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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#321 【華麗なパスワーク】

2010-06-17 | #11 湘北 選抜編
山王 24
湘北 16




第2Q、山王は第1Qと打って変わって、インサイドで勝負をしてきた。


オフェンスの起点は、PF福原。

この選抜からスタメンを務める福原は、潜在能力、器用さを見抜いた堂本監督が、
一から鍛え上げた秘蔵っ子であった。




(沢北や柳葉のように、突出したスキルを持っているわけではないが、
福原は全てでベターなスキルを持っている。)




「白田!お前は俺が山王にいったことを責任からの逃げといったな?どうだ、これが逃げに見えるか?」

「・・・。」

「俺は、アメリカにいく!」

「あっアメリカ!!」

「通用するとかしないとかじゃない、肌で本場のバスケを感じたいんだ。
だから、俺は昔の仲間なんて全て忘れた。俺は未来だけを見る!!」

「福原・・・。」




湘北のオフェンス。


(あの福原とかいうやろー、巧いな。
だが・・・、うちの白田だって負けてねぇはずだ!作戦に変更はなし!!)



『ガシ!』


『キュ!』


山王ゴール下では、4つ体が激しいポジション争いをしている。


『ザッ!!』


河田の前でポジションを奪う桜木。



「リョーちん!パス!!」

桜木は、大きく手を振りパスを要求する。



だが。



「簡単にはいれさせないダス。」


加藤がインサイドへのパスを警戒。

宮城からのパスコースを塞ぐ。


(ちっ、仕方ねぇな。)



『ビィ!』


ノールックパス。


『キュ!』


『キュッ!』


山王選手に緊張が走る。



「やっぱり、おまえしかいないようだな。」

「・・・。」

ボールは、流川の下へ。



だが、沢北の言葉を無視するかのように、流川はボールを優しく放った。



『フワァ。』



「パス!!!」

驚く沢北。


『パシ!』


「上出来だ!流川ーー!!!」

ボールは、ハイポ桜木に渡った。


(へっ、どうだ、驚いたろ、沢北!今の流川には、山王、いやお前に勝つことしか頭にねぇ。
例え、それが花道と協力してもだ。)にやり。



角度を変えることによって、ハイポの桜木へボールを入れる。

しかも、流川という山王の盲点を突いた位置からのパス。

宮城の思惑通りだった。


「ナイスパスだ!流川!!」

宮城は嬉しそうにいった。


「お前が桜木にパス!!」

「負けるよりましだ。」



桜木は河田を背負い、ハイポの位置からゴールを狙う。



『キュッキュキュ!』


『キュ!!』


ピボッドと小刻みなフェイントを織り交ぜ、河田を抜く。




「横なら桜木だ。」

と仙道。




『キュ!』


そこに加藤と柳葉が囲みにきた。




「山王のヘルプが速い!!!」

「桜木が囲まれる!!」




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

2分間のインターバル。


宮城と桜木、白田の作戦。

「花道が、ハイポでボールを受けたら、2回目からは必ずお前を囲みに来るはずだ。」

「複数でこの天才を止めようと。」

「あぁ。だから、囲まれる前にさばけ!ノーマークを見つけ、すぐにパスだ!!」

「いつもやっとるぜ!」

「わかってる。だが、いつもよりも速くだ!相手は山王、対応は他のチームと比べ物にならないくらい速い。
ぐずぐずしているとすぐに囲まれちまう。
白田は、花道にタイミングをあわせて、ゴール下でポジショニングだ。湘北のチームワークを見せてやれ。」

「わかりました。任せておいてください!」

「天才のパスと視野の広さをもってすれば、問題はないはずだ。
任せたぜ、花道!」

「当たり前だ!ハクタスが点を獲るのは納得できねぇが、キツネよりはましだ!」



-----------------------------------------------------------------------



(ハクタス!)


ゴール下の白田に眼を向ける桜木。


だが、白田へのパスコースは福原によって、遮られている。


「福原!」

(2度も簡単にとらせるか!)


(バカタレ!出せないではないか!)



「花道!」

柳とポジションチェンジをした宮城が0°近くまで下がっていた。



「リョーちん!」

桜木は、高くジャンプし、宮城にパスを通した。



『バス!』


『サッ!』


『ダン!』



宮城は、すぐにインサイドへバウンドパスを放った。

そこには、前を防ぐ福原の裏をかき、違う角度のポジションを奪っていた白田。



『シュパ!』



横から跳んでくる福原のチェックを物ともせず、ゴール下のシュートを決めた。

湘北の3角パスが、山王インサイドから得点を奪った。


「いいぞ!花道!!白田もナイッシュ!!」

「さすが天才!ハッハッハ。」

「キャプテン、ナイスパスです。」


(くそう、白田。)

(俺は勝つ!柳のためにも!)




「湘北の華麗なパスワーク・・・。えらく成長してるやないですか!!」

「しかも、流川さんが、あの位置から桜木さんにパスですか?」

「なんか、プレーの幅が広がりましたね。」

「1on1だけが、オフェンスだと思っていたあのころの流川が懐かしいな。」にこ。


(45°からハイポへパス。)

福田は眼に焼き付けていた。




山王 24
湘北 18







続く。

#320 【地味な選手】

2010-06-14 | #11 湘北 選抜編
山王 22
湘北 14




リングを掴む桜木の姿。




「アンビリーバブルや・・・。」

と彦一。




同じく、記者席。

「センセーション・・・。」

と中村。

「あの桜木君を・・・。」

弥生が続ける。




「ブロックした。」

と福田。




隣の仙道は苦笑している。



「すげー跳んだな。きた、沢北。」




「わぁぁぁーーー!!!!」

「桜木がブロックされたーーー!!!」

「沢北ぁぁーーーーー!!!!」

「いくらなんでも、跳びすぎだろ!!」




跳ね返ったボールは、柳が拾い上げた。



「おのれぇぇーー!!小坊主!!!」


「湘北がインサイドで攻めてくることぐらいわかってたぜ。」

「ぐっ。何度となく、この天才の邪魔をしおって!!!あっ、逃げるな!」

「逃げるんじゃねぇ、まだプレーは続いているんだ!」


ボールは、柳から流川へと渡っていた。



『ザシュ!』


流川のミドルが決まる。



「あっ!ほら見ろ。また流川に決められたじゃねぇかよ!」

「ぬっ。流川!ドサクサ紛れに!どいつもこいつも、天才の邪魔ばかりしおって!!」

「まぁ、いいさ。すぐにやり返してやる!」

「おう。任せたぞ、小坊主!」


そのやりとりを聞いていた流川。

(どっちの味方だ、どあほう。)




山王 22
湘北 16




(沢北の迅速なカバー。やはり、山王は、うちのインサイド勝負をわかってやがったか。
さすが、ヒゲやろーといったところか。)

山王ベンチを見る宮城。




『パンパン!』

「ナイスカバーだ!」

堂本は、選手たちを鼓舞していた。




(その前に・・・。)


「こら、花道!白田にちゃんとパスしろ!」

「リョーちんのいうとおりにしてやるぜ。」

「おっ。今度はやけに素直だな。」

「勝つためだ。」

(流川に決められるなら、ハクタスのほうがましだ。)




山王のオフェンス。


『ジロジロ。』

トップでドリブルをしている加藤の瞳が、静かに動く。


(今度はなんだ?)


