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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#423 【ライバルに笑う】

2011-05-17 | #13 神奈川 国体編
愛知  83
神奈川 72




『ピィーーーー!!』


「バスケットカウントーー!!!」



審判が激しく2本の指を振り下ろす。



「!!!」


「!!」



「なにーーー!!!」



「白!!#10!ブロッキング!!」




「バッバスカンだーー!!!」

「桜木のファウル!!!」

「うわぁーーー!!!」

「審判厳しい!!!」




「どこに眼をつ」




「桜木君!!!」




勢い良く審判に詰めかかろうとする桜木。


晴子が叫ぶ。



『クル。』


「ハルコさん!!」




「手を挙げて!!」



「ハッハルコさん・・・。」


(男桜木。ハルコさんのために、ここはだまって・・・。)


「ガルルルル。」

審判を睨みながら、手を挙げる桜木。




「ナイスファウルだよ。でも、次は気をつけてね。」




「はいっ。」



「もう、お前には負ける気はしない。」


「なんだと!!!おのれ!!ハルコさんとの愛の交信タイムの邪魔を!!!」




「愛の交信タイム?」

と晴子のとなりの高頭。


「いっいえ・・・。」

(バカ!桜木君!)




「桜木、お前は森重だけに集中しな。」

と山岡。


「あいつを止められるのは、桜木しかいないからな。」

と天沼が続ける。


「青木をフリーにした俺の責任だ。すまない。」

謝る大泉。


「おい!赤毛猿!!退場だけはするなよ!神奈川の恥になるからな!!」




「あっあれ!?いつもと雰囲気が違うで。」

「ふむ。他のメンバーはまだしも、清田が桜木を励ましているように見える。」

「チームが一つになった証拠です。ほっほっほ。」


「チームが一つ・・・。」

「本当に・・・。」


「今の彼らは負けない。」


(でも、11点差・・・。簡単に返せる得点差じゃありませんぞ!安西先生!)




『シュパ!!』




「森重決めたぞ!!!」

「12点差!!!」

「やばいぞ!追いつけるのか!!」

「意外とフリースローが入る!!」




「当たり前だ。ヒロシには、欠かさずフリースローの練習をさせているんだ。
並みのGよりも入るぞ。」

笑う冨名腰。




愛知  84
神奈川 72




(12点差・・・。こういうとき、牧さんなら・・。神さんなら・・・。ふーーー。)


「落ち着け。落ち着け。焦るな。焦るな。」


眼を閉じて、ぶつぶつ口ずさむ清田。



「早く運ばないと!」

「ん!」


「清田さん、早く運んで下さいよ!!」

「ん!!」


「時間がねぇんだ!早くしろ!!」

「ん!!!」


「野猿!!置いてくぞ!」


(こっこいつら・・・。)



『ダムダム!!』



「いいか、てめーら!しっかり、俺についてこいや!!」 


「そうこなくっちゃ!」

「おう!」

「そうだろ!普通!!」




「おぉ!!清田君、凄い気合だ!!」

「でも、12点差。簡単に返せる得点差じゃないわ!」




ボールは、山岡へ。


山岡から天沼。


金田の隙をつき、ドライブを繰り出す。


天沼のキレのあるレイアップシュート。



『バチン!!』



「!!!」

「こいつ!!」



愛知の怪物こと森重が、容赦なく叩き落す。



「まだまだ!」


ルーズボールを拾い上げる山岡。



『キュ!』


「お前には何もさせない。」

対峙する天野。


「そんなに怖い顔しなさんなって。」



『ビィ!』



ボールは一度トップの清田の元へ返した。



「仕切りなおしだ。」


その言葉に、河本の腰が浮いた。



『ビュン!』



「!!!」

「!!」

(やべ!)



清田のペネトレイト。


河本を置き去る。


一直線に愛知ゴールを襲う。



(森重!きやがれ!!)



清田は森重の挙動に神経を集中。



だが。




「危ない!!」



『ブン!』



青木の手が、清田のドリブルを狙った。



「危ね!」


間一髪のところで交わす。



(チャンス!!)



『バン!』



叩きつけるように大泉へのバウンドパス。



『パシ!』



受け取った大泉がシュートを放った。



『ピク。』


『ダン!』



反応良く、ブロックに跳ぶ森重。



『チィ!』



「なに!!」

「あの距離から届きやがった!!」

「掠った!!」



わずかに指先が触れ、ボールの軌道が変化した。


ホップするシュート。



『バチン!!』


「ん。」


「!!!!」


「!!!」



『ドガァァ!!』



「おっ。」


振り返る森重の眼に飛び込む桜木の姿。



『ギシギシ・・・。』



「負ける気はしねぇだと。俺もてめーに負ける気はしねぇ。」



桜木が炸裂させたアリウープダンク。



「はっはっは。面白い。」



目の前に現れたライバルに嬉しさを覚え、森重は思わず大きな声で笑った。



 
愛知  84
神奈川 74







続く。

#422 【攻防激戦】

2011-05-13 | #13 神奈川 国体編
愛知  81
神奈川 72




『キュ!キュッキュ!』


『キュッ!』



「さぁディフェンスだ!!シュートすら打たすなよ!!」


「おう!!」

「おうよ!!」




「うぉぉーーー!!」

「おぉぉーーーー!!!」

「神奈川はオールコートマンツーだーーー!!」

「勝負に出たーー!!」




「残り時間と点差を考えれば当然ね。」

と弥生。




「このために、第3Qで体力回復を図ったんだ。決して走り負けるではないぞ!!」

と田岡。




「あとは選手を信じるのみ!!」

「いけーー!!神奈川!!」

高頭と晴子。




「韋駄天やろー、チェック!」

「ぬっ。」


「俺が#4をつけている意味わかったか?」

「あぁ、わかったぜ。なかなかいい選手だな。」

「おい、上目線でいうんじゃねぇ!」

「それは、俺たちに勝ったらいいな!」



『キュ!』


『キュッキュ!!』



エンドラインの金田が河本へパスを入れる。



『ダム!』


『キュッ!!』



「!!!」




「あっさり抜かれたーーー!!!」

「さすが速いぞ!!河本ーー!!」




「きっ清田君!!」

「違うわ!!誘っている!!」




河本の進行方向に天沼。 


「囲むぞ!!」


「ちぃ。」


『キュッ!!』


思わず急停止する河本。


そこへ、天沼と清田が囲みにかかる。




「捕まったーーー!!」

「苦しいぞ!!」




「てめーに簡単に抜かれるとでも思ったか。」

「ぬっ!」



『キュッ!』


『ダムダム!』



河本はボールをキープするも、今にも取られそうな苦しい状態。


天野は、山岡がぴったりマーク。


「河本!こっちだ!」


エンドライン際を走るフリーの金田。


「頼んだ!」


『シュ!!』


「!!!」

「!!」


『バシ!』



「バレバレだろ。」にやっ。


「!!」

「このやろー!」




「ナイスカット!お兄ちゃん!!」

「でかしたぞ!清田!!」




「スティール!!!」

「#4がノり始めたぞー!!!」




ボールは、天沼が拾い上げた。


「前!」


既に清田は駆け上がっている。



「しまった!!」


振り返る河本。


パスを放つ天沼。



「ん!」


死角から伸びてくる長い腕。



『バチン!!』


「!!!」




「うわぁぁーーー!!!」

「天野!!!」

「今度は、天野がやり返したーーー!!」




「こらぁ!!沼っち、油断するな!!!」


転がるボールは、河本の前へ。


「いくぞ!河本!」


「OK!」

(頼りになるぜ。天野!!)


