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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#177 【高校最強の実力】

2009-08-24 | #08 高校 新体制編
元旦。

宮城と桜木、彩子と晴子は、天皇杯1回戦を観戦するため、東京体育館を訪れていた。



現在行われている試合は、山王工業(東北代表)×縦川システム(社会人2位)。



「ほーーーぅ。」

感心したような素振りを見せる桜木。


「11点差・・・。」

「やっぱり・・・。」

晴子と彩子は、驚きと納得の表情。


「けっ、可愛げのないやつらだ。」

宮城は、嬉しくも思った。




第2Q 残り3分。

山王 48
縦川 37


山王は、11点差の大差をつけ、リードしていた。



「おっ!沢北も出場しているようだな。」

「選抜は、少ししか出場していないと聞いていたわ。」

「#14・・・、誰だ?あれは?」

「リョーちん、知らないのか?ったく、何も知らねぇんだから。」

「うるせー!!」

「桜木花道は、立場が逆になると、途端に強気になるよね?」

「くすっ。桜木君は、ホントに面白いね。」

「はい!私は、晴子さんのスマイルエンジェルですから!ハッハッハ!!」


「で、桜木花道。あのこは何者?」

「ぐっ。」

「なーんだ。花道も知らねぇんじゃねぇかよ。」

「あのこは、桜木君と同じ1年生。」

「晴子ちゃん、知ってるの?」

問いかける彩子に迅速に答える。


「うん。お兄ちゃんから聞いたの。沢北さんの後継者は、#14の柳葉さんだって。
180cmにも満たない身長でダンクするんだって。」

「なっ!」

驚く宮城とは反対に桜木は。

「少しはやるようだな。チビ猿君は。」

「今度はチビ猿か・・・。」

彩子は少し呆れていた。


「丸男も試合に出ているな。あとはピョン吉と丸ゴリか。」

「弟を入れてきたのは、相手の高さに対抗するためね。
やはり、体格は社会人のほうが上だもの。」

「というと、山王は速さで勝負するしかねぇな。」

「そういうことね。」




「わーーーー!!!!」

場内一気に歓声があがる。




『ドガァ!!!』




「なんだとーー!!」

「目立ちがり屋の小坊主め!」




沢北は、自身よりも高いマークマンを抜き、更に相手センターを抜いて、ダンクを決めた。




「・・・。さすが、山王。スピードだけではないということね。」




『バチィン!』




「ナイスブロックだ!河田!」




「次は、河田のブロックか。これは、スピードと高さの両方で山王のほうが勝っているな。」

「チーム身長は、縦川のほうが高いんだけど、制空権は完全に山王ね。」




『ビィーー!!』


第2Qが終了した。



山王 55
縦川 41



「このままいけば、後半はもっと開きそうだな。」

「さすが、山王だわ。」

「負けてれば、応援してやろうと思ったが、やーめた。」


「すーーーーー。」

空気を思いっきり吸い込む桜木。



「ヤマオーーーー!!!」



観客席中段から、いきなり大声で叫んだ。



「!!!」

「!!」

驚きで言葉も出ない宮城ら。


「ん!?」

「なんだピョン?」

「あっ、あれは!!」

「桜木!!!!」

「うはっ。応援にきてくれたのか?」




「なんだ?なんだ?」

「あいつだ!!あいつが叫んだんだ!!」

「誰だ?あの赤い頭は!!」

会場が一斉にざわつく。

遠くのほうから、警備員がかけてくる。




「ヤマオーーー!!社会人ごときに負けるなよーーー!!!!」




「なっ!!」

「なんだと!!!」

縦川ベンチが一斉に立ち上がる。

縦川応援団も声をあげる。




「ちょっちょっと、桜木君!!」

「やめないさい!桜木花道!!みっともない!!」

「ダメだ。こいつ・・・。」




「大人しく見てろ!!」

と笑う沢北。

「ちゃんと応援しろよ!!うはっ。」

「相変わらず騒がしいやつだピョン。」

懐かしい顔に嬉しそうな表情を見せる山王ベンチ。




「ふん!軽い挨拶だ!!」

大きな仕事をやりきったような桜木だったが、
駆けつけた警備員に散々注意を受けたことはいうまでもない。

「バカ道のせいで、俺たちまで怒られたじゃねぇか!!」

「バカ!!」

「もう!桜木君は!!」

「ハッハルコさん・・・、すいません・・・。」



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第1回戦 第4試合

山王工業 98  ×  縦川システム 83

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第3Q、山王は控え選手と投入すると、縦川システムは、社会人の意地を見せ、4点差まで詰め寄った。

