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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#311 【決勝戦直前】

2010-05-19 | #11 湘北 選抜編
熱気と歓声に包まれた体育館。

いうまでもなく、今大会最高の盛り上がりを見せている。




山王ベンチ。

堂本を中心に、選手たちが作戦の最終確認をしている。


「沢北、昨年の夏以来だな。」

「はい。」


今年のIH、国体と出場していない沢北は、実に1年半ぶりの湘北との対戦であった。


「荒削りだった1年前の湘北とはわけが違うぞ。」

「わかってますよ。監督。でも、俺だって、ムラだらけの1年前とは、全く違いますから。」

「そうだったな。」

堂本は続ける。


「昨夜話したとおり、最初から全力を出して戦え。先輩たちが歩んできた道に新たな道を加える。
お前たちならそれができる!」

「はい!!」

「初めから、飛ばしていけ!!お前たちがベストだ!!」

「はい!!」


山王ベンチは、今までないほどの気合を見せていた。




かたや、湘北ベンチ。

「・・・。」

静かに安西の下に集合していた。

決して、臆しているのではない。

込み上げて来る闘志を抑えていたのであった。


「リョーちん、もう限界だぜ!!」

「まぁ待て。あと少しの辛抱だ。その思い、コートで思いっきり爆発させろ。」


流川の眼は、炎と変わっている。


柳は淡々とストレッチをし、白田は汗を拭っている。

1年生ながら、この大舞台で緊張しているようには見えなかった。

彼らには、決勝まで勝ち進んできた自分たちの実力に自信があった。

その自信を植え付けたのは、いうまでもなくキャプテン宮城であった。

準決勝、巧みな話術と指示により、ベンチから彼らをサポート。

結果、彼らは最高レベルのプレーを記録して、これ以上ないモチベーションで決勝戦を迎えたのであった。


(あとは、山王を叩くのみ。)

(ここまできたら、やってやるしかない!)


「オヤジ!一言ねえのか?」

安西の口に注目する。


「・・・・・・。」

少し溜めた安西の口が開く。


「多くの人たちに支えられ、私たちはここにいる。」


選手らは、先輩やライバル、友人らを思い出した。


(ダンナ・・・。)

(仙道・・・。)

(あいつら・・・。)

(三井さん・・・。)

(ハルコさん。)にや。


目まぐるしく、脳裏に神奈川の仲間たちの顔が浮かぶ。


「さぁ、今度は君たちが彼らの想いに応える番です。」


『キラ。』

眼鏡が光る。


「優勝あるのみです。」


「おう!」

「うす。」

『コク。』

「はい。」




「只今より、両校のスターティングファイブの紹介をいたします。」




「うおぉぉーーーー!!」

「始まるぞーーー!!!」

「いよいよだーー!!」

アナウンスと同時に、大歓声が起こる。

会場は多くの観客で埋め尽くされ、始まりのときをまだかまだかと待ち侘びていた。




「神奈川県代表神奈川県立湘北高校 #4!宮城リョータ選手!」



静まることのない大歓声のなか、宮城がトップバッターとして、コートに足を踏み入れた。


(ダンナ、三井サン、木暮さん、しっかり見ててくれよ!
ぜってー、優勝カップを湘北に持ち帰ってやるから!そして・・・。)

ベンチを振り返る宮城。

彩子が右手の親指をあげている。


『コク。』

うなずく宮城。


(アヤちゃんに最高の笑顔を!!!)




「#7!流川楓選手!」




「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」




『パン!』

リストバンドを小さく弾いた流川が静かにコートに向かった。


「流川君。決めてきなさい。」

「うす。」


安西の言葉の真意を悟った流川からは、とてつもないオーラが放たれていた。



流川に視線を注ぐ沢北。

「勝負だ。流川。」にこり。



そして、もう一人。

(勝てよ。)にこり。

観客席の仙道であった。




「#9!柳春風選手!」




「春風ーーー!!!」

珍しく叫ぶ上杉と黒川。




『ドクンドクン。』

(やべっ。初めてだぜ、こんな気持ち・・・。)


天井を見る柳。

「これが、武者震いってやつか。」


山王ベンチの福原をみる。

(快、今回は勝たせてもらう!そして、ちゃんと向き合おうぜ!)


柳葉に眼を向ける。

(そして、あんたにも!!)