『サッ!』

加藤の左手があがる。


「4番ダス。」


(また、ナンバープレーか!)



『キュ!』


柳葉が流川にスクリーンをかけにいく。


「流川さん、スクリーン!」


柳の声に、湘北選手が沢北に集中。



『クル。』


『ガシ!』


「おっ!」

「!!」

「桜木先輩、スイッチです!!」

インサイドでは、河田が大きな体で、白田の動きを封じている。


福原はハイポへ。

桜木が福原を後ろから追う。


ボールは、流川にスクリーンをかけると見せかけ、逆サイドに切れた柳葉に渡っていた。

ゴール下では、河田が白田を背負い、ポストアップをしている。


山王選手、ボールの素早い動きに、観客たちは食い入るように見つめる。




「誰が打つんだ。」

「湘北のディフェンスが混乱している。」




「すっすごい。」

「単純なさっきのナンバープレーとは大きな違いね。」




「河田ダス!」

加藤が声を出す。


その言葉に、ハイポ福原の後ろにいた桜木が、ローポ河田の前に下がった。

福原はハイポから、河田の逆ローポに下りる。


そこへ。


『ビィ!』


柳葉からのパスが福原へ渡った。


「そっちか!!」



『キュ!』


コートを力強く蹴り、福原のマークに行く桜木。


「大福!打たせん!」



だが、間に合わない。


福原は、流れるように0度からのジャンプシュートを放つ。



『シュパ!』



決めた。




「また、山王のナンバープレーが決まった!!」

「山王が本領発揮してきたぞ!!」




「福原君、本当に器用なプレイヤーね。ディフェンスだけでなく、パス良し、シュート良し。
チームの潤滑油としては、申し分ない動き。
シューターの烏山君を外して、彼を入れている理由がよくわかったわ。」

「山王は、どこからでも点が取れてますね・・・。」

「えぇ、まだ去年と同じとの評価はあげられないけど、それに近いものはあるわね。」




「空斗。あのPFは、同じ中学だったっけ?」

と上杉に尋ねる仙道。

「はっはい。」

「以前から、あの動き?」

「いや違いますね。確かに、全てをこなせる器用なやつでしたけど、もっと荒削りだったような。
それにあまりスポットライトのあたる選手ではありませんでした。」

「地味に巧いって言葉が丁度あっていたな。」

と黒川。

「地味に相手のエースを止め、地味にリバウンドを奪い、地味にシュートを決める。
だけど、存在感は大きい。今思えば、快がいたから、俺たちのチームは巧く回っていたような気がします。」

「地味な選手に、日を浴びせるためのナンバープレーっか。」

(福原の潜在能力に気付き、プレーの幅を広げた堂本マジックといったところかな。)


「うちの監督とは、えらい違いや!おっ、そういえば、忘れてましたが、監督はまだけえへんな。」




その頃、田岡はタクシーに乗車し、会場に向かっていた。

(金を払っている私が、なぜ観戦できんのだー!!)




山王 24
湘北 16







続く。

#319 【インサイド】

2010-06-12 | #11 湘北 選抜編
山王 20
湘北 14




沢北、流川の両校のエースが跳ばす展開で始まった決勝戦。

振り返れば、桜木に活躍の場は、ほとんどなかった。




2分間のインターバル。



湘北ベンチ。

「ナイスプレーです。」

安西は、流川に一言かけ、迎え入れる。

「うす。」

「流川君。」

晴子は、流川にタオルを手渡し、流川はそれを受け取った。


「ぬっ。」

その光景を見た桜木。


「リョーちん!俺にもっとパスをくれ!!」

「あぁ!?」

タオルで顔を拭っている宮城が答える。


「バカ。花道は、河田に抑えられてるだろうが。いれたくてもいれられねぇんだよ!」

「なぬっ。」

「今は流川が沢北と同等の動きを見せている。
ここで、インサイドから攻めることができれば、更に流川も動きやすくなる。
だから、花道の動きが重要になるんだ。」

「流川に活躍させるために動くのは納得できんな。」

「あのやろーに負けるよりはましだろ?流川との勝負は、勝ってからやればいい。」

宮城は沢北を指差す。

(はぁ、もう少し仲良くならねぇかな。)


「・・・。おい、キツネ!」

「ん。」

「一先ず休戦だ。勝負は、また今度してやる。」

(おめーと勝負なんかしてねぇ。)


「で、リョーちん、どうすれば?」

「おい!白田!」

「はっはい!」

宮城の下に白田が寄ってきた。


「点を決めるのは、お前だ!」

「なぬ!!それでは話が違うではないか!!」

「うるさい、最後まで話を聞け!」

宮城が続ける。


「福原のディフェンスはどうだ?」

「しんどいですよ。あんなにディフェンスのいい選手じゃなかったはずでしたけど・・・。
ただ、俺のフックは、あいつには止められない。」

「OK!作戦はこうだ。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「わかりました。任せておいてください!」

「当たり前だ!ハクタスが点を取るのは納得できねぇが、キツネよりはましだ!」

(うるせー、どあほう。)


「よし!いくぞ!」

「はい。」

「おう!」


宮城からの作戦を胸に秘め、桜木はコートに向かった。




第2Q開始。


ボールは、山王。

加藤の立ち上がりは、静かである。


『ダムダム!』


(あたっている沢北か、それともミスマッチの柳葉か、最初はどっちだ?)

「ん?」


「5番ダス!」


(ナンバープレー!!)



その瞬間。



『ビュン!』


「!!」

ボールは、宮城の顔すれすれのところを通った。


加藤の選択は、インサイド。


(インサイド勝負!!)


