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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#331 【締めるところ】

2010-07-09 | #11 湘北 選抜編
山王 54
湘北 47




観客席の陵南。

「中、外と湘北のオフェンスはリズムがいいですね。」

「だが、結果的に追いついていない。」

「さすが山王、なかなか追いつかせてくれないな。」




(7点差。縮まらねぇ。)

流川は沢北を睨む。


(だいぶ、焦ってきたか。)



湘北は、確実に得点を重ねるものの、得点差はすぐにはつまらなかった。


追うプレッシャー。


追われるプレッシャー。


両校の選手は体力以上に精神的な疲労が見える。




ベンチで立っている堂本。

(この重要な場面で仕事をしてきた深津や河田はいない・・・。
加藤に攻めさせるか?いや、湘北の速攻を許すことになる。
やはり、ここは沢北お前が、なんとかせねばならん。)

現在、冷静さをわずかに欠いている加藤にこれ以上のプレッシャーを与えることはできない。


夏のIH準決勝 パスミスとプレスにより精細を欠いた宮城。

加藤は、今まさにこの夏の宮城と似たような状態になっていた。


(どうやら、随分と追い込まれているようだな。)

(落ち着くダス!落ち着くダス!)


加藤に双肩にのしかかるもの。

偉大な先輩たちが築き上げてきた選抜3連覇という快挙を
自分の代で崩壊させるわけにはいかないというプレッシャー。

しかも、山王歴代最高選手と呼ばれている沢北栄治を同学年に持ち、優勝して当然との評価。

キャプテンの加藤にとって、そのプレッシャーは誰よりも大きなものであった。

結果、宮城のトラッシュトークが、起爆剤となり、加藤から冷静な判断力を奪っていた。


(落ち着くダス!)


「!!」


『ビィ!!』


視界に入った烏山への加藤の単純なパス。


「!!」

「!!」


『バチンッ!!』


「よっしゃ!!」




「宮城がパスカットーー!!」

「加藤から奪い取ったーー!!!」

「完全に宮城が上回っている!!」




「しまったダス!」

加藤は悲痛の表情を浮かべている。

(加藤!今なら言えるぜ!お前は、牧や深津、そして俺よりも下だ!!)


「いっくぜーー!!」



『ダムダムッ!』



勢いづいた宮城。


プレッシャーに潰れかけた加藤。


この2人の戦いは、火を見るよりも明らかであった。


当然、加藤は宮城の背中を追うことはできない。



『ダムダムダム・・・。』



「もらったーー!!」



『キュ!』



『ダム!』



『タン!!』



宮城のレイアップシュート。

電光石火のワンマン速攻。

今までと比べ物ににならないほどの高さのレイアップを放った。




「リョータ!!」


「キャプテ・・・。」



「ん!?」

振り返る宮城。


「!!!さっさわ!」



『バチィン!!!』



ボールは、沢北によって、リング手前で、サイドラインに叩き出された。


宮城のスティールと共に、いち早くスタートをきった沢北が、
ギリギリのところで、宮城に追いつき、シュートを叩き飛ばしたのであった。



「・・・。」


宮城の言葉を無視するかのように、沢北は振り返った。

そして、おもむろに加藤の前へ。



『パチ!』



沢北は、加藤の頬を叩いた。

体育館が一瞬静まり返る。


「目を覚ませ。」

「・・・。」

「プレッシャーは誰にでもある。俺にも、湘北にも。」

「・・・。」

「こういうときこそ、落ち着くんだ。」

「・・・・・・。エージ・・・。」

加藤は静かに答えた。




「極度の緊張、プレッシャーが、気を動転させたか。」

と田岡。




「・・・。もう大丈夫だ。ありがとう、エージ。」

「頼むぜ。キャプテン。」

沢北は微笑んだ。


「キャプテン。勝ちましょ。」

加藤に歩み寄った河田がいった。

「あぁ。」

笑いながら答える。


「夏輝。あんなエージ見たの初めてだぜ。」

烏山が声をかける。

「俺もだ。えらく心配をかけてしまったようだな。」

「おっお前、ダス忘れてるぞ?」

「語尾をつければ、深津さんみたいになれるかなって思っていたけど、そうじゃなかった。
俺は、深津さんではなく、加藤夏輝。ここからは、加藤夏輝のバスケをする。」

加藤の眼に、今一度、活力が戻った。


「戻るのか?」

「あぁ。」

「ヒゲに怒られるぞ!」

「優勝すれば、堂本監督も何もいうまい。」

「そりゃそうだな。よぉし!勝とうぜ!」

「もちろんダ・・・。もちろん。」




「沢北さんがはたきおったで・・・。」

「時として、ああいうのも必要だぞ。仙道?」

「まいったな・・・。」

(苦手だな。)




「沢北君もあんなことするんですね。
普段、おちゃらけている雰囲気があるから、ビックリしました。」

「締めるところは締める。さすが、沢北君。これは、何かが変わるかもしれないわ。
何かが・・・。」




沢北の怒声と加藤の意味深発言が、山王に変化をもたらすのか?


第3Q残り42秒の攻防が始まる。




山王 54
湘北 47







続く。

#330 【好調湘北】

2010-07-06 | #11 湘北 選抜編
山王 52
湘北 42




山王の反撃。


沢北が一人で湘北のオールコートを突破した。


並走する流川。


ここに来て、呼吸の乱れが見える。


一人で持ち込む。


そして。



『キュ!!』


急ストップ。



『シュ!!』


鮮やかな沢北のジャンパー。



『シュパ!!』


透き通るような音を奏でる。




「沢北ーーー!!」

「一人で決めやがった!!!」

「さすが、頼りになるぜ!!」




山王 54
湘北 42




「こらぁ!簡単に決めら・・」

「うるせ!!」

(次はぜってー止める。)