「#10!桜木花道選手!」




一際大きな歓声。

「待ってました!赤頭!!!」

「今日は何本のリバウンドを奪うんだーーー!!!」




「オヤジ。」

「ん。」

「俺の全盛期はもっと先だ。だから、今日の俺が最高だと思うなよ。」

「わかってますよ。」

安西は、桜木が#10の背番号をつけ、全日本のユニホームを着ている姿を想像し、微笑んだ。


「ハルコさん。」

「頑張って。」

「ハイ!」




「桜木さん、思ったより大人しいやないですか?」

「実力だけじゃなく、精神も成長したかもな。」

と仙道。

「それはありえない。」

福田がいった。




「#14!白田豊選手!」



『パンパン!!』

両手で顔を叩く白田。

「おっ、珍しいな、白田?」

潮崎が声をかける。

「この舞台に立つことを夢見ていました。
まさかと思って、思いっきり叩いてみましたが、俺はここに立っている。夢じゃないみたいですね?」

「あはは!当たり前だろ!」

「俺も夢かと思ったけど、紛れもなくここは決勝の舞台だ。」

「お前の力で辿り着いた場所だ。」

「潮崎先輩・・・。いや、チームのみんなの力で辿り着いた場所です。」

「白田・・・。」

「絶対に勝ちましょう!!」

「あぁ!ゴール下を任せたぞ!」



湘北の5人が、センターラインを境に整列した。


「みんな、ただ楽しめ。そしたら、自ずと結果はついてくる。」

「はい。」

『コク。』

「わかってるぜ!」



まもなく、決勝戦が開始される。








続く。

#310 【ひょっこり福田】

2010-05-18 | #11 湘北 選抜編
福岡総合体育館。


選抜優勝大会 決勝戦 山王工業×湘北

第3位決定戦 名朋工業×喜多島


地元博多商大附属が敗退したにもかかわらず、会場は選手を応援する観客たちの熱気で、
汗ばむほど盛り上がっていた。




現在、第3位決定戦の試合中。


体勢は、ほぼ決定していた。



コート脇の出入口には、山王工業の選手たち、反対方向の出入口には湘北高校の選手たちの姿があった。




観客席。

空席を探しながら、試合を観戦している5人の男。


「喜多島は、よく走るな。」

「身長が低い分、横の動きで名朋に勝つしかないからな。」

陵南の上杉、黒川が話している。


『キョロキョロ。』


「席、ありまへんな。」

と彦一。


「相変わらず速水の体力は、無尽蔵だな。」

と仙道がいった。

「あぁ。」

福田がうなずいた。


「仙道さんも一目置く速水かけるさん!要チェックやでーー!!!」


彦一を無視するかのように、指を差す上杉。

「仙道さん、あそこ空いています。」

「あぁ。」



「ところで、監督、遅いなーー。」

ここに田岡の姿はなかった。



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<<回想>>

今朝 6時30分。

新横浜駅。


福岡にて行われる選抜の決勝戦を観戦するため、田岡、上杉、黒川が待ち合わせをしている。

そこへ、彦一に引っ張られるように、仙道が辿り着いた。


「ふぁーーー。」

あくびをしながら、仙道。


「遅れて、すいません。」

『ペコリ。』


「計算どおりだ。問題ない!!」ギラ。

「おぉ!仙道さんの遅刻を計算しているとは、さすが監督やで。」

仙道の遅刻を計算にいれ、集合時間を早めた田岡。


成長の証であった。



「これで、全員だな。よし、いくぞ!」

「はい。」

声を出す上杉ら。


『コク。』

最後尾で静かにうなずくサングラスと帽子をかぶった男。


「ん!?」

振り向く田岡。



「ふっ福田!」



「フクさんやて!?」

振り向くメンバー。

そこにいたのは、紛れもなく福田であった。


「なんで、福田さんがここに!?」

「今日は、練習の予定だったはずなのに!」


「俺も・・・。」

ボソッと声を出す福田。


「福田、お前は練習だぞ。つれてはいけん!!」

「かっ監督!そないなことゆうたって、もうきてしまったんやないですか?
フクさんも一緒にいってええんちゃいますか?」

「しかし、お前のチケットはないぞ。」

田岡の手には、5枚の新幹線のチケットが。


「なら、仕方ないですね。」

そういいながら、田岡を見る仙道。

他のものも田岡を見た。



『ギクッ。』


『ジリジリ・・・。』

後ずさりをする田岡。


『ジリジリ・・・。』

詰め寄る彦一たち。



「わかった・・・。お前たちは、先にいけ。俺は、次の新幹線でいく・・・。」

「おぉぉーー!!さすが、監督!寛大な人や!!」


「ぐっ。」

彦一の言葉に、素直に喜ばれずにいた。



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「監督、遅いな。」

「駅で迷ったか・・・?」

黒川の予想は当たっていた。




博多駅で、地図を見つめながら、おろおろする田岡の姿があった。

「どっどっちだ・・・。完璧に迷ってしまったぞ。」




陵南選手たちが観客席につくと同時に、会場にブザーが響き渡る。




「うぉぉぉーーー!!!」

「わぁぁぁーー!!」

「森重ーーー!!!」

「名朋ーーー!!!」

「おめでとうーー!!!」

「よくやったぞーー!!!」




コート上で、挨拶をしている選手たち。


会場にアナウンスが流れる。



「第3位決定戦 愛知県代表名朋工業対福井県代表喜多島高校の結果、88対67、名朋工業の勝利となりました。」




「やはり、森重を抑えることはできなかったですね。」

「あの身長差では仕方ないだろう。」

「速水もよくやったけどな。」

「さぁ、いよいよ湘北だ。」




「続きまして、決勝戦 秋田県代表山王工業対神奈川県代表湘北高校の試合を始めます。」


流れるアナウンス。




「待ってましたーーー!!!!」

「サンノー!サンノー!サンノー!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」

「押せ押せ!山王!!!」

湧き上がる会場。

観客のテンションは、最高潮を迎えていた。



そして、彼らも。



「よっしゃーーー!!山王をぶっ倒して、俺たちが一番だーーー!!!!」

「おうよ!!!」

「はい!!!」




「流川、待ってたぜ!このときを!昨年の夏のリベンジを果たす!!!」

「前人未到の選抜4連覇!!いくぞーー!!」

「おう!!!」




十分すぎるほどの気合に満ちた両校の選手たちが、コートになだれ込んだ。








続く。

#309 【最高潮】

2010-05-14 | #11 湘北 選抜編
陵南高校 体育館更衣室。



彦一が、準決勝第二試合 喜多島×湘北について、熱く語っている。


「100対75。まさかの圧勝劇や!!」


「うぉぉーー!!」

「やるな!湘北!!」

陵南選手から歓声があがる。


「すげーーな。」

「確かに、準決勝で100点ゲーム、しかも25点差をつけるとは、湘北も県予選よりも腕を上げた証拠だな。」

と冷静な植草。


「姉ちゃんの話やと、喜多島は博多戦で相当な体力を消耗したようやったとゆうてたけど、
それでも体力、脚力に自信のある喜多島や。
正直、ここまで離されるとは思ってもみなかったと思うで。」


「湘北の勝因は、高さ。」

いつの間にか、制服に着替え、椅子に腰掛けている福田がいった。


「そうや。青森酒田戦をきに、ディフェンス能力、経験値を向上させた桜木さんは、
洛安戦で奪い取った21リバウンドの勢いそのままに、喜多島戦でも大暴れやったそうや。」



桜木 花道  22P 16R 8B



「16リバウンドもすげーけど、8ブロックもすげーぞ!」

「現在、リバウンド、ブロック部門で1位独走中のようやで。決勝で河田君を倒せば、
間違いなくNo.1センターとなる、誰も文句はつけられへん。」

「あの桜木がな・・・。去年までは、素人丸出しのただの無礼者だったのに、
今は高校生最高のリバウンダーであり、No.1センターにあと一歩だもんな。」

「魚住さんや赤木さんが聞いたら、どういう反応するかな?」

苦笑する越野。


陵南の上級生たちは、桜木と戦った練習試合、公式戦を思い出していた。


「ルールもわからず試合に出ていた昨年の春の練習試合が懐かしいぜ。」

「あの試合は、傑作だったな。」

「撮ったビデオは永久保存版だな。いつか、あのやろーに見せてやろうぜ!」

「そりゃいいぜ!!」

桜木の話で盛り上がる陵南上級生たち。


(桜木・・・。)

福田もまた、屋外のコートで桜木と出会ったときのことを思い出していた。

(戻ってきたら、勝負だ。)



「彦一、それだけじゃないだろ?」

桜木との想い出が少ない山岡の口が開いた。

「もちろんやで。PFの白田さんもオフェンスでチームの勝利に貢献したそうや。
怪我は完治し、その影響はまるでなしとゆうで。」

「身長もさることながら、中学時代ゴール下の魔術師といわれた男だ。
相手が自分より低いのであれば、やつのオフェンス力は脅威。」

と白田に怪我をさせた黒川が、そっと胸をなでおろす。



白田 豊  25P 6R



「彦一さん!春風は?」

中学時代のチームメイト上杉が興味深そうに聞いた。


「ちょちょっと待ってや!」

弥生との電話で綴っていたメモを数枚捲った。

「おっ、あったあった。これや。」



柳 春風  17P 12A



「12アシスト・・・。あの春風が・・・。」

少し驚いた表情を見せる上杉。

「誰よりも貪欲にリングを目指していた春風が、12アシストも決めるとは。
いい意味で、俺たちが知っている春風は、もういないかもな。」

と黒川。

「抜群のオフェンス力にアシストを加えた春風。来年、あいつとやるのが楽しみになったよ。」にこり。

「お前の相手は、流川さんだ。」

「やっぱり・・・。」

上杉空斗は苦笑した。



「アシストを加えたといえば、確か流川も洛安戦で2桁のアシストを記録していたよな?この試合は、どうだったんだ?」

越野が尋ねる。

「仙道さんに流川君のこの成績を是非見せたかったで。
今まさに流川君は、最高の時を迎えた、そういっても過言ではありませんで。」



流川 楓  26P 10R 11A 3S



「トリプルダブル・・・。」

「すげーー。」

「仙道さんに引けを取らない成績。」

「沢北との勝負に弾みをつけた感じだな。」


「今大会、トリプルダブルを記録した選手は、流川君しかおらん。
昨年の牧さんや土屋さん、大和さんのように、全てのスキルにおいてトップレベルを維持している選手が少ないのが、
今大会の特徴や。」

