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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#148 【決着】

2009-07-04 | #05 海南 選抜編
山王 81
海南 78




清田がセンターラインから、シュートを放った。

決まれば、海南にとって、2試合連続となる延長戦に突入する。

外れれば、山王の決勝進出が決定する。

と同時に、牧ら海南3年生にとっては、高校バスケ引退決定となるシュートであった。



ボールは、山王ゴール一直線に向かっている。




「おっおい!!」

「もしかして??」

観客がボールの軌道を見守る。




選手たちは、一切声など出さず、ただただボールの行方を追っていた。




ボールが落下し始める。




『ダン!!』



『ダン!』



『ダン。』



『ダダ・・・。』




清田の放ったシュートは、山王ゴール手前で落下。

エンドラインを越えていった。




この結果。




「ふーー。」

(あと1勝。)

堂本はタオルを握り締め、ガッツポーズをとる。




「おし。」

「ぶしっ。」

「勝ったジョ。」

山王選手は、静かに勝利をかみ締めた。

大騒ぎしないのは、高校バスケ界王者の貫禄と最後まで戦い抜いた海南への敬意の表れであった。




「・・・うっ。うっぐ・・・。」

清田は、声にならない声を出して泣いていた。

「牧さん、高砂さん、武藤さん・・・。」

神が頭を下げる。

「頭を下げる必要はない。」

と武藤。

「お前がいるから、俺は安心してコートを去れる。」

高砂が神の肩に触れる。

「ありがとうな。俺たちは何度も神のシュートに、言葉に、笑顔に助けられた。心から感謝している。」

「牧さん・・・。いえ、こちらこそ。牧さんたち3年生のおかげで貴重な体験をさせていただきました。
ありがとうございました。」

「よし!みんな、整列だ!清田も泣くな、胸を張れ!!」




整列する10名。


「81対78 山王勝利!!」


「あっしたーー!!」


その瞬間、会場は、2校を称える賞賛と拍手で溢れた。



『パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!』


「ナイスゲームだ!!」

「いいぞ!山王!!明日も勝てよーー!!」

「3連覇に王手ーー!!!」

「牧!お疲れ様ーー!!」




コートの9人が話を始める。

清田は1人泣いていた。

「緊張感のある試合だったジョ。」

「沢北が初めから出ていたら、もっと楽な試合だったかもな。」

と野辺。

「そんなことはないジョ。沢北が出場した第4Qは、海南のほうが2点多いジョ。」

「ってことは、沢北が出場して戦力低下か。」

「そういうことになるな。うはっ。」

「ちっ違いますって!!」


「ええ。それは違いますよ。」


「神!!」

振り向くと神と清田、そして牧。


「俺も清田も、沢北のおかげでいつも以上の力が出せた。沢北に引き出されたという感じです。」

「神!お前は、いいやつだな。」

「俺は、そうは思っちゃいねぇけどな。」

清田は脹れていた。


「へっ、悔しかったら、来年流川を倒して、またこの舞台に上がって来い!そしたら、相手してやる。」

(あっ、そういえば、仙道ともやるんだったっけ?まぁ、誰でもいいか。骨のある神奈川のやつらならな。)

「お前こそ、勝ち抜いて来いよ。」

と清田が涙を拭いた。


「またアメリカ行くらしいな。」

「ええ。出そうな芽は摘んだし、さっさと優勝を決めて、もう1度アメリカにいきます。
唯一の心残りは、流川とできなかったことっすけど、それはまたいつか必ず決着をつける。
ところで、牧さんは進学決めたって話を聞きましたが?」


「あぁ、白金でそいつらを倒す。」

牧は、深津、河田に目を向ける。


「ふん。そんなに簡単にいくかよ。うはっ。」

「甘くはないジョ。」

「わかっている。だが、必ず倒す。覚悟しておけよ。」

そういって、微笑む牧であった。




観客席では。

「負けちまったな。」

と背筋を伸ばす三井。

「だが、あいつらそんなに悔しそうじゃない。」

微笑む赤木。

「全力で戦ったからな。納得のいく結果だったんだろう。」

と花形。

「見ているこっちも清々しい。」

腕組の魚住。

「さーて、今度の舞台は、大学だ!また、敵同士になるな。」

藤真が立ちながらいった。

「俺は、板前の世界で優勝を目指す。」

「なんだそれ!?」

突っ込む三井。

「赤木。ちゃんと、進学しろよ。浪人生なんてなるなよ。」

「ふん!たわけが。藤真こそ、ちゃんと入部試験に合格しろよ。」

「あぁ。牧や深津を倒すのは、それからだ。」

「そして、俺と三井は、まずは一部にあがること。」

「どうなるかな・・・。さぁ。今日は、帰るか?」

花形に答える三井。


「牧に会っていかないのか?」

「何年先かわからねぇが、今度会うときは、コートで会う。それまでは、会わねぇよ。」

「それじゃ、俺たちも帰るとするか。三井一人じゃ、何するかわからないからな。」

「あぁ。」

「なんだそれ!魚住!!」




記者席では。

「海南が負けてもうた・・・。わいは、どうしたらええんやろか・・・。ぐすん。」

「いい試合だったね・・・。ぐすん。」

「さぁ。ぼーっとしてないの!帰って、今日の試合をまとめなくちゃ!中村君、しっかり頼むわよ!」

「はっはい。」



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選抜優勝大会 準決勝 

山王工業×海南大附属

山王 81
海南 78


【山王】青 81

#4 深津 9P 13A
#5 野辺 6P 12R 
#6 松本 11P  
#7 河田 17P 15R 
#8 一之倉 0P 
#9 沢北 15P 
#14 柳葉 21P 
#15 美紀男 2P 3R


【海南】白 78

#4 牧 25P 6R 12A
#5 高砂 6P 8R
#6 神 24P(3P6本)
#7 真田 4P
#9 武藤 4P
#10 清田 15P 8A

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惜しくも3点差で山王に敗れた海南は、翌日、第3位をかけて、あのチームと争うこととなった。