流川の眼には、沢北しか映っていなかった。




「宮城君。」

再び、宮城に指示を送る安西。

そして、白田、緑川へと伝える。




再び、桜木のスクリーン。


白田が外に開く。


ボールは、緑川から白田へ。


『パシ!』




「また同じパターンか!!」

「白田だーー!!」




ジャンプシュートの体勢。


だが。


「打つぞ!美紀男、詰めろ!」

「ふぁい!」


先程よりも詰めて、白田のシュートをチェックした。


「!!」


『シュ!!』


白田は、河田の逆をつき、中に投げ入れた。


『パシ!』


ボールは、ゴール下で福原を背負い、ポジションを取っていた桜木に渡った。


「ナーーイスパス!」




「ハイ&ローー!!」

「ミスマッチだ!!」



『クル!』


速い回転。


『バス!』


福原の上からゴール下を決めた。



「よっしゃーー!!!」


「作戦通り!」



山王 54
湘北 44




第3Q、一進一退のシーソーゲーム。

両校譲らぬ攻めと守り。




「湘北のオフェンスがいいですね。」

「もともとオフェンスのいいチームですから、リズムを作れれば。」

上杉と黒川。

「10点差。湘北のピンチに変わりはない。」

と福田。

「流川と沢北。どっちが勝利に導くか・・・。」

仙道がしめた。




山王のオフェンス。


『キュッ!』


『ダムッ!』


沢北が流川に並んだ。



「何度もやられるな!!」

ゴール下から叫ぶ桜木。



『キュ!』


沢北のジャンパー。


流川が横からシュートチェックに跳ぶ。


(それじゃ止められないぜ。)



だが。



「!!」


(見えない!)

流川の手は、沢北の視界を遮った。



『シュ!』


体の記憶を頼りに放たれる沢北のジャンプシュート。



(だが、外すかよ!)



『ガンッ!』



「あっ!!」


(外れた。)



『バチーーン!』


リバウンドは桜木。


「キツネのわりに良い動きだ!」


(にゃろう!)




「沢北が外した!!」

「湘北ボール!!」

「先に外したのは山王だ!!」




「1本。止めたぜ。」

「なっ、今のは、俺の単純ミスだ!止められたわけじゃない!!」

「負けず嫌い。」

「お前だろ!」



山王の戻りは速い。

湘北の速攻が出せない。


「河田さん、次スクリーンされたら、スイッチなしでお願いします。」

と福原。

「うん。ごむぇん。」



『ガシ!』


三度、桜木のスクリーン。



だが。


『グイ。』


「ぬっ。」




「スイッチしない!!」

「福原が交わした!」

福原はファイトオーバーで切り抜けた。

(何度も同じ手は喰らわない。)


スイッチなし。

白田には福原が、桜木には河田が、そのままマーク。


「リョーちん!」

「キャプテン!」


2人がボールを要求する。


密集するインサイド。

山王のディフェンスがインサイドに集中した。



『ビィ!』


宮城がパスを投げる。


『パシ!』



「打て。」にや

笑う宮城。


右サイドの0°

一番深い位置。

そこには、緑川がいた。

インサイドに意識が逸れた烏山を置き去りにしていたのであった。



『シュ!』



背筋を伸ばし、堂々とした3Pシュート。




「入れーー!!」

「緑川ーーー!!!」

「決めろーーー!!!」




「外してもいいぞ!リバウンドは俺が取る!」


(外しませんよ。このシュートの重みは誰よりもわかっているつもりです。)


インサイド陣を越える放物線は、リングへ向かう。



『パサ。』


ボールがネットを通過する優しい音が聞こえた。



「作戦通り!!」




「はっ入った!!」

「キターーーー!!!」

「#15の3P---!!!」

「7点差ーーー!!!」




緑川を投入し、外角を強化した湘北。

まさかの追い上げに、会場も大いに湧き上がる。




山王 52
湘北 45




「なんか、安西監督の采配ですかね?。」

「さすがね。ピンチになればなるほどのその勝負師の勘は冴え渡る。
さぁ、どうする堂本監督?次は貴方の番よ。」

(湘北としては、このいいリズムをディフェンスに持っていければ・・・。)




第3Qも残り2分。

最大15点差を7点差まで詰め寄ることに成功。


果たして、湘北はこのまま追いつけるのか。

はたまた、山王が、堂本が、沢北が立ちふさがるのか?


その後、烏山がミドルシュートを、白田がジャンパーを決め、第3Qも残り1分を迎えた。




山王 54
湘北 47







続く。

#329 【俺のおかげ】

2010-07-05 | #11 湘北 選抜編
山王 52
湘北 40




沢北のワンハンドダンク。

バスカンのおまけつきであった。


「おのれ!小坊主!」

桜木の闘志が燃える。




「まずい!まずい!まずい!まずいですよーー!!」

「12点差・・・。全く縮まらないわね・・・。湘北の勝機が見えない。」




「アンビリーバブルや!!あの2人を超えてしまうとは、なんとも恐ろしいお人や!」

「まいったな。今の1本はデカイ。」

「かっ監督なら、どうしますか?」

「・・・・・・。流川一人で沢北、いやゾーンか、烏山の外、河田・・・。ぶつぶつ・・・。」

「監督でもお手上げというわけやな。」




意気消沈している湘北ベンチ。

沢北の手によって、追い上げムードは消し去られた。

反撃の狼煙ともいえる流川のダンクシュートのあとであったため、そのショックは計り知れない。


「・・・。」

「・・・。」

彩子も晴子も言葉が出ない。


『ガタ。』

安西が席を立った。


『チョイチョイ。』


「宮城君。」

安西が宮城を呼び寄せる。


「・・・・・・・・・・・。」

「わかりました。」




「おっ、安西監督が宮城君になんか指示したようですね?ディフェンスの変更ですかね?」

「ん・・・。まずはオフェンスのリズムを作ろうってところかしら。」




桜木に小声で話しかける宮城。

「花道。福原にスクリーンをかけろ。」

「なぜ!この天才ばかりが、地味なプレーを!!」

「バカ!聞こえるだろ!!マークマンをスイッチさせろ!!河田のディフェンスエリアは狭い。
花道のスクリーンで、白田のシュートチャンスを作れ!」

「俺が丸男の上から、お見舞いしてやる!!」

「おめーは、リバウンドに集中だ!花道がゴール下にいるから、白田は思いっきりシュートが打てるんだ。
緑川も同じ、そして流川もだ!」

「・・・。つまり、庶民どもがシュートを打てるのは、この桜木がいるからだと!?」

「そうだ。お前のおかげだ。」

「わかったぜ!リョーちん!!この天才桜木が、最高のシュートチャンスを作ってやろう!!」

「任せたぜ!」

「おうよ!」

(ふーー。花道も納得させるのも一苦労だぜ。)



