【産経抄】12月20日
明治32(1899)年に福岡県の小さな村で火事が起こらなかったら、米大統領継承順位3位まで上り詰める日系上院議員の存在はなかった。火元とされ弁償費用を稼ぐためハワイに移住したのが、17日に亡くなったダニエル・イノウエ氏の祖父母だった。
▼祖父母から日本の価値観と美徳をたたきこまれて育ったイノウエ氏は、医師をめざして勉強中に、真珠湾攻撃に遭遇する。「敵国人」の汚名をそそぐため、陸軍志願に迷いはなかった。
▼「日本語ができないふりをしたんだ。祖国のために一人でも多くの敵を銃で倒したかったから」。現在公開中のドキュメンタリー映画『二つの祖国で』で語っている。イノウエ氏は、映画で描かれる対日本軍の陸軍秘密情報部はデスクワークが多いとみて、配属を巧みに逃れた。所属したのは後に米国史上最強部隊と呼ばれる「442連隊戦闘団」だ。
▼欧州戦線での武勇伝は語りぐさになっている。イノウエ氏はドイツ兵に腹と右肘を撃たれて右腕を失いながら、左手で手投げ弾を投げつけて相手を倒したという。
▼戦後、日系人として初めて連邦議員となったイノウエ氏は、今度は人種差別に闘いを挑む。日系人だけでなく、先住民の地位向上にも努めた。2007年、慰安婦問題をめぐる下院の対日非難決議案に対して、反対声明を出した硬骨ぶりも印象に残る。日米の懸け橋として果たした功績の大きさは計り知れない。
▼それだけに、米軍普天間飛行場の移設問題で、迷走を続けた民主党政権への失望は大きかった。「堪忍袋の緒が切れることもあると申し上げたい」。昨年東京で行った講演を聞いた同僚記者は、その言葉に身が引き締まる思いだったという。
明治32(1899)年に福岡県の小さな村で火事が起こらなかったら、米大統領継承順位3位まで上り詰める日系上院議員の存在はなかった。火元とされ弁償費用を稼ぐためハワイに移住したのが、17日に亡くなったダニエル・イノウエ氏の祖父母だった。
▼祖父母から日本の価値観と美徳をたたきこまれて育ったイノウエ氏は、医師をめざして勉強中に、真珠湾攻撃に遭遇する。「敵国人」の汚名をそそぐため、陸軍志願に迷いはなかった。
▼「日本語ができないふりをしたんだ。祖国のために一人でも多くの敵を銃で倒したかったから」。現在公開中のドキュメンタリー映画『二つの祖国で』で語っている。イノウエ氏は、映画で描かれる対日本軍の陸軍秘密情報部はデスクワークが多いとみて、配属を巧みに逃れた。所属したのは後に米国史上最強部隊と呼ばれる「442連隊戦闘団」だ。
▼欧州戦線での武勇伝は語りぐさになっている。イノウエ氏はドイツ兵に腹と右肘を撃たれて右腕を失いながら、左手で手投げ弾を投げつけて相手を倒したという。
▼戦後、日系人として初めて連邦議員となったイノウエ氏は、今度は人種差別に闘いを挑む。日系人だけでなく、先住民の地位向上にも努めた。2007年、慰安婦問題をめぐる下院の対日非難決議案に対して、反対声明を出した硬骨ぶりも印象に残る。日米の懸け橋として果たした功績の大きさは計り知れない。
▼それだけに、米軍普天間飛行場の移設問題で、迷走を続けた民主党政権への失望は大きかった。「堪忍袋の緒が切れることもあると申し上げたい」。昨年東京で行った講演を聞いた同僚記者は、その言葉に身が引き締まる思いだったという。