goo blog サービス終了のお知らせ 

うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#71 【進路】

2009-03-13 | #03 県決勝 選抜編
最上段の柱に寄りかかり一人の男が立っている。

足を交差し、ズボンのポケットに手を突っ込み、Vネックのセーターを着た男がつぶやく。


「誰にも負けるなっていっただろう。どあほう。」


『トコトコトコ・・・』


会場を後にする。




「最後の23秒は、最後まで手を抜くことなく、攻める姿勢を貫き通した海南と、
同じく最後までゴールを奪おうとした陵南とのドラマチックな攻防だったわね。」

「はい・・・。両チームの想いがわかる、心を動かす23秒でした。
もう、涙ばかり、溢れてきます。」ぐすん。

「これで海南が17年連続優勝か。この鉄壁の牙城がなかなか崩せないわね・・・。」

(でも、来年はもしかすると・・・。)




海南コートのゴール裏、中段よりやや上の観客席に、4名の学生らしき男たちが座っている。

「決ーーめた!俺は、陵南に行く!仙道さんは、やっぱりすげーよ。
俺は、あの人と一緒にやりたい。」

「そうか。大蔵は、やっぱり陵南に決定か・・・。
センターの大蔵が入れば、陵南は今より数段強くなるな。」

「田岡っていうあの監督は、あまり好きじゃないけど、積極的に俺のところに来てくれているしな。
俺は、陵南に決めた!」


「空斗と海斗は、どうすんだ?やっぱり、同じ高校に進学するのか?」

4人の中で、一番小柄な男が尋ねた。



「俺は海南!」



「俺は陵南!」



2人の男が同時に答えた。



「おっ、珍しいな。双子の意見が分かれるとは。」

にやけている大蔵。


「俺は、海南で神奈川県王者を守り続けたい。それに、神さんの3Pに惹かれた。」

「俺も大蔵と一緒だ。仙道さんと一緒にプレーしたいと思った。」

「いいのか、海斗?」

「空斗こそ、いいのか?」

「あぁ、お前とはいつか決着をつけなければと思っていた。ちょうどいいな。」

「そうだな。違う高校に通えど、俺らは双子だ。
縁が切れるわけじゃないし、憎しみあうわけじゃないからな。よきライバルってことで。」

空斗と海斗が笑った。


「春風は、決まっているのか?」

「あ~、俺か・・・。まだ、時間があるからな。これから決めるよ。
青葉中の3人は、翔陽らしいな。」

「青葉中は頭がいいからな。俺らじゃ、翔陽は無理だ。」

大蔵が笑って答えた。


「武石中の白田、東厚木中の神谷と天沼あたりは、どうなってるんだろうな?」

「わかんねぇな。だが、誰かしらと同じ高校でプレーすることになりそうだな。」

「あぁ、楽しみだ。新しい仲間も、お前たちと戦うことも。」

春風の問いに、海斗が答えた。



4人には、笑顔が溢れている。




「仙道をもってしても、牧を倒せなかったか。
結局、牧は3年間無敗となり、俺たち神奈川県勢が牧を倒すのは、大学となったわけだ。」

花形がいう。

「牧は、やっぱり深沢なのか?」

と三井。

「いくつかの推薦の話は来ているが、まだ迷っているっていっていた。
牧が、どの大学に行くかで、今の大学バスケ界の構図が大きく変わる。
大学のバスケ関係者も興味津々ってわけだ。」

「牧が深沢や名稜に行くようなことがあれば、俺はまた勝てないかもしれないな。」

藤真のあとに、笑いながら花形が答えた。


「俺はまた勝てないって・・・、なに!?
今年、国体にしか出場していない花形にも推薦が来ているのか?」

驚く三井。

「あぁ、一応な。毎年、拓緑大学にうちからの1名の枠があってな。
来年は、俺が行かせてもらうことになった。」

「拓緑大学だと?関東二部の大学じゃねぇかよ!まじかよ!?
じゃあ、藤真はどーしたんだよ!?」


「俺は、慶徳義塾に決まったよ。」



「慶徳義塾!!!!」



赤木、三井が驚愕の表情で声を揃えて答える。



「学力の推薦のほうで受かったんだ。
ただ、慶徳義塾のバスケ部は、毎年ほぼ全員が推薦組だから、一般の入部テストに合格しないとバスケ部には入部できない。
毎年1名かそこいらのかなり狭き門と聞いているが、この入部テストで落ちるようなら、
日本一や打倒牧なんて、夢のような話だったってことさ。
もし、合格できなければ、俺はそこまでの男だったと諦めて、楽しいキャンパスライフを過ごすよ。」

と笑いながらいう藤真を、赤木は無言で見つめている。



「・・・。」

(藤真は慶徳義塾か。)



「慶徳義塾か・・・、関東一部じゃねぇかよ。入部できれば、間違いなく牧と対戦することになるだろう。
すげーな・・・。俺は、関東三部の大学だし・・・。いつ、牧やお前らと対戦できるかわからねぇよ。」

三井がテンションを下げながらいう。


「そういうな。大学でバスケができるだけましだろ。」

と魚住。


「・・・、それもそうだな。俺が大学にいけるなんてな。
半年前までバスケができるなんてこと思ってもいなかったことだからな・・・。
これも安西先生と田岡のおかげだ・・・。
ところで、赤木は深沢ダメだったんだろ?どこに決まったんだ?」

「俺は、受験だから、今しばらくかかる。大学は、今検討中だ。」

「お前も、選抜出てればよかったんだよ。俺みたいに、他の推薦もらえたかもしれないのに。」

にやけながら、三井がいう。


「ふん!!」




その後、赤木は実力で進学し、ある大学のバスケ部に入部する。




そして、導かれるようにあの男と全国制覇を目指すのだが、それはまた別の話・・・。




(あいつと同じ大学に通うかもしれん・・・。)

赤木は、うすうす感じている。




そのころ・・・。



コート上では、表彰式が行われていた。




優勝 海南大附属高校 

準優勝 陵南高校

第3位 翔陽高校

第4位 湘北高校 



MVP  牧 紳一


得点王  流川 楓


得点ランキング
1 流川 楓(湘北) 33.2
2 神宗一郎(海南) 29.3
3 福田吉兆(陵南) 27.5


アシストランキング
1 藤真健司(翔陽) 15.5
2 仙道 彰(陵南) 11.2
3 牧 紳一(海南) 10.3


リバウンドランキング
1 花形 透(翔陽) 13.1
2 高砂一馬(海南) 11.0
3 秋田智成(武里) 9.6


ベスト5
G 牧 紳一(海南)
G 神宗一郎(海南)
F 仙道 彰(陵南)
F 流川 楓(湘北)
C 花形 透(翔陽)




選抜県予選は、17年連続で海南大附属高校が優勝し、神奈川県代表として、全国高校バスケ選抜優勝大会に出場する。



牧は、日本一の高校生PGを証明するために。



選手は、IHのリベンジをするために。



海南は、神奈川県勢の想いを叶えるために。




一方、敗れた陵南はというと・・・。


仙道は、相変わらず練習に遅刻していた。



(ふぁーー、眠い・・・。なんで、彦一、呼びにこなかったんだろ??)