それは、宮城の思惑を一致していた。



『バス!』


ミドルで受け取ったのは福原。


シュート体勢に入る。


『サッ。』


絶妙なシュートフェイク。


白田は、あっさり引っかかった。

「しまった!」




「巧い。」

思わず観客席の黒川が叫ぶ。




『ダム!』


ワンドリで、白田を抜いた。



だが。



「あまいわ!」

桜木が、すぐさまカバー。

コースを塞ぐ。



『バス!』



「!!」



福原は、ボールを叩きつけるように、逆サイドにパス。


そこには、センター河田美紀男。

「快君、ナイスパス。」



『バス!』



ゴール下のシュートを決めた。


あっさりと湘北インサイドを切り裂いた山王のインサイドコンビ。




「山王、今度はインサイドで攻めてきたぞーー!!」

「もう山王のオフェンスは、とめられない!!」




山王 22
湘北 14




(福原・・・。巧くなったのは、ディフェンスだけじゃないか・・・。)

山王コートに戻る福原の背中を見つめる白田。


「桜木さん!僕たちのほうが、強い!」

「ぬっ、いうじゃねぇか!丸男の分際で!」

「僕は、桜木さんに勝って、No.1になるんだ!!」

「丸男は2番のほうがお似合いだ!」



(加藤のやろー、同じことを考えていた?いや、たまたまか?)

「さっきの話の通りだ。俺たちもいくぞ。」


「おう。」

(まずは、丸男を黙らせる。となると、やはり・・・。)にや。


「はい。」

(少し桜木先輩が心配だけど、作戦通り、いくぞ。)




湘北の反撃。


宮城のドリブル。

ボールは、柳へ。

リターンパスが宮城に入る。



『キュ!』



「来い!」


(いいぞ、花道!!)



『バス!』


トップから、ハイポの桜木へ。




「あっ、湘北もインサイドから仕掛けてきた!」

と中村。

「第2Qは、インサイド勝負の肉弾戦かしら。」




さらに、



『キュッ!』


(とった!!)

(やばいっ!)


白田は、ゴール下、福原を背負い、最高のポジションを奪った。


「桜木先輩!」

パスを要求する白田。



だが。



「くらえ!丸男!」

「桜木先輩!!」

「バカ!花道、パスだ!!」



『サッ!』



「!!」



『ダム!』



低いドリブルから、一瞬にして、桜木は河田を抜き去る。



(えっ!速い!!)



『キュ!!』



『ダン!!!』



そして、白田に見向きもせず、高く舞った。

ボールを片手で掴み、渾身の力を右腕に注ぐ。



「くらえ!ヤマオー!!」



「高いーー!!」

「花道!!」



「うぉぉーー!!!」



『ガシィィ!!』


体育館には、桜木がリングを掴む音が響き渡った。




山王 22
湘北 14







続く。

#318 【沢北の貫禄】

2010-06-11 | #11 湘北 選抜編
山王 16
湘北 12




流川が沢北のチェックを技術で交わし、シュートを決めた。




「流川君!!」

湘北ベンチの晴子が叫ぶ。

「頼もしいわね。」

と彩子。

「流川君の力はこんなもんではないですよ。・・・、沢北君も。」

「本当の勝負はこれからということですね。」

彩子は、少し嬉しそうに微笑んだ。




「アンビリーバブルやーー!!!
沢北さんをも交わす流川君のスナップシュート!しかも、左手やでーー!!!」

「いいシュートだな。」

(いつの間にそんな技を。)

と仙道。

『クイ。クイ。』

隣では、福田が左手の手首を振っていた。

(難しい・・・。)




「エージ。」

「わかってるよ。」

加藤に答える沢北。


「・・・・・・・・・。エージ。」

「だっ!お前は真似するな!!」

柳葉は、なんとなく加藤の真似をした。


「やられたら、やり返すダス。」

「夏輝は、ほんと深津さんみたいだな。」

(そんなに真似しなくてもいいのに。お前にはお前の良さがあるんだけどな。)



山王の反撃。

いや、沢北の反撃。



高い位置から、沢北にボールが渡る。




「沢北がリベンジだーー!!」

「いけーー!!沢北!!」

「流川!止めろ!!!」




「いくぜ。」

「きやがれ!」


『キュッ!!』


コートを蹴るバッシュの音が、コートに響き渡る。



『ダム!』


『キュ!』




「おおぉぉーー!!」

「流川がしっかりマークしている!!」




『キュ!』


『ダム!』


「!!」




「すっ凄いよ!流川君!!」

思わず叫ぶ中村。




沢北にぴったりとマークする流川。

沢北の突破を許さない。


その1on1に会場が盛り上がる。




「さっきのプレーでノッてきましたね。流川さん。」

にこやかな表情の上杉。

「だいぶディフェンスも巧くなっているな。」

と感心する仙道。

隣では、福田が流川のディフェンスを食い入るように見つめている。

(仙道が認める男、流川。桜木とは違う。)




コートでは。



『シュ!』


ボールは、沢北から加藤に。




「うぉぉーー!!」

「あの沢北を止めた!!」

「流川ー!すげーーー!!」




「とめたぜ。」

と流川。

「ふっ。」

「何が可笑しい?」

「いい気になるなよ。」



『ダン!』


『キュ!』


再び、沢北が動く。



「!!」



沢北は、素早いVカット。

加藤からリターンパスが入る。



だが。


『シュ!』


今度は、逆サイドの柳葉へパス。

自身は、インサイドへ切れ込んだ。



(中!)


『バス!』


山王の速いパス回し。


沢北は、台形内でボールを受け取った。


流川は追走。


マークを外さない。



「ぬっ。」

桜木は、河田に抑えられている。

(相変わらず重てぇな。)

(沢北さんの邪魔はさせない!)