#05 海南 選抜編 終了
#06 愛和 選抜編 に続く。

#147 【希望】

2009-07-03 | #05 海南 選抜編
試合残り時間 23秒

山王 81
海南 76




3点差まで迫ったものの、山王のスーパーエース、高校バスケ界の至宝・沢北栄治にダンクシュートを決められた。

海南にとって、厳しい現実が突きつけられる。




緊迫した体育館の中、海南のオフェンスが始まる。



『ピィ、ピィ、ピィ』



無常にも時間が過ぎていく。

だが、海南の選手は誰一人、疲れも諦めも見せない動きである。

山王もそれに応えるべく、激しいディフェンスで対抗する。

清田から、神へ。

3Pの構え。

だが、中に切れてきた牧にボールを送る。


常勝海南を支えた牧に海南の命運を託す。



(牧さん!!)

(牧!!)

(いけーー!!)




左から深津、前には河田。

強引に2人の間に体をねじ込み、バスカンプレーを狙う。



だが。



『スッ。』


『サッ。』



牧の前が広がった。

深津と河田は、冷静に牧をよけた。



(ちぃ!!)



『バス!!』



牧のレイアップが決まる。



静寂が訪れる会場。

観客の多くは、ボールを追うことだけに集中している。



(よし!それでいい。)

堂本は、深津と河田に目をやった。



山王 81
海南 78




「3点差ーーー!!」

「残り13秒ーーー!!!」




「うぉーーー!!!」

「牧さーーーん!!」

海南の応援団は、目に涙をためている。




「ぐっ、ばきざーーーん。」

「ずっ、ばぎぐーーーん。」

彦一と中村は泣いている。

「もしかしたらと思ったけど、やっぱりあの2人は最後まで冷静だわ。
勝つために何をすべきで、何をしてはいけないのか、わかっている。
あの2人が、また同じ大学でバスケをするなんて・・・。深体大の牙城は、大きくなるばかりね。恐ろしいわね。」




「あたれーーー!!」

「あたるんだーー!!」

「マーク!マーク!!」

高頭と海南ベンチが声を張り上げた。




「近くのやつをマーク!」

牧も指示を出す。



ボールは、野辺から沢北へ。

神がマークに付く。

(深津さん、河田さん、任せました。)にっ。


『コク。』


うなずく深津と河田。


ボールは、深津に渡る。

牧が、低い姿勢で構える。


「何度もやられるわけにはいかないジョ。」


『ガツ!』


(しまった!!)


河田が牧に完璧なスクリーン。

深津は、牧を置き去りにした。


海南ゴールを目指す深津。

清田、武藤、高砂が速攻を防ぐ。


(よく戻ったジョ。だが。)


後ろから河田と牧、沢北と神が駆け上がってくる。



残り8秒。



河田にボールが渡る。

マークマンは牧。

ファウル覚悟のディフェンスをあざ笑うように、深津にボールを戻し、自身はゴール下へ。

そして、素早く、深津からのリターンパスをもらった。

息のあった3年生のコンビプレーが、牧を交わす。




「河田だーーー!!」

「ラストプレーは河田!!」




「だぁぁぁーー!!」

河田のポストプレー。



高砂、武藤、そして後ろから牧が囲む。


『サッ!』


高砂、武藤が飛ぶ。


(ポンプフェイク!)

(しまった!!)


憎いほど冷静な河田。



「これでおしまいだ!!」

河田のシュート。



そのとき。



『バシッ!!!』



(嘘だろ!!)


(なっ!!!)


(牧!!!)


「まだだ!!」

牧の伸ばした指先が、ボールに触れる。


10cm以上も高い河田のシュートを弾いた。

起死回生の牧のブロック。


ボールは、ボードにあたり、跳ね返った。



残り2秒。



「信長!!」

ルーズボールをキャッチした神は、走り出した清田へ、速いパスを放つ。


『バス!』


『シュ!!』


清田は、コートの中央から、山王ゴールに向かって両手シュートを放った。



牧の想い。


3年生の想い。


自分の想い。


海南選手たちの想い。


神奈川県の想いを込めて。



ボールが、清田の指を離れた瞬間、試合終了のブザーがなった。



会場にいる全ての人間が、高く舞い上がったボールを行方を追っていた。



山王 81
海南 78







続く。

#146 【残り1分】

2009-07-02 | #05 海南 選抜編
試合残り時間1分

山王 79
海南 74




雌雄が決するまで、残り68秒となっていた。



山王オフェンス。

河田、野辺が右側のローポストで位置を取る。

その前には、松本。

トップには、深津がボールをキープしている。

逆サイドには、ポツンと沢北一人。




「アイソレーション・・・ですか?」

「いいえ、そうでもないわね。ただ、沢北君の1on1を狙っているのは確かだと思うけど。」




深津が、ドリブルで松本による。

海南のディフェンスは、徐々に同じサイドに固められつつある。


(沢北勝負か!)

牧が思った瞬間、ボールは松本へ。

その松本から、大きくサイドチェンジ。

沢北にボールが渡った。

沢北の前には、オープンスペースがあいている。




「沢北で勝負だーー!!」

「神!とめろーー!!」




(俺では、沢北の高速ドライブはとめられない。一か八か狙ってみるしかない!)