「どうだ、流川?俺と勝負したくてしょうがないだろ?
わかるぜ、お前の気持ち。俺と一緒だからな。」

「・・・。あっちでてめーを抑えたやつはいたか?」

「ん?ハイスクールか?シュートは、度々ブロックされたな。
だが、ドライブを完璧に止めたやつはいなかった。」

「・・・。俺が止めてやる。」

「ふっ、楽しみだぜ。」



湘北のオフェンス。


『ダムダム!』


『ギロ。』


宮城を睨む加藤の眼は鋭い。

憎悪に満ちている。


「この唇をバカにする貴様だけは許せないダス!」

「この俺をチビ呼ばわりするてめーも一緒だろ!」

「勝負だ!チビ太!!」

「上等だ!タラ男!」


『ビィ!』


「なっ!!」


「バーカ!てめーの口車に乗るかよ。」

宮城は、落ち着いてボールを横に流した。

そこには、緑川。

すぐにシュートの構えをする。




「緑川の3Pか?」

と上杉。




詰め寄る烏山。


宮城にパスを戻す。

そして、今度は逆サイドへ振る。




「流川だ!!」

「いけーー流川!!」




「流川さんの1on1か?」

と黒川。




「・・・。」


「・・・。」


流川も戻した。




「宮城さんのドライブやろか?」

と彦一。




『ガシ!』


「ん!?」

「快君、スイッチ!!」


アウトサイドでボールが回っている間、インサイドではスクリーンプレーが行われていた。

桜木のスクリーンが、福原の動きを封じる。



『キュッ!』


白田がゴール下から、一気に外に開いた。

ボールは、丁度流川から宮城に戻ってきたときだった。



『バシ!』


流川からのリターンパスを素早く中に落とす宮城。

そこには、台形の外で待ち構える白田がいた。

河田は、ゴール下にいる。


「フリー!」

「打て!ハクタス!」


宮城、桜木の声に、白田がジャンプシュートを放つ。



『パサ。』



ボールは、優しくネットに収まった。




「今度はインサイドの白田が決めたーー!!」

「湘北のオフェンスのリズムがいい!!」




安西の指示通り、桜木のスクリーンプレーから白田のシュートが決まった。


「この天才による最高の演出!どうだ、ハクタス!」

「ナイススクリーンですよ!」

「そうだろ!ハッハッハ!」

「偶然だ。」

「ぬっ!流川!!てめーのシュートは全て俺のおかげだ!」

「・・・。」

「ハッハッハ!」




「なんかいい感じです。もしかしたら・・・。」

「もしかしたらじゃないわよ。晴子ちゃん!きっと追いつく。そして、勝つ!」

「そっそうですよね!!いけーー!!ショーホク!!」




(オフェンスのリズムは悪くない。あとは、山王のオフェンスを止めることができれば・・・。
流れを持ってこれる!!)

宮城が賭けに出る。




山王 52
湘北 42







続く。

#328 【…せてやるよ】

2010-07-02 | #11 湘北 選抜編
山王 49
湘北 40




湘北のオールコートプレスが奇跡的に2本のシュートを生んだ。




「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」

「サンノー!サンノー!サンノー!」

両校の応援も一層の気合が入る。




『キュッ!』


『キュッキュ!』


コートの10人は、激しく足を動かす。


『パシ。』


エンドラインの加藤から、ボールが沢北に入った。




「沢北だ!!」

「いけーー!!」




『キュ!』


湘北に緊張が走る。


「流川!」


「うす!」


宮城と流川が沢北包囲網を敷く。



だが。



『ダムッ!』


「!!」


一瞬にして、宮城側を抜き去っていった。

(まっまじかよ!)




「速い!!」

と上杉。

「いや、低い!!」

と黒川。




「うちの1、2のスピードを争う2人を抜くなんて!」

と潮崎。

(ぬっ。1位は俺だ。)

と隣の柳。




「さすが沢北!!」

「簡単に突破した!!」




「ついて来い!」

「ったりめーだ!」

流川は沢北に並走している。


宮城は、加藤をマーク。



『キュ!』


沢北の進行方向を塞ぐように緑川が立ちはだかる。




「誘った!!」

「巧いで!流川君!」

「どうかな?」

と仙道。




『ダッダン!!』


速く低いフロントチェンジ。

意図も簡単に緑川を抜く沢北。


(うっ動けない・・・。)

次元の高さを感じる。

沢北にとって、緑川は障害物にさえならない。




「2人抜き!!」

「沢北止まらない!!」




中央からリングを狙う沢北のドリブル。



『ダムダム!!』


流川がしっかりと横からマークするが、回り込むことはできない。



だが。



「いいぞ!キツネ!そのままだ!」


中央で待ち受けるのは、もちろんこの男。

打倒沢北に燃える桜木。

河田は、沢北の進路を確保すべく、開いていた。



「きやがれ!小坊主!!」

「いわれなくても!」


「てめーに湘北ゴールは触れさせん!!」

「ふっ。」


(何がおかしい?)

並走する流川。



「・・・・・せてやるよ。」


「!!!」


沢北の独り言が、流川の耳にかすかに届いた。



流川の激しいプレッシャーが沢北を襲うが。



(まだまだあまい。)


3Pラインを越えた。


桜木は、シュートチェックに備える。


(ジャンプシュートか・・・。いや、来る!)


ゴール下、沢北のスクープシュートに集中した。




「1対2!!」

「勝負を挑むか!!」




フリースローラインを超える。



『ダン!』



沢北は跳んだ。



『ダッ!』



(打たせるかよ。)

流川も跳ぶ。



『キュ!』



あわせて桜木も跳んだ。




「沢北でもあの2人の高さは無理だろ!!」

「いや、沢北ならいける!!」

「止めろ!ショーホク!!」

「いけーー!!沢北ーー!!」




沢北、スクープシュートの体制。


流川、ダブルクラッチを警戒。


桜木、どんぴしゃりのタイミング。



「へなちょこシュート敗れたりーー!!」



『ぐるっ。』



手首を返した沢北。

ボールを掴むように持ち替えた。



「!!」



「!!」



『グッ!』



空中で一伸びする沢北。



「!!!」



流川の腕の上を行く。


沢北の腕は、スクープシュートに備え、わずかにタイミングのずれた桜木の腕をも越えた。



「なっなんだと!!」



尋常ではない跳躍とボールコントロールで2人の腕を交わす沢北。



『パシ!』



思わず、桜木の手が沢北の腕にわずかに触れた。



「!!」



(そんなんじゃ、俺は止められねぇよ!)