『キュ!』


『サッ!』


沢北は、ボールを受け取るや否や、ジャンプシュートの体勢。



『ダン!』

跳んだ。


(打たせるか。)

流川も跳ぶ。


大きく伸ばした手は、シュートコースを塞ぐ。

2つの体は、まるで空中に静止しているかのように、浮かんでいる。


「!!」

「!!」にや。


『シュ!』


「!!!」



沢北は、足を広げ、体のバランスをとりながら、ジャンプシュートを放った。



ボールは、流川の手のひらを越えた。



『シュパ!!』




「たけーーーー!!!!」

「高すぎる!!!」

「とめられるはずねぇーー!!」




着地する2人。

沢北はどうだと言わんばかりの表情である。

無言の流川。


流川の完璧なまでのシュートチェック。

だが、沢北は空中で一伸び、その上をいく跳躍を見せ、ジャンプシュートを放った。



沢北栄治、最高レベルのジャンプシュート。


留学で得たスキル。



それは、尋常ではない高さのジャンプシュートであった。



「目測を誤ったか。」

「・・・。」

「俺の本気のジャンプシュートは、もっと高いぜ。」

「・・・。とめてやる。」

「あぁ、やれるもんならな。」


沢北が続ける。

「ハイスクールのやつらでも、俺のシュートをとめられるやつは、そうはいなかったぜ。」

「上等だ。」



沢北が、流川のチェックを身体能力で交わし、シュートを決めた。

熱い火花を散らす両者は、ライバルを前に、チームを引率する力強いプレーを見せる。

その後、両者1本ずつのシュートを決め、第1Qのブザーが鳴った。



沢北 8得点

流川 8得点



河田とのゴール下の争いをしている桜木は、いまだ沢北との接触はなかった。

(ぐっ。小坊主をぶっ倒す前に、丸男をどうにかしねーと・・・。)


第2Q、インサイドが動き出す。



山王 20
湘北 14







続く。

#317 【流川の宣戦】

2010-06-07 | #11 湘北 選抜編
山王 14
湘北 10




スティール、そして連続シュートを成功させた宮城。


「もう1本!ディフェンス止めるぞ!!」

「おうよ!!」

「はい!!」


その気合は、湘北に勢いをもたらす。




「湘北が元気になってきましたで!!」

「宮城さんがいいムードを作ってますね。」

と上杉。

「このままいけば、逆転しそうですね。」

と黒川。


「いや、そうはいかないかもな。」

と仙道は下級生たちとは、反対意見だった。

『コク。』

福田も首を縦に振った。




加藤、柳葉、福原、加藤とボールは、細かく動く。


(パスを繋いで、最後は柳葉のところだろ!?)


ボールを持っている加藤の腕が、柳葉へ向けられる。


(やっぱり!)

宮城の視線は、柳葉に向けられた。


「!!」


だが、宮城の視界にボールは見当たらない。


「フェイクか!」



『ダム!』

加藤は冷静に、宮城の視線の逆方向からゴールに切れ込んだ。




「絶妙なパスフェイク!!」

「いけーー!!キャプテン!!」




『ダムダム!』


「シュートは打たせんぞ!タラ男!」

桜木が加藤の前に立ちふさがる。


「タラ男って誰ダスか!!」


その瞬間、加藤は桜木の頭上を越える優しいパスを放った。


「ぬっ。へなチョコパス!」


ふわーっと舞ったボールは、桜木の裏でポジションをとっている河田の下へ。


「グッ!」

桜木は、慌ててバックするが、河田の分厚い背中に進路を阻まれ、動けない。

ボールは、河田の伸ばした手の中にピッタリと収まった。


そして。


『シュパ!』


綺麗なゴール下のシュートが決まった。




「美紀男の初得点ーー!!」

「キャプテンのパス最高ー!!」




「河田、ナイッシュダス。」

「ふぁい。キャプテン。」

嬉しそうな表情を浮かべる河田。


(ようやく1本入った。よし、ここからもっと頑張るぞ!
僕がポジションさえ取れば、キャプテンがパスをくれるんだ!)



「おのれ!タラ男め。」

「すまねぇ。花道。今のは俺のミスだ。」

「リョーちん、気にするな。さっさと同点に追いつこうぜ。」

「OK!」

(花道に慰められるとはよ。)にこ。



「おい、てめー。攻める気あんのか?」

「そう焦るな。楽しみはこれからだ。」

「・・・。」

「お前の成長はよくわかったぜ。だが、まだまだだ。」

「・・・。」

(にゃろう。)


「悔しかったら、早く俺を本気にさせるんだな。」

「いますぐ。」

「楽しみにしてるぜ。」

ジワジワと燃え始める沢北と流川の戦い。




(沢北のやつ、試合前に初めから全力を出せといったおいたのに、まだ集中していない。
ムラがあるところは、やっぱり全く治っていないな。)

と堂本。




山王 16
湘北 10




湘北のオフェンス。


(試合は始まったばかり、焦ることはねぇ。)

宮城は、冷静にボールを運ぶ。


柳を見る。

完全に抑えられている。

(ちっ。さすがだな。柳の動きを的確に捉えてやがる。)


桜木は、ゴール下で激しく河田とポジション争い。

河田の重い体に、思うようにポジションが取れない。

(さすがの花道もてこずってやがる。ならば。)


白田に視線を向ける。


その瞬間。


「あれこれ考えすぎダス。」

加藤の手が伸びてきた。


宮城は咄嗟にフロントチェンジ。

これが功を奏し、加藤を交わす。

(おっ、ラッキー!)


「もう1本決めてやるぜー!!」

宮城が、三度ゴールを狙いにいく。


(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)


そこにサイドから切れてくる流川が、パスを要求する。


(流川!)


宮城は、沢北をひきつけるようにドリブルをし、流川にパスを通した。




「流川だーーー!!」

「沢北のマークが遅れている!!」




流川はパスをもらうや否や、ジャンプシュートの体勢。



『ガシ!』

桜木は、河田を素早くスクリーンアウト。

(速い!なんで、こんなに速くスクリーンアウトができるの!?)



「外せ!キツネ!」

ゴール下で叫ぶ桜木。


(誰が・・・。)

「外すか!どあほう!!」

流川、ジャンプ。


「そんな単純なシュートを打たすかよ!」


流川の右から、沢北がシュートチェック。


「!!」

「!!!」

「なーーにーー!」



流川は、ボールを左手に持ち替える。

そして、手首を使って、左手でシュートを放った。


(スナップシュートか!だが、その距離から届くかよ!!)