(甘いよ。重心移動がバレバレだ。)


『キュン!』


沢北が高速ドライブを発動する。


「!!!」



沢北は、神の動きとは逆方向から、切れ込んだ。



だが。



『ドン!!』



「っつぅ!!」



『ピィーー!!』



「オフェーーンス!!」

主審が、チャージングのポーズを取る。




「高砂ーー!!」

叫ぶ魚住。

ガッツポーズをとる赤木。

「絶妙。」

と花形。




「沢北のチャージングだーー!!!」

「一瞬でコースに入ってたぞーー!!」

「あの#5、狙ってやがったーー!!」




「さすが、高砂さん。」

と倒れている高砂に手を貸す神。

「いや、お前の指示のおかげさ。」

高砂は立ち上がる。

「お前たち、初めから?」

「狙い通りさ。」

「ちくしょう。やられたぜっ。」

神は、後ろにいる高砂に、左側のコースを塞いでくださいと、指で合図を出していた。

それが、見事にはまったのであった。


沢北に裏をつかれ、抜かれてしまったという自然なシチュエーションを作った神。


神の気持ちに応え、沢北からチャージングをもぎ取った高砂。


どちらも、この終盤にして、最高のディフェンスであった。



「神は、ホントに冷静に物事を読んでいるな。」

「沢北とは間逆ダジョ。」

「俺は直感で動くタイプっすから。」

「しっかり、リベンジしろよ。」

「任せといてください。」にっ。




海南のオフェンス。

残り時間を考え、牧がアーリーオフェンスを展開。

深津を完璧に抜け切れないまま、オーバーハンドレイアップシュートを放つ。




「焦ったか!?」

心配そうに見つめる藤真。




『シュパ!』



気合でねじ込んだ。



「よしっ!まだいける!!」

牧が叫ぶ。




「牧さーん!!!」

海南ベンチは、総立ちである。


(やはり、お前は歴代最高のプレイヤーだ。)

高頭が思う。




「運も味方している。」

と赤木。

「いけるかもしれない。」

三井は拳を握る。




「3点差だーー!!」

「いけるぞ!海南!!」

「守りきれーー!!山王ーー!!」



山王 79
海南 76




第4Q開始時は、5点差。

序盤には、沢北の活躍により11点差と広げられ、試合時間残り1分を過ぎたところで、再び3点差まで盛り返してきた。

底力、粘り強さを兼ね備えた海南が、勝利をもぎ取りにいく。

だが、簡単には譲らない王者山王。




山王のオフェンス。

「何があっても、お前がエースダジョ。」

「わかってます。」

「次は、決めろよ。でなきゃ、敏と交代だ。」

「まぁ、任せといて下さい!」



『バス!』




「また、沢北だーー!!」

「深津のパスもすげーが、受け取る沢北もすげーー!!」




牧は沢北にパスが入らぬよう、沢北側を押さえながら、ディフェンスをしていた。

また、神もフェイスガード気味にしっかりと守っていた。

だが、ボールは沢北に渡った。


海南ガード陣のディフェンスの上をいく、山王ガード陣のパスワーク。


「さっきみたいにはいかないぜ!」



『キュ!』



連続レッグスルーから、神を抜きにかかる。



(!!)



踏ん張りの利かなくなりつつある足で懸命に沢北に食らいつく神。



「もう一回!」



『ダム!』



『クル!』



沢北はバックロールで鮮やかに抜き去った。



『キュッキュ!』



牧がカバー。

沢北は、ノーマークの深津にパスフェイク、牧のタイミングをずらす。


(フェイクか!)



そして・・・。



『ダン!』



この日一番の跳躍を見せた沢北は・・・。




『ドガァ!!!!』




ワンハンドダンクを決めた。




「高すぎるーー!!」

「沢北ーーーー!!!」

「山王の勝利だーー!!」




目をつぶる高頭。




拳を突き上げる堂本。




「決まっちまったか・・・。」

「いやまだだ!!海南は俺たちの想いも一緒に叶えるために、戦っているんだ。
最後まで海南を応援し、信じよう。」

藤真はコート上の牧を見つめるのであった。




試合残り時間 23秒

山王 81
海南 76







続く。

#145 【試合を制するPG】

2009-07-01 | #05 海南 選抜編
お互いに、1本ずつを決め、残り試合時間も2分を迎えていた。

山王 75
海南 70




息もつかせぬ最終局面での攻防戦。

海南にも逆転の可能性は十分に考えられる。




「まだいける!!」

と三井。

他の4人も同じことを思っていた。




(頼むぞ!牧!!)

高頭の拳は震えていた。




「ここまで来たら、あとは選手を信じるのみ。」

汗が流れる堂本であったが、心は落ち着いている。

山王選手も同様であった。




深津、松本のガード陣で、迅速にボールを運び、海南コート内では、小刻みなパスをつなぎ、時間を使った。



そして。



『スポ!』



深津がミドルシュートを決める。




「くそっ。ホントあいつは憎たらしいな!」

「深津が、海南の逆転を阻止しているといっても過言ではない。」

「勝ち方を知っている。さすがとしかいいようがない。」

と観客席の赤木ら。




「だーーー!!深津君の得点はいつも重い!!」

崩れる中村。

「牧さんと深津さん、ほんまに白黒つけられへんわ!!」




「高砂!」

エンドラインから素早くパスを受け取る牧が、一気に駆け上がる。

深津が、松本が、沢北が、一斉に牧を追いかける。


『ダムダム!』


『キュッキュ!』


『ダム!!』



(ちぃ。)

牧は速攻を止められた。




「山王の戻りが速い!!」

「この時間で、足が止まってねぇーー!!」




だが。



尚もボールをキープ。

果敢に山王ゴールを襲う。




「牧のペネトレイト!!」

「誰だ!神か?そのままいくか!!」




沢北は、神から一瞬も離れない。

フェイスガードで完璧に防いでいる。

清田には、若干のスペースがあいていた。


(よし!)