だが、第4Qに再びベストメンバーを投入すると、勝負どころで、沢北が爆発。

見事社会人2位の縦川システムを振り切ったのであった。



翌日、IHの覇者名朋工業が登場。

ベストメンバーで挑んだ2回戦だったが、JBLのチームに惨敗する。

博多商大附属もJBLに惨敗、山王工業は名稜大学に惜敗し、高校生チームは全て姿を消した。

黄金世代といわれた彼らだったが、大学生、社会人、プロの壁は厚かった。








続く。

#176 【驚愕】

2009-08-21 | #08 高校 新体制編
元旦。

宮城と桜木、彩子と晴子は、天皇杯1回戦を観戦するため、東京体育館を訪れていた。


「ちっ、もう少し早く来ればよかったな。」

「リョーちんのう○こが長いから!」

「してねぇよ!!」


『ドガァ!!』


「冗談がわからないところは、ゴリと一緒だな。」

「バカたれ!」



桜木らが体育館を訪れたときには、すでにこの日最後の試合が行われていた。



「今からだと、山王と縦川システムとの試合しか観れないわね。」

「ヤマオーか。」

「縦川は、社会人2位の実力チームだろ。さすがの山王も負けだろうな。」

「ちょっと厳しいわね。」

「ご臨終。」

「でも、深津さんだって、河田さんだって、沢北さんだっていますよ。
高校生のチャンピオンなんだから、応援してあげくなくっちゃ!!」

「まぁ、晴子ちゃんのいうとおりだな。知らねぇ仲じゃないし、少しぐらいはな。」



アリーナに向かう途中、貼り出してあった試合結果表に目をやった。



「うわっ!まじかよ!!」


「予想外ね。」

苦笑いの彩子。


「すっすごい・・・。」


「ぬっ。何がですか?ハルコさん。」


「ここ見て。」

そういって、試合結果表を指差す晴子。



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第1回戦 第1試合

博多商大附属高校 86  ×  京都商科大学 84

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「博多が勝っちまってる・・・。」

驚きを隠せない宮城。

「京都商科大学といったら、関西一部のチームじゃない・・・。ホントなの・・・。」

「すっすごい・・・。」

「そんなに凄いのか?」

「高校生が大学生に勝つなんて、皆無に等しいのよ。」

「ふむ。」


「すなわち、桜木花道が流川に1on1で勝つようなものなのよ!」

「いや。当たり前ですから。ハッハッハ!!」


「アヤちゃん、それじゃ、花道にはわからねぇよ。」

「例えが悪かったわね。」


「おい、花道!つまり、おめぇが流川に負けるってことだ。」

「なっ!それは断じてありえん!!」

「そうだ!そのくらい、高校生が大学生に勝つということは難しいことなんだ。」

「トンコツの分際で、生意気な!!」

「確かに博多も強いが、ここまで強かったとは・・・。」

「もしかしたら、愛和も・・・?」



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第1回戦 第3試合

法光大学 129  ×  愛和学院 67

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「愛知の星は、負けている。」

「花道。相手は、関東一部の強豪大学。これが普通の結果だ。」

「ふむ。」

「さぁ、山王を応援に行くわよ!リョータ!!」

「おう!!」


宮城と彩子の姿を後ろから見ている桜木と晴子。

「リョーちんは絶対尻に敷かれそうだ。」

「そうだね。」くすっ。


「花道!何かいったか?」

「ふん!ふん!」

桜木は首を横に振っていた。



コートを見渡せる場所まで来た4人。

またしても、驚愕の光景を目の当たりにする。








続く。

#175 【天皇杯】

2009-08-20 | #08 高校 新体制編
バスケットボール界、新年最初の公式戦は、
元旦から1回戦が行われる天皇杯全日本総合バスケットボール選手権大会である。

プロや、社会人、大学、高校、各地区を勝ち抜いてきた32チームが、
日本一の称号を目指し、激突する。



「体育館?リョーちん、バスケでもするのか?」

「いや、するんじゃねぇ。観るんだ。」

「観る?」

「あぁ。今日はな。天皇杯の1回戦が行われるんだ。」


「天皇杯?」


「ったく。ホントになんにも知らねぇんだな。」

「ふん!うるさい!!」

「アヤちゃん、説明してあげてくれ。」


彩子が、桜木と晴子に、天皇杯の大会概要など、詳細に教える。


『ポン!』


「つまり、日本一のチームを決めるというわけだな。」

「その通り!」

「では、なぜ?湘北は出ない?」

「なっ!」

「当たり前でしょ?何にも実績ないんだから!!予選だって、出てないし。」

「全国大会には出たぞ!ヤマオーにも勝ったぞ!」

「優勝しなきゃ出れねぇんだよ。」

「そうなんですか?」


『コクッ。』

うなずく晴子。


「さすが、ハルコさん、わかりやすい。
彩子さんもハルコさんくらい、わかりやすく教えてくれればいいのに。」

「なっ!」

「アヤちゃんは、サルでもわかるように丁寧に教えていたぞ!
それがわからないなら、おめぇはサル以下だ!」

「ぬっ。サル以下・・・。」

「大丈夫。頭はサル以下でも、桜木君はバスケは巧いから。」

(晴子ちゃん、それフォローになっていないから・・・。)