沢北の腕はぶれない。


それどころか、沢北の勢いは増し、激しく腕を振り落とした。



『ガッシャァァァン!!』



と同時に。



『ピィーーーーー!!』



「バスケットカウントーーー!!!!」

興奮状態の審判。

大きな声で、桜木のハッキングを告げる。



そして。




「沢北のスラムダーーンク!!!」

「最高ーー!!最強ーー!!!」

「しかも、流川と桜木を交わした!!」

「バスカンだぜ!ありえねーー!!!」

沢北のダンクを称える声で体育館が揺れていた。


「サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!」




「触ったぜ・・・。」

手のひらを見つめる桜木。

「そんな柔なファールじゃ俺は止められないぜ。桜木。」にや。

「小坊主!!」

「ハイスクールはもっとしんどかったぜ。」

「なにをーー!!」


「おい!」

「ん!?」

「聞こえたぜ。」


沢北のつぶやくような独り言。



-----------------------------------------------------------------------



「俺の本気を見せてやるよ。」



-----------------------------------------------------------------------



「今のが、本気か?」

「あぁ。今のが、本気だ。」

「次は止めてやる。」



沢北の本気の跳躍からのワンハンドダンク。


桜木のファールを誘発し、3点プレーとした。


一向に点差は縮まらない。


湘北にとって、非常に厳しい展開となっていた。




山王 52
湘北 40







続く。

#327 【成長の証】

2010-06-30 | #11 湘北 選抜編
山王 49
湘北 36




『キュッキュ!!』


『キュキュ!』



「あたれーー!!!」

宮城の声が体育館に響き渡る。




「湘北が仕掛けてきた!!」

「オールであたってきたぞ!!」




「当然だ。」

観客席の田岡。




ボールは、エンドラインの河田から烏山へ。

すかさず、桜木と緑川が囲んだ。



『キュ!』


『ザッ!』


「おまえらなんか、俺の相手じゃねぇ・・・が。」

と烏山。


「なぬ。カラスやろーの分際で!!」


「うっせ!!」



『シュ!』



「あっ、逃げやがったな!!」

「作戦があんだよ、バカ。」


「おい、グリ!やつは力ずくでも止めろ!!この桜木が許す。」

「はぁ。」


ボールは、加藤へ渡った。


烏山は駆け上がる。

緑川、河田、桜木もまた湘北ゴールに駆け出す。


山王コートには加藤と宮城が取り残された。


「来いよ。タラ男!」

「うるさいダス!」


加藤の一歩目。

(こういうときは、直感を信じる!左だ!)


宮城は左サイド、加藤の右サイドに腕を出した。


『パシ。』


「!!!」


「へっ。」にや。

(完璧だぜ!)




「スティール!!!」

「宮城が加藤をスティールだーー!!!」




「キャプテン!!」

「加藤先輩!!」

声をあげる山王ベンチ。




「リョータ!ナイスカット!!」

「うぉぉーー!!キャプテン!!」

湘北ベンチからも声が上がる。




『パサ。』


ルーズボールを拾った宮城は、瞬く間にネットを揺らしていた。



「イカすぜ!リョーちん!!」




山王 49
湘北 38




「うわぁぁーー!!」

「1本目から奪ったぞーー!!」

「まぐれっぽかったけど!」




(ぐっ。あのチビ・・・。)

悔しそうな表情を浮かべる加藤は、エンドラインでボールを持っている。


「もう1本、もらうぜ。」

「うるさいダス!!」


戻ってきた烏山にボールが入る。

すぐに加藤へリターンパス。


「ドンマイ。あっちで待ってるぜ。」


再び、加藤と宮城のみが取り残される。



「てめーと深津との大きな違い。」

「・・・。」


「自分の悪口には、冷静でいられないようだな。へっ。」


「黙れ!チビ!」

語尾を忘れるほどの怒り。


「てめーは、そのチビに負けるのさ。」

精神面で加藤の上をいった宮城。


それは、夏の敗戦を乗り越えた宮城の成長の証でもあった。



『キュ!』


『ダムダム!』


『キュッキュッキュ!』



「!!!」




「囲んだーー!!」

「また加藤が捕まったぞ!!」




加藤のドリブルを流川が止めた。

宮城とともに囲む。



「エージ!」

加藤は苦し紛れのパスを放る。



『パシ!』



「ナイスパスだ。タラ男!!」

笑う桜木。




「うわぁーーーー!!またターンオーバー!!」

「湘北のオールコートが機能している!!」

「あの山王を止めているぞ!!」




「リョーちん!」

桜木はすぐに宮城にボールを渡す。



2on1。

流川と宮城が山王ゴールに襲い掛かる。




「いけ!湘北!!」

思わず応援する中村。




「ぶち込め。」

宮城は小声でいった。


ゴール下へ優しいパスをあげる。



『ダン!』


そのボールにあわせる流川。


空中でワンハンドキャッチ。


そのままリングに叩き付けた。



『ガッシャァーン!!』



『トン。』



流川は、この日最初のダンクをクールに決めた。




「ダーーンク!!!」

「一気に4点縮めた!!」

「湘北に風が吹いてきた!!」

「9点差!!一桁に持っていった!!」




「キタで!キタで!キタで!キタで!キタでーー!!」

「今の流川さんの1本は、最高の形ですね。」

「うむ。これで湘北も息を吹き返すか。」

「いや、まだですよ。あいつを止めないと風は変わらない。」

「沢北さんか・・・。」




「・・・。」

堂本が腰をあげた。

オフィシャルに歩み寄る。




「リードしている山王が、タイムアウトですか?」

「この流れは一旦切りたいところね。」

と記者席。




コート上、真ん中に立っている男。


「夏輝ぃぃ!!!冷静になれ!!!」


厳しい顔つきで怒声をあげるたのは、沢北であった。


その言葉は、体育館にいたもの全ての人間に届いた。


「エージ・・・。」

と加藤。




(沢北のやつ。まだタイムアウトは必要ないな。)