清田が戻ってくる前に、素早くボールを運ぶ河本。




「神奈川が一人足りない!!」

「アウトナンバーだ!!」




『パシ!』


『パシ!』



神奈川は足を動かし、マークマンをスイッチする。


ボールは天野へ。


その横をフリーの青木が駆け上がる。



(デブ坊主か!アオキンか!)


桜木は一瞬の迷いが生じる。


そこへ。



『パシ!!』




「森重だーーー!!!」

「いけーーー!!」




天野は、森重へとパスを出す。



(しっしまった!簡単に入れさせてしまった!)



迷う桜木の動きを天野は見逃さなかった。



『キュ!!!』


『ダムッ!!』



(ぐっ。こうなりゃ、止めるしかねぇ!!)


「来やがれ!!」



『ダム!』


『キュッ!!』



「おりゃーーー!!!」


「ぬぉ!」



「!!!」


「!!!!」



『ザシュ!!!』




「きっ決まったーーー!!!」

「再び2桁ーーー!!!!」




(やろー。)



森重が確実に桜木を超えていく。




愛知  83
神奈川 72







続く。

#421 【海南清田】

2011-05-12 | #13 神奈川 国体編
愛知  81
神奈川 70




『ピィーーーー!!』



「清田君、山岡君、天沼君、桜木君、大泉君。準備はいいですか。」


「よっしゃーーー!」

「ようやく出番。」

「遅すぎだぜ!オヤジ!!」

「さぁ、格好良く逆転といきまっしょ。」

「おう!!」


「2年坊よ!チーム桜木の強さを見ていやがれ!ハッハッハ!!」


(だから、チーム桜木って何・・・。)


「おい、赤毛猿!ここで負けたら、流川に笑われるぞ!気合入れろよ!」

「フン!この天才との勝負に逃げた負けキツネなど、もう眼中にはねぇ。
あるのは、目の前のデブ坊主をぶっ倒し、全国制覇することだけだ!!
野猿こそ、気合入れやがれ!!」

「誰にいってやがる、俺はNo.1ガードだぜ!」



11点のビハインドにもかかわらず、彼らに気落ちしているところは見られない。


むしろ、リードされているがゆえに、集中力は最高の状態まで高まっていた。


最後の10分が、今始まろうとしている。


コートに足を踏み入れる10名の選手を観客が、ベンチが見守る。




「いけーーーー!!神奈川!!」

「愛知、そのまま突っ走れーーー!!」

「神奈川、またしても総入れ替えだーーー!!」




-----------------------------------------------

PG…#9 柳 春風 172cm/2年/湘北
SG…#13 緑川 航 185cm/2年/湘北
SF…#11 上杉 空斗 186cm/2年/陵南
PF…#14 白田 豊 195cm/2年/湘北
 C…#8 黒川 大蔵 193cm/2年/陵南


PG…#4 清田 信長 182cm/3年/海南大附属
SG…#5 山岡 拓真 185cm/3年/陵南
SF…#7 天沼 健一 182cm/3年/翔陽
PF…#10 桜木 花道 196cm/3年/湘北
 C…#6 大泉 大丸 191cm/3年/海南大附属

-----------------------------------------------



「やはり桜木さんだーーー!!」

「残り10分、体力は十分回復しているはずよ!」

「11点差なら、いけるぞ!!」

「さて、この選択。吉と出るか、凶と出るか。」




愛知も大橋を下げて、河本をコートに戻した。



-----------------------------------------------

SG…#11 大橋 卓巳 179cm/3年/愛和学院

SG…#5 河本純一郎 182cm/2年/名朋工業

-----------------------------------------------



「ころころ選手が代えようが同じことだろ。神奈川はうちには勝てねぇって。」

と金田。

「だが、体力は戻っているはず。#6、#7も見たことないが、侮れぬかもしれない。
油断するな。寛も頼むぞ!」

天野が締める。


『コク。』

(赤いの出てきた。)にっ。




神奈川ボールで始まる。




「桜木君!頑張って!!」




「ハルコさん!!任せといて下さい!!必ずや、この桜木が勝利に導きます!!」



「天野。マンツー。俺が赤いのにつく。」

「ん!」

(今日はやけに物いうな。)にこ。


「作戦変更だ。マンツーマンでいくぞ。」


「えっ。」

「おいおい!」


「監督には俺から説明する。それに、寛がいっているんだ。監督だって納得するさ。」


「しょうがねぇーな。」

「了解。」




神奈川のオフェンス。


『キュッ!』


『キュキュッキュ!』




「愛知もマンツーマンだーーー!!」

「足動くのか!!」




「あいつら・・・。まぁ勝てば何も文句はいわねぇがな。」

と笑う冨名腰。




清田には河本、山岡に天野、天沼に金田、大泉に青木、桜木には森重がついた。



「ようやく、タイマン勝負ができるな。デブ坊主!No.1センターの力を見せてやるぜ!」

「がっかりさせるな、赤坊主。」



「偉大なお兄様ってか。」

「うるせー!」


「IHにも出れないやつが、なんで神奈川の#4をつけてる。」


『ダムダム!』


「うるせーよ。それを今証明してやる!」


「弟と一緒で口だけは達者だな。」


(こいつ!)


トラッシュトークの清田と河本。



「久しぶりだな。山岡。」

「あんたもPGが板についているねぇ。」

ライバル山岡と天野。



「お前は誰だ?さては神奈川で一番へたな選手だろ!」

と金田。

「そうかもな。だから、少し手加減してくれないか。」

と天沼。

「わかった。そうとわかれば、お前をカモらせてもらう。」

「やれたらな。」にこ。



清田からその天沼にボールが渡る。



『キュッ!!!』


「!!!」

(速え!)




「あの#7、はぇーー!!!!」

「何者だーーーー!!!」




インサイドをドライブで切り裂く天沼。


『キュ!!』


大泉は、青木を抑え、しっかりとコースを空けた。


(サンキュ!)