『パサ。』



沢北が振り向くと、静かにネットを揺らすボールが見えた。


「なっ!!」

「決めたぜ。」

「ふっ、さっきの言葉がだいぶ利いたようだな。」

「いいから、本気できやがれ。」

「よかろう。予定と少し違うが、あっ!!人の話を最後まで聞け!!」

すぐさま湘北コートに戻る流川であった。



(見せてやるよ。本物を。)にや。



沢北は不敵に笑った。




山王 16
湘北 12







続く。

#316 【集中した俺】

2010-06-05 | #11 湘北 選抜編
山王 14
湘北 6




第1Qも半分を終了していた。




「やはり、春風のところから攻めこまれているな。」

と黒川。

「湘北は、自分の相手をマッチアップするだけで、精一杯の状態。
春風のフォローに回ることができない。」

と上杉が答える。


「一層、ゾーンで固めてしまうのはどうや!」

「逆効果だ。山王の外角は悪くない。なにより、ベンチには烏山がいる。無謀だ。」

と福田。


「そうか・・・。仙道さんなら、どうはりますか?」


「俺か、俺なら・・・。」




「山王は、ジリジリ引き離してきましたね。」

「2人のスコアラーがしっかり仕事をしている。
対して、湘北は、彼らのディフェンスの前になす術がない。変化が一つほしいところね。」

「変化ですか・・・。選手交代とか?」

「湘北のベンチに、流れを変えられるような選手はいない。」

「開始早々厳しいですね。」


「どうしますか?安西先生。」

(早く手を打たないと、一気に持っていかれますよ。)




「ド素人。ゴールを守るんじゃねぇのかよ。」

「うるせー、キツネこそ小坊主ごときにやられおって。」

「やめろ2人とも。とにかく1本、止めるんだ。」

(とはいえ、どうやったら。)



柳は相変わらず柳葉にタイトにあたる。


加藤、沢北、加藤と小刻みに回ったボールは、外に開いた福原へと渡る。




「おっ!!今度は、福原だーー!!!」

「勝負するか!!」




『キュ!』


だが、柳葉が一気にインサイドに切れ込んだ。


(またか!?)

並走する柳。


福原がインサイドにボールを放り込む。




「また、柳葉だーーー!!!」

「インサイド勝負!!」

「このミスマッチは痛い!!」




『バス!』


柳を背に、ボールを受け取る柳葉。

素早いピボッドで隙を伺う。


『ダン!』


柳葉は、後方へ跳び、フェイダウェイの構え。


(届かない!!)



そこへ。


『ダン!!』



「どけ!サル風!!これ以上、チビ猿に好き勝手させるかーー!!」

ゴール下から、桜木が跳んだ。



「!!」



高い跳躍。

桜木の手の平が、柳葉のシュートコースを塞ぐ。

さすがの柳葉も一瞬の焦りを見せた。



だが。


『シュ!』


シュートモーションのままで素早くゴール下にボールを投げ込んだ。


そこにいたのは、フリーの河田。




「咄嗟にパスに変えた!巧い!!」

「河田がフリーだ!!」




「しまったぁ!」



『バシ!』


「!!」

「!!!」


驚いた表情を見せる湘北、山王の選手。



ボールを手にしていたのは。



「バレバレだぜ。」

宮城であった。


「おらーー!てめーら、いくぞーーー!!!走りやがれーー!!!」




「キャプテン!!」

「ナイス!スティール!!」

盛り上がる湘北ベンチ。




その頃、観客席の陵南。

「うぉぉぉーー!!仙道さんのいったとおりやで!」

10秒前、仙道のいった言葉。


-----------------------------------------------------------------------


「俺か、俺なら、柳葉を止める。
まずは、一番あたっている選手のリズムを崩す。」


-----------------------------------------------------------------------


「さすが、仙道さんや!桜木さんもよう動きました!!」

「フォローに回った宮城さんもさすがです。」

「ふっ。」にこ。




『キュ!』


『ダン!!』


『キュッキュ!』


『ダムダム!』



湘北の3線が動く。


いち早くスタートを切った柳。

すぐに追いかけた加藤。

流川、沢北も続く。

着地と同時に、桜木も駆け上がった。




「3対2--!!!」

「湘北チャンス!!」




左に流川と沢北。

右に柳と加藤。

中央から突破を図る宮城。



(ここは!)



『ダムダム!』


加藤が、柳を警戒しながら、宮城の前に立ちはだかる。

(沢北がマークする流川へのパスはないダス。つまり、自分か柳か、2つに1つダス!)


(いくぜ!加藤!!)



『ダムダム!!』


(突っ込んでくる!!)

ドライブと判断した加藤は、重心を低く構えた。



だが。



『キュ!』


「!!!」


『サッ!』


『シュ!!』



『ザシュ!!』


宮城がジャンパーを沈めた。




「うぉぉーーー!!」

「宮城が自ら決めたーー!!!」

「湘北の久しぶりの得点だーー!!」




「夏までの俺だと思うなよ。へっ。」

加藤に一言言い放つ。



「宮城さん、ナイッシュ!」



「打ってきたダス。」

「続けて入るとは思えないジャンプシュートだな。」

と沢北。

「不細工ダス。だが、宮城の強気のジャンプシュート、少しは警戒したほうがいいダスね。」

「あぁ、湘北の可能性は全て潰す。」




「宮城君、苦手と言われているジャンプシュートを決めてきましたね。
しかも、1本ほしい大事な場面で。」

「お世辞にも綺麗とはいえないジャンプシュートだったけどね。
でも、夏からの成長。冷静な判断。そして、この全国大会を勝ち抜いてきた自信が、彼を一回り大きくしたわね。」

「宮城君!No.1PGまで、あと1勝だよ!頑張って!!」




山王 14
湘北 8




『シュパ!』


「どうだ!!」




「宮城の連続シュート!!」

「湘北がノッて来たぞーー!!!」




「どうした、リョーちん!!練習でも滅多に2本連続はねぇのに!!」

「うるせーー!!集中した俺は、すげーんだ!!花道!また頼むぞ!!」

「まかせろ!!」



加藤の選択は、インサイドの河田。

河田は、この日初めて、桜木に挑んだ。


だが。


「うわぁ!」

「あまーーい!!」

桜木のディフェンスの前に、シュートを外す。


リバウンドを奪ったのは、白田。

速攻を止められるも、勢いづいた宮城は止まらない。

流川のリターンパスを受け取った宮城は、気合でミドルシュートを決めた。




「宮城さんが全開やでーー!!!
まるで、IHの借りを返すような動きやーー!!」




「宮城君!頑張れーー!!加藤君を超えていますね。」

「今のところはね。」

(だけど、そう簡単にはいかないわ、きっと。)




キャプテン宮城が、湘北に勢いを引き込んだ。



山王 14
湘北 10







続く。

#315 【本物】

2010-06-04 | #11 湘北 選抜編
山王 2
湘北 2




沢北、流川が1本ずつを決め、スタートさせた選抜決勝戦。


両校のエースの得点とあって、山王、湘北ともに大きな盛り上がりを見せていた。




「サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!ルカワ!」




「ぬぬぬっ。うるさい!!」

苛立ちを隠せない桜木。

「花道!沢北と流川は前座に過ぎねぇ!だろ?」

「ふっ。そうだったな。このエース桜木を際立たせるためにな!ハッハッハ!」

(ゲームコントロールよりも花道のコントロールのほうが骨が折れるぜ。)


