愛知 12
神奈川 14
試合開始5分が経過。
神奈川は、早くも最初のタイムアウトをとった。
愛知ベンチ。
「ヒロシ、ちーと手を抜いたな。」
「様子を見ただけ。」
「最初のダンクで、また膝をやっちまったかと思って心配したぞ。」
「もう飽きた。早く終わらせて、うまいもんを食べに行こう。」
「あぁ、そうしよう。」にや。
監督冨名腰が続ける。
「天野、頼んだぜ。1点差だろうが、2点差だろうが、勝てばいいんだからな。
巧く立ち回ってくれよ。」
「了解です。」
湘北ベンチ。
「・・・・・・・・・。」
しばしの沈黙。
「清田君、作戦の確認です。今日の作戦は?」
安西が静かに問いかけた。
「チーム力で勝つ。」
「山岡君。」
「チーム力で勝つでしたよね。」
「その通りです。柳君。」
「清田さんと同じです。」
「黒川君。」
「チーム力で勝つ。」
「桜木君。」
「デブ坊主に勝つ!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「昨年のインターハイの二の舞になりますよ。」
昨年のインターハイ準決勝、乱打戦の中、森重と共にファウルアウトした桜木。
森重に固執しすぎて、力と力でぶつかり合った結果であった。
「今年のインターハイを欠場し、リハビリに励み、筋力の強化を行った結果、
彼は、抜群の足腰の力強さと体格に似合わぬスピードを得た。
今の桜木君は、正面からぶつかっても彼には敵わない。」
「なっなんだと!オヤジ!!」
「桜木!安西先生の仰るとおりだ。」
「じじい!!」
「ですが、私は負けたとは思わない。」
と安西。
「!!!」
「なぜなら、チームの力に勝るものはないからです。」
「!!」
「桜木、練習を思い出せ。」
「ぬっ。」
-----------------------------------------------------------------------
<<回想>>
「何度いったらわかるんだ!!そこはパスアウトだ!!
なぜ試合で出来て、練習で出来んのだ!!」
「俺は逃げん!!相手がデカ坊主だろうと、丸男だろうと逃げん!!!」
(桜木のやつ、森重らを意識しすぎて、周りが見えなくっている・・・。)
「逃げではない!!これは、チームプレーであり、チームの作戦だ!!
そのためにこの神奈川選抜は多くのCを揃え、シューターを揃えた。わかっておるのか!!」
「得点は俺が奪う!!ゴール下を制して、試合を制すのだ!!!」
静かにそのやり取りを聞いていた安西が口を開く。
「桜木君、なぜ田岡先生がこのような練習をさせるかわかりますか。」
「天才の力が必要だからだろう。」
「その通り。あえて、難しいプレーを君にさせている。」
「さすが、オヤジはわかっておる!ならば、このじじいを説得せい!」
「なんだと!」
「得点は、桜木君じゃなくても奪えます。」
「なに!」
「しかし、今練習しているプレーは、桜木君しかできません。」
「ぬ・・・。」
「流川君をも超えるインサイドの力強さ、パスセンス。」
「・・・。」
「桜木君がインサイドで並居る一流プレーヤーを抑え、パスを出す。」
「・・・。」
「そうすると、観客の目にはどう映りますか。」
「逃げている。」
「いや違う。さすが、桜木。凄いパスセンスだ。あの森重君、河田君を抑えながら、パスが出せるとは。
リバウンドも獲れ、得点も獲れ、パスもできる。個人技もチームプレーもできる。
あの身長でこんなプレーが出来るのは、桜木花道しかいないと。」
「・・・。」
「チームプレーにも徹しられる桜木花道は最高のオールラウンドプレーヤーだ。
神奈川を支えているのは、桜木花道だ。」
「・・・。」
(オールラウンドプレーヤー・・・。)
『チラ。』
田岡を見る桜木。
(仕方ない。)
「私もそう思うぞ。」
『チラ。』
彦一を見る桜木。
(ここは、桜木さんをノせなきゃあかん!)
「わいもや。」
『チラ。』
晴子を見る桜木。
「オールラウンドプレーヤー桜木花道の誕生だね。」
「オールラウンドプレーヤー・・・。」きらーん。
「チーム力で勝つ。簡単なことではありません。仲間を思いやり、信じる心が必要です。
だからこそ、この練習が大切なのです。みなさんもわかりますね。」
「はい!」
『コク。』
「桜木君がセンタープレーヤーとして開花したことは、インターハイで実証済みです。
次は、オールラウンドプレーヤーの素質を開花させましょう。」
「フン!わかったぜ!!チーム力で勝つ。イコール!!
天才オールラウンドプレーヤー桜木の誕生だな!!