『キュ!』


「!!!」



清田もインサイドにきれる。



『キュッ!!』



カバーに入る森重。


天沼はいち早く察知し、桜木へパスを出す。



「沼っち!ナーーイスパス!」



だが、森重は読んでいた。



『キュ!!』



一瞬にして、桜木の前を奪い、シュートを防ぐ。



「ほっ!」


「ん!」



桜木が絶妙に繰り出すポンプフェイクに、一瞬森重の腰が浮いた。


その瞬間をつき、森重の脇から、優しいアンダーパスを送った。




『ぐっ。』

(いい感じだ。)

拳を握る安西。




そこには、トップからきれてきた清田。



「赤毛猿にしては上等だーー!!」



『パス!』



『ダン!!』



「なっなにーーー!!!」


追走してきた河本が叫んだ。



「くらえ!愛知ーーー!!!!」


宙を舞う清田。




「いけーーー!!お兄ちゃん!!」

「ぶちかませ!清田!!」




「!!!!」


「!!」


「!!!」



『ガッシャン!!!!』




「うわぁーーーー!!!」

「おぉぉぉーー!!」

「あのPG、ダンクかましやがったーー!!」

「あの身長ですげーーーー!!」

「山王の柳葉並にすげーーー!!!」




清田のスピード感溢れるダンクシュート。



「どうだ!韋駄天やろー!!」

「こっこいつ!!」




「やった!さすが、清田君だ!!」

「PGになっても、ジャンプ力は健在ね。」




「清田信長・・・。そうか、こいつ、見覚えがあると思ったら、2年前のIHの決勝で対戦した海南の選手か。
このダンクは見覚えがあるぜ。」

と天野。


「今更、おせーよ。当時はNo.1ルーキーと呼ばれ、今はNo.1ガード。
その名は、清田信長、俺様のことだ!かっかっか!」


「監督も教えてくれればいいのに。
ともあれ、今まで思い出せなかったってことは、それだけの選手ってことだ。」

と河本。


「なんだと!」


「じぃとひょろ男がいたからな、こいつを忘れても仕方ないぞ。韋駄天。」


「ぬっ、赤毛猿!」


「じぃ?ひょろ男?」

「牧と神のことだろう。諸星先輩が、よくいってた。」

と青木。


「野猿は実力もねぇのに、口だけは達者だからな。ハッハッハ!」

「てめーにいわれたくねぇ!!」


(こっこいつら、相当仲が悪いぞ。)



ここまで、見せ場のなかった清田が、ダンクを披露。


一瞬にして、愛知、観客の度肝を抜いた。




愛知  81
神奈川 72







続く。

#420 【強者愛知】

2011-05-09 | #13 神奈川 国体編
『ピィーーーー!!』


「赤!メンバーチェンジ!!」




「ディフェンスのスペシャリスト大橋さんや!!」

「老将冨名腰監督、ついに動いてきましたね。」



-----------------------------------------------

SG…#5 河本純一郎 182cm/3年/名朋工業

SG…#11 大橋 卓巳 179cm/3年/愛和学院

-----------------------------------------------



冨名腰の指示は、2-1-2からマンツーマンへ。


注目の秀吉には、投入されたばかりの大橋がついた。



『キュッキュ!!』


激しいディナイディフェンス。



(なんだ、こいつ!)


3Pライン内では、一切ボールを持たせない大橋のディフェンス。


そして、3P外では、秀吉との距離を開け、ドリブル突破に備えた。



(こいつの持ち味は、トリッキーなドリブルとパス。
つまり、それだけをさせなければいいことだ。)


『キュ!』


(振り切れない。)



秀吉は大橋を振り切ろうと、激しく動くが振り切れず、みるみる体力を削られた。


現チームにおいて、PGの役割をも担う秀吉にプレーをさせない。


かろうじて、海斗がゲームをコントロールしているが、外角を狙うことができなくなり、
更なる悪循環を招いていた。




「さすがにPGがいないと厳しい。海斗もシュートチャンスが作れないでいる。」

(清田を投入するか。)

悩む田岡の横で、安西が交代を告げる。


「柳君、緑川君。いきますよ。」

「了解。」

「はい。」



-----------------------------------------------

SG…#15 清田 秀吉 175cm/1年/海南大附属

PG…#9 柳 春風 172cm/2年/湘北

-----------------------------------------------

-----------------------------------------------

SF…#12 上杉 海斗 186cm/2年/海南大附属

SG…#13 緑川 航 185cm/2年/湘北

-----------------------------------------------



「ハァハァハァ。なんだ、あいつ。
俺のせっかくの華々しいデビュー戦を!ハァハァハァ。」

ベンチに座る秀吉が荒々しい呼吸で怒鳴っていた。


「それが小猿の実力だ。ハッハッハ!」

「うるせー。」



清田 秀吉


出場時間 96秒

アシスト2を記録。

ほろ苦い全国デビュー戦となった。



安西は、大橋に抑えられるや否や秀吉をあっさり交代させた。

同時に、清田兄弟、双方がベンチに退いたのを機に、海南の上杉海斗も交代させた。




「思ったより、冨名腰監督の対応がはやかったわね。そして、安西先生も。」

「ベンチ同士も熱い!」




柳、緑川を投入すると、すぐに白田を含めた湘北2年生トリオが鮮やかなパスワークで得点を奪った。

神奈川の主導権を海南アウトサイドから湘北トリオに移す。

目まぐるしくオフェンスのリズムを変える神奈川陣営。

突破口を探る。

来たる勝負のときに備えて。



『シュパ!』


「よぉし!悪くない!」


緑川、本日初得点をあげる。



だが。



『シュパ!』



緑川はあっけなく天野にカットイン許す。


(はっ速い。)




「こらーー!!!グリ!!なにをやっておるか!」




(そっそんなこといったって。)



続いて、緑川がSF大橋にスクリーンでブロック。


黒川が森重を抑え込み、空斗が切れ味鋭いドライブを決めた。




「ナイッシュ!空斗!!」

「緑川君もナイススクリーンや!!」




(なんだかんだいっても、湘北のスタメンを務める緑川。
自分の活かし方、味方の活かし方をよく心得ておる。)

と田岡。


「大蔵もいいぞ!巧く森重を抑えているぞ!!」




だが。



「!!!」



『ピィーーーー!!』



「!!!」



『バス!!』


「白!#8!プッシング!!!」




「うわぁぁぁーーー!!」

「森重が力技できたーーーーー!!!」

「さすがに止められない!!!」

「しかも、バスカンだーーー!!!」




黒川は、第3Q、3つめのファウルを犯した。


第1Qに犯したファウルとあわせると4つ。

もう後がない。

しかも、森重のバスカンプレーを献上してしまった。


「赤いの出したら。」

「ぬっ。」




「こら!!黒坊主!!ファウルするなら、シュートを打たせるな!!」




(そのつもりだったんですけど、どんどん動きがよくなっている・・・。
俺の動きに対応してきているのか。)



『シュパ!』


フリースローも決め、点差は更に広がっていく。




「田岡先生。」


「ここは、黒川を信じてやらせます。よろしいでしょうか。」


「わかりました。」


(ここは耐えどころだぞ!黒川!!)




神奈川のオフェンス。


白田、十八番のフックシュート。



『シュ!』



『チッ!』



「!!!」


「なに!」


(どこから!)