「流川の株は急上昇だな。」

「湘北が優勝すれば、流川のMVPは確定ということか。」

「仙道と並ぶ評価を得るわけだ。」



「だが、そううまくはいかない。」

ドアのほうから、太い声が聞こえた。


「かっ監督!」

田岡であった。

「いつまでも更衣室に明かりがついているからと思ってきてみれば、また彦一のおしゃべりか?」


「ちっ違いまっせ。明日の選抜の決勝戦の予想を。」


「ふん。明日は、あの山王工業だ。いかに流川や桜木が、全国での舞台で成長したからといって、
そう簡単に、湘北が勝てるとは思えん。」

「でも、湘北は神奈川の代表や。やっぱり、応援したいですやん。」



「ふーー。」

一息入れる田岡。


「明日、6時30分。新横浜集合。福岡にいくぞ!」


「かっ監督!!!」

陵南選手が一斉に声をあげる。


「連れて行くのは、上杉、黒川。お前らは、来年のために、山王と湘北、そして3決の名朋を研究しろ。」

「はっはい!!」


「わっわいは!!」

「好きにしろ。」

「はい!!例え、火の中水の中、どこまでもついていきまっせ!!」


「仙道もつれていく。彦一、ちゃんと連れて来いよ!」

「はい!!」


「越野、福田たちは、残って練習だ。」

「はい。」

少し残念そうな表情を見せる越野や山岡ら。


(・・・。)

福田は、ふてくされていた。



「ところで、彦一。宮城のスタッツは、どうだったんだ?」

越野が問いかける。



宮城 リョータ  4P 3A



「あまり調子がようなかったと思います。」

「プレッシャーか、または疲れか・・・。IHの悪夢が尾を引いているのかもしれないな。」

「ほぼ一人でチームをまとめあげているんだ。仕方がないだろう。」




その頃、湘北選手たちが宿泊している『めんたいこ荘』


一人ロビーで、準決勝のスコアシートを見る宮城の姿があった。



『グシャ!』


手に持っていたスコアシートを握る。


(わずかな指示で予想を上回る結果、全員最高潮を迎えている。
舞台は整った。明日は俺さえ、冷静でいられれば、ぜってー勝てる。俺さえ・・・。)

翌日の決勝戦に向け、闘志を漲らせる宮城であった。








続く。

#308 【No.1プレイヤー】

2010-05-13 | #11 湘北 選抜編
陵南高校 体育館更衣室。



彦一による準決勝第一試合 山王×名朋の試合展開の報告が終わった。


「結論は、第4Q失速した森重君と名朋を、山王が叩き潰したとゆうことや。」

「うちのIHの展開と同じだったな。」

と越野。


「いかに森重といえども、弱点はある。」

と山岡。

「あの巨体で40分間走り続けることは難しい。かたや、うちは体力には自信があった。」

と植草。



陵南が総体準決勝名朋戦でとった作戦、山王が選抜準決勝名朋戦でとった作戦とは。



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<<回想>>

準決勝第一試合

山王×名朋



山王ベンチ。

「後半。いや、第4Q勝負だ!!」

堂本の眼が光る。

「前半は、森重の体力を消耗させるんだ。やつに簡単なプレーをさせてはならんぞ!足を動かさせ、走らせろ!!」

「はい!!」


「そして、第4Q、一気に叩き潰せ!いいな!!」

「はい!!」


「河田、森重に負けるなよ!」

「ふぁい!!」


「沢北!勝つも負けるも、第4Qのお前の出来次第だ。任せたぞ!」

「準々決勝以上のプレーを見せますよ。」にこり。



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陵南高校 体育館更衣室。


「森重に早くからきつくあたり、体力の消耗を狙う。
そして、森重の運動量が落ちた第4Q、畳み掛けるように攻め倒す。」

「名朋の敗因は、森重の失速。」

「かたや、山王の勝利の決め手は、最後まで走れる体力とベンチ層の厚さ。そして・・・。」


「信頼のおける絶対的なエースの存在・・・。」


「そういう意味では、うちと山王は似たようなチームだということだ。」




だが、陵南選手は大きな一つの勘違いをしていた。



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<<回想>>

山王×名朋 第4Q序盤



『バス!!』




「うおぉぉーーー!!!」

「森重ーー!!」




「今ので30点目です!!監督、このまま森重がいってしまうんではないでしょうか!?」

堂本の横にいるマネージャーが心配そうに声をかける。


「うむ。私の考えが甘かったかもしれない。」

(IH、国体では明らかに第4Qの森重の運動量は落ちていた。しかし、今日は微塵も感じさせない・・・。
この短期間で、弱点を克服させてきましたか?さすが、冨名腰監督。)

一粒の冷や汗を流す堂本。


「だが、ここまできたら、あいつに任せるしかない。」




「堂本よ。もうヒロシは止められないぜ。王朝崩壊だ。」

にやける名朋監督冨名腰。




第4Qも2分が経過し、山王は11点差ビハインド。

森重の体力は、限界を迎えるどころか、ますます動きはよくなるばかりであった。



「こりゃ、監督の作戦ははずれたな。」

沢北が苦笑いをする。


『コク。』

柳葉がうなずく。


「一向に運動量が落ちないダス。」

とキャプテン加藤。


「あぁ。このままじゃ、やばいな。
俺が復帰した大会で優勝できなかったなんて、深津さんたちに知れたら、なんて言われるか。
よし!マッチアップの変更だ。夏輝は中嶋、柳葉は森、福原は大石だ。大石は手強いぞ!」

「はい!」


「俺がPFの泉山をマークする。美紀男はそのまま森重につけ!
森重にボールが渡ったら、俺とダブルチームで抑えるぞ!!」

「ふぁい!!」


「オフェンスは、俺にボールを集めろ!!こんなところで、負けるなんてごめんだぜ!!」

「はい!!」



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山王は、第4Qで失速した名朋を破ったのではない。

更に勢いを増した名朋、森重を抑え込み、その上を行くオフェンス力で、破り去ったのである。




大エースとしての証明。

それは、オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導くプレイヤー。




第4Q、沢北は13点を獲得した。


それ以上に森重を抑えるという数字には現されないところで活躍を見せた沢北は、
間違いなく高校生No.1プレイヤーと呼ぶに相応しい圧巻の動きであった。



(やはり、沢北がベストだ。)