「さぁ、ディフェンスだ!」

「おうよ。」




湘北は、山王同様、ハーフマンツーで構える。



『キュッキュ!』


『キュ!』




「ほう。その手で来ましたか。まずは、一角潰しですね、安西先生。」

髭をさする堂本。




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

決勝戦前夜。

湘北が宿泊する旅館『めんたいこ荘』のロビーのソファーに一人座る安西。


「柳君。」

「ん!?」

安西は、前を通り過ぎる柳に一声かけた。


「どうですか?決勝戦を前に心境は?」

「いつもと変わりません。ただ・・・。いえ、何でもありません。」

「少し話しませんか。」

「はい。」

静かにソファーに座る柳。

(こうしてみると、やっぱりカーネルにそっくりだな。)


「・・・。」

「・・・。」

しばしの沈黙。


そして、安西が口を開く。


「今大会、自分より小さい選手を相手することはありませんでしたが、君は明日、決勝の舞台に立つ。
これはどういったことだと思いますか?」

「はっはぁ?」

いきなりの質問に戸惑う柳。

「それは、君が彼らよりも勝っていたから。私はそう思います。」

「はっはい。」

「柳君には、大きい選手にも勝てる力がある。」

「・・・。」

しばらく沈黙して、柳が口を開く。


「ですが、明日の相手は、高校屈指のオフェンス能力を誇る柳葉さんです。
正直、抑えられるかどうか・・・。点も奪えるかわかりません・・・。」

柳は、心底で思っていた言葉を安西に投げかけた。


「柳君には、柳葉君よりもスピードと体力があります。やれるはずです。」

「しかし。」

「むしろ、自分より小さい相手に抑えられた柳葉君はどう思うでしょうか?
きっと、悔しさでいつものプレーが出来ない上に、オーバーペースになってしまうのではないでしょうか?
ディフェンスにおいても自分より速い選手をマークするのは難しい。
何より、彼には経験がない。」

「経験?」

「自分より速い選手とマッチアップするという経験が。」

「・・・。」

「そういった意味でも、私は柳君に分があると思っています。」

「先生・・・。」

「明日、期待していますよ。」

「はい。」


(少しでも、俺の不安を拭い去ろうと・・・。先生、ありがとうございます。)

柳は、深く頭を下げるのであった。



-----------------------------------------------------------------------



柳は、柳葉にタイトについた。


「・・・。」

無表情で柳を見る柳葉だったが、かすかに口元が笑ったように見えた。

(俺の全ての体力をディフェンスに注ぎ込んででも、この人をとめてやる!)


「サル風のやつ、初めから跳ばしているな!」

ゴール下から、声を出す桜木。


(ふっ、柳のやつ。自らの考えか?)

と宮城。




「1年に止められるほど、柳葉の刃はにぶっちゃねぇぞ!」

山王ベンチの烏山。




「いくダス!」

加藤が動く。


『ダム!』


『キュ!』


柳葉も動く。



(スピードは俺のほうが上!)

食らいつく柳。


柳葉はマークを外せない。




「いいぞ!柳!!」

湘北ベンチ安田の声援。




逆サイドの沢北は動かない。


「てめー、攻める気あんのか?」

「まぁ、焦るな。いいもん見れるぞ。」

「・・・。」



『サッ!』


柳葉が、右手を上げて、パスを要求する。


『ダン!』


加藤のパス。


『バシ!』




「柳葉にボールが渡ったーー!!!」

「柳葉が来るぞーー!!」




対峙する柳と柳葉。


(横の動きなら、ぜったい負けない!!)


『スッ。』


無表情から、瞳を動かす柳葉。

柳の意識が瞳につられる。


その瞬間。



『キュ!』


ドライブが放たれた。



(!!!)


「!!!!」



「こらぁーー!!サル風!簡単に抜かれるな!!!」



「くそぉー!」

柳葉に追いつこうとサイドステップを繰り出す柳。


だが、柳葉は急ストップ。


間合いを作る。


そして、ジャンプシュートを放つ。


高さは比なれど、そのジャンプシュートは、沢北と同等といっても過言ではない鮮やかなジャンプシュートであった。


「!!」

もちろん、柳は対応することができなかった。



『シュパ!』


リングに触れることなく、ネットを揺らす。




「柳葉ーーー!!」

「ナーイシュ!柳葉ーー!!」




柳葉のシュートを見て、流川が驚いた。


(あんにゃろうも・・・。)


「いいもん見れただろ?あいつも本物だぜ。」にこり。

と沢北。



「・・・。」にこ。

一瞬、微笑む柳葉。

「・・・。」

(まじで凄い。俺はこの人に勝てるのか・・・。)




「柳葉は、沢北にも松本にもなれる山王至上最高のSGだ。
いくらスピードのある柳であっても、柳葉をとめることはできん。」

にこりと笑う堂本に対して、安西はコートをただ見つめるのであった。




山王 4
湘北 2







続く。

#314 【ぶっ倒す】

2010-06-03 | #11 湘北 選抜編
選抜優勝大会 決勝戦


山王 2
湘北 0




沢北の先制点。




「サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!」

「サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!」

盛り上がる山王応援団。

会場の観客をも巻き込んだ。




「沢北君が、1本決めただけで、すっすごい応援ですね・・・。」

「それほど、山王は選抜4連覇にかけているってことね。
これは、湘北も相当やりづらいわね。」

(いや、むしろ湘北を倒すことにかけているのかもしれないわね。)




観客席の陵南も同様の意見であった。

「これはまた、山王もえらい応援やで。」

「この応援に飲み込まれないように、自分たちのリズムを作る。
それが、山王を倒すための最初の試練ですね。」


『コク。』

上杉の言葉にうなずく福田。




「サンノー!サンノー!サンノー!サンノー!」

「サンノー!サンノー!サンノー!サンノー!」




「でも・・・。本当に凄い応援だな。観客の8割以上は、山王を応援しているような・・・。」

と戸惑う黒川。

「大丈夫やろか・・・。桜木さんたち・・・。」

「大丈夫さ。あいつらは、そんなたまじゃない。」

仙道は笑って答えた。




「サンノー!サンノー!サンノー!サンノー!」

「サンノー!サンノー!サンノー!サンノー!」




「花道!ボール。」


エンドラインから宮城にボールが渡る。


「ったく、庶民どもが無駄な応援を。」

「全くだぜ。勝つのは俺たちだ。やつらにも理解させてやろうぜ!」

「おうよ!だまらせてやるぞ!」



宮城が素早くボールを運ぶ。


山王は、ハーフコートマンツーの構え。

ハーフラインを越えたところで、激しく足を動かす。


「宮城。No.1ガードは、この加藤ダス。」



『ダムダム!』


「お前は深津と違って、よくしゃべる。それにそのダスも違和感があるぜ。無理してんだろ!」

「貴様には関係ないダス!」



『ダム!』


『キュッ!!』


『キュ!』




「うぉぉぉーー!!いきなり宮城が突っ込んだーーー!!!」

「いや、加藤も負けていない!!」




『ダムダム!!』


『スッ!』


桜木が、ローポからハイポにあがる。


『キュン!!』


「!!」


そこへ、針の穴を通すような鋭いパス。


「ナイスパス!」


後ろには山王の壁、河田美紀男。


「来い!桜木さん!!!」

「ふん、生意気な!」



『キュ!』


ワンフェイクを入れた宮城が、桜木のハンドトスを受けようと切れ込んだ。


(速いダス。)