森重が横からブロック。


(叩き落せなかった。もう少し早めに動こう。)



ボールの軌道が変わる。



(さっきは届いていなかったのに・・・。
力をセーブしていたとでもいうのか。いや、対応してきたというのか。)



ボールは、青木が奪った。


そして、金田を経由し、天野へ。


柳と緑川が懸命の戻りを見せた。




「よく戻った!!!」

「速攻を防いだ!!!」




そこに、大橋と空斗が加わり、3on3。



『ダムッ!!』


トップの天野、左右を確認する。



「・・・。」にこ。

(打ってくれといわんばかりだな。)



『シュ!!』



「!!!」

「!!」

「なに!!」

「打たれた!!」



コート上全員の意表をついた天野の3P。



『シュパ!!』




「きっ決まったーーーー!!!」

「やるぜ!天野!!」

「アーマーノ!アーマーノ!」




「頼りになるやつだわい。」

にんまり微笑む冨名腰。




『バチーーン!!!』


そして、第3Q終了間際、天野が緑川のシュートを豪快にブロック。


速攻崩れから、強引に青木がねじ込み、愛知は2点を追加した。




「うわぁぁーーーー!!」

「おぉぉーーーー!!」

「ついにーーーーー!!」

「11点差ーー!!!」

「愛知が2桁のリードを奪ったぞーーー!!」




『ピィーーーーー!!』


怒涛の第3Qが終了した。




「神奈川はよく我慢したわね。」

「確かに清田君たちを戻してもいい状況でした。
秀吉君はすぐに引っ込めたのに。」

「最終Qに全てを注ぐつもりね。ここからは激しくなるわよ!」




愛知  81
神奈川 70







続く。

#419 【秀吉の弱点】

2011-05-07 | #13 神奈川 国体編
愛知  67
神奈川 62




秀吉のトリッキーなパスが、森重の裏をかき、白田のシュートを演出した。


「いいぞ!秀吉!」

「いえーーい!」


親指を立てて、海斗に応える秀吉。



「ちっ、あいつ、動きが読めねぇ。」

「あのドリブルのハンドリングは、ストバスあがりか。」

「やりづらいな。ああいうタイプは。」



愛知のオフェンス。



『ダムッ!』


『ドン!!』


(ぐっ!)


森重はパワードリブルで、黒川を押し込む。



『キュッ!!』



白田のカバーリング。


2人がかりで森重を捕らえた。




「ナイスディフェンスだ!!!」

「ナイスカバーー!!」




森重は、ここで冷静にパスアウトをする。


「!!」


「!!!」



『パシ!』


『パシ!!』


『パシ!』



素早くボールが周り、あっという間に逆サイドの青木へ。



『シュパ!』



あっさりと追加点を奪う。




愛知  69
神奈川 62




「いいぞ!いいぞ!アオキ!アオキ!!」




2校から選出された愛知県代表もまた、抜群のパスワークを見せていた。




「森重君もいい判断ですね。」

桜木の横に座る安西が口を開く。


「フン!ドーってことねぇ!」


「1on1なら攻める。アウトナンバーなら、冷静にパスを捌く。バスケを良く理解しています。」

「・・・。」

「ですが、あの程度なら桜木君にも出来ている。」


「トーゼン!!」


「この試合、桜木君にはもうワンランク上のステージを目指してほしい。」

「ワンランク上のステージだと?」


「頼みましたよ。ほっほっほ。」


「ハッハッハ!まっかせなさい!!」

(もうワンランク上って、なんだ・・・。)




『ダダッダムダッダム!』


秀吉独特のリズムを刻むドリブル。



『ダッダダダム!』


低いドリブル。



(こいつ、遊んでいるのか。)

苛立ちを隠せない河本。



『サッ。』


「!!!」


秀吉の出した腕の方向に眼をやる河本。



「フェイクだ!!」



「!!」



『ダム!!』


逆から秀吉が河本を抜く。



『キュッ!!』


(バックビハインドか!)



天野が冷静に河本をフォローする。



(ちっ。やるな、天野さん。だが、これはどうだ!!)

と秀吉。



『ダム!』



「バックビハインドに見せかけたフェイク!!」

「持ってないか!!」

「ダブドリ!!」



審判は笛を吹かない。



『ダムッ!!』


「なっ!」


天野も抜いた。




「すげーーぞ!あの#15!!!」

「ドリブルのテクニックがすげーー!!」




「昔から、ドリブルだけはうまかったからな。」

と清田。

「シュートは、全く入らないのが最大の弱点だが。」

と苦笑う大泉。




「秀吉君のドリブルキープ力は、神奈川においてもトップレベル!」

「でも、シュートは最低レベルなのよね。」

(使い勝手が難しい選手よね。)




壁のように立ちはだかる森重。


その後ろ、0°エンドラインのぎりぎりを空斗がきれる。



(もらい!)にかっ。



『バン!』



「おっ。」


「なに!!」



森重の股を抜くバウンドパスが、空斗に渡った。



『スト。』



空斗のバックシュートが決まる。




「もっ森重の股を通したーーー!!」

「なっなんてやつだ!!!」

「あいつ、結構やるぞ!!」




「ナイスパス。」にこり。

「空斗さんもいいとこ、きれますね。」にかっ。




愛知  69
神奈川 64




「高頭先生!秀吉君が凄いですよ!!愛知を翻弄しています!!」

はしゃぐ晴子。

「ふむ。巧く自分のリズムを作り、相手のリズムを崩している。
まずは成功といえる、だがそう長く持つか。」

と高頭。

(なにせ、レイアップシュート以外は、全く入らん素人並だからな。)




「安西先生!!秀吉の起用バッチリですぞ!愛知は対応できておりません!」

と田岡。


「今はな。」

(いつかボロは出る。)

と清田は心配そうに見ていた。




「あいつは少し目障りだな。リズムがうちとは合わん。大橋、準備しとけや。」

と冨名腰監督。

「わかりました。」




『バス!』


金田のシュートが決まり、再び神奈川のオフェンス。



『ダッダム!!』




「抜いた抜いた!また抜いたぞ!!!」

「いけーーー!!#15!!」




河本と金田を抜いた秀吉。


森重は、インサイドを警戒して動かない。


ジャンプシュートの打てる間合い。



「フリーー!!」

海斗が声をかける。




「打てーー!!」

ベンチから清田も声を掛けた。




(・・・。)


『ビィ!』


秀吉は、海斗にパスを送った。




「フリーだったぞ!!」

「なんで打たないんだーーー!!!」

「チャンスだったぞ!!」

「どうした#15!!」




(おっ俺だって入るなら、打つさ!)