改めて、沢北の存在の大きさを認識する堂本。



4連覇をかけ、山王が決勝に駒を進めた。








続く。

#307 【決勝の組み合わせ】

2010-05-10 | #11 湘北 選抜編
時は、弥生が中村と原稿を書き始める前に遡る。




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<<回想>>

福岡のとあるホテルの部屋の前。


(なんだろう?いきなり部屋に呼びつけて・・・。
なんか凄くいやなことが起こりそうな予感がする。)



『ガチャ。』


「相田さーん。失礼します・・・。」

部屋の中は、静寂に包まれている。


「相田さん??あれ!?いない・・・。」

(呼び出しといて、どこにいったんだろう・・・。まったく・・・。)




その頃、弥生は、ホテルの公衆電話の前にいた。


「姉ちゃん!どうなったんや!?」

弥生は、陵南高校の彦一に電話をかけていた。


「そないな大きな声出さんといて、耳が痛いやろ。」

弥生は、彦一と話すときは、関西弁がメインとなる。


「聞きたい?」

「もちろんやで!はよ、教えてくれや。」


「その態度は、聞く態度じゃあらへん。」

溜める弥生。


「ええから、姉ちゃん。教えてくれや。」

「わかった、わかった。しっかり、仙道君にも伝えるんやで。」

「もちろんや。で、明日の決勝戦は?」


「明日の決勝戦は。」


「明日の決勝戦は!?」


「貴方の望んできたとおりの試合や。」


「そっそうか!そりゃ、嬉しい結果や!!」


(彦一のやつ、ほんまに嬉しそうやな。声だけでも、わかるで。)


「姉ちゃん、スコアーはどうやった?」

「聞いて驚きなさいよ!!」

「あっ!ちょっと待ってくれ、今メモるから。えーと、えーと、いいで。
がっつりかましてくれや!!」



「準決勝第一試合は、94-88で、山王よ。」


「うぉぉーー!!名朋工業相手に、6点差とは。またしても接戦やで!!」


「第3Qまでは、名朋ペース、いや森重君ペースやった。」

「森重君ペースやて?」

「ええ、30分間試合を動かしていたのは、紛れもなく森重君だった。
得点を量産し、リバウンドを制し、コートを支配していた。ただ、最後の10分は・・・。」


「沢北さんが支配したんやろ。」


「そういうこと。やっぱ、終盤の彼は、頼りになる。準決勝以上の動きを見せていた。
会場にいた全てのものが、そのプレーに心奪われていたわ。」


「わいもそこにいたかったわ・・・。んっ!?全てのものが、心奪われた!?まっまさか、姉ちゃん!!」


『ドキッ。』

電話越しに聞こえる弥生の鼓動。


「姉ちゃん!!」

「なっなんや、彦一!!わたしは、仙道君一途よ!!」

「高校生相手に威張っていうことやあらへんやろ!!」


「さぁっ、第二試合よ。」

「おっそうや!」


(んっ、沢北君絡みでなにか言い忘れたことがあるような・・・。)

少し気になった弥生であった。



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時は現在。

陵南高校 体育館更衣室。


彦一が、今まさに、選抜の決勝戦の組み合わせを言葉に変えようとしていた。



「明日の決勝戦は!!」


「明日の決勝戦は!?」



「山王と湘北や!!!」



「よし!」

「よくやったな!!」

同胞の決勝戦進出とあって、素直に喜ぶ陵南選手たち。


(桜木・・・。)

顔色一つ変えずに、服を着替える福田。

山岡が声をかける。

「フクさん、嬉しいっすね。」

「うるさい。あっちにいけ。」

「相変わらず、素直じゃないっすね。」

福田もまた、嬉しいはずであったが、素直に喜べない。


(桜木・・・。俺より目立つな・・・。)

自分より目立つものは、基本的に嫌いである。



「先に帰るよ。」


淡々と帰り支度をしていた仙道が、みんなに声をかける。


「お疲れ様です!!」

声を揃える1、2年生。


「仙道、彦一の話を聞いていかないのか?」

キャプテン越野が尋ねた。


「湘北が勝ったってことだけで、十分だ。じゃーな。」



『ガチャ。』


手を振り、更衣室を出て行く仙道。



見送った山岡がいう。


「仙道さんも素直じゃないっすね。誰よりも嬉しいはずなのに・・・。」

「でも、その感情を表に出さないのは、あいつらしいな。」

と植草。

「そうすっね。」

「それにしても、酒田、洛安と強豪校を倒して、決勝進出とは、湘北も一気に強くなったな。」

と越野。

「当たり前じゃないっすか!うちを倒して、全国に行ってるんだから、優勝してもらわなければダメっすよ!!」

「ふっ、そうだったな。」




その頃、廊下を歩く仙道。


かすかに、鼻歌が交じっている。


(流川たち、全国の舞台でまた成長したようだな。大方、流川は、アシストを加え、オフェンスの幅を広げたか。
桜木は、そのリバウンド力に更に磨きをかけたか。
どっちも長所を伸ばすタイプだし。次に手合わせするのが、楽しみだ。)にこ。

仙道を予想は当たっていた。



(ん!?次・・・?いつになるんだっけ?)