桜木の脇を掠めるように、宮城がきれる。



「ぐっ!」

「白田!」

カバーに入ろうとする福原を白田が体で抑える。

(お前だけには負けるわけにいかないんだ。)


「美紀男!宮城ダスーー!!」

「ふぁい!」



『スッ!』


「!!!!」

「!!!」


『クル!』


「あっ!!」

「フェイク!!」


桜木は、宮城へパスするのではなく、ゴールに向かい回転し、シュートを狙った。



「くらえ!ヤマオーー!」


桜木の手からシュートが放たれる。




「おおぉぉーー!綺麗なジャンプシュートやで!!」

叫ぶ彦一。

「腕を上げたな。」

微笑む仙道。

「ぬっ。桜木め。」

しかめっ面の福田。




『シュ!』


「!!」にや。



『ティン!』



「ぬっ!」


「あっ!!」

「!!」



「小坊主!!!!」



「あまいよ。」にや。



沢北の指は、桜木のシュートに触れた。



「美紀男!リバウンドだーー!!」

「ふぁい!!」


「おのれー!小坊主!一度ならまだしも二度までも、この天才の邪魔をしおって!!!」

「桜木の怖さはよくわかっているからな。」にこ。

「おっ。よくわかっておるな。」

ニンマリと笑う桜木。


「いいから、花道!リバウンドだーーー!!!」



ゴール下、河田がリバウンドを奪おうと跳ぶ。


(この試合、桜木さんよりリバウンド取る!)



だが、その後ろから、高い跳躍を見せる影が一つ。



『トン!』



「へっ!?」



212cmの河田の後ろから、ボールに触れる指。


舞い上がるボール。


『スポッ。』


リングを通過した。



桜木と沢北が同時に声を出す。



「流川ぁーーー!!!!」




「すげーー!!!河田よりも跳びやがったーー!!!」

「桜木のジャンプボール以上じゃねーーか!!」

「いや、タイミングだ!タイミングで高さを超えた!」

「しかも、巧いタップシュート!!」




「天才のタップシュートを真似るとは!ごらーー!流川ー!」

「しゃべる時間があるなら、試合に集中しろ。どあほう。」

「偉そうに!!キツネめ。」

怒る桜木。

冷静な流川。


「今のは、俺が眼を離したから、決められただけだからな!!
この先、そんなシュートは許させねぇぞ!!」

「本気のてめーをぶっ倒す。手抜くんじゃねーぞ。」

「年上にいう言葉か!」

ムキになる沢北。

冷静な流川。



再び、桜木と沢北は同時に声を出した。



「てめーをぶっ倒す!!」


「ふーー。」

流川はすかした。



流川のタップシュートで同点。

複雑な三角関係は、早くも波乱模様であった。




「面白くなりそうだな。」にこり。

(俺もあの場にいたかったぜ。)

仙道は、寂しそうに笑うのであった。




山王 2
湘北 2







続く。

#313 【この差は縮まらない】

2010-05-25 | #11 湘北 選抜編
選抜優勝大会 決勝戦

山王 × 湘北




体育館は、大勢の観客で埋め尽くされ、凄まじい熱気に包まれている。




『ドカドカ。』


『ズンズン。』


センターサークル内に足を踏み入れる桜木と河田。


「いくぞ!丸男!」

「ふぁい!!」




『キュ!』


『キュッキュ!』


ポジション取りをする8名の選手。

センターサークルライン付近で、足が、腕が絡み合う。



『シュ!』


審判の手からボールが放り出された。




「わぁぁぁーーーー!!!」

「うぉぉぉーーー!!」

地鳴りのような歓声が起こる。




『ダン!』


『ドン!!』


ボール目掛けて放たれた2つの体。



『パシ!』


桜木が先に触れた。




「河田に勝った!!!」

「すげーージャンプ力!!」




『キュ!』


『キュッ!』


同時に走り出す宮城と柳。

湘北の電光石火の速攻が発動する。




「スタートが速い!!」

「湘北の速攻だーーー!!」




桜木が弾いたボールを身長で有利な白田が掴む。




「前ーー!!!」

湘北ベンチの安田が叫ぶ。




振りかぶる白田。


だが。



『キュ!』


『キュッキュ!』


『キュッ!』


パスが出せない。




「簡単に速攻を許すと思ったか?」

腕組の堂本。




PG加藤、SG柳葉は、宮城、柳を捕らえる。


「へい。」

2線目、流川がパスを要求するも。


「お前を止めれば、この速攻も止まる。」

沢北が流川をピッタリマーク。




「湘北の速攻が止まった!」

「さすが山王!防いだーー!」




『ガシ!』


「!!!」


動きの止まった白田の手から、ボールが奪われた。


「あっ!」

「桜木先輩!!」

「花道!!!」



「いくぜ!ヤマオーー!!」


『ダムダム!』


ドリブルを開始する桜木。




「センターの桜木がドリブル!!」

「なにやってんだ!!」




「美紀男!」


沢北の声に、河田が桜木を止めに入る。



『ダム!』


『クルッ。』


バックロールで鮮やかに交わす。


(うっ巧い。)




「彩子直伝のドリブルよ。センター相手じゃ止められないわよ。」にや。

と満足そうな湘北ベンチの彩子。




「アウトナンバーだ!!」

「湘北の速攻が再び動き出したーー!!!」




『ダムダム・・・。』


「オラオラオラオラ!!!」


『キュ!』


山王ゴールを目指す桜木だったが、急ストップ。


「ぬっ。」




「沢北だーー!!!」

「桜木を止めに来た!!」




「花道!流川だ!!流川にパス!」


「逃げる気か、桜木!?俺をぶっ倒すんだろ?こいよ。」にや。


「ぬっ。」

一瞬の葛藤を見せた桜木の動きが止まる。



『パシ。』



「あっ!!」



「バカ!!」

「何やってんだ!花道!!!」



「もーらい!!」

一瞬の隙をつき、沢北は桜木の手からボールを弾いた。



転がるボール。


沢北が拾い上げる。

「山王の速攻は、湘北より速いぜ。」にや。


桜木、流川を見て一言、言い放つと湘北リング目指して、駆け上がった。


「小坊主ーーー!!!」


(あんにゃろう!!)