宮城と彩子は、苦笑いをしていた。



「ところで、彩子さん。高校は何校出場するんですか?」

「さすが、晴子ちゃん。いいところに気が付くわね。それはね・・・。」


「彩子さん!もったいぶらずに早く教えてくれ!」

桜木がせかす。


『ドガ。』

後ろから蹴る宮城。



「うるさい!花道は、黙って聞いてろ!」


「まずは、IHを優勝した名朋工業。高校選手権枠ね。」


「ぬっ。デカ坊主のところか。1年のくせに生意気な!」

「おめーも1年だろ!」



「九州地区を勝ち抜いてきたのは、選抜準優勝の博多商大附属。」

「あの激戦区を勝ち抜いてくるとはな。さすが、冬の準優勝校。」

苦笑いの宮城。



「続いて、東海地区からは、愛和学院よ。」

「ほー。愛知の星ね。彼もやるもんだな。
天才桜木がいないおかげで、うちに勝てたようだし、運だけは強いようだ!ハッハッハ!」

「運だけじゃねぇ、実力もあるぜ。ったく。」


「すごい!!高校生が3チームも出場するなんて!!」

「晴子ちゃん、まだよ。」

「えっ!」



「最後は、東北地区代表山王工業。」

「やっやっぱり・・・。」

「ヤマオーは、この桜木が倒したではないか?」

「バカ!それは、夏の話だろ!山王は、選抜で優勝してんだよ!
しかも、お前が倒したわけじゃない!!」

「そうなのか・・・。ということは、じぃたちは負けたんだな。」

「花道、情報が遅いぞ!!」


「高校生が4チーム・・・。凄すぎる!!
ホントに今の世代の高校生はレベルが高いんだよね。桜木君!」

「まぁ。この天才の足元には及びませんが!!ハッハッハ!!」

「桜木の話はおいといて・・・。
だから、私たちもこうして、わざわざ元旦から試合を観に来たのよ。
安西先生に、チケットもらってね。」

「さぁ、立ち話もなんだ。早くいこうぜ。」

「おう!ヤマオーもデカ坊主も、愛知の星も、トンコツも全てこの天才が倒す!!」

「試合じゃねぇよ。バカ。」

「トンコツって何よ。ホント、桜木のネーミングは特徴あるわね。」

「天才によるインスピリッツですから。ハッハッハ!」

「桜木君、それをいうなら、インスピレーションよ。」

「むっ。」

顔を赤らめる桜木であった。

この後、体育館にて、驚愕の光景を目の当たりにする。








続く。

#174 【湘北の桜】

2009-08-19 | #08 高校 新体制編
時はさかのぼる。



選抜優勝大会が終わり、年が明け、一番最初の日。

つまり、今日は元旦。



「桜木くん!」

「ハッハルコさん!!あっあけましておめでとうございます!!」

深々と頭を下げる桜木。

「おめでとう。今年もよろしくね!」

笑顔の晴子は、着物姿であった。


『ぽっ。』

(可愛い・・・。新年になって、いきなりハルコさんとデートとは!!しかも、ハルコさんの着物姿を拝めるとは・・・!!
天才桜木、今年はいい年になりそうだ!!)


「どうしたの?桜木君、涙なんか流しちゃって?」

「いっいや。何でもありません。ハッハッハ!
ハルコさん!着物姿もおっお似合いです!!」

「ありがと!」

(可愛い過ぎる!!!)

「で、これから、どっどうしましょうか?」

「やっぱり、初詣でしょ?」

「はっはい!!」

(幸せです!!!)




「うわー。やっぱ、明治神宮は人が多いね・・・。」

「この桜木が、道を作りましょう!!ガルルルッ!」

といって、周りの人を睨みつめる桜木。

「さっ桜木くんっ!!いっいいよっ。」

慌てる晴子。

「そっそうですか。」

「初詣って、こうやって長い時間並んで、お願いしたりするから、ご利益があると思うんだー。」

「そっそうですよね。」

5分と待てない男桜木だが・・・。

(ということは・・・、ハルコさんと長時間デート!!嬉しすぎる!!)

バスケの話や、学校の話、他愛のない話をしながら、時は過ぎた。

(幸せすぎる・・・。元旦にして、すでに今年一番の幸せ者かもしれない・・・。)


「ん!?また泣いているよ。」

「ごっごみが入ってしまいまして。ハッハッハ。」

「大丈夫?」

桜木の目を覗き込む晴子。

(う!!!このシチュエーションは・・・。ちっちゅう・・・?)


そのとき・・・。


『ドガァ!』


桜木の背中に何かが当たった。


(なーにー!誰だーー!ハルコさんとの初ちゅうをーーー!!!)


「誰だーー!!あぁ!!」


勘違いしながら、振り向く桜木の目は、殺気立っていた。



だが、そこには・・・。



「花道!!!」


「リョーちん!!」


「晴子ちゃん!!」


「彩子さん!!」


なんと、桜木らと同様に、2人で初詣に来ていた宮城と彩子がいた。


「どっどうしてこんなところに!!」

「なっなんでお前らがいるんだ!!」



一瞬の静寂が訪れる。



『ガシ!!』


肩を組み、彩子と晴子に背中を向ける宮城と桜木。


「おい。花道!お前も隅におけないな。元旦早々、ハルコちゃんとデートとは?」

「リョーちんこそ!彩子さんとデートとは?似合っているぞ!」

「ふっ、お前もな。」にやっ。

「ついに、今年はわれらの年になりそうだ。ハッハッハ。」

参拝に来ていた全ての人が振り向くくらい大声で笑っていた。


(俺たちは、史上最高の幸せ者だ!!)

2人の顔は、とろけていた。



一方、彩子と晴子。

「ホントは、流川がよかったんじゃないの?」

「えっ!?そっそんなことないですよ。流川君は・・・、きっと、練習していると思うし・・・。」

下を向く晴子。


『バン!!』


「ったく。今年は、胸張っていきなさい!強豪バスケ部のマネージャーでしょ!!」

「はっはい!」



「桜木花道!このあと、どこか行く予定あるの?」

「ハルコさんと2人きりのデートを楽しむ・・・。」

「どうせ、行くとこないんだろ?俺たちについて来いよ!」

「ヤダ!」

「はい!ついていきます。」

「ハッハルコさん!!」

「いいじゃん。ダブルデートみたいで!!」


「ダブルデート・・・。」

(いい響きだーー。)

「行きましょう!ハルコさん。リョーちん、彩子さんも早く!!」

晴子を抱え、走る桜木。


「ったく。どこ行くのか、わかってるのかなー?桜木は?」

「わかるわけない。っつうか、せっかくのアヤちゃんとのデートが・・・。」

「キャプテンが部員の面倒をみるのは、当たり前でしょ!」

「はい・・・。」

頭の後ろに腕を組む宮城。

彩子は、かばんの中の4枚のチケットを確認していた。








続く。

#173 【田岡の構想】

2009-08-18 | #08 高校 新体制編
陵南の練習。

ハーフの5on5が行われている。

レギュラーチームは、仙道、山岡、福田、1年生上杉と黒川であった。


第2ラウンド開始早々の黒川のアシストとシュートブロック。

(いいぞ、大蔵!でも、俺だって負けないよ!!)


(次は、上杉ですか。)

田岡に目をやる仙道。


『コク。』

田岡がうなずいた。


悟った福田は、大きく外に開いた。


上杉のマークは越野。

(キャプテンが1年にスタメン取られるわけにはいかねぇんだよ!)