その舞台は、遠く遠く先のことであった。








続く。

#306 【洛安×湘北】

2010-05-07 | #11 湘北 選抜編
福岡のとあるホテルの一室。

弥生と中村が、準々決勝と準決勝の6試合の原稿を書き上げている。


「いよいよ湘北戦ですね。やっぱり、湘北戦の原稿となると、ペンが進むなー。」

「次は、準々決勝第四試合 洛安対湘北の対決よ。」

「IHのリベンジに燃える全国常連校の洛安対青森酒田との激戦を制した湘北の熱い試合でした。」


「いい意味に裏切られた試合でもあったわね。」

「そうですね。」

中村の声のトーンは高くなっていた。




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>


「宮城君!」


『クル。』


「あっ、あねさん。」

「そっそれやめてもらえるかな?」

苦笑う相田。


「準決勝進出おめでとう。」

「ありがとうございます。」

「予想以上の勝ちっぷりだったわね。」


にやっとわらう宮城。

「ええ。今の湘北は、酒田戦を経て、最高の充実期に達している。
例え、山王だろうが、名朋だろうが、もうどこも止められませんぜ。」

「凄い自信ね。その自信の影には、やはり流川君と桜木君の成長が?」


相田は、ペンを走らせながら、宮城にインタビューを続ける。

「そうっすね。確かに、流川のディフェンス力やパス、花道の総合力の向上が、チーム力のアップに繋がっていますけど、
ただ、それだけじゃありませんよ。」

「確かに。それに今日の試合を観させてもらって、納得したわ。」




準々決勝第四試合

洛安×湘北



「よっしゃー!お前ら、走れーー!!!」

大きな声を出すのは、ベンチにいる宮城。

安西の横に座っている。



第3Q、宮城はベンチに下がっていた。

コート上を走るのは、桜木、流川、白田、柳、そして緑川。

来年のスタメンを務めるであろう5人であった。




『シュパ!』


流川のアシストから緑川がミドルシュートを決める。




「ナーイシュ!緑川!!」

湘北の応援団が活気付く。


「どういうわけか、相性がいいわね。あの2人。」

「そうですね。緑川君は、流川君のパスだけは高確率で決めている。不思議ですね。」

「それに、流川のパスが冴に冴えているわ!何かあったのかしら?」


「へへっ。」

宮城は、微笑んでいた。




ラン&ガンを得意とする洛安相手に、走り負けない湘北の5人。




「そろそろ、流川の息があがる時間ですが、先生、どうしますか?」

「このままいきましょう。」

「そうですね。結束しつつあるチームをほどくことはありませんからね。」




試合残り時間4分。


13点差で、湘北はリードしていた。

集中力を欠く洛安に対し、追い討ちをかける湘北。


そのまま、試合終了のブザーを迎えた。




洛安 67
湘北 86




強豪校相手に、19点差。


圧勝であった。


更に驚くべき、選手のスタッツ。



柳 25P 4A

白田 22P 8R 4B

流川 16P 11A 5S

桜木 10P 21R

緑川 9P

宮城 4P 4A



洛安相手に、柳、白田の1年生コンビが、チームを勝利に導いていたのであった。


それは、彼らが全国クラスの実力をつけていた証明でもあった。




宮城と相田の会話に戻る。


「宮城君が、ベンチに下がったのは、作戦通り?」

「ええ。そうですね。」

「それは、山王、名朋戦を前に、改めて彼らの実力を推し量るためかしら?」

「さすが、あねさん。鋭いですな。」




ハーフタイム。

宮城と安西が会話をしている。


「わかりました。宮城君のいうとおりにしましょう。」

「ありがとうございます。」


宮城は、深く安西に頭を下げると、流川の下へいった。


「流川。」

シュート練習している流川が振り向く。


「どうだ、洛安の手応えは?」

「問題ないっす。」

「そうか。それなら、山王戦を前にパスの精度の確認といこうぜ。」

「?」

「アシストだ。アシストは、沢北に勝つための布石に必要だろ。」

(沢北に勝つため・・・。)


「柳たちを巧く誘導してやれ。後半、任せたぞ。」

「うす。」



そして、宮城の足は、桜木の下へ向かう。

「花道!」

「なんだ!リョーちん!!」

「さすが、花道だぜ!洛安相手に、ゴール下を支配してやがる。」

「ハッハッハ!俺を誰だと思ってんだ!!」

「わーってる。天才桜木だろ?」

「さすが、リョーちん。」

「そこでだ。この試合、記録を狙え。」

「記録?なんだ、それは?」

「今大会、20以上のリバウンドを奪った選手はいない。普段の試合でもなかなか出せる記録じゃない。
つまり、20リバウンドは、天才の証だ。どうだ、花道、おめーならいけるだろ?」

「ふっ。当たり前だぜ。」にやり。

「おめーは、リバウンドに専念しろ、オフェンスは、やつらに任せておけばいい。」

チラッと柳らを見る宮城。


「花道が、最強の天才リバウンダーってことを証明してやれ。」

「わかったぜ!この試合でヤマオーやデカ坊主の度肝を抜いてやるぜ!!」

「おう。いい選択だ。」


(流川も花道も、性格さえ掴めば、可愛いやつらだぜ。)



「柳!白田!緑川!」

1年生3人を呼び集める宮城。


「後半、お前らを中心にオフェンスが動く。」


「了解。」

と柳。

「問題ありません。」

と白田。

「ドキドキするな・・・。」

緑川は、一瞬驚いた。


「安西先生が、お前らのプレーを見たいとさ。きっと、来年の計算をするためだろうよ。」

「そういうことですか?いいんですか?宮城さん。
明日の準決勝のスタメンPG、俺になっても知りませんよ。」にこ。

「なれるもんなら、なってみやがれ!」にこ。


『パン!パン!パン!』


宮城は、3人の尻を叩いた。


こうして、宮城の思惑通り、準決勝第四試合は進んだのであった。




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『パラパラ・・・。』


宮城の言葉を書き留めたメモを見る弥生は嬉しそうに微笑んだ。


「湘北は、今円熟期を迎えたわね・・・。明日の試合が、楽しみだわ。」








続く。

#305 【博多×喜多島】

2010-05-06 | #11 湘北 選抜編
福岡のとあるホテルの一室。

弥生と中村が、準々決勝と準決勝の6試合の原稿を書き上げている。


「次は、準々決勝第三試合 博多商大対喜多島の対決よ。」


『パラパラ。』

再び、弥生と中村は、それぞれ記録していたメモとスコアシートを見ながら、戦況を振り返った。


「準々決勝唯一の波乱でしたね。」

「全国でもその名を轟かせている強豪校であって、昨年準優勝校の博多商大附属。
福岡開催ということもあり、優勝の可能性もあると思っていたけど、こんな結果になるなんて。」

「福井県代表喜多島高校は、この冬、3年生は全員引退し、2年生だけでここまで来た若いチームでしたけど、
まさかここまで強いとは。古豪堀高校を倒しただけのことはありましたね。
それにしても、かける君、格好よかったな。」

