんていうドリブルだ!!!」

「宮城が倒れる!!!」




低い重心、柳葉の膝が宮城の顔面を捉えそうなそのとき。

宮城が見つけたわずかな空間。


(見えたぜ!)



『ダン!』


ワンハンドで叩きつける。


加藤と柳葉の真ん中、絶妙な位置。



(通れ!!)


鋭いバウンドパス。



『パシ!』


「!!」


「!!」


一瞬固まる宮城と柳。


懸命に伸ばした柳葉の指が、わずかにボールに触れた。

下半身は鈍くなっても、上半身の動きは鋭いまま。


軌道がずれる。




「でかした!!!」

堂本が叫ぶ。




「取ってーー!!」

彩子が叫ぶ。




転がるボール。


加藤と柳が、同時にボールに跳び掛った。


(高い身長は、高いボールを。なら、低い身長は、何だ?低いボールを取るためだろ!!)



『パシ!!』



ボールは・・・。




「柳が取った!!!」

「通ったーー!!!」




ボールラインの後ろに、加藤と柳葉と宮城。

湘北のガードコンビが作り上げたアウトナンバーのシチュエーション。


残り7秒。


柳は勢いそのままに山王ゴールへなだれ込む。



(決める!!!)


『ダン!』



柳は、カバーの来る前に、福原の手前で強気なジャンプシュートを放った。


鋭く低い弾道は、湘北の想いを乗せて、リングを目指す。




「入れーー!!!!」

「決まれーーー!!」




だが。



『ガッガコン!!』



「あ!!」


「やっ!!!」


「な!!!」




「外した!!柳がフリーを外したーー!!!」

「なんてことだーー!!!」




福原のプレッシャーが、柳にわずかな動揺を与えた。



(快!!!)


(よし!!)



ボールはリングとボードにあたり、大きく跳ねる。

ゴール下は、流川と沢北を加えた5人の肉弾戦。

修羅場と化している。



『ガッ!』


『キュッ!』 


『ドシ!』


『シュルシュル。』



激しく回転するボールが、落下し始めた。



『ダン!』


『ターン!』



3つの体が跳んだ。



『パッ!』


『パシ!!』



2本の異なる手がボールに触れた。
   

軌道が変化する。



『ダン!』


『ダッ!』



2つの体が宙に舞った。



『チィン!』


『パシ!』



「!!!!」


「!!!」



『バチン!!』



ボールは、何者かによって、大きく外に放り出された。


ボールの向かう先、そこにいたのは。




「キャプテーーン!!」

「ナイスティップだーー!!」 



『パシ。』




「いいぞ!河田ーーーー!!」

「ふぁい!!」

(僕だってやれるんだ!!)



「おっおのれーーーー!!!丸男ーーーーー!!天才のリバウンドを奪うとは!!」



ボールをキープしたのは、山王PG加藤であった。

2度に及ぶ桜木のリバウンドを凌いだ河田のティップアウトが成功した。

大きな体でポジションを死守し、湘北の猛攻を防いだ。




「良くやった!!河田!!!」

叫ぶ堂本。

「起死回生のリバウンドだ。」

と烏山。




この試合、河田にとって最高のファインプレーであった。




「山王ボール!!」

「河田が制したーー!!!」

「湘北、点が奪えない!!!」

「やっやばいぞ!!」

「山王の速攻だーー!!!」




「戻れーー!!」

宮城がありったけの声で叫んだ。



山王の速攻。

それは、湘北にとって、衝撃的なものであった。



山王 77
湘北 75







続く。