山王 54
湘北 47
観客席の陵南。
「中、外と湘北のオフェンスはリズムがいいですね。」
「だが、結果的に追いついていない。」
「さすが山王、なかなか追いつかせてくれないな。」
(7点差。縮まらねぇ。)
流川は沢北を睨む。
(だいぶ、焦ってきたか。)
湘北は、確実に得点を重ねるものの、得点差はすぐにはつまらなかった。
追うプレッシャー。
追われるプレッシャー。
両校の選手は体力以上に精神的な疲労が見える。
ベンチで立っている堂本。
(この重要な場面で仕事をしてきた深津や河田はいない・・・。
加藤に攻めさせるか?いや、湘北の速攻を許すことになる。
やはり、ここは沢北お前が、なんとかせねばならん。)
現在、冷静さをわずかに欠いている加藤にこれ以上のプレッシャーを与えることはできない。
夏のIH準決勝 パスミスとプレスにより精細を欠いた宮城。
加藤は、今まさにこの夏の宮城と似たような状態になっていた。
(どうやら、随分と追い込まれているようだな。)
(落ち着くダス!落ち着くダス!)
加藤に双肩にのしかかるもの。
偉大な先輩たちが築き上げてきた選抜3連覇という快挙を
自分の代で崩壊させるわけにはいかないというプレッシャー。
しかも、山王歴代最高選手と呼ばれている沢北栄治を同学年に持ち、優勝して当然との評価。
キャプテンの加藤にとって、そのプレッシャーは誰よりも大きなものであった。
結果、宮城のトラッシュトークが、起爆剤となり、加藤から冷静な判断力を奪っていた。
(落ち着くダス!)
「!!」
『ビィ!!』
視界に入った烏山への加藤の単純なパス。
「!!」
「!!」
『バチンッ!!』
「よっしゃ!!」
「宮城がパスカットーー!!」
「加藤から奪い取ったーー!!!」
「完全に宮城が上回っている!!」
「しまったダス!」
加藤は悲痛の表情を浮かべている。
(加藤!今なら言えるぜ!お前は、牧や深津、そして俺よりも下だ!!)
「いっくぜーー!!」
『ダムダムッ!』
勢いづいた宮城。
プレッシャーに潰れかけた加藤。
この2人の戦いは、火を見るよりも明らかであった。
当然、加藤は宮城の背中を追うことはできない。
『ダムダムダム・・・。』
「もらったーー!!」
『キュ!』
『ダム!』
『タン!!』
宮城のレイアップシュート。
電光石火のワンマン速攻。
今までと比べ物ににならないほどの高さのレイアップを放った。
「リョータ!!」
「キャプテ・・・。」
「ん!?」
振り返る宮城。
「!!!さっさわ!」
『バチィン!!!』
ボールは、沢北によって、リング手前で、サイドラインに叩き出された。
宮城のスティールと共に、いち早くスタートをきった沢北が、
ギリギリのところで、宮城に追いつき、シュートを叩き飛ばしたのであった。
「・・・。」
宮城の言葉を無視するかのように、沢北は振り返った。
そして、おもむろに加藤の前へ。
『パチ!』
沢北は、加藤の頬を叩いた。
体育館が一瞬静まり返る。
「目を覚ませ。」
「・・・。」
「プレッシャーは誰にでもある。俺にも、湘北にも。」
「・・・。」
「こういうときこそ、落ち着くんだ。」
「・・・・・・。エージ・・・。」
加藤は静かに答えた。
「極度の緊張、プレッシャーが、気を動転させたか。」
と田岡。
「・・・。もう大丈夫だ。ありがとう、エージ。」
「頼むぜ。キャプテン。」
沢北は微笑んだ。
「キャプテン。勝ちましょ。」
加藤に歩み寄った河田がいった。
「あぁ。」
笑いながら答える。
「夏輝。あんなエージ見たの初めてだぜ。」
烏山が声をかける。
「俺もだ。えらく心配をかけてしまったようだな。」
「おっお前、ダス忘れてるぞ?」
「語尾をつければ、深津さんみたいになれるかなって思っていたけど、そうじゃなかった。
俺は、深津さんではなく、加藤夏輝。ここからは、加藤夏輝のバスケをする。」
加藤の眼に、今一度、活力が戻った。
「戻るのか?」
「あぁ。」
「ヒゲに怒られるぞ!」
「優勝すれば、堂本監督も何もいうまい。」
「そりゃそうだな。よぉし!勝とうぜ!」
「もちろんダ・・・。もちろん。」
「沢北さんがはたきおったで・・・。」
「時として、ああいうのも必要だぞ。仙道?」
「まいったな・・・。」
(苦手だな。)
「沢北君もあんなことするんですね。
普段、おちゃらけている雰囲気があるから、ビックリしました。」
「締めるところは締める。さすが、沢北君。これは、何かが変わるかもしれないわ。
何かが・・・。」
沢北の怒声と加藤の意味深発言が、山王に変化をもたらすのか?