「海斗さん!打って!!」



『シュ!』



『バス!!』



海斗は、難しいジャンプシュートをねじ込んだ。



「さすが!」

「さすがじゃない!打てるときは打たないと!!」

「だって、入らないんだもん。」

「だから、シュート練習サボるなっていつもいっているんだ。」




「あぁー、秀吉の悪いくせがでちまった。」

と清田。




「大橋、わかったか。今の#15の動き。」

「ええ。ジャンプシュートが苦手かもしれませんね。」

「邪魔者は厄介払いといこうか。」




愛知  71
神奈川 66







続く。

#418 【秘密兵器】

2011-02-24 | #13 神奈川 国体編
「オッオヤジ!まずいぞ!交代だ!!!」

と焦る桜木。

「確かにやべーな。」

と清田。

「得点が止まってしまったね。」

と山岡。




第3Qが開始され、半分が経過。


愛知  63
神奈川 58




オフェンスにおいて、素晴らしいパスワークを見せるが、なかなか得点まで結びつけることが出来ない神奈川。


神奈川のインサイド陣は、森重、青木のインサイド陣に阻まれ、
リバウンドも思うように獲れないでいた。



『バチン!』



「ナイスリバウンドだ!青木!」

「いいぞ!!」



常盤中出身の4人に白田を加えた2年生チームの神奈川。


個々のレベルも高く、3年生と遜色はない。


むしろ、チームワークにおいては、3年生を上回っている。


だが、フィニッシュを決めることができない。


愛知の経験が、神奈川の若さを超える。




(どうするか。ここは桜木を投入し、森重を止めるか、
天沼を投入し、オフェンスにアクセントを加えるか・・・。どうする田岡茂一!!)



「秀吉君。準備を。」



「!!!」


「!!!!」


「ぼっ僕ですか。」


「はい。アップをお願いします。」

安西であった。



「オヤジ!試合を諦めたのか!!」


「んだとーー!赤毛猿!!」


「確かに、この状況。秀吉では荷が重いのでは。」

「おっお兄ちゃんまで。」


「安西先生には考えがあるのだ!」


「では、監督は安西先生のその考えを理解しているんですか。」

と山岡。


『ギクッ。』


(・・・。正直、安西先生の考えは、私には全く理解できん・・・。
なぜ、ここで秀吉を・・・。)



「して、秀吉への作戦は?」


「あっ、話をすり替えた!」


「うるさい!」


「自由にやってください。」


「そっそうだ!秀吉は、自由にやればいいのだ!!」

(じっ自由とは・・・。そっそうか!わかったぞ!安西先生の意図が!)


「秀吉のトリッキーなプレーで、愛知を翻弄する!そういうことですね、安西先生!」


「ほっほっほ。」

「はっはっは!」



『ビィーーー!!』 



「さぁ、行って来い!」

「おう!!」



「納得できんぞ!オヤジ!」


『タプタプタプ・・・。』


「桜木!やめんか!」



-----------------------------------------------

PG…#9 柳 春風 172cm/2年/湘北

PG…#15 清田 秀吉 175cm/1年/海南大附属

-----------------------------------------------



柳に代わり、秀吉を投入した神奈川。




「おぉーー!!1年生で唯一招集された秀吉君だ!」

「問題児がまた1人、増えたわね。」




「ん!!」

「また小さいのが出てきたぞ!!」

「お前で平気なのか!」


「俺は、秀吉だ!偉大な兄、清田信長の実弟だ!」


「偉大な兄!?」

「清田信長!?」

「あの#4か!?」

「はっはっは!笑わせるな!」




「あっちゃーー。」

少し残念な素振りを見せる清田。


「愚弟を持つと大変だな。ハッハッハ!」

嬉しそうな桜木。




「てめーら、全員痛い目見せてやるからな!!」


秀吉がコートに入ったときには、更に点差は離されていた。




愛知  67
神奈川 60




(ここで春風を下げて大丈夫なのか。チームワークに問題は。)

と心配そうな白田。


「海斗さん、セーフティーをお願いします。」

「ああ、いいパフォーマンス期待しているよ。」


「任せといてください!!」

(よっしゃーー!清田秀吉の全国デビュー!!張り切っていくぜ!)



『ダムダム!』


ドリブルをつく秀吉。


対峙するのは河本。



「3番手PGか。」

「それはどうかな。韋駄天ヤロー!」

「口だけは達者のようだな。」

「うるせー!!」



『キュッキュ!!』


『キュ!』



『ダムッ!!』



「!!!」


「!!!」



大振りなネックフェイク。


突っ込んだと思ったら、レッグスルーで切り返す。


バックビハインドと見せかけては、バッククロスオーバー。



(こっこいつ!)



そして。



『ダム!』



一際低いドリブル。


河本を抜いた。



「よし!!」




「いけーー!!秀吉!!」

「ナイスドリブル!!」




だが。



詰めてきたのは、ゾーンの真ん中で存在感を見せる森重。


その瞬間、白田が森重の後ろでポジションを取った。



(もらった。)にかっ。



『シュ!』



ボールに横軸の回転を加え、森重から逃げるようなバウンドパスを放った秀吉。



「おっ。」


森重は手を伸ばすが、届かない。



『パン!!』


ボールは、コートに接触すると、白田の下へと軌道を変えた。




「なっなんてパスしやがる!!!」

「うめーぞ!あいつ!!」




『パシ!』



『シュパ!!』



秀吉のスピンパスで、森重を交わし、裏を取った白田がゴールを決めた。



「ナイスパス!!」

「余裕だぜ!白田さんもナイスポジション獲り!!そして!!」



一呼吸おいて。



「見たか!赤毛猿!!思い知ったか!愛知!!かっかっか!」




「むっ。小猿め!いい気になりおって!」




幸先良く、神奈川の秘密兵器!?のアシストから2点を返した。

流れは簡単には渡さない。




愛知  67
神奈川 62







続く。

#417 【森重を止めろ】

2011-02-21 | #13 神奈川 国体編
愛知  55
神奈川 56




「逆転!!!」

「すげーーパスワークだ!!!」

「確実に決めた上杉もすげーーぞ!!」




「ナイシュ!!」

「いいぞ!!」




ベンチにいる先輩たちも声援を送る。




「確実なパスワーク。完成されているな。」

にんまりと笑う田岡。


「さすが、安西先生!!起用バッチリや!!」


『ギロ!』

睨む田岡。


『ギク!』

(田岡監督の前で失言や。)


「ここからですよ。」

と安西がいった。




再び、愛知のオフェンス。


「さっきは油断したが、もうそうはいかない。」


「・・・。」

(来る!)