そのころ・・・。



「魚住に代わるセンターだ!センターを獲得する!湘北には獲られんぞ!!」

「武石中の白田君、要チェックやー!常盤中の黒川君、要チェックやー!」

田岡と彦一は、センターを獲得すべく、主要中学を巡っていた。








03 県決勝 選抜編 終了
04 海南 番外編 に続く。

#70 【終焉2】

2009-03-12 | #03 県決勝 選抜編
両チームが、自分のベンチに戻っていく。



海南ベンチ。

「OK!OK!よくやった!」

高頭が、選手をベンチに迎え入れる。


「おつかれ。牧。」

「あぁ。引退が伸びたな!」

「お前は、最高のチームメイトだよ。本当に!」

武藤と牧が、抱き合い、喜びを分かち合う。


「牧さん、お疲れ様でした。」

「全国では、もっと出場してもらうからな。覚悟しておけよ!」

笑いながら、牧が真田にいう。

「あー、こわこわ。」

真田が笑う。


宮益は、メガネを外し、タオルで顔を拭きながら、高砂と握手をしている。


「神さーん。今日の俺、いいとこなしですよ・・・。」

「仙道によく抜かれていたな。」


(ギクッ!)


「お前が悪いんじゃない。仙道が凄すぎるんだよ。
牧さんや流川クラスじゃないと、なかなかとめられる相手じゃないよ。」

「流川!?流川に、仙道がとめられるわけないですよ!!」

「準決勝では、あの2人、いい勝負してたよ。」

タオルで顔をぬぐいながら、神がいう。


「流川めー、No.1ルーキーは俺だーーー!」


『シーーーーン』


海南ベンチにいる全てのものが、清田をスルーした。


「誰か何かいってくださいよーーー。」

試合前と同じように、海南ベンチは、笑いに包まれた。




陵南ベンチ。

涙を流しているもの、うつむいているもの、疲れた表情をみせているもの、
陵南のベンチには、そんな人間は誰一人いない。

みんなが、達成感と充実感に浸っている。

一人だけは、憤りも感じていた。

「高頭め、そのデカい顔で、何度俺の夢に立ちふさがるのか!!!」

「監督、頭から煙が出ていますけど・・・。」

(もっともっと、練習量を増やさなければ・・・。)ぶつぶつ・・・。


「みんな、お疲れ様。全国2位のあの海南をあそこまで苦しめたんだ。自信を持っていいと思う。」

越野が選手たちに声をかける。


「勝たなきゃ意味がない。」ぼそ。

福田が呟く。


「俺たちは、まだ若いチームだ。この経験は、必ず来年に活きている。
今日の敗北を糧にして、来年は必ず優勝する!!
なぁ、そうだろ、福田?そのためには、もっと練習が必要だ。
お前の力も必要なんだ。これからも頼むよ。」

「キャプテン・・・。わかりました。」

「おう。任せたぞ、福田!」


「今回の敗因は、俺だ。もっと、牧さんを押えることができていれば・・・。
みんな、申し訳なかった。」

「そんなことはない。仙道がいたからこそ、海南と対等に渡り合えたんだ。
みんな、お前に感謝しているよ。ありがとうな。」

「あぁ、こちらこそ。」にこり。

「練習きつくなるが、サボるなよ!」


(まいったなー。)


「仙道さん、お疲れ様でした。仙道さんと牧さんの最後の勝負をしかとチェックさせてもらいました。
わいは、ほんまに感動しました。今日は眠れんです。」

「彦一も応援、お疲れ様。来年は、コートに立てるよう、練習頑張らなくっちゃな。」

「はい。わいも牧さんみたいになれるよう頑張りますわ!」

「お前、この間は宮城みたいになるっていっていた。」

福田が突っ込む。

「それは、過去の話ですやん。」

仙道と福田は呆れ顔である。




控え室に戻る陵南の選手。




田岡はまだぶつぶつ独り言をいっている。

(高頭め、顔がデカすぎるぞ・・・)ぶつぶつ・・・。




仙道は、歓喜に溢れる海南ベンチの牧を見て思う。


(牧さん・・・、高校時代に1度だけでも勝ちたかったな・・・。)




海南ベンチの牧、スコア表を見て苦笑いをする。


(ふっ、仙道、全てのスタッツで、俺を超えてやがる。)




-----------------------------------------------

選抜神奈川県予選 決勝

海南×陵南

海南 88
陵南 83


【海南】青 88

#4 牧 23P 11A 7R
#5 高砂 11P 13R
#6 神 25P(3P6本) 
#7 真田 10P
#8 小菅 2P
#9 武藤 7P
#10 清田 10P 7A
#15 宮益 0P


【陵南】白 83

#4 越野 7P
#5 植草 4P 
#6 菅平 10P
#7 仙道 25P 13A 10R
#8 福田 26P 14R
#12 山岡 11P

-----------------------------------------------







続く。

#69 【終焉1】

2009-03-10 | #03 県決勝 選抜編
海南大附属高校 優勝

海南 88
陵南 83




「海南、優勝おめでとう!!」

「あんな遠いところから叩き込んだの初めて見たーー!!」

「幻のアリウーーープ!!」

「さすが、仙道!!」

「ナイスゲーーーム!!」

「牧、全国でも期待しているからなーー!!」

「陵南もよく頑張った!!」

「仙道、来年こそ、全国だーー!!」



観客席からは、両チームを称える拍手、賞賛がとまらない。




そのころ、コート上では・・・




「お前が福田からのパスをキャッチしたところで、試合は終わっていた。」

「えぇ、俺も知っていました。」

「あそこで終わらせる気なんてなかったんだろ?」

「とまらなかった。いや、終わらせたくなかったといったほうが正しいですかね。
牧さんの上から、叩き込んでみたかった。」にこり。

「いってくれるねぇ。藤真といい、仙道といい、桜木といい、心の底から俺を熱くさせるぜ。」

「まだ、桜木と一緒にしないでくださいよ。」

「それもそうだな。」

2人は、笑顔を浮かべ、固い握手をする。


『ガシ!』


「必ずまたやりましょう。」

「あぁ、その前に、あいつを倒してきてからな。」

牧は、にやっと笑い、神のほうに目を向ける。


「神は手強いぞ。」

「わかってます。全国、期待していますよ。」にこり。

「神奈川の強さを証明してきてやる!!」




一方、旧友の2人は・・・



「・・・。」(ジンジン)

「・・・。」(フッキー)