激しいディフェンス。

だが、上杉はその激しさを利用する。

Vカット、すかさずクルッと回転し、再びゴール下へ走りこむ。


「やべっ!!」


その一瞬を見逃さない仙道。

ゴール下に高いパスを放つ。



「高い!!」

「仙道さん!そりゃパスミスやで!!」



(取れるよな?)

にやっと笑う仙道。



『バン。』


『バス!』


上杉はリングの真横に飛んできたボールを片手で触れ、そのままティップで押し込んだ。



「うぉーーー!!凄いで、空斗!!」

「普段の練習では、あんなプレー一切見せていなかったが・・・。
仙道によって、引き出されたということか。」



(ほぉー。少し高いかなって思ったけど、触れられたか。いい跳躍だ。)

と仙道。


(さすが、仙道さん。スピード、高さ、タイミング、どれも完璧なパスだ。
でも・・・、実はもう少し高くても取れるんですよ。)

上杉は、仙道に笑いかけた。


「ん!?あっ、そういうこと。」

何かを悟った仙道も笑い返した。



その後、上杉をマークする越野も上級生の意地を見せた。

菅平も得意のジャンプシュートを確実に沈めた。



「よし!いいぞ!いい感じだ!」

(上杉と黒川の加入は、チームの底上げだけじゃない。
スタメンを守ろうと、上級生も以前より、練習に対する集中力や吸収力が増した。
全国制覇!いよいよ、現実味がおびてきたぞ!!)

「仙道、ラストプレーだ。」

「はい。」



(ちょっと、試してみるかな。)

仙道のドライブ、上杉めがけて、柔らかいパスを放つ。



「さっきより高い!!」

「それはあきまへんて!!」



ボールは、リングの上を超えている。



「ナイスパスです!!」

ボールに飛び掛る上杉。



「うっそ!!」

「まっまさか!!」

「危ないでーーー!!!」



『ガン!!!』



「!!」

「なっ!!」

「バカ!!」



「まいったなー。」にこっ。



『ギシギシギシ・・・。』



リングには、黒川と福田がぶら下がっていた。

上杉は、ゴール下で尻餅をついている。



「福田さん!大蔵!今のは俺へのパスですって!!」

「俺だろ!ゴール下へのパスは、全部俺のです!!」

「いや、獲ったやつのもんだ!だから、俺のだ!!」



仙道が放ったパス。

3方向から、福田、黒川、上杉が飛びついた。

まず、最初に黒川と接触した上杉が吹っ飛ばされる。

黒川がキャッチしたボールを、福田が力づくで自分に引き寄せ、リングに叩きつけた。



「ったく!バカものたちが。」

(フリーオフェンスの上杉は、好き勝手動きすぎ。
黒川はゴール下のパスは全て自分のものだと勘違いしている。
ボールへの臭覚が強い福田は、気が付くとボールに飛びついている。
まずは、役割を与えることから始めなければならんか・・・。)



(もし、福田と黒川の邪魔が入らなければ、上杉のやつ、決めていただろう・・・。)

と越野。



(見えたで。見えてしもうた。陵南が全国の頂点に立つ日が・・・。)

「彦一、お前、何泣いてるんだ??」

「泣かずにはいられまへんって・・・。」



「あの3人一緒に出すのは、ちょっと難しそうだな。」

(はまれば、この上なく強そうだけど・・・。)

仙道は、一人笑っていた。








続く。

#172 【陵南の黒】

2009-08-17 | #08 高校 新体制編
「おはようございます。」

「仙道!!のこのこ今頃、きおって!!」

「すいません。寝坊です。」


『ポリポリ。』


このパターンもいつもと同じある。


怒鳴る田岡。

寝坊と答える仙道。

途中から練習に入る彦一。


最大の犠牲者は彦一であり、仙道の遅刻は彦一の実力が上がらない最大の要因でもあった。

でも、本人は全く気付いていない。


(わいの脚力は、確実にアップしてるで!!ドリブルは一向にうまくならへんけどな・・・。)



「お疲れ様です!!」

一際大きな声で仙道に挨拶するのは、今年の新1年生、黒川大蔵。

坊主で浅黒く、がっちりした体格をしていた。


魚住が去った陵南では、センターを補強することが、この春、最大の課題であった。




陵南のチーム力アップの理由その2。


その課題を解消すべく、自称 神奈川のジュニアハンターこと田岡茂一が白羽の矢を立てたのが、
黒川大蔵であった。

彼もまた、神奈川県立常盤中学校 バスケ部出身の生粋のセンターであった。



幼馴染5名と平均的な5名と素人2名、計12名で構成されていた常盤中バスケ部。

ミニバス出身、監督不在、3on3を経験ということもあり、Cを除いて明確なポジションは、確定されておらず、
また器用な選手が多かったため、個々の能力に頼るフリーオフェンスを展開していた。


福原 快

上杉 海斗

上杉 空斗

柳 春風


GからFまでこなせる器用な選手たち。


黒川 大蔵は、センターしかできない不器用な選手であったが、
陵南にとって、問題はなかった。


なぜなら、1番から4番まで出来る器用すぎる仙道がいたから。



田岡の頭の中では、大きな構想が出来上がっていた。

「仙道-福田-魚住を超えるホットラインになるはずだ。」

(つまり・・・。今年は陵南が県、いや全国を制覇する!!ひっひっひっ!!)