牧は、ドリブルをしながら、清田に目をやる。


『コクッ。』

うなずく清田。

一連の行動を見ていた深津と松本が、清田に意識を集中させる。



『ビィ!!』



『バシ!』



『ザシュ!』



バンクシュートがネットを揺らす。




「ナイシュ!武藤さん!!」

「さすが、3年生コンビ!!」




清田は、囮であった。

深津、松本、野辺、河田はもちろん、清田も牧に騙されていた。


武藤は、巧みなフェイントから野辺を交わし、牧からのアンダーパスを受け取り、シュートを決めた。

3年間、共に戦ってきた息のあった絶妙なコンビプレーであった。




「ナイスパスです!牧さん!!」

「ナイッシュ!武藤さん!」

海南ベンチが大きく騒ぐ。



山王 77
海南 72




一瞬の気も抜けない一進一退の攻防戦。

「湘北同様に、しつこいやつらだな。」

「まだ、5点差ある。じっくり攻めるジョ。」

「うし!」


24秒いっぱいに使う山王のオフェンス。

トップの深津から、45°の沢北、ハイポの河田へ、弾くようにパスが繋がる。

沢北は、パスと同時にゴール下へ切れ込んだ。

そこに、河田からのパス。

ハイ&ロー。


神の腕よりも高いジャンプシュートを決める。


完璧なまでの三銃士のパスワーク。

見ているものは、その華麗なパスワークに声が出なかった。

それほどまでに、芸術というべきパスワークであった。



刻々と過ぎる試合時間。



焦る海南応援団。

祈る海南応援団。

見つめる先には、牧の姿があった。




速い海南のオフェンス。

牧は、深津を背中で押さえ、ローポストでパスを受け取った。




「牧のポストプレー!!」

「いやダメだ!河田が後ろにいる!!」




ネックフェイクから、深津をスピンムーブで抜き去ると、レッグスルーでバックステップ、
すかさずステップインで、河田と深津の間に切れ込んだ。



『ザシュ!』



『ゴン!』



倒れこみながらも、バックシュートを決める。



牧の鬼気迫るプレーに、観客席からの言葉はない。

ただただ、見つめることだけで精一杯であった。

それは、選手もベンチも同じであった。


試合残り時間1分。

試合を支配しているのは、間違いなく、両チームのキャプテンであり、PGの存在であった。



山王 79
海南 74







続く。

#144 【2年生対決】

2009-06-30 | #05 海南 選抜編
第4Q 5分

山王 70
海南 62




深津ー沢北ー河田のホットラインで、あっさり得点を奪う山王。

だが、再び静かなこの男が、燃え始める。


(ん!?雰囲気が変わったか・・・。)

神の変化を素早く感じ取る松本。

ボールを受け取る神。


『ドン。』


(パワードリブルか!)


神は、松本に体を接触させながら、押し入る。

更に押し込んだところで、松本が一歩引いた。


その瞬間、神もバックステップ。

やや後方に退きながら、3Pを放った。




「No.1シューター神も、残り時間と得点差に焦りを感じたか。」

と堂本。




ボールは、通常よりも高いアーチを描いている。



滞空時間の長いそのシュートは・・・、



『スポ。』



リングに触れることなく、ネットを揺らした。




「なっ!!」

驚きを隠せない堂本。

「入っちゃった。」

と美紀男。




「当然だ。」

と腕組の赤木。

「1.5m離れていても打てるんだ。少しくらい、のけぞろうがあいつは決める。
今の俺には決められねぇのは、悔しいがな。」

言葉とは裏腹に、嬉しそうな三井。




(三井といい、神といい、神奈川にはなんていうシューターがいるんだ・・・。)

汗を流す松本。




「松本!頑張れ!!」

ここにも静かな男、一之倉が声を出す。

「・・・。」

さらに静かな男、柳葉は、神のシュートフォームを真似していた。




「すげーー!!」

「あんな3P見たことねぇぞーー!!」

「ありえない!!!」

「海南粘る!ついに5点差だーー!!!」




「アンビリーバブル!!!まさに神様や!!3Pの神様やーーー!!」

「まさか、あんな体勢で決めてくるとはね。」

「普通の人は届きませんよね?それを簡単に決めちゃうんだから、神君は凄いですよ!!いやー、尊敬するな。」

「何、高校生相手に、尊敬しているのよ。」

「すっすいません。」

(でも、あの3Pに対する強気と自信は、尊敬に値するわね。)




「ナイッシュ!神さん!神さん?」

神は、沢北を一直線に見つめていた。


視線に気付く沢北。

「へっ、面白れぇ。2年のNo.1を決めよってか。」

「松本さん、俺を神につかせてください。」

「あっ、あぁ。」


「俺が沢北につく。信長は、松本について。」

「えっ。はっはい。」


オールコートマンツー、沢北には神がついた。



深津は、牧のディフェンスを交わしながら、冷静にボールを運ぶ。


(くっ、憎らしいほど冷静だ。)


『バシ!』


その深津から、3Pライン近くの沢北へ。

前には、神が立ちはだかる。


『グッ!』


腰が沈む沢北。


神は、沢北の挙動に集中し、ドライブに備える。


その瞬間、


『シュ!』


3Pを放った。


虚をつかれた神は、全く反応できなかった。



『スポ!』




「わぁぁーーー!!」

「沢北の3P--!!!!」

「何でもありじゃねぇかよーー!!」




神の額から汗が流れる。

「ドライブだけじゃないんだぜ。」にこり。

「・・・。」

(得意でもなさそうな3Pを決めてきた・・・。強いなー。)


「神さん!今のは、しょうがないっすよ。」

「うん。やり返すだけだよ。」




海南のオフェンス。

ボールを持った牧が、ペネトレイトを繰り出す。

山王のディフェンスが、一気に中に集中する。

神をケアしながら、いつでも深津のヘルプにいける体勢の沢北。


(そんな中途半端なディフェンスじゃ、神は止められないぞ!)


牧から神へのパス。

海南の必勝パターンが、勝利を呼び込む。


(わかってるぜ。それ。)


神は、ボールの中心を右手で受け、シュート体勢へ。


「タイミングバッチリ!」

勢いよくチェックに飛ぶ沢北。



だが。



『ダム!』


飛んでくる沢北をドリブルでかわし、インサイドに切れ込んだ。


(やべっ!!)