しばらく続いた無言の状態から、ようやく福田が口を開く。


「負けず嫌いのジンジンめ。」

「相変わらずがむしゃらだな、フッキーは。」

「次は、負けない。借りは、3倍にして返す。」

「俺は、5倍。」

「ん!?俺は7倍!」

「10倍。」

「20倍!!」

・・・

・・・

・・・

「100倍!」

「1000倍!!」


お互い一歩も譲ることがなかった。




「整列ーーーーッ!!」

審判の声とともに、センターラインを境に10人が並ぶ。



牧も、仙道も、神も、山岡も、10人全員の顔が晴々と達成感に満ちた顔をしている。



「スコアーどおり、青!海南大附属高校!」



「あーした!!!」




陵南ベンチ。

海南選手が挨拶に訪れている。

「牧、全ての試合で6点差以上をつけて、日本一になるんだ。頼んだぞ!」

「???」

田岡が、牧と握手をする。


(海南が全試合6点差以上をつけて優勝すれば、うちは海南と5点差。
実力的には、うちが全国2位となる・・・。)にや。

つまらないことを考えている田岡。



「牧さーん!!神さーん!!」

『ぺたぺたぺた・・・』

牧の体を触りまくる彦一。

「これが、誰にも吹っ飛ばされない強靭な帝王の体なんやな!
筋肉の張りが違う、肌の色が違う、汗のにおいが違うーー!!要チェックやーーー!!!」


『にぎにぎにぎ・・・』

続いて、神の右手を握りまくる彦一。

「これや、これが、どんな状況においても、リングを射抜く、神さんの手やーーー!!」


『ゴンッ!』


「いった!!!」

「牧、神、疲れているところ、うちの相田がすまない。」

田岡が謝る。


(ゴン、ゴン、叩きおって。背が縮むっていうねん。)

「いいえ。彦一、IHのときのように、全国の強豪校の資料、またFAXしてくれな。」

「もちろんですよ!」

田岡とは反対に彦一は、上機嫌であった。




海南ベンチ。

「さすが、仙道。うちの牧をここまで苦しめたのは、山王の深津と先週の藤真くらいしかおらんよ。」

「えぇ、そういっていただき、ありがとうございます。」


「こちらこそ、礼をいわせていただきたい。」

「ん!?」

「この試合のおかげで、神がまた逞しくなったようだ。ありがとう。」

「まいりましたね。」

仙道は、苦笑いをしながら、高頭と握手をする。


『ガシ!』


「福田!」

「・・・。」

「君が陵南を強くしている。君には、まだ伸びしろがある。もっと、練習して頑張るんだぞ!」

「次は負けない。ジンジンにも、海南にも。」

「よろしい。楽しみにしているよ。」



両チームが、自分のベンチに戻っていく。







続く。

#68 【23秒】

2009-03-09 | #03 県決勝 選抜編
海南 85
陵南 83

残り 23秒




海南のオフェンス。




「当たれーー!」

「まだ、あきらめるなーー!!」

陵南ベンチから檄が飛ぶ。




『キュッキュ!』


『ダムダム・・・。』



仙道にマークされている牧に変わり、清田が越野の動きを見て、時間を使いながら、ボールを運ぶ。



(このボールをキープし続ければ、うちの勝ちだ!)

清田は、勝利を確信した。



だが。



「清田ーー!早く攻めろーー!!攻め続けることこそが海南!!!
決して、守りに入るなーー!!」

牧から怒声が飛んだ。



(ギクッ!)


(牧さん・・・。そうだ。守りじゃねぇ、あらゆるときも攻めることこそが海南なんだ!!)



『キュ!』


清田のドリブル速度が一気に加速。

陵南コート内に切り込む。

そして、牧にパス。




「キターー!牧だーーー!!」

「最後だ、牧、決めろーーー!!」

「仙道、とめちまえーー!!」




「牧の県内最後プレーか・・・。」

と藤真が呟く。




「楽しかったぜ!」



『キュ!』



牧が仙道に一言発し、仙道を抜きにかかる。



「まだ終わっちゃいない!」



仙道は、攻めるようなディフェンスで、牧にプレッシャーを与える。



『キュッ!』


『キュッキュッ!!』


『ダムダム・・・。』



まるで、2人だけで1on1を楽しむかのように、ギリギリの攻防を繰り広げる。



残り12秒・・・



仙道の一瞬のスキをつき、牧が突破を図る。




「キター!最後のペネトレイト!!」




仙道を半歩抜いたところで、シュート体勢。




「最後は、自分でゴールを狙ったか。」

と牧の最後のプレーに目に焼き付ける赤木。




(ここは絶対とめる!!)


仙道が横からシュートブロックに飛ぶ。



仙道の左手がボールに触れるその瞬間、



『クルッ!』



体を45°回転させ、パスを放つ。


受け取る男は、もちろん、来年の常勝海南を背負って立つ男。



(神、これからの神奈川は、お前の時代だ。)




「神の長距離砲だーー!!」

「これが決まれば、決定的だーー!!」




『シュ!』



『スポッ!!』



3Pライン手前1mで受け取り、本日一番速いクイックリリースで放った3Pは、
本日一番高いアーチで、ネットを通過した。



牧の思いを汲み取った神が、牧に一言発する。



「牧さん、まだ全国がありますから。」にこり。

「あぁ、そうだったな。悪いな。」



『トン!』

牧と神の拳が触れる。




海南 88
陵南 83

試合時間 残り9秒




(決まったか・・・。だが!!)

「さぁ、ここ1本獲るぞ!」

仙道は、あきらめの表情を見せない。



『バシ!』


仙道がドリブルをしながら、海南コートに駆け上がる。

つられて、他の選手も後を追う。


『ダムダム・・・。』



残り7秒



「シュートは打たせねぇ。」


仙道の前に三度清田が立ちふさがる。



『キュ!』


『ダム!』




「お!清田も負けてねぇーー!」




仙道のスピードにぴったりとついていく。



だが。



『キュ!』



仙道が急ストップ。



「な!?」



清田の重心バランスが崩れたところで、仙道がレッグスルーから抜き去る。



(まだまだだな。)



清田はこの試合、一度も仙道をとめることができなかった。


(くそ、仙道ぉーー。)



残り5秒



目の前には、海南の双璧 牧と神。


「ここは、これからのためにも、叩いておかねばならないな。神。」

「えぇ。」にこり。



『ダムダム!!』


スピードを緩めない仙道。



(牧さんと神か、分が悪い・・・。ならば。)



『シュ!』



神の目の前で、ノールックバックパス。



『バス!』



ボールを受けたのは、仙道の後ろから駆け上がってきた福田。



「神、福田のスリーチェック!」

牧が指示をする。


「はい。」

神は、福田との間合いをつめる。



残り2秒



会場のボルテージはヒートアップ、観客の声援が響き渡る。



「福田!」

仙道がパスを要求。



「仙道ぉ!」

福田は、小さくうなずき、神の頭上を越える絶妙なループパスをゴール下に放り込む。



「来い!仙道!!」



「言われなくても!!」



『キュ!』


『クルッ!』



仙道は、牧の前で回転し、ゴールを背にして、牧を背中で押さえ込んだ。



(ぐっ!)