第3Q残り42秒の攻防が始まる。
山王 54
湘北 47
続く。
湘北 47
観客席の陵南。
「中、外と湘北のオフェンスはリズムがいいですね。」
「だが、結果的に追いついていない。」
「さすが山王、なかなか追いつかせてくれないな。」
(7点差。縮まらねぇ。)
流川は沢北を睨む。
(だいぶ、焦ってきたか。)
湘北は、確実に得点を重ねるものの、得点差はすぐにはつまらなかった。
追うプレッシャー。
追われるプレッシャー。
両校の選手は体力以上に精神的な疲労が見える。
ベンチで立っている堂本。
(この重要な場面で仕事をしてきた深津や河田はいない・・・。
加藤に攻めさせるか?いや、湘北の速攻を許すことになる。
やはり、ここは沢北お前が、なんとかせねばならん。)
現在、冷静さをわずかに欠いている加藤にこれ以上のプレッシャーを与えることはできない。
夏のIH準決勝 パスミスとプレスにより精細を欠いた宮城。
加藤は、今まさにこの夏の宮城と似たような状態になっていた。
(どうやら、随分と追い込まれているようだな。)
(落ち着くダス!落ち着くダス!)
加藤に双肩にのしかかるもの。
偉大な先輩たちが築き上げてきた選抜3連覇という快挙を
自分の代で崩壊させるわけにはいかないというプレッシャー。
しかも、山王歴代最高選手と呼ばれている沢北栄治を同学年に持ち、優勝して当然との評価。
キャプテンの加藤にとって、そのプレッシャーは誰よりも大きなものであった。
結果、宮城のトラッシュトークが、起爆剤となり、加藤から冷静な判断力を奪っていた。
(落ち着くダス!)
「!!」
『ビィ!!』
視界に入った烏山への加藤の単純なパス。
「!!」
「!!」
『バチンッ!!』
「よっしゃ!!」
「宮城がパスカットーー!!」
「加藤から奪い取ったーー!!!」
「完全に宮城が上回っている!!」
「しまったダス!」
加藤は悲痛の表情を浮かべている。
(加藤!今なら言えるぜ!お前は、牧や深津、そして俺よりも下だ!!)
「いっくぜーー!!」
『ダムダムッ!』
勢いづいた宮城。
プレッシャーに潰れかけた加藤。
この2人の戦いは、火を見るよりも明らかであった。
当然、加藤は宮城の背中を追うことはできない。
『ダムダムダム・・・。』
「もらったーー!!」
『キュ!』
『ダム!』
『タン!!』
宮城のレイアップシュート。
電光石火のワンマン速攻。
今までと比べ物ににならないほどの高さのレイアップを放った。
「リョータ!!」
「キャプテ・・・。」
「ん!?」
振り返る宮城。
「!!!さっさわ!」
『バチィン!!!』
ボールは、沢北によって、リング手前で、サイドラインに叩き出された。
宮城のスティールと共に、いち早くスタートをきった沢北が、
ギリギリのところで、宮城に追いつき、シュートを叩き飛ばしたのであった。
「・・・。」
宮城の言葉を無視するかのように、沢北は振り返った。
そして、おもむろに加藤の前へ。
『パチ!』
沢北は、加藤の頬を叩いた。
体育館が一瞬静まり返る。
「目を覚ませ。」
「・・・。」
「プレッシャーは誰にでもある。俺にも、湘北にも。」
「・・・。」
「こういうときこそ、落ち着くんだ。」
「・・・・・・。エージ・・・。」
加藤は静かに答えた。
「極度の緊張、プレッシャーが、気を動転させたか。」
と田岡。
「・・・。もう大丈夫だ。ありがとう、エージ。」
「頼むぜ。キャプテン。」
沢北は微笑んだ。
「キャプテン。勝ちましょ。」
加藤に歩み寄った河田がいった。
「あぁ。」
笑いながら答える。
「夏輝。あんなエージ見たの初めてだぜ。」
烏山が声をかける。
「俺もだ。えらく心配をかけてしまったようだな。」
「おっお前、ダス忘れてるぞ?」
「語尾をつければ、深津さんみたいになれるかなって思っていたけど、そうじゃなかった。
俺は、深津さんではなく、加藤夏輝。ここからは、加藤夏輝のバスケをする。」
加藤の眼に、今一度、活力が戻った。
「戻るのか?」
「あぁ。」
「ヒゲに怒られるぞ!」
「優勝すれば、堂本監督も何もいうまい。」
「そりゃそうだな。よぉし!勝とうぜ!」
「もちろんダ・・・。もちろん。」
「沢北さんがはたきおったで・・・。」
「時として、ああいうのも必要だぞ。仙道?」
「まいったな・・・。」
(苦手だな。)
「沢北君もあんなことするんですね。
普段、おちゃらけている雰囲気があるから、ビックリしました。」
「締めるところは締める。さすが、沢北君。これは、何かが変わるかもしれないわ。
何かが・・・。」
沢北の怒声と加藤の意味深発言が、山王に変化をもたらすのか?
第3Q残り42秒の攻防が始まる。
山王 54
湘北 47
続く。