「逆速攻だーーー!!!」

「沢北速ぇーーーー!!」




沢北の背中を追いかける桜木と流川。


山王選手が後を追う。


湘北選手が懸命に戻る。



『ダムダム!!』


『ダダッダン!』


『キュッ!』


『サッ!』



『スポ。』


ボールがネットをくぐり抜けた。


振り返った沢北は、桜木と流川に話しかける。

「追いつけなかったな。」にこり。


桜木と流川は、沢北との距離を縮めることができず、速攻を許す格好となった。


「この差は、縮まらない。いや、むしろ、この試合もっと開くぜ!」


「上等だ。」

と流川。


「庶民シュートごときででかいこといいおって!」

とボールを掴みながら、桜木はいった。




決勝戦は、沢北のレイアップシュートという静かな立ち上がりで始まった。




山王 2
湘北 0







続く。

#312 【対戦者】

2010-05-21 | #11 湘北 選抜編
選抜優勝大会 決勝戦

山王×湘北



山王のスタメン紹介も終え、コート上には、10名の選手が整列していた。



「流川、どっちがNo.1か、決めようぜ。」

「・・・。」

流川が沢北に無言で答える。


「小坊主、俺がNo.1だ!」

「ふん、桜木か。」

「鼻で笑うな!」


『クイ。』

左の人差し指で自分を指す柳葉。

「おー、そうだったな。柳葉とも勝負してんだったんだな。」


「チビ猿君の分際で小ざかしい。キツネも小坊主もチビ猿君も全員このエース桜木がぶっ倒す!」


「どあほう。」

「楽しみにしてるぜ。」

「・・・・・・・・・。はなみち。」ボソッ。


「おめーら、始まるぞ!!」

宮城が声をかけた。




湘北の5人の前に立っているのは・・・。



深津イズムを受け継いだPG加藤。


(ちきしょう。相変わらず分厚い唇しやがって。やっぱり、てめーの顔はいけすかねぇぜ。)

睨みつける宮城。


「ここまでよく勝ち上がってきたダス。だが、それも今日で終わりダス。山王が4連覇ダス!」

「へっ。その分厚い唇でものがいえないように叩き潰してやるぜ。」

「唇のことはいうなダス。」イラッ。



SGに寡黙なオフェンスマシーン柳葉。


(俺の相手は、高校屈指のポイントゲッター柳葉さん。
相手にとって不足はない。新旧交代といきましょうよ。)にこり。

柳が笑うと、柳葉もつられて少し微笑んだ。


『チラ。』

そして、柳は安西を一瞬見る。


(勝ってみせますよ。)



自他ともに認めるNo.1高校生プレイヤー沢北は、SF。


「流川、さっきは邪魔が入っちまったが、この試合は選抜の優勝を決めるのはもちろん、高校生No.1を決める試合でもある。
わかってるな?」

「かんけーねー。」

「わかるぜ。お前の闘志をビンビン感じるぜ。」

「勝ったほうが、一番だ。」



身長188cm小柄なPFには、常盤中出身の福原。


「スタメンを勝ち取ったようだな。」

と白田。

「俺は全てを捨て、山王に来たんだ。仲間も何もかも捨ててな。」

「柳は捨てられたと思っていないぞ。もちろん、黒川や上杉たちもだ。」

「・・・。」

「部外者の俺がいうのもおかしいが、あの試合、誰もお前を責めていないぞ。
責任感じて、みんなの前にいられなくなって、山王にいったのなら、それは逃げとしか思えない。」

「なっ。」

「だが、柳たちはそうは思っていない。あいつは、全国制覇への最短距離を選んだってな。
快の選択は格好いいってな。」

「・・・。」

「湘北が優勝したら、お前は柳と向き合え!約束だ!」

「・・・。」



そして、コートの中で、誰もよりも高くそびえ立つC河田。


「さっ桜木さん!今度は、負けないよ!」

「いうようになったじゃねーか。丸男。俺をデカ坊主と一緒にするなよ。」

「天才リバウンダー桜木さんは、僕が倒す!」


『ゴン。』

桜木は、拳を河田のあごに軽く当てた。


「てめーも小坊主もヤマオーもぜーーんぶ俺がぶっ倒す!!」




「山王工業!青!湘北高校!白!で始めます。」




「いよいよ、始まるでーー!!要チェック!要チェック!」




「相田さん・・・。眼がシパシパします。さすがに、徹夜はしんどかったですよ・・・。」

「私は、ちゃんと寝たから平気なのよね。」

「ずるいですよ・・・。相田さんだけ、寝ちゃうんですもん。」

「寝不足は、お肌に悪いからね。」




「サーーーンノーー!サーーーンノー!」

「ショーホク!ショーホク!」

「サーーーンノーー!サーーーンノー!」

「ショーホク!ショーホク!」



「沢北、ぶちかませーー!!」

「4連覇だーー!!山王ーー!!」

「湘北!!夏のリベンジだーー!!!」

「派手なプレーを見せてくれーー!!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」




「白田以外のポジションは、山王のほうが高い。」

と福田。

「いつもどおりですよ。」

と答える黒川。

「相手が、強豪校くらいなら、それでもなんとかなる。
だが、相手は山王、これは堪えるな。」

と仙道。

「特に、あそこは。」

福田が見つめる先には、柳の姿が映っていた。


(春風・・・。)

黒川と上杉は、心配そうな表情で、柳を見つめるのであった。




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【山王】青

PG…#4 加藤 夏輝 181cm/3年
SG…#9 柳葉 敏 180cm/2年
SF…#7 沢北 栄治 193cm/3年
PF…#15 福原 快 188cm/1年
 C…#10 河田美紀男 212cm/2年


【湘北】白

PG…#4 宮城リョータ 170cm/3年
SG…#9 柳 春風 171cm/1年
SF…#7 流川 楓 191cm/2年
PF…#14 白田 豊 194cm/1年
 C…#10 桜木 花道 195cm/2年

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続く。