『バン!』



『ダン!』



両者が、渾身の力を込め跳ぶ。



『ィ!!』



『バチィン!!』



ポジション取り、身長、跳躍力で優位に立つ仙道がボールをキャッチ。

牧のパワーの前に、仙道の体は若干、ゴールとは反対方向に押されている。




「遠すぎだろ!!」

「届くわけない!!」




(そこからは届かないぞ。)



だが、天才仙道は、牧のパワーも計算のうち。



その牧のパワーを利用し、体を反転、右手でボールを掴み、



そして、そのまま・・・。



『ドガァァァ!!』



ワンハンドでリングに叩き込んだ。



仙道は、リングを掴むことなく着地。



牧もまたダンクの衝撃に飛ばされることなく着地した。



『ピィーーー!!!』



「ノーカウントーー!!タイムアップーーー!!」

審判が大きな声で、ノーカウント、試合終了を告げる。



試合終了・・・。



3Pライン上では神と福田が、見つめ合っている。



ゴール下では、牧と仙道が笑顔を交わしていた。




選抜県予選 決勝

海南大附属×陵南

海南 88
陵南 83

海南大附属高校 優勝








続く。

#67 【立ちはだかるもの】

2009-03-07 | #03 県決勝 選抜編
海南 85
陵南 81

残り 38秒




「陵南としては、まずは1本。できる限り短い時間で決めることだ。」

「仙道が一人で突っ込んでくるか、仙道と福田のコンビプレーでくるか、はたまた仙道がフィニッシュに導くか。
どちらにしても、陵南は仙道だ。」

「わかっていても、そう簡単にとめられねぇんだよな。あいつは・・・。」

花形、赤木、三井が話をしている。




陵南のオフェンス。

海南は、ハーフで陵南を持ち構えている。


『バシ!』


ボールは仙道に渡ると同時に、タイマーが動き出す。



観客は息を呑み、仙道のドリブルを見守っている。



『キュ!』


『ダムダムダム・・・。』


会場内には、コートに触れるバッシュの音、ドリブルの音のみが響き渡る。



緩急をつけた仙道のドリブル。

だが、牧も負けない。


(もう、お前には獲らせん!)


抜かれないディフェンスで、サイドラインのほうへ、仙道を追い込む。

待ち構えているのは、清田。




「ダブルチームだ!!」




「さっきのようには抜かれないぜ!」


先ほど、一発カットを狙った清田が抜かれた原因で屈辱の5人抜きをされた。



「仙道さん!」

山岡がボールをもらいにいく。

だが、神がタイトにあたっている。




「ここにきて、神の動きが目立ってきたな。」

「あぁ、牧や仙道に劣らない能力、精神力を持っている。」

「努力の男が今開花したということか。」

観客席の三井、藤真、赤木が、神を見つめ話している。




「仙道!」


『ビュン!』


フリーになった越野にボールが渡った。


『ガシィ!』


そのまま、仙道が清田にスクリーン。



「牧さん!スイッチ!」

「あぁ、仙道は任せたぞ!!」

「No.1ルーキーにかけて!!」



『キュ!』


牧が越野に間合いをつめる。


(くそ!なんてディフェンスしてやがるんだ!ドリブルさえできねぇ!)


(一気にたたみ潰す!!)



時間は一刻一刻と過ぎていく。



「越野、こっちだ!」

仙道が、清田を押さえボールを呼ぶ。



「仙道!」



『バチン!!』


苦し紛れに放ったパスは、牧の腕にあたり弾かれた。




「ルーズボール!」

「取れーー!」

「絶対奪われんなーー!」

高頭、田岡がベンチから叫ぶ。




『ガシ!』



『ガシィ!!』



『キュ!』



『バシィー!!』



空中でボールを取ったのは・・・。



福田。




「よし!いいぞ!!」

観客席の魚住が立ち上がる。

「粘り強い!」

と赤木。




「仙道!」

福田の、陵南の、全ての思いを乗せたパスが仙道に渡る。



『バシ!』



「任せとけ!」



『キュッキュ!』



『ダムダム・・・。』



仙道が、一気に海南ゴールを狙う。



『キュ!』



牧が並走する。



(やっぱり、最後まで立ちはだかりますか?牧さん!)


(全国へ行くのは俺たちだ!お前には譲らん!)



「海南のゴール下は、俺が守る!」

高砂が叫ぶ。




「牧!高砂ぉ!」

ベンチの武藤が、拳を握り締め、吼える。




強引にゴールへ向かう仙道。


『ダン!!』


フリースローライン、ステップを踏む。



そのとき。



「ファウル、ケアーー!」



神が叫ぶ。



「!!!」



「はぁ!!」



我に返った牧、高砂は、ジャンプをせず、手を高くあげて立った。



『シュパ!』



仙道が、スクープシュートを決める。



(・・・。)



無言で牧を見つめ、神を見つめる仙道。



「ナイス、ディフェンスです。2点くらいはくれてやりましょう。」



(俺は・・・、仙道との勝負にこだわり過ぎていたようだな。
また、神に助けてもらったぜ。)



神の冷静な判断が、バスカンを狙っていた仙道の思惑を阻止した。



かたや、仙道。



(神・・・。お前も立ちはだかるか・・・。)



仙道のスクープシュートで2点差となるも、残り時間は23秒。

海南がボールをキープし続ければ、この試合は決着となる。

選手、ベンチ、観客、全ての人間が最後の一本を見守る。




海南 85
陵南 83

残り 23秒








続く。

#66 【3点】

2009-03-06 | #03 県決勝 選抜編
海南 82
陵南 81

残り 1分01秒




海南のオフェンス。

「ここ1本しっかり獲るぞ!」

「おう!!」



「さぁ、ディフェンスだ。集中していこう!」

「おお!!」




「陵南は引いてきたな。」

「あぁ、ヘタにオールコートでもして、一線が抜かれれでもすれば、致命的だからな。
この終盤で集中力の高まった牧を押えることは難しい。」

「ハーフでしっかり守って、1本だ!」

三井、赤木、魚住が話す。




45°には、牧と清田。

3Pを狙うように、神と宮益が、0°3Pライン1m遠めに位置づいている。

ハイポは、高砂。


陵南は、マンツーに変更。

マッチアップは、海南と同様、植草は宮益、越野は清田、山岡は神、福田は高砂、牧には仙道がついた。


高砂が、ローポに下り、中を空ける。


「来るぞ!!」


牧がペネトレイトで陵南ゴールを狙う。

仙道が並走した状態で、牧をぴったりとマーク。



『ビュン!』



フリースローライン手前で逆サイドのの0°神へパス。




「神のスリーだーー!!」

「ケアしろ!!」




牧のペネトレイトで中に集まったディフェンスが、一斉に開く。




「打たせませんよ!」




山岡が神に詰め寄る。

抜かれてもかまない。

だが、シュートは打たせない、そんなディフェンスをしている。



神はすぐさま45°の清田にパスを落とす。



「待ってましたよ、神さん!!」

清田が、フェイクを一つ交え、最高速のドライブで、中に突っ込む。



(お前には負けねー!)