「若いチームだけあって、勢いを持っていた。そして、強いハートもね。」




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<<回想>>

準々決勝第三試合

博多商大附属×喜多島




『パン!パン!』


「よし!いいぞ!!その調子だ!!」

チームを盛り上げる喜多島の#8速水かける。



対する博多商大は、ポイントゲッター井上幸水が声をあげる。

「まだだ!最後まで諦めるな!!」



地元福岡県代表博多商大の試合とあって、会場には多くの観客が詰め掛けている。

「いけ!いけ!博多!おせ!おせ!博多!」

「井上!井上!いのうーーえっ!!!」



実力、知名度、ホームの利、全ての要素で、博多が絶対的有利。

これが、一般的な評価であった。



だが。



『シュパ!!』


「かけるーーー!!!」

「ナーイシュ!カケル!!ナーイシュ!カケル!!」


喜多島のエースシューター速水かけるが、この試合4本目の3Pを決める。




「相田さん!凄すぎますって!!」

「えっええ。」

会場の記者席にいる中村と弥生は、驚いた表情を見せる。

「中村君!今ので何本!?」

「えーっと・・・。」


スコアーシートの数字を数える中村。

「13本目です。」

「じっ13本・・・。県予選を大きく上回る成功数ね。」

「第3Q中盤で、チームの3P13本は、凄すぎますよね!」




福井県代表喜多島高校。

IHで全国初出場を果たし、ベスト8まで勝ち抜いた新鋭校。

平均身長182cmと低い身長のチームであったが、ベスト8まで勝ちあがってきた。


彼らの特徴は、なんといっても、スピードとシュート力。

速攻を主体としながら、どのポジションからでもリングを射抜くシュート力は、他校と比べ、群を抜いていた。



対する博多商大附属高校。

ハーフコートバスケを得意とする、いわば喜多島と正反対のプレースタイルを持つ強豪。

チームの中心は、SG井上幸水。

堅実な性格は、チームカラーをそのまま反映していた。

そして、1年生ながら、スタメンを務めるのは、新庄雄銀という偉大な兄を持つ新庄雄健であった。



「こんなところで、負けてられるかよ!!」


『キュ!』


『ザシュ!!』


新庄のミドルシュートが決まる。




「おぉーー!また新庄君だ!!」

「強気なプレーはお兄さん譲りね。でも、兄に比べ、熱くなりやすいようだわ。
まだ、1年生だし、仕方ないかしらね。」




『パン!パン!』


「ドンマイ!ドンマイ!気持ち、切り替えていこう!!」

再び、チームを盛り立てる速水。




「速水かける君か・・・。いい選手ね。」

相田は、ノートにメモを取る。

「進路を要チェック!」


「だけど・・・。」

「ん!?」

(40分間、外が入り続けるのは、不可能に近い。そうなると、インサイドで堅実に攻める博多が絶対的有利。
特に、終盤になればなるほど、インサイドの差は、顕著に現れる。)




『シュパ!』


博多Cのゴール下が決まり始める。




「ほらね。」

「ん!?」

(相田さん、独り言が多くなっているような・・・。歳のせいかなぁ。)




だが。


試合時間が経過すると、ジワジワと得点差が開いてく。




「なっなんてことなの・・・。」

「いっ今ので、16本目の3Pです・・・。」

「喜多島の外が止まらない・・・。反対に、博多の足が止まってしまったわ。」




「なんて体力してるんだ!」

と博多の井上。

「くそう。井上さん、俺にボールを集めてください!!俺が、何とかしてみせます!!」

「あぁ。任せたぜ!」


残り時間、得点差を考え、新庄が果敢にゴールを攻める。



『シュパ!』


「どうだ!喜多島!!」


だが、喜多島の速水は顔色一つ変えず、仲間に声をかける。


「大丈夫だ。」



結果・・・。



博多 78
喜多島 83




実に、17本の3Pを沈め、喜多島が博多商大を破るという大金星をあげた。




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「勝敗を分けたのは、若さだったわね。」

「若さ??」


「若さという武器を体力とスピード、そして勢いに変えた喜多島。
対する、若いばかりにチームのカラー見失い、勝負どころで失速してしまった博多。」

「確かに、最後の新庄君は、少し強引でしたね。反対に、あの速水君は、プレー以上に、魅力的な部分がありました。
うーん、何だろう?盛り上げ上手というか、熱い心というか・・・。」


「ストロングハート。」


「おぉ!それですね!!強い心を持つスピードシューター速水かける君。なかなか、いいネーミング。」


(速水かける・・・。山王柳葉、湘北流川に並ぶ逸材と見ていいわね。
そして、この3人に加わる山王河田、名朋森重、湘北桜木のC対決も見逃せない。
また、来年も高校バスケ界は落ち着かないわね。)








続く。

#304 【大栄×名朋】

2010-04-30 | #11 湘北 選抜編
福岡のとあるホテルの一室。

弥生と中村が、準々決勝と準決勝の6試合の原稿を書き上げている。


「あの神海高校を、ダブルスコアに近い得点差で一蹴しちゃうなんて、想像以上の強さでしたね。」

「ええ。最終Qの沢北君のプレーは、言葉が出なかったわ。
あれを40分続けられたら、相手チームもたまったもんじゃない。」

「確かに準決勝の・・・。」

「準決勝は、後々。さぁ、次、第二試合いくわよ。」

「はっはい。」




準々決勝第二試合

大栄学園×名朋工業


愛知県を国体優勝に導いた森重寛率いる名朋工業に挑むのは、全国屈指のオールラウンダー土屋淳なきあと、
ディフェンシブチームを引き継いだPG桜井丈とPF青島慶二の大栄学園。


昨年ベスト8のチームが、悲願の全国制覇に向け、最強の壁にぶち当たる。



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<<回想>>

名朋工業ベンチ。


「ヒロシ。好きにやってこい。」


『コク。』

名朋工業の老将冨名腰の指示はない。


強いて言うなら。


「お前ら、ここは通過点だ。走って来い。」

「はい!!」



「走れ。」

この試合、冨名腰、唯一の指示だったかもしれない。




大栄学園ベンチ。

「みんな、わかっていると思うが、この試合が一番の正念場だと思ってええ。
ディフェンスの評価の高いうちが、森重一人にやられるわけにはあかん。」

チームキャプテンとなり、大栄学園を全国に導いたPG桜井。


「まずは、森重を抑えることに集中するで。そして、機を見て、突き放す。ええか?」

「おう!!」


2年生時に、2年生2大PGの一角として、全国に名を馳せた桜井。

常にライバルとして、比較されてきたもう一角の愛和学院の織田は、県予選で名朋工業に破れた。


桜井にとって、この試合は、ある意味織田のリベンジ戦でもあった。

(織田の仇は、俺が取るんや。)




背番号15を付けた森重がコート上に現れると、会場は声援で溢れかえった。



「森重ーー!!ぶちかませーーー!!!」

「名朋!名朋!名朋!」

「今年は、愛知の年だーー!!」



1年から一貫して#15を背負う森重。


「デカ坊主のやつ、また15番だぜ。成長していない証拠だぜ!ハッハッハ!」

観客席の桜木。

(いや、違うっしょ・・・。なんかのこだわりがあるだけでしょ。)