堂本は席に戻った。




沢北の咆哮。

今まさに、本当の戦いを迎えようとしていた。




山王 49
湘北 40







続く。

#326 【待望の得点】

2010-06-28 | #11 湘北 選抜編
山王 46
湘北 34




選手交代をした山王。

柳葉に変わり、シューターの烏山が出場した。




「カラス!カラス!カラス!」

「けっ、あんまりのらねぇんだよな。この応援。」




「次、決めたら当たるぞ!」

「はい。」

宮城と緑川。



トップの加藤。


『キュ!』


『キュッキュ!』


インサイドへ放り込む。

両手を目一杯あげて、ボールを掴む河田。



『キョロキョロ。』


桜木を背中に背負い、フリーマンを探す。


「こっちだ!河田!」


緑川をあっさり交わした烏山がボールを呼んだ。


「ふぁい!!」



『パシ。』



「打つぜ。」


何のためらいもなく、3Pシュートを放つ烏山。



『ザシュ!』


意図も簡単に、リングを射抜いた。




「すげーー!!入っていきなり決めたーー!!!」

「この3Pは痛い!!」

「いいぞーー!!烏山!」

「また15点差!」




陵南選手たち。

「湘北が苦労して奪った3点をあっさり返しおった!!」

「シュート力だけなら、神さんクラスですからね。あの人。」

「緑川じゃ、太刀打ちできないかもしれない・・・。」




「俺のシュートは、そこいらの選手とは訳が違うんだ。いつでも絶好調だぜ。」




山王 49
湘北 34




「あのカラスめ。グリ!もっとしっかりつけ!シューターは、シューターの気持ちがわかるんだろ!?」

「はっはい。」

(確かに、あのシュートフォームの綺麗さは、そう簡単には崩れそうもない。
だけど、必死についていけば、リズムぐらいは狂わせられるかもしれない!
そうすれば、リバウンドは桜木先輩が獲ってくれるはず!)



湘北の反撃。


「決めたら、あたるぞ!」

「はい!」

「おう。」

「うす。」



『キュッ!』


『ダム!』


トップから加藤を抜きにかかる宮城。

だが、加藤のディフェンスがそれを許さない。


「まだまだダス。」

「うるせ、タラ男!」

「桜木に続き、お前もダスか!」

タラ男と呼ばれて、機嫌を損ねる加藤。



『キュ!』


流川が沢北のマークを外した。



(チャンス!)


宮城から流川へ。




「今度こそ、攻めますかね?」

「さぁ、わからないわ。」




流川の眼が、沢北の後方を横切る緑川を捉える。

その眼の動きを察知した沢北。


(「いいもんが見れる。」また、パスか!?)


「流川さん!」

緑川が流川を呼んだ。


チラッと見る流川。



『キュッ!』


『ダムッ!』


流川の選択。

緑川と逆の方向に突っ込んだ。



(やべ!)


判断ミスを犯した沢北を、一瞬にして振り切り、ゴール手前まで詰め寄る流川。

言葉のフェイクが決まる。




「鋭いドライブだ。」

と仙道。




高く舞った。



「ゴール下は僕が守るんだ!ふんやーー!!!」



河田は両手を高く上げ、流川のシュートコースを塞ぐ。


桜木が空く。

流川は桜木の位置を確認。



『グルン。』


流川は、高く掲げたボール、自分の体に引き寄せ、河田の脇から、難しいアンダーレイアップシュートを放った。



『シュパ。』




「巧い!!」

「さすが流川!!」

「流川の久しぶりの得点だ!!」

「いよいよ、流川が動き出したぞ!!」

流川の声援一色となる体育館。




「ナイッシュ!流川君!!!」

「いいぞ!流川!!」

待望のエースの得点に盛り上がる湘北ベンチ。




「こらぁ!流川!今のは俺にパスだろ!」

「あっちのが狙ってた。でしゃばるな。」

「ぬぐぐっ!!」

「桜木にはパスすると思ったが、また外れたぜ。おい、ようやく自分で攻める気になったようだな?」

「・・・。てめーも本気できやがれ。」

(あと13点・・・。)


「あたるぞ。ド素人。」

「てめーにいわれなくてもわかってる!」




流川のシュートで反撃の狼煙があがった。

仕掛ける湘北。

山王を捉えられることはできるのか。




山王 49
湘北 36







続く。

#325 【不思議な師弟関係】

2010-06-25 | #11 湘北 選抜編
山王 46
湘北 31




湘北のオフェンス。


「緑川。落ち着いていこう。」

「リバウンドは天才に任せろ!!」

白田が、桜木が緑川に声をかける。


「先輩・・・。白田・・・。」




その光景を見て、安西が細く微笑む。

それを見た柳が安西の言葉を思い出す。

(「眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。」
今、みんなが周りを見ている。ということは、良いリズムが生まれようとしているのか・・・。)




「15点差だぜ。やばいぞ。」

「・・・。」


「全力で攻めて来いよ。流川!!」

「うるせ!!」


白田が腕を交差し、ミドルの位置で壁となっている。


(スクリーンプレー。流川さんか?)


福原は、流川の挙動に注意する。



『バシ!』


ボールは、流川に渡った。



「来い!」

沢北の眼は、鋭い。

それは、獲物を狩る鷹のような眼であった。


対して、流川。

冷静さのなかに、熱くこみ上げるものが、眼に宿っている。


(来る!!!)

沢北の腰が沈んだ。


流川の腰が動く。



『バス!』



「!!!!」


「!!」


「またか!!」



45°流川は、ボールを0°へ落とした。

そこには、フリーの緑川。

白田のスクリーンは、対沢北ではなく、対柳葉へのものであった。

緑川のシュートチャンスを演出するために。


遅れてチェックに跳ぶ柳葉。

対流川と考えていた福原は、スイッチの対応ができていない。



(自信を持て・・・。)


『キュ!』


(流川さんが託してくれたボール。)


『ダン!!』


(入れてやる!!)


『シュ!!』


パスを受け取った緑川は、得意のフェイダウェイシュートを放った。

ボールは高く舞い上がり、大きなアーチを描く。



だが。



「わぁ!!」


「!!!」


『ドンッ!!』


シュートチェックに跳んできた柳葉が、緑川に接触した。



『ピィーー!!』

審判の笛がなる。



シュートは・・・。



『パサッ。』


ネットに吸い込まれていた。



「カウントーーー!!!」

高らかにカウントを告げる審判。




「わぁぁーーー!!!」

「バスカンだーー!!!」

「あの#15!難しいシュートを決めてきたぞ!!」




「流川!」

なかなか攻めてこない流川に苛立ちを隠せない沢北に流川が一言。

「焦るな。いいもんが見れる。」

(なっ!それ、俺がいった言葉じゃねぇか!)