『キュッ!!』


『ダムダム!!』



天野は、空斗と競り合いながら、堅実なパスを出す。



『ビィ!』



ボールは、河本、青木、再び河本へ。


対峙する柳。



『キュ!!』


『キュッキュ!』


『パン!』



ボールを中に放り込んだ。


森重が受ける。




「キターーーー!!」

「また、森重だーーーー!!!!」

「抑えられるか!!!!」




森重を後方より抑える黒川。


(ぐっ、重い。だけど・・・。)


台形内への進入を許さない。



『クル!』


スピンムーブからワンドリを繰り出した。



『ドン!』


わずかに、黒川は跳ばされる。



だが、同時に。



手を伸ばす。



『パシ!』



「!!!」


森重の手からボールがこぼれた。




「スティーーール!!」

「やりやがったーー!!!」




『ピィーーーー!!』


「#8!ハッキング!!!」




「ファウルかよ!!」

「おしーーー!!」

「いい狙いだぞ!!黒いのーー!!」




黒川の手は、わずかに森重の手に当たっていた。



「惜しかったな。」

「ナイスカットだ。」

「ドンマイドンマイ。」

声を掛ける上杉ら。


「狙い通りだったんだが。」

悔しそうな表情を見せる黒川。


(シュートブロックは不可能だが、森重さんのドリブルは十分に狙える。あとは、タイミングだけ。)



「・・・。」


黒川に叩かれた手を無言で見つめる森重。




再び、愛知のオフェンス。


金田にボールが渡る。


そして、ローポストの森重の下へ。


執拗に森重にボールを集める愛知のオフェンス。


黒川がどっしりと構え、森重のターンを防ぐ。



(ぐぐっ。)


逆サイドからきれてくる青木。



『シュ。』


森重は、パスをした。




「森重が攻められない!!」

「ナイスディフェンスだーー!!」

「黒川が守った!!!」




『キュッ!』


『バス!!』



白田を交わし、青木はシュートを決めた。




愛知  57
神奈川 56




「すまない。せっかく森重さんを守ったのに。」

「いや、謝るのはこっちのほうだ。いつでも俺のカバーにいけるよう気を遣わせてすまない。」

「気にするな、お互い様だ。」




「安西先生の仰るとおり、黒川が森重のリズムを崩し始めておりますぞ!」

「桜木さんは出来へんかったのに、大蔵!凄いことやで!!」

「なぬ!彦一!!」

「いっいや・・・。」


「小技の出来るパワーセンター。
今までの神奈川にはいないタイプのセンターなんだよね、黒川ちゃんは。」

と山岡。




神奈川のオフェンス。


(簡単に打たすかよ!)


「ん!!」



『ガン!』



(さすが天野さん!)



空斗のシュートは、天野のプレッシャーで軌道を変えた。



『バン!』


リバウンドをむしり獲る森重。


柳は、河本の速攻を封じる。



そして、愛知のセットオフェンスが再び始まった。



『キュッ!!』


大きな体格を活かし、黒川を抑える森重。



「へい。」


「!!!」

(自分から、パスをほしがるなんて。)にこり。



『フワッ。』



天野からのパスが、森重の手に吸い寄せられた。



(今度こそ!奪ってみせる!!)



『パシ!』


『クル!!』



間髪入れず、ピボッドターン。


だが、今度はボールを高い位置でキープ。


ドリブルをせず、黒川のスティールを防ぐ。



そして。



力強いゴール下のシュート。



『バス!!』




「うわぁぁーーー!!」

「やっぱり森重だーーーーー!!!」

「決めてきたぞーー!!!」




「センターの基本プレーね。自分の弱点を隠した。」

「森重君、対応速いなぁ。」




「しっかり対応してきました・・・。」

と晴子。


「やはり、そう簡単に抑えられるセンターじゃないな。」

『タラ。』

高頭の額から、汗が流れ落ちた。




森重が、じわじわとその力を見せ付け始める。




愛知  59
神奈川 56







続く。

#416 【チーム2年】

2011-02-19 | #13 神奈川 国体編
愛知  55
神奈川 53




ハーフタイムを迎えている。


2点差、神奈川は逆転を許してしまった。


森重封じに投じたゾーンディフェンスも森重の成長の前に、見事粉砕された。



「おい!じじい!チームで力を合わせれば、勝てるんだよな?
デブ坊主にやらているじゃねぇか!どういうことだ!」


「・・・。」

(まさか、ここまで成長しているとは。)

言葉の出ない田岡。


「おい!オヤジ!黙ってねぇで、何とかしろ!!」


「勝てますよ。神奈川には、まだたくさんの信じられる仲間たちがいます。」


「!!」

「!!!」


「・・・。」



「さぁ、後半です。柳君、海斗君、空斗君、白田君、黒川君。いきますよ。」



「!!!」


「!!!!」


「!!」



「2年坊だけで、あのデブ坊主に立ち向かえっていうのか!」


「現時点で一番完成されたチームワークを持っている5人です。」



「確かに・・・。」

「いわれてみれば。」

「やりやすいメンバーだ。」

「まさかこのメンバーで試合に挑めるとは・・・。」

「不安よりも嬉しさが。」



「桜木君たち3年生は来るべきときに備えて、体力を回復する。よろしいですね。」


「はい!」

「OK!」

「くそう!2年坊ども!ミスしたら、すぐに交代だからな!!」


「まぁ、見ていて下さい!俺たちのチームワークを見せてあげますよ!」にこり。



「よろしいですか、田岡先生。」

「もっもちろんです。して、ディフェンスは。」

「マンツーマンです。」


「!!!」

「!!!」


「森重さんに・・・。」


「黒川君。君なら大丈夫。森重君のペースを崩せるはずです。」

「はっはい。やってみます。」


「天野君には空斗君、お願いします。」

「はい。待ちわびていましたよ。」


「よぉし!神奈川の底力を見せてやれ!!いってこい!!」

「はい!」

「おう!!」




『ピィーーー!!』




「神奈川が大幅なメンバーチェンジだーーー!!!」

「ぜっ全員2年じゃねぇーか!!」

「森重相手に勝てるのかーーー!!!」

「おっ驚いた作戦だな!」




-----------------------------------------------

PG…#4 清田 信長 182cm/3年/海南大附属
SF…#5 山岡 拓真 185cm/3年/陵南
PF…#10 桜木 花道 196cm/3年/湘北



PG…#9 柳 春風 172cm/2年/湘北
SF…#11 上杉 空斗 186cm/2年/陵南
 C…#8 黒川 大蔵 193cm/2年/陵南

-----------------------------------------------



「ん!」


「試合を捨てる気か。」

と河本。


「双子の見分けがつくかな。」

と金田。


(赤坊主がいない。)


「まぁいいさ。このまま、突っ走るぞ!」

「おう!」




第3Q開始。


愛知ボール。



「お前は、陵南の方か。」

「えぇ、お久しぶりです。」


昨年のIHで顔を合わせていた天野と空斗。


『ダムダム・・・。』


「よく似すぎだな。お前たち。」



『キュッ!!』


天野を徹底マークする空斗。




「神奈川はマンツだーーーー!!」

「森重を抑えられるのか!!!」




『ダムダム!!』



「あのときは、控えSFでしたよね。天野さん。」

「どうやら、俺はこっちの方がむいているらしい。」

「確かに。Fじゃ、ベンチウォーマー止まりですからね。」

「いうようになったな。てめー。」



『ダムダム!!』



天野と空斗の1on1。



『キュ!!』


『ダム!』


天野が空斗を抜いた。



だが。



『チッ!』



「!!」


天野の手からボールが弾けた。



「上杉!!」

「無防備っすよ。」にこ。




「スティーーーール!!!」

「巧い!!」




空斗が後ろから、ドリブルをスティールした。


ボールを拾い上げたのは柳。



「GO!」



『ダムダム!!』


柳は駆け上がった。



「いかせるか!」

追走する河本。


(ついてこれますか。)にこ。


(なっ何にやついていやがる!)