だが、越野もここ一番の根性を見せ、必死に食い下がる。



『バン!』



清田は、ディフェンスが中に密集したことを確認したところで、逆サイドの宮益に展開。



「宮さん、いっちゃってください!」



「宮益さんの3Pに注意です!」

山岡が植草に忠告する。




「中、外、中、外とリズムのいいオフェンスだ。」

と観客席の花形。




植草は、宮益に間合いをつめる。

ディフェンスは、外にいる4人のランニングリバウンドを警戒。

中にスペースができる。



その瞬間。



『シュ!』



宮益がゴール下にパスを放り込んだ。



『バシ!』



パスを受け取ったは・・・。



神。



清田が宮益にパスを出したのを確認し、高砂と神がポジションチェンジ。



宮益側のゴール下で、神が山岡を背にポジションを取っていた。




「!!!」

「神だーー!!」

「神のポストプレー!!」




「藤真がいっていたのは、こういうことか。宮益を入れたことで、神が外1本ではなくなる。
外、中と自由に攻めることができる。」

と三井。


「神は、今は日本の高校生を代表する名シューターだが、中学でのポジションはセンター。
あの体格では、赤木や魚住相手ではかなうまいが、山岡くらいの体格なら、ゴール下勝負でも十分通用する。」

と堂々と藤真が答えた。



神は、ボールをキャッチし、山岡を背中に押さえ込んだまま、右にヘッドフェイクを入れる。


山岡がこれに反応し、右側による。


神は、空いた左側のスペースへ素早くターン。



『キュッキュ!』


『ダム!!』



山岡を抜き去った。




「うまい!!」




だが、前にはヘルプディフェンスにきた福田が待ち構えていた。



(ジンジン、簡単にはいれさせない!)



(フッキー、さっきの借りは返す!)



『シュ!』



神がゴール下のシュートを狙う。



「福田、待てー!」



『ダン!』



仙道の声を無視するかのように、負けじと福田がシュートチェックに跳んだ。



(もう1度、とめてやる!)



だが、神は跳んでいなかった。



(ポンプフェイク!!!)



1秒にも満たない時間差で、神が前に踏み込んだ。



『ドン!』



福田と神の胸部が、空中で激しく当たり、神が後方へ、吹っ飛ばされた。



福田は、ファウルを覚悟した表情で後方へ飛ばされた神を見つめながら着地体勢。



神は、その福田を見ながら、にこりと笑った。



バランスを崩した下半身とは違い、ボールを持っている腕は、しっかり綺麗に伸びている。



そして。



『シュ!』



フェイダウェイ気味にシュートを放った。



神は、右手の人差し指を静かに立てながら、コートに倒れた。



『ドン!』



『ザシュ!』



シュートが決まった。



『ピィーーー!』

「白#8!プッシング!!バスケットカウントーーー!!」

審判が、立てた2本指を下に下ろす。




「神の3点プレーーー!!」

「牧ばりの3点プレーだったぞーー!!」

「今のは陵南にとって痛い!!」

「神にあんなプレーができたのか?凄すぎるぜ神!!」




倒れた神に、牧が手を伸ばす。

「あそこで、バスカン狙っていくか、普通?」

笑いながら、牧が声をかける


「牧さんなら、そうしたでしょう?いい見本が一番近くにいますから。」にこり

牧の手を借り、神が起き上がりながら、答えた。



そして、福田を見つめ呟く。

(フッキー、さっきの借りは倍にして返す。・・・あと、3点。)



「神さーーん、最高っす!最高っす!」

清田が絶賛、神に抱きつく。


「さすが、神。」

メガネをかけ直しながら、宮益がいう。




ベンチの高頭が笑う。

「この勝負決まったな。そして、来年は神が新帝王だ!」

高頭は、陵南戦の勝利、神が来年の神奈川県の頂点に立つことを確信した。




対する陵南。

田岡は、顔を上げ、目を閉じている。




その表情を見た福田は、瞳に涙がたまった。

「・・・。」


「ふぅーーー。」

仙道は一息して思う。

(厳しくなったな。)


「まだ、時間はあります!最後まで、あきらめずにいきましょう!」

山岡が福田を仙道を先輩たちを励ます。


(拓真・・・。拓真に励まされるとはな。)


「あぁ、そうだな。まだまだいける!!」

仙道が再び燃え上がる。




「神・・・。」

花形が、感慨深く神を見つめている。


「神のポストプレーまでは予測の範囲だったが、まさかあの状況で、牧ばりの3点プレーをしてくるとは・・・。
恐れ多いやつだなよ。本当に。」

藤真が苦笑いをしながらいう。


「決まったな。今のプレーで、海南の勝ちだ。」

「・・・。」

三井の一言に、魚住は無言である。


「試合は最後までわからん!」

赤木が、腕を組みなおしながらいった。



『シュパ!』




「決めたーー!!」

「海南勝利確定ーーー!!!」




神がプレッシャーをものともせず、フリースローを決め、4点差となる。

牧が、神が、陵南の、仙道の前に立ちはだかり、逆転を許さない。

第4Q残り38秒 仙道が全身全霊をかけて、逆転を狙う。




海南 85
陵南 81







続く。

#65 【帝王対天才】

2009-03-05 | #03 県決勝 選抜編
海南 82
陵南 79

残り 1分19秒




「福田君、アンビリーバブルだわ。この土壇場で、神君を止め、武藤君を止めた・・・。」

「神君が3Pを打つとき、鳥肌が立ちました。あんな、綺麗なシュートフォームを見たことがありません。」

「ええ、私もよ・・・。神君にとっても、今大会一番のシュートだったと思うわ。
そのシュートに掠り、武藤君を退場に追い込んだ福田君もまた今大会最高のディフェンスだったわ。」

「はい。正直、どっちにも負けてほしくないですね。」

苦笑いの中村君。


「陵南は、次決めないとかなりきつくなるわね。」

「やっぱり仙道君できますかね?」

「えぇ、もちろん。必ず彼が起点なはずよ。」




「福田のあの予想のつかない動き、桜木に似ているな。どこからともなく現れる。」

「あぁ、そうだな。武藤のチャージングを狙ったかどうかわらないが、ボールへの臭覚は、本物だ。」

花形と藤真が話す。


「桜木なら、神の3Pを完璧に叩き落したかもしれん。」

「おお、赤木、珍しく、桜木を褒めるじゃねえかよ。」

「うるさい!」

「だが、俺もそう思うぜ!」

桜木の実力を認めつつある赤木と三井。


「これで、逆転のチャンスは十分にある。仙道、正念場だぞ!!」

魚住が力強くいった。




陵南ボールで、試合再開。

高頭は、武藤の代わりに宮益を入れる。



-----------------------------------------------

PF…#9 武藤 正 184cm/3年

SG…#15 宮益 義範 160cm/3年

-----------------------------------------------



「ここで、宮益君?サイズダウンじゃない?終盤は、ゴール下で確実に点に結びつけるのが、常套手段よ。
智将高頭監督にしては、大きく賭けにでたわね。」

「ツインシューターで、外から得点を狙う作戦ですね。」

「吉と出るか、凶と出るか・・・。」




「4アウトで外から3Pを狙う作戦か?
少しでもリバウンドが獲れるように、小菅を入れたほうが、いいんじゃないか?なぁ、藤真?」

三井が尋ねると、藤真はこう答えた。

「俺が監督なら、宮益を入れる。植草にマッチアップさせれば、たいしたミスマッチにはならない。
オフェンスでは、ディフェンスを広げ、神への負担を減らす、重要な役割だ。」

「神に少しでもスペースが空くように、もう一人シューターを入れるというわけか。単純だ。」

魚住の言葉に、すかさず藤真が答える。


「半分当たりだ。」

「ん!?」


「見てれば、わかるさ。」

藤真が笑いながら、4人にいった。




高頭から牧に指示が飛ぶ。

「OKです。」にや。

牧は続ける。

「宮益は植草、清田は越野、神は山岡、高砂は福田、俺は仙道だ!」

「おう!」



『バシ!』


速い展開から、45°の仙道にボールが入る。



会場割れんばかりの声援が飛ぶ。

「やっぱり、仙道しかいない!!」

「牧を倒せ!!!」

「牧、とめろーーーー!!!」

「帝王の力を見せろーー!!」




「来い!!」

「・・・。」



『シュ!』


ハイポストの福田にパス。

仙道は、パス&ランで福田の元へ走り出す。


「させるか。」

牧も仙道とともに走るが、瞬発力では仙道が上。

福田の脇を通り、手渡しでボールを受け取る素振りを見せたが、ボールはまだ福田の元にあった。

仙道は、ゴール下に走る。



(フェイク!)