そして、流川が倒れている緑川に手を出した。

「イッシュ。」

「ありがとうございます。」

不思議な師弟関係を築いているこの2人。




「ホント、変な2人ね。」

「緑川君て、流川君のアシストは、5割に近い確率で決めているんですよね。」

と嬉しそうな晴子。

「ホント、不思議だわ。」

「ほっほっほ。」




「監督、今のは流川君の選択ミスやろか?」

「たまたま入ったからいいものを、あそこは流川が攻めるべきだ!
絶体絶命のピンチのなかでは、エースが仕事をし、チームを救わなければならない。
流川は、まだそのことを理解していない。なぁ、仙道?」

「俺もパス捌いたと思いますよ。だって、きた、沢北、止める気満々でしたし。」

「せっ仙道・・・。」

(それでは、私の威厳が丸つぶれではないか・・・。)

(監督をも超える仙道を俺は超える・・・。)

と福田。




「ん!?」

「柳葉!」

「敏君!!」

緑川に突っ込んだ柳葉は一向に立ち上がろうとはしない。

右足を伸ばし、左足の肩膝をついている。


「攣ったか?」

『コク。』




湘北ベンチ。

「先生。」

「柳君が彼の足を封じたんですよ。」




「やはり、前半の消耗度が大きかったな。限界だ。烏山、いくぞ。」

「へい。もう待ちくたびれましたよ。ホント。」



----------------------------------------------

SG…#9 柳葉 敏 180cm/2年

SG…#5 烏山 彰隆 182cm/3年

-----------------------------------------------



柳葉、福原の肩を使い、ベンチに下がる。


「コートで待ってますよ。柳葉さん。」

『コク。』
 


堂本は、足をつった柳葉に変わり、シューターの烏山を投入した。

緑川は、落ち着いてワンスローを沈め、3点プレーを成功させる。

だが、一難去ってまた一難。

山王の長距離兵器が、湘北のリングに狙いを定めるのであった。




山王 46
湘北 34







続く。

#324 【ミス】

2010-06-24 | #11 湘北 選抜編
山王 44
湘北 31




『ビィーーーー!!』

第3Q開始を告げるブザーが体育館に響き渡る。



-----------------------------------------------

SG…#9 柳 春風 171cm/1年

SG…#15 緑川 航 184cm/1年

-----------------------------------------------



観客席の陵南。

「おっ。緑川をいれてきましたね。」

「中、外のリズムを作るためだな。」

「全国大会でだいぶ成長しているとはきいてはるが、この決勝の舞台、緑川君で大丈夫やろか・・・。」

「合同合宿で力をつけた一人だ。問題はないよ。」




『パン!』


「はぁ!」

宮城が緑川の尻を叩き、小声で語りかける。

「いつもの自信はどうした?1本目は、お前に預ける。思いっきり、打っていけ。」

「えっ。はっはい。」

「花道、白田。リバウンド頼むぞ。」

「はい。リラックス、リラックスだよ、緑川。」

「おうよ。リバウンドは全て獲る!」



湘北のボールでスタートした。

山王のディフェンスは変わらない。

ハーコートマンツー、柳葉がそのまま緑川についた。



『ダムダム!』


宮城のドリブル。

緑川にアイコンタクトを送る。



『ビィ!』


作戦通り、宮城から緑川にパスが送られた。



『パス!』


軽いステップでボールを受けた緑川は、眼の前の柳葉には眼もくれず、3Pシュートを放った。


「!!」




「血迷ったか!あの1年!」

と田岡が叫ぶ。

「思いっきり打ったな。」にこり。

と仙道。

「雰囲気に飲まれたな!入るとは思えん!」

再び、田岡は叫んだ。




ボールは、低い弾道で、リングに向かっている。



「リバウンドダス!」

加藤の声に、河田、福原、そして沢北がスクリーンアウトを開始。

負けじと、桜木、白田、流川が対抗する。



緩やかな回転をした緑川のシュートは・・・。



『ガッガン!!』


奥のリングにあたった。



「すいません!!」

と緑川。


その声で、ゴール下は戦場と化す。

小さく跳ねたボールは、河田の眼の前へ。


(桜木さんを跳ばせないことが先決だ。ボールはあとでかまわない。)

徹底した桜木へのスクリーンアウト。

河田は跳ばなかった。



ボールは。



「もっらい!」

沢北が奪った。




「だから、言わんこっちゃない!!」

と憤慨する田岡。

「監督が怒っても・・・。」




『キュ!!』


「むっ。」


だが、すぐに流川が沢北にあたる。



「ふっ、いくぜ。ヨーーイ、ドン!」


「!!」


沢北は、柳葉へパスアウト。

自身は、湘北ゴールへ駆け上がる。



「速攻ーダス!!!」


宮城と並走する加藤。


流川もまた沢北に並んでいる。

だが、スタートの遅れた緑川は、柳葉のスピードについていけない。



山王の3線。

アウトナンバー。



『パシ!』


『パシ!』


流れるようなパスワーク。


山王の勢いは止まらない。



「柳葉!叩き込め!」



『パサ。』


あっという間に、柳葉のレイアップシュートが決まった。



(ん!柳葉のやつ、ダンクにいかなかった。もしや・・・。)

と沢北。




山王 46
湘北 31




「ったく。安西先生は何を考えておられるのだ!!緑川に柳葉は抑えられん!!」

ぶつぶついう田岡。

(最初から監督がおったら、うるさくてかなわんかったな。)




「いいぞ!いいぞ!柳葉!!」

「ナイスランダス!」


「・・・。」

『コク。』


「ん、どうかしたダスか?」

「・・・・・・・・・ブ。」

「大丈夫ダスか。」




(ちっ、最悪の結果になっちまった。)

と肩を落とす宮城。


(15点差・・・。)

流川は電光掲示板を眺める。


「オール。」

「あぁ、それしかねぇ。」


宮城の選択がもたらした最悪の結果。

点差は15点に広げられ、山王に更なる勢いをもたらした。

体育館内は、山王の強さに湧き上がり、湘北の脆さに落胆の声。




「強すぎる山王!!」

「15点差はデカイ!!」

「山王が圧倒している!!」




「15点差!!どうしたんだ!湘北は!!」

記者席の中村は、感情を抑えられない。

「今の1本は余計だったわね。きっちり攻めて、2点奪えれば、11点差だったのに・・・。
宮城君の選択ミスだわ。いや、安西先生のミスともいえるわね。」

と弥生。




流川は、山王コートに向かう途中、緑川に一言告げた。

「おい。もっと自信を持て。」

「流川先輩・・・。」

(・・・わかりました!今の1本で、緊張も少し和らいだし、頑張ってみます!!)