だが。



柳と河本の差は、みるみる広がっていく。




「速攻だーーー!!!」

「速ぇーーー!!!」

「2on1!!!」




ドリブルをしている柳。


駆け上がる空斗。


(常盤中のチームワークを見せてやる。)



戻る天野。


3Pラインを過ぎたところ。



『バン!』


柳のバウンドパス。



『キュ!』


受けた空斗が、急ストップ。



(ジャンプシュート!)



詰める天野。



『ダン!』



空斗のジャンプシュート。



(届く!!)



「・・・。」にっ。



『サッ。』



天野を引き付け、柳にパスを戻す。




「ナイスパスだーー!!」

「いいぞ!上杉!!」




(かかったな。)


「甘いぞ!上杉!」


「!!!」



『パシ!』



柳がステップを踏みながら、ボールを受け取った。



と同時に、河本が柳のレイアップシュートに襲い掛かった。



「もらったーーー!!」



「甘いのは、天野さんですよ。」



『ビィ!』



「なに!」


(河本さん、バレバレっすよ。)


柳のノールックバックパス。



ボールは、右後ろへと放たれた。



そこには、右45°、3Pラインにいる上杉海斗がいた。



「ナイスパス!」




「フリーーや!!」

「いけ!海斗!!」




ボールを一度持ち直し、狙いを定める。



『シュ!』



ボールを受け取った海斗。


神奈川の期待を乗せた3Pシュートを静かに放った。




「入れーーー!!」

「いけーー!!!」




選手全ての想いが、ボールに宿ったとき。



『ザッシュ!!!』



それは、歓喜に変わった。



2年生のチームワークで、あっさり逆転。




愛知  55
神奈川 56







続く。

#415 【森重強し】

2011-02-18 | #13 神奈川 国体編
愛知  43
神奈川 45




第2Qも2/3が終了。


両チーム、均衡した試合を繰り広げている。




『イライラ・・・。』

苛立ちを隠せない田岡。


「天野之博君。想像以上の選手や。F経験を持つPG、仙道さんと同じやし。」

「仙道と同等の選手など、そう簡単にいてたまるか!」


(もちろん仙道さんと比べたら、かなり劣っておるけど、森重君や他の選手との息はバッチリや!)




『パシ!』


寸分違わぬパスが、森重の手に吸い寄せられる。



『キュッ!』


『ダムッ!!』


(またかよ!)


『バス!』



森重のポストプレーが炸裂。




「ついに同点だーーー!!!」

「神奈川を捉えたーー!!!」




「愛知のやろー、山岡のところばかりを狙ってやがる。」

と清田。


「さすがに森重はきついっすね。はぁはぁ。」

汗をかく山岡。


(交代?)

と田岡を見る清田。




『フンフン。』

田岡は静かに首を振る。


(いや、今、山岡を下げることは出来ない。)




神奈川のオフェンス。


海斗が3Pを狙う。



「あいつ、打つぞ!!金田!!チェック!!」

「打たすか!」



『ビィ!!』


海斗のシュートフェイクから、0°の山岡へ。



『シュパ!!』


(俺のせいで負けたなんて、ごめんだね。)


第2Q、山岡のシュートが高確率で成功していた。




「やはり、山岡を下げることはできん。」

(山岡を下げれば、オフェンスのリズムが崩れる・・・。
それでは、更に点差が広がってしまう・・・。)




『シュパ!!』



「今度は青木!!」

「天野さんが拓真ばかりを狙いよる!!」


「また、山岡のところからか!!」

と渋い表情を見せる田岡。


「・・・。致し方ない・・・。
ここは山岡を下げるか、マンツーに変えるか、選択肢は2つに1つしかない。」




天野は、青木、森重を巧みにリードし、2-3ゾーンの後列。


山岡を執拗に攻め立てた。


天野が桜木のカバーリングを上手くブロックしていた。




「さすが、天野君ね。森重君がいなくとも、名朋をIHベスト8まで導いたことはある。」

と弥生。




愛知  47
神奈川 47




「安西先生!いかがいたしますか!」

と田岡。

「大丈夫です。」




「山岡さん!」


海斗から山岡へのパス。


このQ、何度も見たプレー。


「もう打たすかよ!」

と金田がチェックに飛び出す。



「シュート!!」


「!!」



「なんてね。」



『パシ!』



インサイドの白田にパスを入れる。



「巧い!!!」

「サル芝居!!」



『キュッキュッ!!』


小刻みなフェイント。



『クル!!』


「!!!」


『サッ!』


『スト!』



「・・・。」


森重の手を超えるフックシュート。


(俺のフックを止められる人はいない。)




「いいぞ!!白田ーーー!!!」

「ナイッシューー!!!!」

「ホワイトフック!!!」




「さぁディフェンスだ!山岡、踏ん張れよ!」

「OKっす!」



「ハクタス。ちょっと耳を貸せ。」

「!?」


「・・・・・・・・・。」

「了解。それを桜木先輩とすることになるとは思ってもみませんでしたよ。」

「おいしいところはくれてやる!」



『パシ!!』


『パシ!』


「ぐっ!!」


山岡を攻める愛知。



(また、俺のとこか!)



(ここだ!)


「!!」

(白田!)


白田は、桜木の指示通りに天野を抑え込むことに成功。



『ダムダム!!』


パワードリブルで山岡を押し込む森重。


(なんて重さなんだ!)


『ダム!』



『クル!』


山岡が小さく吹っ飛ぶ。



ファウルギリギリの森重のポストプレー。



「どけ!山猿!!」



『サッ!』



森重の軽いポンプフェイク。



『ダン!!』



桜木は見事に跳んでしまった。



「しっしまった!!」にやっ。



それを見て、森重。


シュートを打ちにいく。



「今だ!ハクタス!叩き落せ!!」


「!!!」



突如、桜木の後ろから天野を押さえていた白田が現れた。



「桜木先輩直伝!!ハエタタキ!!!」


白田が、森重の前で手を大きく広げ、時間差でブロックに跳んでいた。



「!!!」

「!!」



だが。



「・・・。」にや。



「!!!」

「!!!!」


「なに!」

「なっ!!」



森重は、2度目もシュートフェイク。


あっさり白田を飛ばし、そして無人のゴール下で。



『ザシュ!!』



冷静にシュートを決める。




「うわぁぁぁーーーー!!!」

「桜木と白田を交わし、冷静に決めてきたーーー!!!」

「フェイクうめーーーー!!!」




「こいつ・・・。」


(完璧に見切られた・・・。)