田岡の眼はイっていた。

(やばい!監督がまた妄想にはいってる・・・。)

越野は声をかけられず、指示を仰げずにいるのであった。



この時期、神奈川のどのチームよりも完成されていた陵南は、実践的な練習が多かった。



ハーフの5on5。

PG仙道から、ゴール下に鋭いパスが供給される。


『バス!』


PF福田は、空中でキャッチし、そのままバックシュートを決めた。



『ザシュ!』


SF山岡、速いドライブから急ストップ、鮮やかにジャンプシュートを決める。



『シュパ!』


仙道がディフェンスを切り裂き、ダブルクラッチを決めた。



仙道、山岡、福田の三角パス。



『ドガァ!』


福田のダンクシュート。



「うわーー!!今日もフクさんはのってるでーー!!」

「うむ。この縦のラインはだいぶ板についてきたな。
だが、まだ私の目指すものではない。」


(ホットラインに翼をつける。それが、私の理想形。)



「黒川。菅平と変わってみろ!」


「なっ!」

驚く選手たち。


仙道は驚かない。

(そろそろ、いい頃かな。)


田岡は続ける。

「越野。上杉と変われ!」

「えっ!!」

黒川のときと同様、選手らは驚いたが、誰よりも越野自身が驚いていた。


(まじかよ。俺、キャプテンだぜ・・・。)

だが、納得している部分もあった。

(サイズ、跳躍力ではやつの方が上。正直、山岡と上杉のコンビも面白いかもな。でも、監督、俺は辛いっすよ・・・。)


「越野。すまぬが、試させてもらう。」



(まずは大蔵から。)

仙道から黒川へパス。


素早いワンドリで一気にゴール下へ。

菅平とPF嶋が囲む。


(そう簡単にスタメンを取られてたまるか!)

菅平の必死のディフェンス。


たまらず、ピボットで背中を向ける黒川。


(そこか!)

菅平が目線をそらせた瞬間、アンダーのノールックパスがゴール下に供給される。


『スパ!』


仙道のシュートが決まった。



「わっ!すごいパスやで!!」

「ナイスパス。」

「仙道さん!」


(やはり、視野は相当広いな。味方を生かすことのできるセンターは、波が少ない。計算できるな。)

納得の表情を見せる田岡。


(パスの前に、福田に目線を送ることによって、菅平を誘ったか。
顔に似合わず、小技もきいているな。)

仙道も黒川を評価していた。



続いて。



『バチィン!!』


菅平のゴール下のシュートを、黒川が激しく叩く。


「よっしゃ!!」

「ぐっ!!」


(黒川は、すでに高校クラスの実力か。あとはスタミナをつけてやれば・・・。
魚住にしてやった地獄のフットワークを思い出すわい。)

田岡はにやついている。


(ふーー。先輩への遠慮はなしね。意外と強気。)

仙道は苦笑いをしていた。








続く。

#171 【陵南の空】

2009-08-13 | #08 高校 新体制編
4月中旬。

陵南高校体育館。



「仙道はまだか!!!」

「今、彦一が迎えに行ってます!」

陵南の練習は、毎回同じパターンで始まる。


仙道を大声で呼ぶ田岡。

答えるキャプテン越野。

迎えにいく彦一。


「本当に遅刻が直らん。最上級生だということを理解しているのか?
仙道だけ練習量を増やさなければわからんか・・・。ぶつぶつぶつ・・・。」

「かっ監督から火が出ている・・・。仙道、早く来い!!」


夏から、1,2年生で編成された陵南にとって、この4月で戦力がダウンすることはない。

むしろ、そのチーム力は、日を追うごとにアップしていた。

牧が去った今、県内No.1プレイヤーの呼び声が高い仙道であったが、本人はあまり興味がない。




「ふぁーー。そろそろ来る頃だな・・・。」

いつもの堤防で、昼寝をしていた。




一方、福田吉兆は、No.1という響きに洗脳されていた。

(仙道を倒し、俺がNo.1になる。)

ライバル心むき出しであった。

(いや、練習にちゃんと出ている分、すでに勝っている。)

少しだけ気分がいい福田。



足の怪我から完全復活を見せた山岡は、
「目指せ!三井さん!追い越せ!三井さん!」をスローガンにシュート力が飛躍的に向上していた。


だが。


(山岡のいい加減な性格は治したいものだ。)

田岡の悩みのタネの一つでもあった。



PG植草のバスケは、より安定され、3年生らしい落ち着きを見せていた。


そんな陵南をまとめるのが、キャプテン越野。

まさかのキャプテン大抜擢から10ヶ月が経過し、持ち前の勝気さで、チームを一つにまとめあげていた。


(仙道だけが、チームの和を乱す・・・。)