その作戦にのってやるぜ!!」
(さすが安西先生・・・。桜木を思うままに動かしている・・・。)
-----------------------------------------------------------------------
「今の桜木君は、森重君を意識しすぎて、一人で負かさそうとしている。
しかし、ゴール下では彼のほうが上です。コート上での存在感は勝っているのに残念です。」
「・・・・・・。わかったぜ、オヤジ、じじい。
俺がデブ坊主を引き付けて、パスアウトすればデブ坊主に勝ったことになるんだな。
天才オールラウンドプレーヤーの誕生になるんだな。」
「その通りだ。」
「だが、これだけはいっておく!俺は、ゴール下でもデブ坊主には決して負けん!!」
「任せましたよ。田岡先生、最終確認を。」
「はい。いいか、速いパス回し、速い切り替え、神奈川が誇るチームワークを存分にみせてこい!
結果は自ずと現れよう!!」
「おう!!」
「はい!!!」
『ピィーーーー!!』
タイムアウトがあけた。
神奈川のオフェンス。
『パシ!』
エンドラインの清田から柳へ。
(速いパス回し。)
『パシ!』
『パシ!!』
『パシ!!』
『パシ!』
ドリブルを使わず、パスだけでボールをまわす。
その速さは、何年も同じチームでプレーしているかのようであった。
『キュ!』
「またブロックする。」
「やれるもんならな。」
『パシ!!』
愛知のゾーンを崩すかのようなパスワーク。
ボールは、インサイドの桜木へ。
縮まるゾーン。
『キュ!!』
強引なターン。
「くらえ!愛知!!!」
「バカ!!なにをやっとる!桜木!!!パスだ!!!」
「心配いりませんよ。」
「ん。」
「と見せかけて、猿回しパス。」
「おっ。」
桜木は、森重らを引きつけ、パスアウト。
そこには。
「猿回しパスはないよね。」
山岡。
ミドルからのジャンプシュート。
『シュパ!!』
鮮やかにネットを揺らした。
「ナイスパス!!」
「ようやく、作戦通りに動いたか。」
「桜木君!!ナイスパスだよ!」
「ハルコさん!!あとは天才オールラウンドプレーヤーに任せてください!!
スーパーアシスト決めていきます!!」
個で勝る森重に、チームで立ち向かうことを決めた桜木。
桜木の大きな精神的な成長が見られたが、果たして巧くいくのか。
愛知 12
神奈川 16
続く。
神奈川 14
試合開始5分が経過。
神奈川は、早くも最初のタイムアウトをとった。
愛知ベンチ。
「ヒロシ、ちーと手を抜いたな。」
「様子を見ただけ。」
「最初のダンクで、また膝をやっちまったかと思って心配したぞ。」
「もう飽きた。早く終わらせて、うまいもんを食べに行こう。」
「あぁ、そうしよう。」にや。
監督冨名腰が続ける。
「天野、頼んだぜ。1点差だろうが、2点差だろうが、勝てばいいんだからな。
巧く立ち回ってくれよ。」
「了解です。」
湘北ベンチ。
「・・・・・・・・・。」
しばしの沈黙。
「清田君、作戦の確認です。今日の作戦は?」
安西が静かに問いかけた。
「チーム力で勝つ。」
「山岡君。」
「チーム力で勝つでしたよね。」
「その通りです。柳君。」
「清田さんと同じです。」
「黒川君。」
「チーム力で勝つ。」
「桜木君。」
「デブ坊主に勝つ!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「昨年のインターハイの二の舞になりますよ。」
昨年のインターハイ準決勝、乱打戦の中、森重と共にファウルアウトした桜木。
森重に固執しすぎて、力と力でぶつかり合った結果であった。
「今年のインターハイを欠場し、リハビリに励み、筋力の強化を行った結果、
彼は、抜群の足腰の力強さと体格に似合わぬスピードを得た。
今の桜木君は、正面からぶつかっても彼には敵わない。」
「なっなんだと!オヤジ!!」
「桜木!安西先生の仰るとおりだ。」
「じじい!!」
「ですが、私は負けたとは思わない。」
と安西。
「!!!」
「なぜなら、チームの力に勝るものはないからです。」
「!!」
「桜木、練習を思い出せ。」
「ぬっ。」
-----------------------------------------------------------------------
<<回想>>
「何度いったらわかるんだ!!そこはパスアウトだ!!
なぜ試合で出来て、練習で出来んのだ!!」
「俺は逃げん!!相手がデカ坊主だろうと、丸男だろうと逃げん!!!」
(桜木のやつ、森重らを意識しすぎて、周りが見えなくっている・・・。)
「逃げではない!!これは、チームプレーであり、チームの作戦だ!!