「河田さん!!」

「わかってる!!」


神の前には、ゴール下の守護神河田雅史が待ち構える。


『キュ!』


神と河田の間が詰まった瞬間、河田のタイミングをずらしたシュートを放った。


『シュ!』



「なに!?」

「あれは!?」

「あっ、俺のスクープシュート!!」

ボールは、鮮やかに河田を越え、落下する。



『ストッ。』




「神が決めたーーー!!」

「スクープシュートだーー!!」

「沢北、河田を抜いたーーー!!!」




「神がスクープシュートだと??」

目を丸くする三井。

「あいつ、いつのまに・・・。」

驚きを隠せない花形。

「ふっ、進化するシューターってところだな。」

藤真は笑った。




先ほどのお返しとばかりに、神が沢北に言葉を放つ。

「3Pだけじゃないんだよ。」にこり。

「ちっ。なんだよ。お前とも来年のこの舞台でやりたくなったぜ。」にっ。


沢北に対抗して神が、神に対抗して沢北が、そしてまた、沢北に対抗して神がシュートを決めた。

会場全体が息を飲む1分間であった。



山王 73
海南 68







続く。

#143 【河田、再び】

2009-06-29 | #05 海南 選抜編
第4Qも残り半分になろうとしていた。

山王 68
海南 60




牧の非常に珍しい3Pが決まった。




「マンツーだ。抜かれないことを優先しろ!」

と高頭が指示を出す。

(プレスを続けたいところだが、リスクも大きい・・・。
個々の力に、かけてみる。頼むぞ!みんな!!)




海南は、プレスをやめ、オールコートマンツーに変えた。

ボールは、深津へ。

8人の選手は駆け上がり、海南コート内には、深津と牧だけとなった。


「もう1本いただくぞ。」

「させないジョ。」


『ダムダム!』


『キュ!』


延長戦まで戦い抜いた前日の疲れなど一切見せない牧の動きに、深津も苦戦する。



だが。



深津が、チェンジオブペースから牧に並んだ。




「巧い!!!」

「PG対決は、深津に軍配だーー!!」




(!!!)


『チッ!』



「牧。」


「そう簡単に抜かせるか。」




「牧も負けていない!!」

「スティールだーー!!!」




深津に抜かれた牧は、後ろからドリブルをスティールした。

転がるボールを拾い上げたのは、神。


「神!前だ!!」

素早く、神から牧へ、パスが供給される。


『ダム!』


深津も牧を追いかける。


『ダン!』


牧のレイアップ。

スティールされた深津は、牧のシュートを防ごうと、シュートチェックに飛んだ。



(ファウルしてでもとめる!!)



接尾語を忘れるほどの気迫のこもったブロック。



だが。



にやっと笑い、わざと低く飛び、右手を叩かせる牧。



『バチィン!!』



コート全体に大きく響く。



(っつう!)



『スポ。』



ボールは、リングを通過していた。




「でたーーー!!」

「牧の十八番!バスカンプレーーー!!」

「牧が連続得点だーー!!」




「・・・。」

ジーンとなっている右手を見つめる深津。

「思いっきり叩いたんダジョ・・・。」

「仕方ない。あれが牧なんだよ。」

「そうでもないっすよ。たぶん。」

「ん!?」

沢北の予想通り、牧はボーナススローを外した。


(深津のやつ、思いっきり叩いたなっ。)




「珍しいな、牧が外すなんて。」

と魚住。

「さすが、深津。只では起きないということか。」

藤真が答える。



山王 68
海南 62




リバウンドは、河田がキャッチ。

海南のオールコートマンツーが始まる。

ボールは、深津へ。

牧が、激しいディフェンス。


「叩かれた借りを返すぞ!」

「痛いのは好きじゃないジョ!」


「深津さん、こっち!」

深津を呼ぶ沢北。


「一先ず、逃げるジョ!」

ボールは、深津から沢北へ。

沢北が一気に海南ゴールを狙う。


「待てぇー!」

清田が必死に食らいつく。


「待つやつがあるか!」

センターラインを超えたところで、神がヘルプ。


清田と神で、ダブルチームの構え。


『キュ!』


「待ってやる。但し、俺だけな。」

沢北は、神の前で急ストップし、ゴール下へ、パスを放った。



『キュッ!』



『ドガァ!!!』




「モンスターダンーーク!!」

「再び8点差だーー!!!」

「沢北の絶妙なパス!!」




高砂を物ともしない、河田のアリウープが炸裂した。


「うはっ!」

河田は、沢北に力瘤を見せた。


「にっ!」

笑顔で応える沢北が、神と清田に一言放つ。

「ドリブルで抜くことやシュートを決めるだけが、俺じゃないってな。」にっ。

「そんなのわかってらー。沢坊主!」

「さっ沢坊主!?」

「お前、俺は年上だぞ!敬語を使え、敬語を!!ったく、最近の若いやつは・・・。」ぶつぶつ。

「・・・。」

(沢北栄治・・・。1on1だけじゃない。パスも視野も超一流・・・。
仙道と同等・・・。いや、わずかに上か・・・。)

沢北と同学年の神の心が、再び、静かに燃える。



山王 70
海南 62







続く。

#142 【牧、再び】

2009-06-27 | #05 海南 選抜編
山王 68
海南 57




第4Qも4分が経過し、11点差。

沢北を投入し、勢いを増す山王に、苦戦する海南。




「あたるしかない!!」

ベンチの高頭から、オールコートプレスの指示が飛んだ。




ボールは、松本から深津へ。

牧と神が、ボールを奪いにいく。


(んっ。)