仙道一人を除いては・・・。




練習開始前。



『シュパ!』


「フクさん、今日も絶好調っすね?」

「うるさい。」



『スポ!』


「俺も入りましたよ。最近、好調なんすよね。」

「気が散る。」



『ガン!』


「あっ、はずしちゃいましたね?」

「お前がいるからだ。あっちいけ!」

「冷たいな。」


肩を落とす山岡が向かった先は・・・。



「上杉ちゃん!」

「何ですか?シュート練習の邪魔しないで下さいよ。」

「邪魔!?先輩にそんなこといっちゃーいけないよ。いつものやろうよ?」

「またですか?んじゃ、俺から行きますよ。」

やや面倒くさそうに答える上杉。



『シュパ!』


「今日は、入るね。」



『スポ!』


「ふー。俺も入ったよ。」


お互いが5投ずつ打ったところで終了。

上杉が2投外したのに対し、山岡は4本のシュートを成功させた。



陵南のチーム力アップの理由その1。


全中ベスト8の常盤中から、上杉空斗が陵南高校に進学した。

ワンダー中と呼ばれた常盤中キャプテン上杉海斗の双子の弟である。


兄は、海南へ。


弟は、陵南へ。


双子の兄弟が、15歳の春、別々の道を選んだ。


兄海斗が、外角のシュートを得意としているのに対し、
弟空斗は、ドライブを主体とするバスケスタイルであったため、
外角には、若干の苦手意識を感じていた。

そのため、外角の得意な山岡との勝負には十中八九負け、
ジュースを買わされていたのであった。


「悪いね、上杉ちゃん。いつもいつも。」にやっ。

「勝つのわかってて、やっているくせに。今度は、1on1で勝負しましょうよ!」

「んっ!?それは・・・。」


『ヒュッヒュヒューー。』


山岡は、口笛を吹きながら、反対側のゴールへ向かった。




その頃、堤防に辿り着いた彦一。

「仙道ーさん。時間ですよ!!」

「そろそろ来る頃だと思っていたよ。」にこり。

「毎日毎日、わいは体育館から堤防まで、走りっぱなしですよ。」

「だいぶ、脚力もついてきた。・・・、だろ?」

「ええ、そりゃもう、初めの頃よりも息はあがらんようなったし、速くもなりましたよって・・・。
まっまさか?」


「ふっ。さぁ、いこーか。」


「まさか、仙道さんは、わいの脚力アップのために、わざわざこないなところで、寝てはるんですか?
なんちゅうお人や!そこまで、わいのことを!!」


(ん、まぁそこまで深くは考えていないけど・・・。)


「さすが、仙道さんや!やること全てに意味があるんやな!
練習に遅刻することも、赤点で補習を受けることも、エサのついていない竿をたらすことも、
きっとなんか意味があるんや!すごいで!わいみたいな凡人には全く理解できへん!!」


(意味はないんだけど・・・ね。)

仙道は苦笑していた。




毎日が慌しく過ぎる陵南高校。



「まさか、上杉までうちに来てくれるとは、予想外であった!
この田岡茂一、人生最大の幸運を掴んだわーー!!思い知らせてやるぞ!
高頭ー!!安西先生!今年は私の勝ちですよ!!」

田岡の野望は増すばかりであった。








続く。

#170 【海南の海】

2009-08-12 | #08 高校 新体制編
選抜第4位の海南大附属高校。


3年生が進学し、神奈川県内において、一番のチーム力低下に繋がったのは、この海南であった。

牧という偉大なキャプテン、精神的支柱、試合中、外においても絶対的な存在を失ったダメージは計り知れない。

また、インサイドが小粒な海南にとって、高砂、武藤のベテランコンビが、いなくなったのも大きかった。

智将高頭の脳裏にも、不安の2文字がよぎる。


(真田をスタメンで使うか、いや無理をさせるわけにはいかない。
やつは、シックスマンのほうが、より力を発揮する。ならば、どうする・・・。
清田をSFにするか、いや他にPGは見当たらない・・・。
頭が痛い・・・。
やはり、今のメンバーで、4アウトを完成させることが先決か・・・。)



新生海南を支えるのは、新キャプテン神宗一郎。

博多商大附属高校の牧瀬、湘北高校の三井が高校バスケ界を去った今、
名実ともにNo.1シューターといっても過言ではない。


副キャプテンに就任したのは、真田壮太。

喘息の持病がある海南のシックスマン。

神を支える参謀役でもあった。


ゲーム&ムードメーカーは、清田信長。

牧直々に後任を任され、新年からPGとして、ドリブル、パスのスキルの向上、視野の拡大を図っている。

順調な成長を見せるも、勝気な性格は変わらず、不安な一面も。


兼ねてより、PFで使われていたSGの小菅は、晴れてPFへとコンバートされ、
190cmの2年生センター大泉大丸は、高砂の技術を受け継いだ。


(外は清田、神、小菅か。インサイドは、大泉を使うか。
この3ヶ月間、高砂が指導してくれたおかげで、大泉はある程度目途がたった。とにかく、あと一人必要だ。)


高頭が抱いていた不安は、4月に入り、解消される。




ワンダー中と呼ばれた常盤中キャプテン上杉海斗が入部する。




「常盤中からきた上杉海斗です。ポジションは、センター以外ならどこでもいいです。」

県外の推薦を断り、海南を選んだ上杉。

「俺は、神さんと一緒に全国制覇をしたいと思っています。だから、1年からレギュラーを奪うつもりです。」

強気な発言。


「上杉いきがるなよ!ガルル。」

清田が早速牙を剥ける。

「清田さん。お久しぶりです。」


「知りあい?」

新キャプテン神が清田に問いかける。


「俺が3年生のとき、全中で対戦したんですよ。まぁ、勝ったのは俺たちだったけどね。」

自慢げに話す清田に海斗が答える。

「確かに清田さんのチームは強かったです。
あのとき、確か関東も2位で通過し、全国もベスト16くらいでしたっけ?」

「おう、そうだ。よく覚えているな。」

「初めての公式戦だったんで、よく覚えているんです。」

「確か、清田さんとは関東の準決勝で当たって、うちが負けたんですよね。
15点くらいつけられましたよね。」

「俺たちのほうが、レベルは上だったからな!!」

「ただ、俺らは全員2年生でしたし、人数も限られていました。
ファウルをしてはいけないというかなり制約された中でのバスケだったので、
あれは本当の実力ではありませんでしたよ。」

「何!?負け惜しみか!?」

「なんなら、今勝負しますか?」

そのやり取りに神が割って入る。


「海斗でいいかな?」

「はい!キャプテン!」

「威勢がいいところは信長にそっくりだな。」

笑う神。

「なっ!」

顔を赤らめる海斗。

「神さん、上杉と一緒にしないで下さいよ。」

「信長だって、入部早々牧さんに噛み付いただろ?俺を抜けるのは、全国の超一流ガードだけだって。」

「そっそれはもう時効ですって。」

慌てる清田。


「お互いをライバル視するのはいいよ。相互のレベルアップにも繋がるからね。
でも、協調性を乱すのはよくない。まずは、仲間意識を高め、チームをレベルアップさせる。
君たちの敵は、チーム内ではなく、全国の強敵たちだからね。
特にうちは、今まで3年生に依存していた部分が多いから、チームワークが何より大切だ。」