緑川のシュートが、湘北のピンチを救うのか?

怒涛の第3Qを迎える。




山王 46
湘北 31







続く。

#323 【後半の前に】

2010-06-21 | #11 湘北 選抜編
山王 44
湘北 31




ハーフタイムを迎えている。


記者席。

「予想以上の得点差ですね・・・。湘北、大丈夫かな・・・。」

「福原君の活躍が素晴らしいわね。今大会、一番の動きを見せている。
何が何でも勝ちにいく気持ちと、何か違うもう一つの信念みたいなものを感じるわ。」

「決勝の舞台で、実力以上のものを見せれるなんて、大物ですね。」




観客席の陵南。

弥生らと同じ話をしていた。

「快のやつ。めちゃくちゃ巧くなっている。」

「ずっと同じチームで、同じような実力でやっていたのにな。
手の届かない存在になっちまったみたいで、なんか悔しいな。」

「それは違うで、空斗!わいらは、夏に優勝したんや!
きっと、福原君も今の空斗と同じような気持ちになって、一生懸命努力したからあの場所におるんや!
わいらももっと努力したら、きっとまた1番になれるで!!!」

「彦一さん・・・。」

「お前が言えた言葉じゃない。お前がもっと頑張れ。」

「なっ。フクさん・・・。せっかく、ええ言葉ゆうたのに・・・。」


そこへ。


「ふーーーー。ようやく辿り着いた・・・。」

「かっ監督!」

「お疲れ様です。」

「遅かったですね。」

「遅かったですねじゃない、バカもの!!ったく。
誰のせいで、こうなったと思っておるのだ!ぶつぶつ・・・。」

田岡の髪は乱れ、明らかに疲れた表情を浮かべていた。


「で、どうだ?試合のほうは?得点を見る限り、山王が随分押しているようだが。」

「その通りです。山王はチーム力で攻め、湘北は個人技中心。
これでは、なかなか差は縮まりません。」

と黒川が答えた。


「個でも同等以上の相手に、チームで攻めないでどうなる?安西先生は?」

「まだ、動いていませんが、どうやら選手を変えるようですよ。」




湘北ベンチ。


「みなさん、どうやら山王戦ということで少し飲まれてしまっているようですね。」

「そんなことはないぞ!キツネは知らんが!」

「うるせー。ド素人。」

「攻守ともに、眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。
そのため、無謀で強引なシュートばかりを打つはめに。
幸運にもシュートは決まっているようですが、これでは良いリズムは生まれません。」


(福原ばかりに気をとられている俺のことか。)


(柳葉さんの抑えるということに拘りすぎて、オフェンスも萎縮してしまっていたということか。)


(ちっ、また自分ばかりで一杯一杯になってしまい、みんなをフォローすることができなかった。)


(沢北・・・。)


「どうやら、庶民どもは心当たりがあるようだな。俺はないぞ!ハッハッハ!!」


「桜木君も同じです。ゴール下を守るといったにもかかわらず、河田君や福原君にシュートを許している。
カバーを怠っているのでないでしょうか。」

「ぬっ。」


「ここは少しリズムを変えます。柳君、緑川君と交代です。」

「はい・・・。」


「緑川君を投入する目的は一つ。山王のディフェンスを広げること。
緑川君は、チャンスと思ったら、打ってください。リバウンドは桜木君が獲ります。」

「もちろんだ!オヤジ!!俺のリバウンドをよく見てろよ!!」

「先生にえらそうな口を叩くな!」


「柳君。君のおかげで、柳葉君は後半失速するかもしれません。」

「えっ。」

「得点は奪われてはいましたが、君のスピードとディフェンスは、効いています。ボディブローのようにね。」

「はっはい。」

(そうは思えなかったけど・・・。)


「宮城君。私の指示があるまで、ゲームメイクは任せましたよ。」

「はい。」


「白田君。」

「はい。」

「自分より低い相手だからといって、ゴール下で勝負しなくてもいいんですよ。
君は、ゴール下だけの選手じゃない。」

「はっはい!」

(・・・・・・。そっそうか。福原に固執するあまり、攻めが単調になっていたかもしれない・・・。
眼の前の相手ばかりってそういうことか・・・。)


「流川君。」

「んっ。」


湘北の作戦会議は続いた。




対して、山王ベンチ。


「上出来だ!!」


『パンパン!!』

手を叩きながら、選手を迎え入れる堂本。


「いい動きだ。福原。」

堂本は福原の肩を叩きながら、声をかけた。

「ありがとうございます。」

選手たちが、堂本の周りに集まる。


「前半で13点差。普段の相手なら安全圏に近いリードだといえる。だが、リードなど忘れよう。
相手は湘北、20点差をひっくり返したチームだからな。」

「はい!!」


「沢北、流川はどうだ?」

「パスを覚えたおかげで、オフェンスの幅が広がった。ディフェンスするのも一苦労ですよ。
ただ、1on1は以前ほど、怖くなくなった。
どうやら、やつの優先順位は、パスが1番になっちまったようです。らしくないですね。」

「例え、1on1だけでも、お前には敵わないだろう。」

「ありがとうございます。」

沢北は、流川を睨む。

(流川、もっと攻めて来いよ!!全力でよ!!!)


「敏君、大丈夫?いつもより、疲れているように見えるけど。」

『プルプル。』

首を横に振る柳葉。

「なら、いいけど。後半も頑張ろうね。」

『コク。』


普段と変わらぬ得点を奪っていた柳葉。

そのため、周りのものは気付いていなかった。

柳葉のわずかなリズムの乱れを。


元来、超がつくほどの人見知り。

普段から、前半は相手の様子を伺いながら、オフェンス。

それでも、高いオフェンス力を誇っていた柳葉は、次々に得点を量産していた。

後半は、抑えていた体力で爆発的な得点を奪う。

そんなプレースタイルを持っていたのが、柳葉であった。


しかし、今日の湘北戦。

スタートから、柳の激しいディフェンス。

スピードで振り切ろうともなかなか振り切れないず、
この第2Qまでに後半に使う体力までも消耗していた。

そのことに感づいていたのは、親友の河田、湘北の安西、そして、堂本であった。


(柳葉は、少しオーバーペースかもしれないな・・・。)


「烏山、いつでもいけるように準備しとけ!」

「へっ。待ちくたびれましたよ!!」




再び、湘北ベンチ。

安西は、流川に向かって話をしている。


「流川君のパスは、山王に脅威を与えていますが、沢北君には逆効果かもしれません。」

「むっ。」

(どういうことだ??)