「簡単に抜けると思うなよ。」

「思ってないジョ。」



『キュ!』


『ダム!!』


『シュ!』


深津のノールックジャンプパスが前線に供給される。


「なっ!!」


『バシ!』


ボールを受け取ったのは、センターラインまで戻ってきたセンター河田。




「河田が、ここまで来ているーー!」

「アウトナンバーだーー!!」




海南コートにいるのは、河田、野辺、松本と高砂、武藤。




「分が悪すぎる!!」

「早く戻れーー!!」




「死守ぅーーー!」

思わず赤木が声を出す。




牧、清田が必死に戻るが、ボールは更に前へ供給される。


『バス!』


松本へ。

ストップジャンプシュート。


「ぐおぉーー!」

高砂の決死のチェックが、松本の視界を塞ぐ。


「!!」


『シュ!』


「リバウンド!!」

外れるのを察知した松本が声を出した。


武藤は野辺をスクリーンアウト。

河田は飛び込みリバウンドを狙う。


『ガン!』


「ぐっ。」


ボールは、大きく跳ね、武藤を超えた。



『バチン!』



「いいぞ!野辺!!」

山王ベンチから声が飛ぶ。




「さすが、山王のリバウンダー野辺だーー!!」

「海南は運もねぇーー!!」




野辺は、ジャンプシュートを狙う素振りを見せた。


『ヒョイ。』


シュートフェイクに引っかかる武藤の脇から、アンダーでパスを出す。

中央には、河田が待っていた。



「!!」



『チィ!』


そのパスを高砂が弾く。



(しまった!)

(おっ!)


転がるボールに飛びついたのは・・・。



「速攻だーー!!」

清田であった。


「神さん!!」

オーバーハンドの素振りを見せる。

その声と動作につられ、沢北が飛ぶ。

にやっと笑う清田は、沢北の脇をドリブルで抜く。


(っやろー!)



海南の逆速攻。




「今度は海南だーーー!!」

「2対1!!」




清田、神対深津。

冷静に2人の動きを見る深津。


『キュ!』


深津は清田に間合いをつめた。


(よし!神さんがあく!)


神に目をやると、もうすでに沢北がマークしていた。

(なっ!ちくしょう。速すぎだろ。)


だが、後ろから牧が駆け上がってくる。

(まっ牧さん!)


清田は深津を十分に引き寄せてから、牧にバックパスを送る。


「ナイスパスだ!」



牧は、ボールを受け取るや否や、3Pジャンプシュートを放った。



『シュ!』



「打つのかよ!」

「予想外ダジョ。」

珍しい牧の3Pに、沢北と深津は反応できなかった。



弾道の低いシュートは、ネットを激しく揺らす。



『ザシュ!!』




「牧さーーん!!」

海南の控え選手が立ち上がる。

「でかした!!!」

と高頭。




「よし!もう1本いくぞ!!」




「牧が、3Pとはね。これは、恐れ入ったな。」

と花形。

「俺たちでさえ、驚いたんだ。山王は、止められるはずないさ。」

嬉しそうな藤真。

「あの場面でよく決めた。さすが、牧としかいえないぜ。」

「牧は、あういう男だ。」

三井と赤木。




「8点差だーーー!!」

「残り5分、まだわからないぞーー!!」




「へっ、神奈川のやつらは、ホントにしつこいな。だから、倒しがいもあるんだけどな。」にやっ。

清田のレイアップと牧の3Pに触発された沢北。

目の色が変わった。



山王 68
海南 60







続く。

#141 【認められる】

2009-06-26 | #05 海南 選抜編
第4Qも3分が経過し、海南が待望の第4Q初得点を奪う。

奪ったのは、深津、沢北、河田を一人で抜いた牧の得点であった。


(さすが、牧。終盤になって、より一層集中力が増してきた。)

(次はそうはさせないジョ。)

(へっ、面白れぇ。)



山王 66
海南 55




『キュ!』


『キュキュ!』


オールコートであたる海南。

冷静にボールを運ぶ山王。



沢北が清田に問いかける。

「お前は、流川の知り合いか?」

「なっ?知り合いでもなんでもねぇよ、あんなやつ!」

「ふっ、一応知っているようだな。なら、もし流川に会うことがあったら、伝えてくれ。
俺は、選抜を終えたら、再びアメリカに行く。
だが、来年必ず選抜の舞台に戻ってくる。そしたら、勝負してやる。
だから、お前も必ず勝ちあがって来いと!」

「なにっ!?来年も海南が全国出場するんだ!ナメるな!!」

ボールは、沢北に渡る。



『キュン!!』



突然、清田の前から沢北の姿が消えた。



(うっ嘘だろ・・・。ついてけねぇ・・・。)



一歩も動けず、清田は抜かれた。



カバーに入る高砂の前で急ストップ。

高い打点のジャンプシュートを決める。


IH時よりも、高く、速く、鮮やかに決めた。

派手さはないが、洗練されたジャンプシュートは、見ているものを魅了する。




「たけーー!!」

「速い!!」

「キターーー!!沢北だーー!!」




『ゴクッ。』

息を呑む高頭。

「スピード、高さ、安定感、こんな完成されたジャンプシュートなど、見たことがない・・・。」




堂本は、ベンチに深く腰掛けている。

(こんなに安定かつ高いジャンプシュートを打てるのは、日本全国でもこの沢北だけさ。そして、あのドライブもな。)




コート上では・・・。




「山王も容赦ないオールコートプレスだーー!!」

「伝家の宝刀を抜いてきたーー!!」




牧がドリブル。

深津と松本を相手に攻防を繰り広げている。


清田をマークしている沢北が、再び話し始める。

「お前は、俺はもちろん、流川の足元にも及ばない。」

「なっ!!!」




「牧が抜き去ったーー!!!」

「すげーー!!山王でも止められない!!!」




沢北は続ける。

「そして、うちの柳葉にも遠く及ばないんだ、お前は。」

「くっそー!!」


清田は、ファウルぎりぎりに沢北に接触し、牧からボールを受け取った。


「この清田信長をナメるなーー!!!」



『キュ!!』



清田は、腰を沈め、膝を曲げ、片手をつきながら、体全体で爆発するようにドリブルをした。


沢北に並ぶ。


(低い!!)


