ユビキタスな昼とそうでもない夜

ユビキタス・コンピューティングな話題とそうでもない話題

TRONはWindowsに勝ちえたか?

2005年09月01日 | 非ユビキタス
先日のNHKスペシャルもそうだが『80年代末に日本にはトロンという優れたOSがあったが、米国からの横槍により潰され、パソコンのOSはWindowsに占有されてしまった』と言うのが定説になりつつあるようだ.決して新しい話ではないのだが、これが世間一般に広まったのは、やはりNHKのプロジェクトXではないだろうか.
私自身、基本的にはトロンびいきでもあり歓迎すべき話しと思っているが、それでも気になる誤解も多々あるようでここにいくつか記しておきたい.

まず、89年4月に米国のスーパー301条の対象候補にトロンの名があがり、そのため内定していた教育用パソコンOSの話しが頓挫したのは事実.ただし、この段階ではBTRONマシンは試作であり、決して一般に知られているとは言えなかった.これが無ければBTRONが普及したかどうかは別に議論すべき問題である.

教育パソコンへのトロン採用に反対していたのは、米国だけではなく、当時日本最大のパソコンメーカであったNECも反対していた.NECに遅れを取っていた各社がトロンを押していたとも言える.

BTRONがGUIベースであったことが先進的に言われるが、既に1984年にMacintoshが発売されている。Windowsも一応発表されているし、GUI自体は流行であった.むしろ、BTRONの先進性は独特のファイルシステムやハイパーテキストをOSレベルでサポートした事にある.

後に携帯電話や家電などの分野でトロンが普及したが、これは組込み機器用のITRONであり、パソコン用のBTRONではない。どちらもトロンプロジェクトの産物ではあるが、技術的にみて、ITRONとBTRONはほとんど別物。

トロンがオープンだとかフリーだとか言われるが、無償公開されていたのは仕様書だけ.公開された仕様を自由に使って良いと言うのがトロンの考え方であり、Linuxなどのオープンソースとは異なる.
後にも先にもBTRONのソースコードが公開されたことは無い.組込み機器のITRONもそのほとんどは各社が作った有償の製品である.

BTRONはその後、製品として販売され、今も売られている.BTRONがいかに優れているか評価したいのであれば、まず実際に使ってみるのが良いだろう.