「はい!」

「わかりましたよ。神さん。」

しぶしぶ返答する清田。

「海南が全国を制覇したあと、No.1を決めればいいよ。」

「はい!!」



だが・・・。



『バス!』


「バカ!そこは俺に戻せ!!」

「違いますって、ここは強引にでも点を獲りにいかないと!!」

「何だと!!」

「何ですか!!」



「俺のいったことは全く理解していない・・・か。」

苦笑いの神。


「あのくらい元気があるほうがいいさ。」

後ろから肩を叩くのは、真田。



『パタパタ・・・。』


(うむ。新チーム云々より、まずはチームワークを構築せねばいかんか。これは、相当肩が凝りそうだな。)

高頭は苦笑した。








続く。

#169 【東北の快】

2009-08-11 | #08 高校 新体制編
選抜優勝大会 3連覇の偉業を成し遂げた秋田県立山王工業高校。

選手層の厚さは、他校と比べ物にならないものだったが、
山王王朝を築き上げた深津、河田、沢北の三銃士が揃って、チームを去った。

深津、河田は、関東一部、学生チャンピオンの深沢体育大学に進学、上京した。

また、彼らとともに戦ってきた、SG松本も同3位の神奈川体育大学、PF野辺は同7位の慶徳義塾大学、
一之倉は関東二部の大学へ、それぞれ進学をした。


沢北は、1月10日アメリカへ2度目の留学を果す。

「俺は、来年の選抜には帰ってくる!」という確証のない言葉を残して。


これにより、柳葉、河田美紀男という主軸がいるものの、
堂本は、一からチームを作り上げなければならなくなった。




『バス!』


「すげーパス!さすが、加藤さん。深津さんが引退した今、やはりスタメンPGは加藤さんしかいない。」

「毎日、深津さんのマッチアップをしていたんだ、当然だよ。」

「キャプテンに就任したことで、自信もついてきたんじゃないかな。」

「以前と比較できないほど、プレースタイルも大きく変わったしな。」



PG 加藤夏輝。

深津の陰に埋もれ、出場する試合のほとんどが消化試合であったが、
堂本、仲間からも信頼は厚く、山王のキャプテンを任される。

ミスも少なく、バスケットボールを知り尽くす、深津イズムを伝承したPGである。

もちろん、例のものも伝承する。

「違う!今のパターンは、もっと外に出なくちゃダメ・・・ダス。」

「ダス・・・??」




『シュパ!』


『シュポ!』


「いつでも絶好調!」にやっ。



「シュート力だけなら、このチームであいつの右に出るものはいない。」

と椅子に腰掛けている堂本がつぶやく。



SG 烏山彰隆。

昨年、松本、一之倉に次ぐ、3番手SGであったが、実力はもちろん、
チームのムードメーカーとして、期待されている選手である。

山王工業には、少ないピュアシューターでもあった。




(PGは加藤。SGは烏山。あとは、柳葉と美紀男を加えて、沢北が戻ってくれば、烏山を外すか・・・。)

髭をさする堂本。



(PFは・・・。あいつを試してみるか・・・。)



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<<回想>>

3月下旬。

山王工業体育館。


4月からバスケ部入部を希望する新1年生が、体育館に集められた。


「入学前にすまない。推薦組、または中学でバスケ部に所属していた君たちに、
うちのバスケ部を観てもらおうと思い、呼び集めた。」

堂本が説明する。


新1年生は、ざっと30名ほど、推薦組は10名程度であった。

2時間ほど練習を見学したあと、その場で新1年生の自己紹介が行われた。

その中で、一名の学生が、堂本の眼に止まる。


(身長185cmくらいか。細身だが、足は相当デカい。来年には、90は超えそうだな。)

経歴も一際光っていた。



「福原快。神奈川県常盤中出身です。」

新1年生の間でざわつきだす。


「常盤中だって!?」

「神奈川の?」

「やっぱ、そうだと思った。」


(ほー。彼が福原か。)

常盤中の実績は、堂本の耳にも入っていた。


「ポジションは、やれといわれれば、どこでもやります。宜しくお願いします。」

「福原君。君はなぜ、わざわざ遠い秋田に来たんだ?
神奈川には、海南や湘北といった強豪校があっただろう?」

「目標は沢北さんです。俺も山王で実績を残して、バスケ留学させてもらいます。
神奈川では留学はおろか、海外遠征もありませんから。」

「いい目標だが、口でいうほど、簡単じゃない。」

「わかっています。だから、後戻りの出来ない、遠い秋田まで来ました。」


少し考えて、堂本が言葉に変える。


「そうか。もう一つ聞いていいかな?」

「はい。何でも。」

「常盤中のほかのメンバーはどうした?」

「みんな神奈川に残りました。」

「うむ。ありがとう。」


(神奈川も底上げされそうだな。)




神奈川県立常盤中学校。

福原が入学したときには、男子バスケットボールは存在していなかった。

そこに存在していたのは、福原と同じ志を抱く4人の仲間たちだけ。


柳 春風


上杉 海斗


上杉 空斗


黒川 大蔵


そして、福原 快。


ともに、ミニバス出身の幼馴染的な存在であり、【全国制覇】が彼らの合言葉であった。


1年次、切実な願いも届かず、バスケ部は設立されなかった。

だが、彼らは、3on3へと舞台を移し、快挙を達成する。

並居る全国の上級生を押しのけ、3on3中学の部で、全国第7位の入賞を果たす。

その話を聞いた学校関係者は、彼らが2年次になったときにバスケ部を創立させた。


部員は、彼ら5名と2名の同級生のみ。


その年、関東大会で4位となり、悲願の全国出場を果たすが、
全国大会のトーナメントを7人で勝ち抜けるほど、甘くはなく初戦敗退。

7人のみで全国出場を果たした常盤中はワンダー中と呼ばれ、一大旋風を巻き起こした。


3年次、最後のチャンス。彼らは、5名の新入生を加え、再び頂点を目指す。

そして、夢を叶えるまで、あと少しのところで、悪夢が起きた。



福原の退場・・・。

度重なる相手選手の悪質なファウルに腹を立て、手を出してしまったのであった。



彼ら5人以外の選手は、全国クラスの力を持ち合わせておらず、準々決勝で惨敗を喫した。

大粒の涙を流したその日、遠い広島では、湘北もまた愛和学院に惨敗していた。



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『バシ!!』


上級生を抑え込み、リバウンドを奪う福原。

ゴール下から、パスアウト、アシストを決めた。



(言葉に似合わず、プレーは地味だな。ああいうタイプは、磨けば磨くほど光る。)