そのためにこの神奈川選抜は多くのCを揃え、シューターを揃えた。わかっておるのか!!」
「得点は俺が奪う!!ゴール下を制して、試合を制すのだ!!!」
静かにそのやり取りを聞いていた安西が口を開く。
「桜木君、なぜ田岡先生がこのような練習をさせるかわかりますか。」
「天才の力が必要だからだろう。」
「その通り。あえて、難しいプレーを君にさせている。」
「さすが、オヤジはわかっておる!ならば、このじじいを説得せい!」
「なんだと!」
「得点は、桜木君じゃなくても奪えます。」
「なに!」
「しかし、今練習しているプレーは、桜木君しかできません。」
「ぬ・・・。」
「流川君をも超えるインサイドの力強さ、パスセンス。」
「・・・。」
「桜木君がインサイドで並居る一流プレーヤーを抑え、パスを出す。」
「・・・。」
「そうすると、観客の目にはどう映りますか。」
「逃げている。」
「いや違う。さすが、桜木。凄いパスセンスだ。あの森重君、河田君を抑えながら、パスが出せるとは。
リバウンドも獲れ、得点も獲れ、パスもできる。個人技もチームプレーもできる。
あの身長でこんなプレーが出来るのは、桜木花道しかいないと。」
「・・・。」
「チームプレーにも徹しられる桜木花道は最高のオールラウンドプレーヤーだ。
神奈川を支えているのは、桜木花道だ。」
「・・・。」
(オールラウンドプレーヤー・・・。)
『チラ。』
田岡を見る桜木。
(仕方ない。)
「私もそう思うぞ。」
『チラ。』
彦一を見る桜木。
(ここは、桜木さんをノせなきゃあかん!)
「わいもや。」
『チラ。』
晴子を見る桜木。
「オールラウンドプレーヤー桜木花道の誕生だね。」
「オールラウンドプレーヤー・・・。」きらーん。
「チーム力で勝つ。簡単なことではありません。仲間を思いやり、信じる心が必要です。
だからこそ、この練習が大切なのです。みなさんもわかりますね。」
「はい!」
『コク。』
「桜木君がセンタープレーヤーとして開花したことは、インターハイで実証済みです。
次は、オールラウンドプレーヤーの素質を開花させましょう。」
「フン!わかったぜ!!チーム力で勝つ。イコール!!
天才オールラウンドプレーヤー桜木の誕生だな!!
その作戦にのってやるぜ!!」
(さすが安西先生・・・。桜木を思うままに動かしている・・・。)
-----------------------------------------------------------------------
「今の桜木君は、森重君を意識しすぎて、一人で負かさそうとしている。
しかし、ゴール下では彼のほうが上です。コート上での存在感は勝っているのに残念です。」
「・・・・・・。わかったぜ、オヤジ、じじい。
俺がデブ坊主を引き付けて、パスアウトすればデブ坊主に勝ったことになるんだな。
天才オールラウンドプレーヤーの誕生になるんだな。」
「その通りだ。」
「だが、これだけはいっておく!俺は、ゴール下でもデブ坊主には決して負けん!!」
「任せましたよ。田岡先生、最終確認を。」
「はい。いいか、速いパス回し、速い切り替え、神奈川が誇るチームワークを存分にみせてこい!
結果は自ずと現れよう!!」
「おう!!」
「はい!!!」
『ピィーーーー!!』
タイムアウトがあけた。
神奈川のオフェンス。
『パシ!』
エンドラインの清田から柳へ。
(速いパス回し。)
『パシ!』
『パシ!!』
『パシ!!』
『パシ!』
ドリブルを使わず、パスだけでボールをまわす。
その速さは、何年も同じチームでプレーしているかのようであった。
『キュ!』
「またブロックする。」
「やれるもんならな。」
『パシ!!』
愛知のゾーンを崩すかのようなパスワーク。
ボールは、インサイドの桜木へ。
縮まるゾーン。
『キュ!!』
強引なターン。
「くらえ!愛知!!!」
「バカ!!なにをやっとる!桜木!!!パスだ!!!」
「心配いりませんよ。」
「ん。」
「と見せかけて、猿回しパス。」
「おっ。」
桜木は、森重らを引きつけ、パスアウト。
そこには。
「猿回しパスはないよね。」
山岡。
ミドルからのジャンプシュート。
『シュパ!!』
鮮やかにネットを揺らした。
「ナイスパス!!」
「ようやく、作戦通りに動いたか。」
「桜木君!!ナイスパスだよ!」
「ハルコさん!!あとは天才オールラウンドプレーヤーに任せてください!!
スーパーアシスト決めていきます!!」
個で勝る森重に、チームで立ち向かうことを決めた桜木。
桜木の大きな精神的な成長が見られたが、果たして巧くいくのか。
愛知 12
神奈川 16
続く。