『ダム!』


極限まで低い姿勢で、トップスピードまで持っていった清田は、沢北を抜いた。




「マジかよ。清田のやつ、宮城より低いぜ。」

と三井。




そのまま、山王リングを襲った。


「くらえーー!山王ーー!!」

大きく踏み込む。


「ぐっ!」

武藤、高砂は、山王インサイド陣を必死に押さえ込む。


(清田、いけ!!)



だが、



沢北も清田の後ろから、踏み込み、シュートチェックに飛んだ。


(やすやす打たすかよ!)


「清田!パス!」

牧がボールを要求するも清田の耳には届いていない。




「やられる!」

思わず声を出す藤真。




「甘いぜ!1年!」

叫ぶ沢北。




「何が!?」

清田は、空中で右手に持っていたボールを左手に持ち替え、沢北のチェックを冷静に回避。



そして・・・。



『ヒョイ。』


レイアップを放つ。



『シュパ。』




「よし!!!清田、ナイッシュだーー!!!」

「いいぞ!いいぞ!清田!!清田!!」

海南のベンチが一気に沸く。




「流川や柳葉に勝てねぇだと?上等だ!それなら、今ここで、俺はあんたを越える!!」


「・・・。」

(ふっ、ホントに神奈川の1年は生意気なやつばかりだな。)



「沢北。やられたら、やり返すジョ。それが、エースダジョ。」

「はい。出る芽は摘まないといけませんから。」にやっ。

清田は、沢北に認められていた。

本人の知らないところで。



山王 68
海南 57







続く。

#140 【序章】

2009-06-23 | #05 海南 選抜編
第4Q

山王 58
海南 53




第4Q、海南ボールから開始される。

牧には深津、神には松本、清田には沢北、武藤には野辺、高砂には河田がついた。




「より一層厳しくなった。」

と魚住。

「あぁ。だが、俺たちもこのメンバーに勝った。海南だって、勝てるはずだ!」

力強い赤木の言葉だったが、神奈川勢の表情に明るさは戻らなかった。




沢北がドリブルをしている清田を睨む。

(くっ、なんて鋭い目をしてやがる。何もしてないのに、このプレッシャーかよっ。)


臆している清田を察知した牧がボールを要求。

牧にボールが渡った。


『キュッ!』


受け取ると同時に、インサイドへ切れ込む。


『キュ!』


『ダム!』


「!!!」


深津を一瞬で抜き去った。



だが、



『キュッ!』



「今日の俺は、のってますよ!」


牧の前に、沢北が立ちはだかった。



笑う牧。

(1on1は後回しだ。)



『ビュン!』



「あっ、逃げた!」



牧は、すかさず清田へリターンパス。



絶妙なタイミングで、ボールを受け取った清田は、リズム良く3Pを放った。


(よし!入った!!)


自信を持って放った清田の3Pシュート。



『チィン!』



「お見通しダジョ!」

横から、深津がチェック、かすかに指をあてた。


「なぁに!!!」

ボールの軌道がずれる。


「先に行きます!!」

沢北は声を出し、海南ゴールへ走り出す。


「しまった!!」

沢北を追う牧。



『ガコン!!』



清田の3Pはリング手前にあたり、小さく跳ねた。



『バチィーン!!』



空中でリバウンドをとったのは、野辺。

すかさず、河田にパス。


「沢北!行って来い!!」

河田は、オーバーハンドへ剛速球パスを前線に投げた。



『バシ!!』



「ナイスパース!!」



「ちぃ!」

牧を置き去りにする沢北の脚力。



ボールを受け取った沢北は、フリースローラインを30cm超えたところから踏み込んだ。



背筋を伸ばし、ワンハンドで掴み、大きく振りかぶる。



重力を感じさせない跳躍。



そして、長い滑空時間から、リングに向かって、ボールを叩き込んだ。



『ガシィィ!!!』




「のわぁーーーー!!!」

「沢北のダンクーーー!!」

「これを見に来たんだよーー!!」

「すげー強烈なダンクだーーー!!!」

「跳び過ぎーー!!!」




『ダン。』


沢北の着地と同時に、牧が追いついた。


「まだまだ飛ばしていきますから。」にやっ。

「・・・。」

さすがの牧も沢北のダンクを見て、返す言葉はなかった。



「ナイッシュダジョ。」

「もっと暴れてもいいぞ。」


「お言葉に甘えさせてもらいます。」

(んー。やっぱ・・・、まだか・・・。)




「沢北さん、本当に完治したみたいですね。よかった。」

「いや、違う。」

と美紀男の言葉を否定する堂本。

「えっ?」

「もし完治しているなら、フリースローラインからでも決められたはずだ。
やはり、明日の出場は20分のみ。できれば、出場もさせないつもりだ。」

「・・・。沢北さん・・・、頑張って。」




観客席の神奈川応援団も言葉は少なかった。

「間違いない・・・。」

「スピード、ジャンプ力、IH以上だぜ・・・。」

三井と赤木から冷や汗が流れた。



山王 60
海南 53




第4Q開始から、3分が経過。

海南のオフェンス。

第4Qの作戦は、点を獲りにいく牧、ゲームメイクをする清田であったが、
清田は、沢北を前にパスはおろか、ドリブルさえもスムーズにできないでいた。

結果的に、牧にボールは渡らず、悪循環を生んでいた。


(清田には、まだ早かったか・・・。)

「清田!」


牧は清田からハンドトスでボールを受け取る。


「うっ!」

パワードリブルで深津を押し入る。



だが、



『キュッキュ!』



「あんたを止めれば、海南はお終いだ。」


「!!」

(上等!!!)