「たいしたことないな。おまえたち。」

「なっなんだとー!」

「くっ。」



超一級の選手たちのシュートを叩き落してきた湘北伝統の2人による時間差ブロックも
森重の前では、通用しなかった。




「アンビリーバブルや・・・。」

「ぐっ。」

田岡は、力強く腕組みをした。


(森重寛・・・。昨年とは比べ物にならんぞ・・・。)




「死角なしやわ・・・。」

弥生は汗をたらした。

(まだまだ何か隠し持っていそうね・・・。)




愛知  49
神奈川 49







続く。

#414 【第2Q開始】

2011-02-16 | #13 神奈川 国体編
愛知  24
神奈川 29




第1Q終了。

点差は5点に広がっていた。




「上出来。上出来。」

迎え入れる田岡。

「いい速攻が何本か出ている。パスも良く回っている。いい展開だ。」

田岡は、上機嫌である。


「ハッハッハ!オールラウンドプレーヤー桜木のおかげだ!」


「しかし、インサイドからの得点が減りました。逆に、愛知はインサイドからの得点がほとんどや。」


「なぬ。それは、俺がデブ坊主にやられているといいたいのかね、彦一君。」

「いっいや、そうではないですって。」


「ふむ。確かに彦一のいうとおりだが、それは予想の範囲内。問題はない。」


「では、次の作戦です。」

と安西。


「柳は海斗と、黒川は白田と交代だ。」

と田岡。


「はい。」


「点差を広げるぞ。」

(インサイドで愛知に敵わない以上、最終Qまでに10点は差をつけておきたいところだ。)




愛知ベンチ。


「5点差ならないも同然。すぐに追いつく。」

と冨名腰。


「思ったよりもあの速さは厄介ですね。」

と天野。


「だが、もう慣れたろ。速さには慣れることができても、高さには慣れることができん。
バスケにおいて、高さに勝るものはない。このQで逆転だ。」

「はい。」


「だが、アクセントも必要だ。河本、おめーは走り負けてんぞ。もう少し気合入れろ。」

「ええ、ちょっとセーブしすぎましたね。」




『ピィーーー!!』


第2Q開始。




「神奈川、選手交代だーーー!!!」

「愛知のインサイド対策か!!」

「あれは、湘北の白田ーーー!!!」

「陵南の上杉だーーー!!」




-----------------------------------------------

PG…#9 柳 春風 172cm/2年/湘北

SF…#12 上杉 海斗 186cm/2年/海南大附属

-----------------------------------------------


-----------------------------------------------

 C…#8 黒川 大蔵 193cm/2年/陵南

PF…#14 白田 豊 195cm/2年/湘北

-----------------------------------------------




「海斗、空斗と間違わられてるぞ。」

「それでいいさ。」

と笑う海斗。




上杉 海斗


入学後の海南大附属は、全国大会未出場。

海斗の全国デビュー戦は、昨年の国体。

Fには仙道や流川といった超一級プレーヤーがいたために、出場機会はほとんどなかった。

今大会ここまで試合出場なし。


対して、陵南の上杉空斗は、3度の全国出場。

昨年のIHでは、仙道らとともに全国制覇も経験。


観客が双子の空斗と見間違えても仕方がなかった。




「あれ、海斗君?空斗君?」

「海斗君よ、何年見てるのよ、まったく。」

「すっすいません。」




「次の作戦は森重封じ。そして・・・。」

と腕組をする田岡。




神奈川のボール。


『ダムダム!』


愛知はメンバーチェンジなし。

2-1-2のゾーンで守る。



清田から海斗へパス。


(まずは挨拶だ。)にやり。


3Pライン外、海斗フリーでボールを受け取る。


(この試合のために、1、2回戦とベンチを暖めてきたんだ。
うっぷんを晴らさせてもらいますよ。)


(打っちゃえ。)

と山岡。


(リバウンドは俺が獲る。)

と白田。



『シュ!!』


「!!!」

「!!」




「打ったーー!!いきなり打ちやがったーー!!!」

「あいつ、陵南の上杉か!!!」

「プレースタイルが違くねぇか!!」




(全国では無名だが、紛れもなく、海斗は神奈川が誇る最強のシューターだ。)

とベンチの空斗が微笑む。




(綺麗なシュートフォームをしてやがる。)

と冨名腰。




ボールの軌道を確め一言。


「まあまあだね。」



『シュパ!!』




「入ったーーー!!!」

「いきなり3Pーーー!!」

「あっあいつ、上杉だけど上杉じゃねぇーー!!」




「華々しいデビュー戦といこうぜ。」にかっ。

「えぇ。」にこり。

清田と海斗は笑った。




「頼もしい限り。」

と満面の笑みの田岡。




「さすが、空斗君ね!!」

(あっ、今相田さん、海斗君のこと間違えた!!自分だって、わかってないくせに!!)

「ん!!」

「いや、何でもないですよ。」




愛知  24
神奈川 32




愛知のオフェンス。


更に驚き。


「!!!!」

「!!!」




「おぉぉぉーーーー!!!」

「神奈川もゾーンだーー!!」

「2-3!!!」

「森重を抑える気だーー!!!」




前列に清田と海斗の海南コンビ。

後列に山岡、桜木、白田の2-3ゾーン。



「デブ坊主!!もう好きにはさせねぇぞ。」

「どうかな。」



『ダムダム・・・。』


(ゾーン?そんなの関係ないぜ。)

と天野。



『ダム!!』


『キュッ!!』


ワンフェイクの後、インサイドへドリブルを開始。



(てめーに崩されるわけにはいかねぇ!!)

「囲め!!」

清田と海斗が囲みにかかる。



(2人。)


『ダムッ!』


なおもドリブルでキープする天野。



「なにやってやがる!野猿!!」

そこに桜木が詰める。



『キュ!!』


(来たな、桜木。3人目だ。)



『ビィ!!』


「ぬっ!!」

「あっ!」


3人のディフェンスを引き寄せた天野。


桜木の足元際どいところへのバウンドパスを放つ。


森重には、白田がマーク。



「どこパスしてやがる!!!」

と叫ぶ桜木。



だが、ボールに向かい走りこんできたのは、河本。



(柳が下がってラッキーだぜ。そして、このゾーンもな。)



『パシ!!』


ゴール下でボールを受け取った河本。



『ザシュ。』


鮮やかなバックシュートを決めた。




「柳がいなきゃ、このコートで一番速ぇのはおめーだ。」にやり。

と冨名腰。




「韋駄天河本参上!俺をフリーにするとは誤算だぜ!はっはっは!」

「ぬっ!韋駄天やろー、また生意気なこといってやがるな!!」


「花道!久しぶりだな。」

「相変わらず、態度のデケーやろうだな。」

「森重や青木にばかり気を取られていると、俺様にやられるぜ!」


「すまぬ。貴様など眼中はない。ハッハッハ!」

大人になった桜木。


「なぬっ!」




第2Q開始。


両チームともに、観客、相手の意表をつくプレーで得点に結びつける。




愛知  26
神奈川 32







続く。