牧は、仙道を追う。

高砂は、福田のシュートを、スピンムーブを警戒。



『タン!』



『シュ!』



福田が空中で回転し、ジャンプシュート。


シュートを警戒していた高砂は、素早く福田のシュートに反応。

ブロックできないまでも、その大きな手のひらで、福田の視界を遮った。



(外れる!)



「リバウンドーーー!!」

高砂が叫ぶ。



『キュ!』


『キュキュッ!』



海南、陵南の選手がスクリーンアウト。

激しくポジション争いをしている。



福田のジャンプシュートは、リングよりだいぶそれていた。



(シュート?いや、違う!)



牧が感づく。




「ハイ&ロー!!」


「!!!」




ボールは、リングの横、ボードに当たるか当たらないかの絶妙な高さの位置に向かっている。



そこに走りこむのは仙道。



『バシ!』



「ナイスパス!」にや。

仙道が笑う。



「いけーー!!仙道ーーー!!」

福田が叫ぶ。



仙道は、そのままボールを両手でリングに叩き込む。



『バチィン!!』



「!!!!」



(牧さん!!)



(お前には、いれさせん!!)



牧が、仙道の渾身の力を込めたスラムダンクを右腕だけでブロックした。




「牧だーーー!!!」

「仙道のアリウープを止めたーーー!!」




パワーでは、牧が上。

だが、弾かれたボールは、まだ仙道の手の中。

仙道はすかさずボールを逆サイドのゴール下に落とす。


『バシ!』


『ザシュ!』


ハイポからローポに走っていた福田にパスが入る。

ゴール下を決めた。




「1点差ーーー!!!」

「仙道も負けてねーー!!!」

「福田、ナイスパス!ナイッシュ!!」




「仙道さん!フクさん!最高やーー!!あなたたちは最高やーーー!!
アンビリーダブルやーーー!!!」

「よし!」

(仙道が、陵南が、いよいよ神奈川県一になるときがきたようだ!)

片足を膝間づき、ガッツポーズを取る田岡。




「福田君のパス、牧君のブロック、仙道君のパス、全てがアンビリーバブルだわ・・・。
身体能力と瞬発力、想像力、どれをとっても全国レベルよ。2チームとも全国に行かせてあげたい・・・。」

「・・・・・・。」

開いた口が塞がらない中村。




「仙道の動きに合わせてパスを供給した福田、福田のパスを素早く見抜き、仙道のブロックに跳んだ牧、
ダンクをブロックされた状況から、瞬時にゴール下に駆け込んだ福田にパスした仙道。
ここに来て、仙道を中心に試合が動いているな。」

赤木が冷静に分析する。


「あの状況で、あのプレーができるのは、県内では仙道をおいて他にはいないだろう。試合を支配している。」

花形が付け足す。


「仙道のやつ、ホントに牧を越えちまうかもしれないぞ!」

三井が困惑の表情で話す。


「牧を交わしてのこの2点は、デカい。流れを引き寄せたな!」

魚住が、逆転を確信したかのようにいう。


「牧は、こんなもんじゃ終わらない!」

もはや、藤真は牧の応援一方である。




無言で見つめあう牧と仙道。

(この試合、必ずもう1本、牧さんの上から点を獲ってやる!)

(仙道、面白いな。お前とやるのが、この試合で最後だと思うと残念だ。)



帝王牧、天才仙道の神奈川一を決める決着に今、終止符がつかれようとしている。




海南 82
陵南 81

残り 1分01秒








続く。

#64 【がむしゃらと負けず嫌い】

2009-03-03 | #03 県決勝 選抜編
海南 82
陵南 76




一向に縮まらない6点差、時間は残り1分53秒。

会場にいる過半数の人間が、海南の勝利を確信している。



陵南のオフェンス。

植草が牧と神からプレッシャーを受ける。

(凄いプレッシャーだ。)


プレッシャーから逃げるように、山岡にパス。



24秒タイマー 残り2秒。



「リバウンド!」

山岡は叫びながら、素早いリリースで3Pシュートを放った。



『ガン!』



ボールは、リングの奥で跳ねた。



「リバーン!!」



だが。



『サッ!』



「あっ!」


シュートを放った本人が一番驚いている。




「入った!!」

「山岡の3Pだーーー!!!」

「ツキはまだ陵南にもあるぞーー!!」

「3点差!わからなくなった!!」




海南 82
陵南 79

残り 1分40秒




「あんな適当なシュートが入るとは!赤毛猿じゃあるまいし!」

清田が騒ぐ。


「問題ない。3点には、3点で勝負だ。なぁ、神。」

清田の頭を握り、牧がいう。


「ええ、待ちくたびれました。信長、頼むよ。」

「はいよ。神さん。」



ボールを運ぶ牧、陵南コートで素早くパスを展開。


『バス!』


『バス!』


時間を使い攻める海南。

24秒タイマー 残り6秒。


『キュ!』




「やはり、牧!!」




「とめる!!」

牧の前には、仙道が立ちふさがる。

最強のペネトレイトを警戒。



だが。



『シュ!』



サイドにパスを流す。

仙道がサイドを見るその視線の先には、フリーの神が構えている。


越野の動きを止める清田のスクリーンプレー。

「神さん、任せたよ。」


目立ちがり屋の清田にとって、スクリーンプレーは本心ではない。

だが、神のスペースを作るためなら、その体を盾にも壁にもする。

もちろん、勝利のためではあるが、神のためなら、我が身、我が心を犠牲にしてもいいと思っている。

そう、神には、綺麗なシュートフォームと合わせて、人の心を惹き付ける不思議な魅力を持っていた。



『シュ!』



神は、弓矢で的を射るように、精神を落ち着かせ、静かにシュートを放った。

まさしく、手本となるシュートフォーム。


胸から頭の上へ流れるようにボールを動かし、腕は天井に向かって、綺麗に伸びている。


ボールを支えるその左手は、全てを受け入れるように優しく包み、
スナップの利いたその右手は、力強く、そして、中指のその先までボールを捉えていた。



(外れない!)