「深津と沢北のダブルチーム!!!」

「さすがの牧でもあれは無理だーーー!!!」




深津と沢北が牧を囲った。

それに伴い、清田には松本が、神には河田、野辺は高砂と武藤2人を守る形となった。



『キュ!』



『ダム!』



『キュキュ!』



『ダムダム!!』




「凄いダブルチーム!!」

「いや、牧も負けてないぞーー!!」

「抜けーー!!!」

「奪えーー!!」




『キュ!!!』


レッグスルーからバックステップ、すかさずバックビハインドを繰り出すと、体勢を崩した沢北側を抜いた。


「なっ!しまった!!」


牧は、そのままゴールに突っ込む。


河田がカバーにでる。

牧は、高砂、神の動きを目で確認する。

牧の目を追った河田がかすかに反応、神へのパスを警戒。



だが、



(フェイクか!!)



『スポ。』



牧は、遠い位置からのオーバーハンドレイアップを決めた。

山王三銃士を抜いた牧のシュートが、海南にとって第4Q初の得点であった。




「海南!待望の得点だーー!!!」

「牧一人で、山王三銃士を抜きやがったーー!!」

「牧はまだ死んでいない!!」




きょとんとする清田。

「おら、どうした?まだ試合は終わっていないぞ。諦めるのか?」

「・・・。」

(あの3人を一人で抜いちまった・・・。ホントにすげーよ・・・、牧さんは・・・。)




「すげーー。」

と改めて思う三井。

「一人で得点を奪う気か・・・。」

と赤木。

(牧。頑張れ!!)

藤真は、心の中で強く思った。



山王 66
海南 55






続く。

#139 【至宝登場】

2009-06-22 | #05 海南 選抜編
山王 58
海南 53




点差は縮まりもせず、開きもせず、第3Qが終了した。

海南は、第3Qから、6thマン真田を投入したが、堂本の対応は早かった。

すぐさま、野辺に代え、美紀男を投入する。

美紀男は高砂を、河田は真田をマークし、オフェンスマシーン真田の封じ込めを行った。

さすがの真田も河田の前では、いつものような動きを披露することはできず、
10分間の出場で4得点と平均を大きく下回っていた。

堂本の対応は、大成功といえた。


だが、結果的には、点差は離れていなかった。

高頭も上出来だと考えていた。



2分間のインターバル。

残り10分で、決勝の舞台に立つチームが決定する。




海南ベンチ。

汗を拭う選手たち。

「仕事ができなくて、すいませんでした。」

「いやっ。相手はあの河田です。仕方ないっすよ。」

と真田を慰める清田。

「むー。確かに、河田が真田についたのは誤算だったな。だが、点差は離れておらん。
お前らが、第4Qでどれほどの修羅場をくぐってきたか、誰よりもお前ら自身がわかっているはずだ。
終盤の勝負強さは、海南のチームカラーでもある。自分たちを信じろ。残り10分に、全力をかけるんだ!」

「はい!!」

「牧!頼んだぞ!やはり、この逆境を打ち破れるのはお前しかいない。」

「えぇ。やってやりますよ。点を奪いにいきます。」

「清田。ゲームメイクをしろ。牧の負担を少しでも軽くするんだ。」

「はい。任せてください。もう柳葉には負けねぇ。」




『ピィーー!』




コートに足を運ぶ10名の選手。


「あっ!!」

「なっ!!」

山王の選手を見て驚愕する海南の選手。


会場からも、この日一番の大歓声が沸き起こった。



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<<回想>>

インターバル

山王ベンチ。


「よし!作戦通り、神と真田を抑えることに成功したな。」

選手を迎え入れる堂本が続ける。

「これで、海南の2つの大波は防ぐことはできたと思っていい。
だが、これで安心できるほど、海南は弱くない。」

「確かに・・・。」

「そうダジョ。」

「ここで、叩き潰すのが山王のバスケだ。」

「はい!」


「用意はできているな?」

「ええ。1ヶ月も前から待っていましたよ。」

「よし!深津、松本、野辺、河田、そして、沢北。
IHのメンバーで、神奈川県の代表を倒して来い!神奈川にリベンジだ!」

「はい!!」


「最後まで、走り抜けるジョ!」

「おう!」

「深津さん!俺にパス下さ・・・。」

「お前がエースダジョ。」

「ふっ深津さん・・・。やっぱり、俺のことを・・・。嬉しいっす。ぐすん。」


沢北が続ける。

「柳葉!俺は選抜が終われば、またアメリカだ。だが、来年必ずこの選抜には戻ってくる。
その間は、お前がエースだ。お前が、チームを勝利に導け。そして、この山王のエースナンバー#9を継ぐんだ!」



「・・・・・・・・・エージ。」


「あっ!先輩を呼び捨てしやがったな!!前文撤回だ、このやろー!!」

一揉めする山王ベンチであった。


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大歓声が、会場に響き渡る。

「キャーーーー!!」

「わぁぁぁーー!!」

「沢北だーーー!!!」

「沢北の登場だーーーー!!!」

「待ってましたーーー!!!」

「やっと、沢北のプレーが見られるぜー!!!!」




「とうとう、出てきやがったな。」

と開口一番は三井。

「あぁ。しかも、ベストメンバーで来た。」

赤木が腕組をする。

「最後の追い討ちか。」

と魚住。

「牧、負けるなよ!」

藤真は拳を握った。




「凄い声援ですね。」

とベンチの美紀男。

「それほど、待ちわびたんだろう。この沢北の出場を。」

「なんか、全日本の選手以上の人気ですね。」

「あぁ。沢北には、そのくらいの価値はある。いや、それ以上の価値がある。」

と堂本は力強くいった。




「わぁーーーーー!!!」

「いけーーーー!!!」




「すげーな。うはっ。」

「今日は、勘弁してやるジョ。」

「気持ちがいいな、この歓声は。今日は、いつも以上にのれそうっす。」




「さっ沢北かよ・・・。」

と清田。

「そう来ると思っていた。問題はない。」

牧の顔に焦りはない。

「避けては通れないですからね。行きましょう。」

神も冷静だった。

「おう!!」

「はい!」

覚悟を決める海南選手たち。



壮絶な最終Qを迎える。




山王 58
海南 53







続く。