少し微笑んだ堂本が再び思う。

(徹底的に鍛えて、光らせてやる。今よりも何十倍もな。)

堂本は決断した。



山王の静かな春が動き出す。



その頃、神奈川県においても、常盤中フィーバーが訪れていた。








続く。

#168 【愛知の嵐】

2009-08-10 | #08 高校 新体制編
桜が舞うこの季節。

毎年、多くの出会いや別れが行き交う。

それは、全国どこにいても変わらぬ定め。




愛知県 名朋工業。


「少しは楽しくなっかたか?」

「あんまり。」

「バスケっていうのはもっと楽しいもんだ。」

「そう・・・?」

「完成されたものをぶっ壊すっちゅうのは、もっと楽しいぞ。」


(山王王朝を倒せるのは、お前しかいないぞ、ヒロシ。だが・・・。)



冬の選抜は、宿敵愛和学院に5点差で破れ、全国出場は叶わなかった。

昨年のIH王者であったが、その評価は大きく下げていた。

再び、全国制覇に向けて、新しい年を迎えたものの、名朋には大きな問題があった。


「駒が足りねぇか。」


愛知県最強センターと呼ばれ、一時は高校最強センターといわれた森重を擁する名朋工業であったが、
現在、IH制覇時のスタメンで残っているのは、PG中嶋とSF大石、C森重の3名。

決して落胆するものではなかったが、冨名腰の構想では、もう1枚、オフェンスオプションがほしかった。


(王朝を崩壊させるには、里中のような、中も外もできるPFがほしい。)


名朋工業にとって、森重のスキルアップよりも、セカンドオプション、
つまり森重のバックアップを務める選手を育てることが一番の急務であった。



『ドガァァ!!』


2人のマークマンをふっ飛ばし、ボーズダンクを決める森重。


(まぁ、今の高校レベルなら、ヒロシ一人で全国ベスト16くらいの力はあるがな。)にやっ。


「ヒロシ!久しぶりに試合でもやってみるか?」

「面倒くさい。」

「そういうな。正月のときよりかは、楽しい思いをさせてやるから。」

「あんまり遠いところはいきたくない。」

「わかってる。」




同じく、愛知県。


「集合!」

織田虎丸の元に、選手らが集まる。

「よっ!新キャプテン!」

今村翼が、織田を茶化す。



冬の選抜を第3位で終えた愛和学院。

全国の得点王諸星、荻野と杉本のインサイドコンビは、チームを去り、大学にて新しいスタートをきった。

2年次より、活躍しているPG織田とSF今村、そして控え選手であったC寺田が、
チームの軸となり、全国制覇を目指す。


「大さんや荻野さんが叶えられなかった全国制覇は、俺たちが必ず成し遂げる。
そのためには、チーム一丸で新しい体制を作る。」

「そうだそうだ!」

茶々を入れる今村。


「3年生も2年生も1年生も関係ない。実力あるものが、ユニホームを着て、コートに立つ。」

「そうだ!」


「翼もわかったね?」

「俺も?」


「当たり前だ。今年は有能なFが揃った。うかうかしていると、やられるよ。」

「へいへい。」


(ちっ。虎のやつ、キャプテンになって、より厳しくなりやがった。責任感強すぎ!
でも、俺はあいつのそういうところが好きなんだよな。)


「よっしゃ!1、2年。虎のいったことわかるな?実力があれば、俺のポジションも、#5も明け渡す。
だから、死ぬ気で練習しろ!挑戦する気持ちを忘れるな!」

「はい!!!」


(翼・・・。お前が常に全力を出せるなら、大さんとそんなに変わらないと思っているよ。)


今村は、3年生になっても、ムラッ気は変わっていなかった。



「おう。早速、やってるな。」

「おはようございます!!」

愛和監督徳光が、体育館に入ってきた。

「今年は、大きな子が多いな。これで、名朋にも対抗できるかな?」

(森重は、ファウルでしか止められんからな。)

と苦笑い。


(そうだ。俺たちが全国制覇に挑戦する前に、まずはあいつを倒さなければならねぇ。)

いつになく真剣な表情の今村。


「監督。1年で対抗できるほど、森重は簡単な相手じゃありません。」

「そうだな。あの冬から4ヶ月もたっているし、森重も更に成長しているだろう。今村も気になるか?」

「もちろん。選抜のときは、諸星さんや荻野さんのおかげで勝てた部分が多かった。
正直、新しいチームではどうなるか、わからないっす。」

「うむ。新しいチームの方向性も確認しなければいけないし、成果も確認したい。
そういうことで、3週間後、練習試合をやることにした。場所は、名朋工業体育館。」



「名朋工業!!」

選手たちがざわつき始める。



「両監督の思惑が一致したわけですね。」

と織田。

「うむ。公式戦を前に相手戦力の確認と、腹の探りあいだ。」にや。

「いいんじゃないっすか!名朋工業、俺たち新チームの初戦の相手には打って付けだ!
お前ら気合入れていくぞ!!俺について来い!!」

と大声を上げる今村。

「はい!!!」



(いや、キャプテンは俺だから・・・。)

少し悲しむ織田であった。



愛知県では、春から嵐のようなビッグゲームが行われようとしていた。








続く。