そう確信した神。



だが。



『キュッ!』


『ダン!』



「ん!?」



清田のスクリーン、牧のパス、神の3Pを読んでいたただ一人の男が、神のシュートブロックに飛んだ。



『バチ!』



極限まで伸ばした右手の中指にボールが掠った。



「仙道ーーー!リバウンドーーー!!」

完璧な神の3Pに触れたその男が叫ぶ。



「ナイスチェック、福田!!」

仙道が叫びながら、武藤、高砂の間を割って、リバウンドを獲りにいく。


高砂がスクリーンアウトをするが、交わされる。

「くそ!」



牧もリバウンドに向かう。


『キュ!』


『ガシィ!』



「行かせません。」

山岡が、低い重心で、牧にスクリーンアウト。


「重いな。」

「魚住さん、直伝ですから。」にや。



『ガン!』



リングに跳ねたボール。



リバウンドは・・・。



『バシ!!!』



武藤が掴み取った。




「ナイスリバン、武藤さん!!」

「下だ!武藤!」

「狙っている!!」




空中戦に集中している間に、ゴール下に潜り込んだ植草。

武藤が掴み取ったリバウンドを狙っていた。


『フン!』


植草に獲られまいと大きく腕を振るう武藤。

そのとき・・・。



『ドン!』


鈍い音が聞こえた。



武藤が腕を振るったその先には、福田が倒れている。




『ビィーーーーー!!!』


「青#9、チャージング!」




「福田がチャージングをとったーー!」

「ナイスプレーだーー!!福田ーーー!!」

「武藤、5ファウル!!」

「退場だーー!しかも、陵南ボール!!」




福田は起き上がり、天井を見上げ、眼を潤ましている。

握ったその拳は震え、観客の声援に酔いしれている。



「・・・・・・・・・。」ぷるぷるぷる・・・。



仙道が福田の肩を叩き、山岡が福田に飛びつき、福田のプレーを称えている。

田岡がガッツポーズを見せる。


「アンビリ・・・・。」

彦一は言葉が出ない。



一方、海南・・・。

残り90秒を残して、武藤が退場する。



「牧・・・、申し訳ない。」

「気にするな。あとは、俺たちに任せておけばいい!応援よろしくな。」にこり。

「あぁ、お前の笑顔には助けられるよ。」にこり。


『トン!』

牧と武藤の拳が触れた。


「清田、ナイススクリーンだ。神、気にするな。パス廻すから、頼むぞ!!」

「そうすっよ。福田のブロックなんて、まぐれっすよ。」

「えぇ、借りは倍にして返します。でも、終盤の攻めは、ゴール下がセオリーです。
ゴール下で勝負していきましょう。」



神が鋭い眼光を放つ。



その先にいるのは・・・、福田。



「・・・。」

(フッキーは、昔と変わらずずっとがむしゃらだな・・・。)

無言で福田を見つめる神。



「・・・。」

(負けず嫌いのジンジンだ、これでは終わらないはず・・・。)

同じく無言で見つめ返す福田。




海南 82
陵南 79

残り 1分19秒








続く。

#63 【シーソーゲーム】

2009-03-02 | #03 県決勝 選抜編
海南 75
陵南 65




「5人抜きって嘘だろ?相手は、全国2位の海南だぜ。」

冷や汗を流している三井。


「信じられないが、目の前で起こった。」

花形が目を丸くしていう。


「仙道は沢北級・・・、なのか・・・。」

今まで冷静に分析していた赤木も驚きを隠せない。


「牧、負けるなよ。お前を倒すのは俺だ。」

牧・藤真時代の終焉を感じずにはいられない藤真。


「あいつを、仙道を全国に行かせてやりたい!!」

魚住の拳が震えている。



5人の心に共通の想いがよぎる。



(仙道は牧を超えるのか?)




「・・・。」

言葉も出ない中村。


「イカし過ぎるわ・・・。」

記者ということを忘れ、女性として仙道を見つめいてる弥生。

ともに棒立ちである。




「全力で陵南を叩く!気合入れて、行くぞ!!走り負けるな!!」

「おう!!」


牧を先頭に、神、清田、小菅、高砂が、陵南コートに駆け上がる。



「これからだ。さぁ、行こう。」

「おう!!」


仙道を中心に、越野、福田、菅平、山岡がディフェンスポジションにつく。




「仙道がすげーー!!!」

「海南が負けるかもしれないぞーーー!!」

「いけーー!!陵南ーーー!!」




そして・・・。



観客を味方につけた陵南が、怒涛の追い上げを見せ、
第4Qの半分が過ぎたころには、10点差あった点差を3点に縮めていた。


初めに動いたのは、海南ベンチ高頭。

ゴール下を支配できない海南は、小菅に代え、4ファウルの武藤を投入し、3アウトのオフェンスに戻す。

その武藤が、鬼気迫るポストプレーで、菅平から4つめのファウルを誘い、
続けざまに、牧が菅平に絡むバスケットカウントを奪った。



菅平退場・・・。

6点差。

試合時間は、残り4分・・・。



陵南にとっては、厳しい現実が突きつけられる。




「ここで菅平の退場はきついぞ!!」

「やっぱり、海南かーーー!!」




海南の勝利を確信したかのように、観客が沸く。

だが、海南選手、ベンチは、決して表情を変えない。

目には、今まで以上の気迫がこもっている。


(バスケは、最後までわからねぇ。)

(うちには仙道がいる・・・。)


陵南田岡は、植草を投入。

PGを植草に代え、仙道をFに戻し、全てを託した。




(仙道、任せたぞ。)