「オフェンスの基本は、最初にゴールを見ることです。味方を探すことじゃありません。
特に君は、チームのエースとして点を獲る使命がある。
1on1、パス、使い分けは難しいですけどね。ほっほっほ。」

「使い分け・・・。」

流川は一人考えるのであった。


「オヤジ!俺は!!」

「桜木君は・・・。」




両校の監督、選手の思惑が交錯する中、第3Qが開始された。




山王 44
湘北 31







続く。

#322 【計算外の福原】

2010-06-18 | #11 湘北 選抜編
山王 39
湘北 29




第2Qも終盤。


現在、山王がこの試合、最大の得点差をつけ、リードしている。


(ちっ、あの福原ってやろーが、計算外だったな。白田が抑えられているじゃねぇかよ。)

と宮城。


(予想以上のディフェンス・・・。思うように動けない・・・。)

(俺は、いつも最強インサイドを相手に練習しているんだ。何度もやられてたまるか!)



『ダン!』


『グッ!』


白田は必死にゴール下のポジションを獲ろうとしているが、福原の重い足腰により、
なかなかいいポジションを奪うことができなくなっていた。


(お前のパターンは、もうわかったよ!!)



『サッ!』


白田は、足を大きく開き、福原の前を陣取ろうとするが、素早く福原が足を入れる。


(くそっ。ポジションが獲れない。)


ボールは、柳がキープしている。


(あれじゃ、白田は使えない。快のやつ・・・。)


同様に、桜木も河田の大きな体により、ベストポジションを奪えることが少なくなっていた。

奪えたとしても、ガード陣がそのパスコースを潰していた。




「そうだ。桜木へのパスは全て潰すんだ。やつをノらせるわけにはいかない。」

と堂本。




攻め倦んだ湘北は、流川が沢北のマークを交わせぬまま、強引なシュートを放った。


(そんなシュートじゃ決まらねぇよ!!)



『ガン!』


ボールは、リングにあたり、大きく跳ねる。



「美紀男!」

「ふぁい!」


「花道!!」

「おう!!」


(ボールがこないなら、自分から奪い獲るまでだ!!)



福原と白田もゴール下の肉弾戦に参戦。



(このボールは・・・。)



「誰にも渡さねぇーーー!!!とりゃーー!!!」


『ダン!』


「山王のゴール下は、僕が守る!!!」


『ダン!』



『パス!』


先に触れたのは、身長、ポジションで有利な美紀男。

だが、両手で掴むことはできず、ボールは再び舞い上がる。



『ダン!』



「1本目で奪えなかったのは、致命傷だぜ!丸男!!!」


連続ジャンプにおいて、桜木に敵う高校生はいない。



『バチーーン!!』



「よっしゃーーー!!!」


2回目の跳躍、誰もいない空中で、ボールを掴み獲った桜木。




「桜木くーーーん!!!」

晴子がベンチから声援を送る。

「8本目!準決勝を上回るペースよ!」

「だけど、ここから得点に結び付けないと。桜木のリバウンドの意味がなくなってしまう。」

と心配そうな安田。




「桜木さんのリバウンド力は、相手が山王であろうと健在ですね。」

と陵南黒川。

「いやむしろ、パワーアップしたようだ。」にこり。

笑う仙道。

(リバウンドを掴む者は、勝利を掴む・・・。)

福田は魚住の言葉を思い出していた。




すぐに、宮城が指示を出す。


「花道!外だ!!柳がフリー!!」

柳葉は、すでに湘北ゴールにむけ、スタートをきっていた。


「サル風!!」


『バシ!』


桜木のパスアウト、絶好のミドルポジションで、ボールを受ける柳。


「ナイパス!」


そのまま、ミドルシュートを放った。


ボールは、綺麗な弧を描き、リングを目指す。


ジワジワと山王に離されかけている湘北にとって、この1本はどうしても決めたいところ。




「入れーー!!!」

「いけーーーー!!!」

湘北のベンチが大きな声を出す。




下降するボール。



『ガッ!!』



(外れた!)




「外れた!!」

「外したーー!!」




「春風!!」

「外してしもうた!!」




『バシ!!』



「ナイスリバンだ!美紀男!!」

「ふぁい!キャプテン!」


リバウンドは、ゴール下にいた美紀男が奪った。




「あぁーー。」

「残念っ。」

「流れは、完璧に山王や。」




湘北ベンチにも落胆の声が出る。

「桜木が、せっかくオフェンスリバウンド獲ったのに・・・。」

「フリーを・・・。」

「もう!こういうときこそ、応援よ!!ほら、しっかり!」

「そっそうだ。マネージャーのいうとおりだ。よし!!ドンマイドンマイ!!」

「柳!切り替えていこう!!」

「ディフェンス1本だ!」

「ディーフェンス!ディーフェンス!」

ここで、安西の口が開いた。


「緑川君。アップをしてください。」

「はっはい。」

(けっ決勝戦で・・・、きっ緊張してきた・・・。)


「することはわかっていますね?」

「はっはい。僕には、あれしかありません。」

「よろしい。後半いきますよ!」

「はい!!」




コートでは。



『ザシュ!』


「ナーイシュ!柳葉!ナーイシュ!ヤ・ナ・ギ・バ!!」


加藤、柳葉、福原、そして柳葉と素早くつないだパスワークから、
柳葉は柳の厳しいチェックを受けながらもジャンプシュートを沈めた。

またしても、アシストは福原であった。

山王は、福原起点にリズムの良いオフェンスを展開し、危なげなく試合を運ぶ。



かたや、湘北。

桜木のゴール下の1on1、流川のオフェンス、決して安定したものではなかったが、なんとか喰らいついていた。



第2Q終了。




山王 44
湘北 31




湘北は、13点差というビハインドを背負って、後半戦を迎えることになった。








続く。