Madonna - La Isla Bonita (Official Video)
fau. - 通り雨
小泉今日子&中井貴一 - T字路 (Official Video)
Moonchild - Cure (Official Video)
外はみんな (Remaster) 吉田美奈子
かなり久しぶりになりますが・・・
(ちんちくりんNo,68)
朝、目を覚ますと隣にいるはずのかほるが消えていた。消えていた……そう、まさに消えたと思い、僕は慌てて上体を起こし辺りを見回した。首に寝違えたような微かな痛み。彼女を抱きしめた両腕の感覚が記憶を徐々に呼び戻した。胸がまだ熱い。ふと、水を撒いているような音に気付く。音は部屋の外から微かに響いてきていた。シャワー?そういえば、階段を上った正面、かほるの部屋の隣には洗面所があった。その奥にはシャワー室があるのだとかほるは言っていた。彼女はシャワーを浴びているのだろうか。少し安心した。かほるの姿が見えないことで一瞬、彼女が眠っている僕を残してアメリカに旅立って行ってしまったのかと錯覚してしまったが、考えてみればそんなことはあるはずがなかった。それでは僕が何のためにかほるの家に来たのか分からない。そんなことを考えていて足下の布団の窪みを見る。証。僕がかほると互いの鼓動を交わした一夜の証。抱きしめ合ったというただそれだけの、大人の視点から見ればとても幼稚なことかもしれないが、僕らは確かに互いの想いを交錯させたのだ。
「起きた?」
部屋のドアを開ける音がしたと思ったらかほるが戻って来た。頭にバスタオルを掛け、上下すでに着替えを済ませていた。チェックのシャツに、裾を絞ったジーンズのワイドパンツ。
「まるで、近所に散歩でも行くような恰好だな」
「あら、何たってアメリカだもん。これでバッチシじゃない」
アメリカだからって、一体どういう理屈なのか。かほるは本棚に立てかけてある卓上用の鏡を手に取ると、中央のテーブルに持っていって置き、胡坐をかいて座った。すると、近くに放り出してあったドライヤーとヘアブラシを手元に寄せ、頭に掛けていたバスタオルをするりと外した。あれ。どこか…。
「かほる。もしかして髪切った?」
「ああ、これ」
かほるは僕の方に後頭部を向け、うなじの辺りを指の腹でさすった。肩近くまであったはずの彼女の髪は見事に姿を消し、それどころか昔見た小さなおかっぱ頭の女の子のように刈り上げられていた。
「これはまた…よく」
「いいでしょ。朝起きてアメリカいくぞって思ったら髪型も変えたいって思って。ほら、ここも」
両耳上の髪をかき上げるとその下は青く刈り上げた跡が相当の範囲で残っていた。前髪は眉毛が隠れるところで切り揃えたようだ。
「あと、左耳にピアスを着けるの。穴あけたし」
かほるは得意げに話した。
「なんでそんなことを」
「へへ。流行らせようかな、アメリカで。…なんちゃってね」
かほるは知らないのだろうか、外国で女性が左耳だけにピアスをすることの意味を。
はははは―
僕は思わず笑ってしまった。変態的なかほる、無知なかほる、ちんちくりんなかほる。でも僕はそんなかほるが可愛くて、愛しくて、永遠に抱きしめていたいくらいの存在で。今はもうそれが出来ないと気づいた僕はただ笑うしかなかった。
fau. - 通り雨
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外はみんな (Remaster) 吉田美奈子
かなり久しぶりになりますが・・・
(ちんちくりんNo,68)
朝、目を覚ますと隣にいるはずのかほるが消えていた。消えていた……そう、まさに消えたと思い、僕は慌てて上体を起こし辺りを見回した。首に寝違えたような微かな痛み。彼女を抱きしめた両腕の感覚が記憶を徐々に呼び戻した。胸がまだ熱い。ふと、水を撒いているような音に気付く。音は部屋の外から微かに響いてきていた。シャワー?そういえば、階段を上った正面、かほるの部屋の隣には洗面所があった。その奥にはシャワー室があるのだとかほるは言っていた。彼女はシャワーを浴びているのだろうか。少し安心した。かほるの姿が見えないことで一瞬、彼女が眠っている僕を残してアメリカに旅立って行ってしまったのかと錯覚してしまったが、考えてみればそんなことはあるはずがなかった。それでは僕が何のためにかほるの家に来たのか分からない。そんなことを考えていて足下の布団の窪みを見る。証。僕がかほると互いの鼓動を交わした一夜の証。抱きしめ合ったというただそれだけの、大人の視点から見ればとても幼稚なことかもしれないが、僕らは確かに互いの想いを交錯させたのだ。
「起きた?」
部屋のドアを開ける音がしたと思ったらかほるが戻って来た。頭にバスタオルを掛け、上下すでに着替えを済ませていた。チェックのシャツに、裾を絞ったジーンズのワイドパンツ。
「まるで、近所に散歩でも行くような恰好だな」
「あら、何たってアメリカだもん。これでバッチシじゃない」
アメリカだからって、一体どういう理屈なのか。かほるは本棚に立てかけてある卓上用の鏡を手に取ると、中央のテーブルに持っていって置き、胡坐をかいて座った。すると、近くに放り出してあったドライヤーとヘアブラシを手元に寄せ、頭に掛けていたバスタオルをするりと外した。あれ。どこか…。
「かほる。もしかして髪切った?」
「ああ、これ」
かほるは僕の方に後頭部を向け、うなじの辺りを指の腹でさすった。肩近くまであったはずの彼女の髪は見事に姿を消し、それどころか昔見た小さなおかっぱ頭の女の子のように刈り上げられていた。
「これはまた…よく」
「いいでしょ。朝起きてアメリカいくぞって思ったら髪型も変えたいって思って。ほら、ここも」
両耳上の髪をかき上げるとその下は青く刈り上げた跡が相当の範囲で残っていた。前髪は眉毛が隠れるところで切り揃えたようだ。
「あと、左耳にピアスを着けるの。穴あけたし」
かほるは得意げに話した。
「なんでそんなことを」
「へへ。流行らせようかな、アメリカで。…なんちゃってね」
かほるは知らないのだろうか、外国で女性が左耳だけにピアスをすることの意味を。
はははは―
僕は思わず笑ってしまった。変態的なかほる、無知なかほる、ちんちくりんなかほる。でも僕はそんなかほるが可愛くて、愛しくて、永遠に抱きしめていたいくらいの存在で。今はもうそれが出来ないと気づいた僕はただ笑うしかなかった。