柳が心の中だけで、突っ込んだ。


そして、静かに桜井、中嶋を見つめる宮城。

現3年生の世代は、優れたPGが揃い、実力が拮抗している。

山王・加藤、大栄・桜井、青森酒田・松山、名朋・中嶋、愛和・織田、湘北・宮城しかり。

だが、1つ上の牧、深津のような突出した実力を持ち、コート上の誰よりも存在感を示すPGはいない。


高校級は揃っていても、超高校級はいない。


「牧や深津に勝つには、この世代でNo.1PGになることが、最低条件。
そのためにも、おまえらに負けるわけにはいかねぇんだ。」

宮城の闘志は増すばかりであった。




試合は、大方の予想通り、森重を中心に攻める名朋、インサイドを堅固に守る大栄の淡々としたペースで進んだ。


第3Qを終えて、ロースコアの展開。

大栄が見事に森重を抑えているとの評価であった。



名朋 52
大栄 46



「ヒロシ、好きにやっていいといったが、手を抜きすぎだろ。」

「さすが、おっちゃんや。ばれてたか。」

「さぁ、第4Qは仕切りなおしだ。」


『コク。』




「いい展開や。黒木も大石をよく抑えてる!」

「さすが、名朋の主力、マークするのはほんまきついですわ。」

PF青島に答えるSF黒木。

「だが、6点差なら、十分いけるで!いけるで!」

「・・・。そうだとええが。」

浮かない表情の桜井。

桜井もまた、冨名腰同様に気付いていた。


森重が本領を発揮していないことを。




『ドガァァ!!』


「キターー!!」

「森重ダーーンク!!」

この日、1本目の森重のダンクが決まった。



『ガシャァァ!!!』


「2本連続!!!」

「森重がノッてきたーー!!」

大栄の悪夢は、3度訪れる。



『ドガ!!!』


「ボースダンク!!!」

「3本連続!!」

「もうとめられない!!」




「ふん!目立ちがり屋のデカ坊主め!ダイエーは、何をやってるか!?」

「第4Qを迎えても、大栄の足は動いている。決して運動量が落ちているわけじゃない。
森重の本領発揮というところだな。」

「デカ坊主なんぞ、この桜木が叩きのめしてやる!!」

「あぁ、頼んだぜ。勝てないまでも、せめてIHのように、刺し違えてくれよ。」

「なっなにをーー!!リョーちん!!」


IH3位決定戦では、桜木と森重はともにファウルアウトとなっていた。


正しく因縁の対決。


「今度こそ、完全に叩きのめしてやる!!覚悟しておけ!!」

高校生最強Cを目指し、誰よりも森重を睨みつける桜木であった。




名朋 76
大栄 61




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「森重寛、ここにあり!という試合でしたね。」

「えぇ。第4Qまで力を抑えていたのは、手を抜いていたのもあるかもしれないけど、
彼なりに何か考えての行動だったかも。」

「そういいますと?」

「山王に手の内を見せないとか、ファウルアウトをしないとか、怪我をしているとか、体力的な問題とか・・・?」

「相田さん!それはないですよ!!だって、森重君ですよ!なーーんも考えていなそうじゃないですか?
それに、第4Qを見れば、怪我してないのはわかりますし。」

「だから、中村君はいつまでたっても4流記者なのよ!!」

「よっ4流記者・・・。」

「森重君が何かを考えていた可能性は、ゼロではないはず。
そういった細かいところに視点を置くことで、驚くべき発見やいい情報が見つかるのよ!!
掴むべきよ!大栄学園戦の森重君のとった作戦と背番号15の謎を!!」

「そっそうですね。明日の試合後に、取材しておきます。」

(考えすぎだと思うんだけどな・・・。でも、背番号15の謎は知りたいかも。)



森重 寛  34P 13R 4B


全国トップクラスの実力を備えた結果、森重は相手なりに動く、省エネバスケをする傾向にあった。








続く。

#303 【山王×神海】

2010-04-28 | #11 湘北 選抜編
陵南高校 体育館更衣室。


汗を拭い、制服に着替える選手たち。

時刻は、20時を過ぎようとしている。

練習の疲れのせいか、言葉を発するものは少なく、更衣室は、静まり返っていた。



『ダッダッダッダ!!』


「はよ、報告せなあかん!!はぁはぁ!!」


校舎と体育館をつなぐ渡り廊下を走る彦一の姿。

練習で重くなった体に鞭をうちながら、更衣室を目指していた。


「えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!」


言葉と裏腹に、彦一の表情は、凄く嬉しそうであった。


「はぁはぁ。」

(呼吸を整えなきゃ・・・。)


更衣室の前に辿り着いた彦一は、呼吸を整え、ノブを回す。



『ガチャ!』



「キャプテン!仙道さん!フクさん!!選抜の決勝戦が決まったで!!」


ドアを開けると同時に、叫ぶ彦一。

ドアに眼線を向ける選手たち。


彦一が繰り返す。


「明日の決勝戦は!!」


「明日の決勝戦は!?」

彦一の口元に集中する選手たち。


仙道は、着替えをしながら、聞いている。

福田もまた、興味なさそうな素振りを見せていたが、彦一の言葉にしっかりと耳を傾けていた。


「明日の決勝戦は!!」

溜める彦一。


「明日の決勝戦は!?」

再び、問う選手たち。


「はぁはぁ。その前に、みっ水下さい。もう喉カラカラですやん。」

「彦一!!!」


陵南、毎度お決まりの光景であった。


『パシ!』


『ゴク。』


「拓真、ありがとう。生き返ったわ。」

「続きを聞かせてよ。」

「そっそうやった。決勝の組み合わせは・・・。」




福岡のとあるホテル。


『キュ!』

タオルを頭に絞め、気合をいれる弥生。

傍らには、疲れた表情を見せる中村の顔。


「相田さん、どこにいっていたんですか?30分も待たせて!!」

「男と電話よ。」

「男と電話?僕をほっておいて・・・。」

「ぶつぶつ言わないの。今日は、特別に私の部屋に入れてあげるんだから、気合入れて、原稿まとめてよ!
明日の決勝を前に、全て書き上げるわよ!!」

「えっえーー!!!全てですか!?」

「そうよ。なにかいいたいことでも?」

「なっ何もありません。がっがんばります。」

(好きで部屋に入っているわけじゃないし、しかもちらかっているし・・・。)


「まずは、準々決勝からまとめるわよ。」

「準々決勝の4試合と準決勝の2試合、あわせて6試合か・・・。
今日中に終わるかな・・・。」

(はぁ・・・。彦一君がいてくれたら・・・。)




「まずは、準々決勝第一試合 山王工業対神海高校の対決よ。」


『パラパラ。』

弥生と中村が、それぞれ記録していたメモとスコアシートを見ながら、戦況を振り返る。


「AA評価の山王、B評価の神海の対決。」

「資料が少なかったから、B評価としたけど、準々決勝まで勝ち上がってきた試合内容を振り返ると、
はっきりいって、A評価をつけてもよかったわね。」

「沖縄代表の神海は、個人スキルと平均身長190cmのサイズで、これまでの対戦チームを圧倒してきました。
ただ、オフェンス主体で、個人スキルに頼りすぎるために、しっかり守れるチームには、脆い部分があるようでした。」

「そのウィークポイントをついたのが、山王。さすが、堂本監督としかいいようがないわね。」




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<<回想>>

準々決勝第一試合

山王工業×神海


試合前 山王工業ベンチ

「神海は、デビット・平良、ケビン・比嘉、知念裕樹ジュニアの3人を中心としたオフェンスだけのチーム。」

「つまり、ディフェンスは、怖れるに足らん。ということですね。監督?」にや。

「あぁ。烏山のいうとおりだ。作戦は、昨夜話した通りだが、今一度確認するぞ。
ディフェンスは、河田を中心に小さく2-1-2で守る。外は、打たせてもかまわんが、リバウンドは奪われるな。
相手は大きいが、しっかりスクリーンアウトだ。」