田岡が、祈る思いで仙道を見つめる。




対する海南は、仙道に清田がマッチアップするボックスワンで、陵南のフィニッシャーをつぶす。




「清田、仙道にシュートを打たれてもかまわん。ただ、絶対楽に打たせるな。
外れれば、リバウンドはうちのもんだ!」

高頭が、折れた扇子を握り締め、コート上の選手を見つめる。




だが。



『シュパ!』



「嘘だろ?今、触ったぞ。」


「・・・。」


清田が仙道の腕を叩くも、死角になり、審判の笛はならない。

叩かれたにも関わらず、高い打点で放った仙道のジャンプシュートはネットを揺らす。



4点差。




「マンツーでは、陵南はサイズで分が悪い。」

観客席の赤木が分析。




田岡の指示が飛ぶ。

「越野!」




越野が神にマッチアップ、4人が2-2のゾーンを組むボックスワンにディフェンスを変更。


だが、海南は、24秒をフルに使い確実にフィニッシュに持ち込む。



牧のペネトレイトから清田を経由して、高砂へ。


「高砂、ナイッシュ!」


再び、6点差。

点差は縮まらない。



『ガン!』

仙道のジャンプシュートが外れる。



「あったりめーだ!」

清田が決死のディフェンス。



『トン。』


『シュパ!』


武藤の上から、福田のチップイン。


「何!?」



「うぉぉぉーーー!」

福田が吼える。



4点差。



牧が、高砂、武藤にスクリーンアウトを指示。



海南のオフェンス。

冷静なアウトサイド陣のパスワークから、牧がパワードリブルで切り込む。

植草、山岡、仙道3人がかりで囲みにかかる。



「ガラあきだ。」

牧は神を見ながら、神とは反対方向へボールを落とす。



「もらったーー!!」



『ドガァァァァ!!!』




「清田のダンクーー!」

「あいつ、飛びすぎだろーーー!!」




盛り上がる海南ベンチ。

高頭を初め、ベンチに座っているものなど誰もいない。



対照的に、陵南のベンチは、静かにコートに目を向け、座っている。

決して、意気消沈しているのではない。

待っているのである。

信じているのである。

陵南が、仙道が、海南を逆転するときを。



だが、陵南に重くのしかかる6点差。

試合は、残り時間2分となっていた。




海南 82
陵南 76







続く。

#62 【両エースの力】

2009-02-28 | #03 県決勝 選抜編
海南 72
陵南 63




海南のスローインから、開始。

「ん!?」




「陵南がゾーンだーー!!」

「いや、違う!!神にボックスワンだ!!」




「牧のペネトレイト、清田のドライブ、神の外を封じにきたか。」

「常套手段だな。だが、これで、牧を押えられるとは思えん。」

三井と赤木が話す。




牧がドリブルしながら、つぶやく。

「甘い。」


『キュ!』




「牧が突っ込んだーー!!」

「ペネトレイト!!」




前には、仙道が立ちはだかる。


『ダッダッダ!』


『キュ!!』


『ダムダム!!』


ハーキーから、キラークロスオーバーを仕掛ける牧。

仙道の重心バランスが崩れる。


(ぬっ!)


『キュ!』


その一瞬の隙を牧は見逃さない。




「牧が抜いたーーー!!」




福田、越野がヘルプにいく。


「福田、行くなーー!!」


3ファウルしている福田を越野が強引に押しのけ、牧に接触する。


『ドン!!』


『シュ!!』


だが、越野は吹っ飛ばされ、牧はシュートを放つ。



『ザシュ!!』




『ビィーーー!!』


「バスケットカウントーー!白#4プッシング!!」




「出たーー!牧の3点プレー!!」




「止められねー。」

越野が冷や汗を流す。


「わりー、抜かれちまった。」

苦笑いをする仙道であったが、心中は穏やかではない。

(さすがに強いな。だが、次はとめる。)



フリースローをなんなく決め、12点差となる。




海南 75
陵南 63




『キュ!』


『キュ!キュキュ!!』




「来たな。」

と花形。

「あぁ、当然だ。」

藤真が答える。




「キターーー!海南のオールコート!!」

「一気に決める気だーー!!」




「腰を低く、足を動かせ!15点差をつけるぞ!」

「おう!」




山岡には神、越野に清田、菅平に小菅、福田に高砂、仙道には牧がつく。




「ナメんなー!」

越野の声が高ぶる。



素早く、仙道にボールを入れる。



『キュ!』


牧が間合いをつめ、清田が囲いにかかる。



『ダムダム・・・。』


低い姿勢から、二人の間を縫うように、切れ込む。



「させるか!!」

清田が、ドリブルカットに狙う。



だが。




「レッグスルー!!」

「清田を抜いたーー!」




「くそ!」



牧が叫ぶ。

間合いをつめる。


「甘いぞ、仙道!」



『キュ!』



「何!?」



『ダム!!』




「キラークロスオーバーだーー!!」

「仙道がやり返したーー!!」




清田と牧を抜き去る仙道。

ドリブルの速度が増す。



『ダムダム!!』


神がヘルプにいく。



『バン!』


神の動きに素早く反応した仙道は、山岡にノールックバウンドパスを放ち、神を抜く。



『バチン!』


山岡は、仙道の考えを感じ取っているかのように、そのまま仙道にパスを弾き返した。




「神も抜かれたぞ!!」




仙道の汗が、ほとばしる。


清田、牧が仙道を追いかけるが、仙道のスピードは落ちない。




「小菅、ファウルだ!仙道を止めろ!!」

牧が叫ぶ。

(仙道にこれ以上調子付かせてはいかん!!)



小菅が仙道を掴みにいく。




「仙道さん、危ない!!」




だが。



最高速のバックロールで、小菅を置き去りにする。

ファウルさえさせない。




「ありえへん・・・。ミラクルアンビリーバブルーや・・・。」




会場全体が、仙道に釘付けである。

「仙道、止まらない!!」

「4人抜きだー!!」




「イカすわ、仙道君。」

記者席の弥生の目は、ハートになっている。




ゴール下では、3ファウルの高砂が待ち構えている。


『ダムダム・・・。』


『ダン!!』




仙道が、フリースローラインから、大きく踏み込んだ。

選手、両ベンチ、観客全ての人が、仙道に視線を注いでいる。




「あっ!」

「まさか・・・!!」

「フリースローから??」




仙道が、宙を舞っている。



高砂は、なすすべがない。



会場が静まり返った。



仙道が、ボールをワンハンドで掴む。



そして。



『ドガァァァァーー!!』



『ギシギシ・・・』



『ダン・・・ダンダンダン・・・』



『トン!』



リングの軋む音が、ボールの転がる音が、仙道が着地する音が会場に響いた。



「ふぅーーー。」

仙道が一息。



同時に・・・。




「うおぉぉぉぉーーーー!!」

「ワンハンドダンクーーー!!」

「5人抜きーーーーー!!!!」

「仙道ぉぉぉぉーーー!!!!」




本日一番の歓声が、会場を包み込んだ。

コート上の全ての音がかき消される。




「仙道!!」

「仙道さん!!」

陵南の選手、ベンチが、仙道のプレーに歓声をあげる。


「せんどうぉざーん」

彦一は泣いている。


「まだまだ、これからだ。」にこり。

仙道が仲間に微笑みかける。



「さぁ、行こーか。」



「おう!!!!!」

陵南選手の目が再び輝き始めた。



逆転に向け、仙道を中心に、陵南が動き始める。




対する海南ベンチの高頭は・・・。


『ボキッ!』

扇子を折っていた。


「%&#@:*$・・・」

なにやら言葉にならない言葉を発しながら、暴れている。




コートにいる海南選手は・・・。

「全国2位の海南に恥をかかせやがって。」

清田が怒鳴った。


「・・・。」

小菅、高砂は口を閉じている。


「さすが、仙道ってところですね。あいつは、紛れもなく全国でも通用する男です。
でも、1人抜かれようが、5人抜かれようが、2点は2点です。
これからは引いて、しっかりハーフで守りましょう。勝つのは俺たちです。ね、牧さん?」

「あぁ、神のいうとおりだ。5人抜かれたことは、常勝海南において、歴史上類を見ない屈辱だ。
だが、それもこの勝負に勝ち全国に行けば、帳消し。
今まで以上に、足を動かせ、走りぬけ、今年は俺たちが日本一になるチームだ。いくぞ!!」

「おう!!!」



(うちを相手に5人抜く仙道のスキルには、正直言葉もでない。
だが、神のこの精神力の強さ、冷静さにも本当に驚かされる。
つくづくおまえが味方でよかったと思うよ。)

神を見つめる牧。



牧の3点プレーで始まった第4Q、海南がこのまま勢いを増し、陵南を突き放すと思われたが、
仙道の5人抜きダンクが、逆転への狼煙をあげる。

最終Q早々の両エースの美技で、会場のボルテージは一気にあがった。




海南 75
陵南 65







続く。