「はい!!」


「オフェンスリバウンドは、チームを盛り上がらせるからな。絶対に取らせてはならんぞ。」

うっすらと赤い坊主を思い出す堂本。


「オフェンスは、ナンバープレーを中心に、沢北、柳葉で攻めろ。加藤、ゲームメイクは任せた。」

『コク。』


「バスケはチームプレーってところを知ってもらおう!!」

「おう!!」




第一試合は、試合序盤から、山王ペースで進んだ。

ナンバープレーを使い、スクリーンプレーを使い、確実に神海ゴールを奪う。

華こそないが、完成された芸術というべきバスケットボール。

そこには、王者の威厳と力強さがあった。

戸惑いと苛立ちを隠せない神海。



「せこいバスケをするな!!」

「1on1で勝負しろや!!」


山王の前では、神海のいつものビッグマウスも、弱犬の吼え事にしか聞こえない。



試合の流れは、ディフェンスから作り出すもの。


試合の勢いは、オフェンスから作り出すもの。



神海は、山王のチームオフェンスの前に、なす術なく、ゴールを奪われ、
山王のチームディフェンスの前に、思うように攻められない。


30分間、一度も自分たちのペースを掴むことはできなかった。


第4Q、堂本からの指示が跳ぶ。


「沢北、好きにやれ。」

「はい!待っていましたよ、その言葉。」にこ。



前日の湘北戦、流川、桜木のプレーに触発された沢北が、堂本の言葉によって、解き放たれる。



『キュッキュ!』


『シュパ!!』



『ダムダム!!』


『ザシュ!!』 



『キュ!!』


『ダム!』


『ガッシャーン!!』



沖縄の壁を物ともしない、ジャンプショット、レイアップ、そしてダンクシュート。



デビッド・平良らの前で、沢北が一言を発する。


「おまえら、態度もバスケも中途半端だな。」

「なにーーーー!!!」

「山猿のくせに、俺たちを説教する気か!!」

「そうじゃない。何か一つでも極めてみろ。そしたら、お前ら、もっと強くなるぜ。」

「・・・。」


(あいつらのようにな・・・。)


第4Q、沢北は、16点を記録した。


結果、一度もペースを握ることなく、神海は敗れ去った。


山王の強さばかりが目立つ試合であった。


そして、誰もが山王の4連覇を確信するのであった。



山王 106
神海 62



沢北 栄治 36P 7R 5A 3S



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続く。

#302 【2人のエース】

2010-04-27 | #11 湘北 選抜編
酒田 66
湘北 70




流川のスティールから、電光石火が動き出す。


「流川!」

「うす。」


宮城にボールが渡った。



『ダムダム!!』


同時に、柳、流川、桜木が駆け上がる。


湘北得意の速攻。

並走する酒田のバックコート陣。



『バス!』

『バス!』



ボールは、宮城から柳、柳から流川へと渡った。


「なぜに流川!!こらぁ、よこしやがれ!!」

「渡すかよ。」


リングに届くほどの高いジャンプのレイアップシュートが、静かにネットを揺らす。




酒田 66
湘北 72




「うわぁぁーー!!」

「湘北がじわじわ広げてきたーーー!!!」

「さすが、夏の覇者を倒したチームだーー!!」

体育館は、一気に湘北一色となった。


「ショーホク!!ショーホク!!」

「いいぞ!いいぞ!ルカワ!!ルカワ!!」

湘北ベンチ、応援席の応援にも一層の力が入る。




後押しされるように、コートの5人の動きも俊敏になる。


『キュ!』


「そっちだ!!」


『キュッキュ!』


「はい!!」


「スクリーンいくぞ!!」



体力を削り、神経をすり減らす、両チームの攻防戦。


湘北の勢いを受け止める津軽の荒波。


青森酒田の猛追を交わす神奈川の風。



『ピィ、ピィ、ピィ。』

刻一刻と時間が過ぎていく。


会場は、本日最高の盛り上げをみせ、その勢いは、隣のコートをも包み込んだ。


最後の体力を振り絞り、パウエルが湘北ゴールを脅かす。


桜木が、勝利への重責を担い、コートを駆ける。


流川が、沢北に宣戦布告するかのような動きを披露する。



『ガタ。』

「栄治、どこへいく?」

「勝負はついた。」


『ガタッ』

『ガタ。』

続けて、河田、柳葉、福原が席を立つ。


「最後の最後で、流川君がいい流れを持ってきましたね。」

嬉しそうな河田。

「沢北さんのいうとおり、最後はエースの差でした。」

と福原。

「そうだな。さすがのパウエルも2人分とはいかなかったわけだな。」

苦笑いの沢北。


「??」

少し困惑の表情を見せる河田ら。


(確かに、第4Qの流川の動きは、申し分ない。エースらしく、チームに勢いをもたらし、勝利を引き寄せた。
だが、パウエルを抑え、リバウンドを根こそぎ奪っている桜木もまた、申し分ない動き。
第4Qの終盤であれだけ動けるやつは、そうはいない。)



沢北が、体育館の通行口を出たころ、後ろのほうで、試合終了を告げるブザーがなった。


かすかに耳に届く、歓喜に沸いた声が、沢北を巻き込む。


(なかなか、いい試合だったぜ。必ず決勝まで勝ち上がって来いよ。2年坊たち。)にこり。




コート上では、桜木が大きく口を広げ、笑っている。


「ハッハッハ!どうだ!バイエルン!!天才の実力は!!」

「オドキマシタ!サムラギ、ウマイネ!good playerデス!!」

「ノーノー!アイアム 天才バスケットマン桜木だー!!」

「オッオウ!テンサイデシタ!」

褐色の手を出すパウエル。


「マタバスケシマショ!」

「おうよ!いつでも、相手になってやるぜ!」

更なる友好を深めるパウエルと桜木。



流川は、ほっとした表情を見せている。

「流川君・・・。お疲れ様。」

照れながら、そっとタオルを差し出す晴子。


『コク。』

そのタオルを掴み、うなずく流川。

晴子の心臓は、勝利の余韻と恋心により、張り裂けそうであった。

(ポーーーーー。)



宮城は、安西と軽く言葉を交わしている。

「みっともない試合をして申し訳ありませんでした。」

「みっともない試合なんてありません。今日は、非常にいい試合であり、得たものもたくさんあったはずです。
宮城君も第4Qのゲームメイクは、素晴らしかったですよ。あと2試合、この調子でお願いします。」

「はい!!」




こうして、湘北は、ベスト8を決めた。


次の対戦相手は、IHの雪辱に燃える京都府代表洛安高校。

山王工業に挑戦するには、まだまだ険しい道のりが残っていた。




「勢いは、実力以上のものを発揮させるときがある。湘北の第4Qは、その典型的な例だといえるわね。」

(ほんま、キセキのチームだわ。)

弥生は、あの暑かった昨年の夏を思い出すのであった。




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選抜優勝大会 準々決勝 

青森酒田×湘北


酒田 74
湘北 83


【青森酒田】青 74

#4 吉田 21P 8R
#5 新山 9P
#7 松山 5P 13A
#9 田中 6P
#13 パウエル 33P 14R 7A


【湘北】白 83

#4 宮城 12P 11A
#7 流川 28P 6S
#9 柳 14P
#10 桜木 8P 19R
#14 白田 21P 12R


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続く。